鳳子も預ける
午後は無事に過ぎて夕方。
他の史跡に行っていた金錦達は再度 万里の長城を訪れ、タープテントの救護所で休んでいた人々も回復して発掘調査に戻っているのを確かめてからホテルに戻った。
彩桜とサーロンが部屋に入ると、トレービとジョージが待ち構えていた。
「彩桜、話がある」「座ってくれ」
「は~い♪」
テーブルセットのソファをベッドサイドに並べる。
「サーロン♪」隣をポンポン♪
「はい♪」
サーロンはポットに手を翳して湯を沸かし、紅茶を淹れてから座った。
「「流石、謎イトコだな♪」」
「謎イトコじゃなくて、ちゃんとイトコなの。
父ちゃんの異母兄な伯父さん居たの~♪」
「「はあ!?」」
「爺ちゃん、漢中国で結婚してたの。
でも奥さん、病気で亡くなったの。
帰国して再婚。で、父ちゃん♪」
「「マジかよ……」」
「マジなの~♪
リーロン偶然 来てから金錦兄が調べたの♪
だからホントだよ♪」
「ま、ソックリだもんなぁ」「だよなぁ」
「お話なぁに? さっきの?」
「じゃなくてな。
あんま燻銀を心配させるなよ」
「そりゃあ俺達が けしかけたけどな。
それでもだ。忍者して戦地に行くとか、やりすぎだ」
「ん~~、父ちゃんと話す~♪」瞬移♪
「「あ……」」
「彩桜、オーストリアに行きました。
心配しなくていいを見せています♪」
「ったくマジかよ」
「サーロンも忍者してるんだろ?」
「はい♪」
「あの、飛んでるヤツは?」「マジ忍法か?」
「はい♪ 本当に忍法で飛んでいます♪」
「いつでも?」「どこでも飛べるのか?」
「はい♪」翼を具現化♪
天井の近くをパタパタパタ♪
「あ♪ じゃあ俺も~♪」
戻った彩桜もパタパタパタ♪
天井中央のシャンデリア周りをサーロンと一緒にクルクルクル♪
「わかった」「も~わかったから降りてくれ」
「うん♪」「はい♪」ソファにスポッ♪
「つまり落下とかの心配も無いんだな?」
「落ちたら助からんような高さ飛んでるが」
「うん♪」「ありません♪」
「で、燻銀は?」「何と言った?」
「防護結界で大丈夫なのと、背中から羽 生えてるの見せて飛んだの♪
そしたら思いっきり飛んだらいいよ、って♪」
「「防護、、何だ?」」
「見えるよぉにしたら~、こんなの♪」
西洋鎧と盾と剣♪
サーロン笑う♪
「「うわ……」」
「普段は見えなくしてるの~♪」消す~♪
「彩桜は不思議っ子だからなぁ」「だよなぁ」
「ああそうだ。忍者は?」「分身してるよな?」
「してるよ♪」「はい♪」立って離れた。
クルンで忍者に。同時に分身。しかも複数。
「「「「「「「桜マーズ参上♪」」」」」」」
「「「「「「「空マーズ参上♪」」」」」」」
「あ~~~、もういい。わかった」
「やっぱ思いっきり飛んだらいい」
シュシュシュッと忍者らしく収納♪
「うん♪」「はい♪」
「思いっきり飛ぶのはいいんだが」
「事前に燻銀には話してやれよ?」
「ほえ? ナンで?」
「「燻銀が倒れたからだよ!」」
「どして!?」
「エルサムの映像が流れた時、ちょうど俺達は休憩してたんだよ」
「忍者が現れた瞬間は引きの広景だったのに、燻銀には息子達だって分かったんだよ」
「で、胸押さえて踞ったんだ」
「そのまま病院へ、だよ」
「だから、あんま心配かけるなよ?」
「それ言いたくて、この仕事の後、邦和に寄るつもりだったんだよ」
「俺、もっかい父ちゃんトコ行く!」瞬移!
「では、金錦お兄さんと接触したのも?」
「「それは偶然だ」姿 見てビックリだよ」
金錦が見付けて接触したのだろう。
「父ちゃんと約束した~♪」戻った♪
もちろん治癒もタップリしてきた。
「ま、そんならいいけどな」
「話は それだけだ。
また友達ん家行くんだろ?」
「行く~♪ おじさん達ありがと♪
ゆっくり休んでね~♪」
「「だったら早朝に起こすな!」」
「起こす~♪」ソファを元の場所に♪
「「やめろ!!」」
「おじさん達、俺ん家にも来てね♪」
サーロンと一緒に消えた。
「ありゃあ絶対 来るな」
「来るよ。もう寝るか?」「そうしよう」
「犬に乗ったり、小鳥と喋ったり、次から次と驚かせてくれてたが、まさか忍者するなんてなぁ」
「だな。白久と黒瑯なら一緒に忍者しててもおかしかないが、金錦までもが止めもしないなんてなぁ」
「リーダーしてるんだから金錦も楽しんでるんだろうよ。
青生もテレビじゃ喋り役なんだから兄弟揃ってコスプレ好きかぁ?」
「作ってるのは紅火だろ?
藤慈も仮面がありゃあ無敵ってか?
けどま……兄弟揃って殻を破って、音楽もやってる。楽しんでる。
燻銀の息子達はサイコーだよな♪」
「だよなっ♪ 何にせよ芸術だ♪」
「やっぱ黒瑯のメシ食いに行こうぜ♪」
「よーし行くぞ♪」
―◦―
翔家では金錦と藤慈が杏華に術治癒していたので、彩桜とサーロンは子供達と遊んでから屋根の上で見張りを始めた。
リーロンも後片付けを終えて加わった。
【今夜、何事も無かったら此処は理俱だけでいいだとよ】
【治癒は?】
【ソレも理俱がやるんだと。
オレは任せてレストランに戻るからな】
【うん。もぉたぶん少ないし、警戒して動かないと思う~】
【だよな。オレでも そうするよ】
【兄さん、『オレでも』って……】苦笑。
【だよねぇ。ドラグーナ様も笑ってる~♪】
そこに青生を乗せたラピスリが現れた。
【彩桜、また急ぎだ。乗ってくれ】
【ん。じゃあ見張りお願いねっ】跳び乗る。
【リーロン、サーロン。此処は頼む】瞬移。
――竜ヶ見台警察病院の上空。
【うわわ。魔女だぁ~】
【どうやら理子と鳳子に分割されていたらしい。
眠り修行に専念している今のうちに理子を預けている場所に連れて行く】
【代わりは?】
【桔梗様が化けてくださる】
【吸着していい?】手に闇呼玉。
【頼む】病室へ。
――〖来てくれた~♪〗【ガネーちゃ師匠♪】
【彩桜、早速】
【ん。昇華闇障暗黒、激天大闇呼吸着!】
無抵抗でスイッと入った。
桔梗が現れて鳳子に化け、ベッドに漂う不穏を浄化して横たわった。
【此方は任せてね♪】
【【【お願い致します!】】】術移。
――途中で青生と彩桜の魂身分離をして身体は専用の保護珠へ。
浄化・魂生合同研究室へと術移した。
「室長殿、この者が魔女の半分です。
どうかお願い致します」
「伝達の死司神様がいらっしゃいましたので準備は完了しております」
「では――」「人だけ出しま~す♪」
【闇呼吸着強化、特大号!
青生兄、鳳子さん引っ張って!】
青生が闇呼玉に手を入れた。
【青生、何を?】
【うん。説明は後ね。
捕まえた。引き出すよ】【ん!】
ズルッと出した。
起きてはいるようだが表情は虚ろだ。
【魔女が魂核みたくなってたからなの~】
【そうか……】【【治癒眠】】
「「後はお願い致します」」兄弟揃って礼。
「ありがとうございます」深々と礼。
「俺達に丁寧なんて要らにゃいのぉ」
「魔女を封じに行って参りますので」
青生が彩桜を連れて消えた。
「先程の方々は……?」
「私の夫、今ブルーと、その弟の今チェリーです。
実は双子で光と闇、対なる者なのです。
ではお願い致します」礼。青生へと瞬移。
――永遠の樹。
青生と彩桜が枝に腰掛けてニコニコ待っていた。
【此処に来たのか】
【あまり神世を知らないからね】【ね~♪】
彩桜の龍尾が楽しそうだ。
【青生、闇呼玉に手を入れられるのか?】
【拾知を調整するのに彩桜の闇を貰ったからね。
さっきのは試したようなものだけどね】
【ちっちゃ欠片はムリだと思うの~。
さっきの大きいから出来る思ったの~♪
それにナンかに包まれてる?
融合してなかったから~♪
ガツンと吸着して分離できちゃった♪】
【器用だな】ふふ♪
【滝 行こ~♪】
【そうだな】
―・―*―・―
【あ……】
屋根の上で瞑想していたサーロンがビクンと肩を跳ねさせて目を開け、天を仰いだ。
【ど~した?】
【たぶん……未来じゃなくて過去……】
【何が?】
【過去の……ボクの記憶?】
【ナンか蓋が開いたか? 話してみろよ】
【たぶんユーレイになって以降です。
全く覚えてませんけど、兄さんと彩桜と、もう1人、大人の男の人が笑ってるんです。
たぶん……ボクも笑ってます。
楽しいと感じました。
場所はキツネ様のお社かな?
薄暗い部屋です。
ボクの記憶が不鮮明で薄暗く感じるだけかもですけど】
【そっか。ちょっと見えたか。
もう1人はモグラだよ。
場所も合ってる。
いつ、なんて言えないくらい何度も、日常的にあった事だ。
彩桜は、そん時からずっとソラが大好きだったんだよ。
あの頃は友達も居なかったし、紗ちゃんにも近寄れてなかったからなぁ。
ま、前にも話したが眠り期のチビッ子ソラはサイオンジが目を離すとフラフラと総合病院に向かってたんだよ。
それを回収しては社で預かってたんだ。
回収してたのはオレや狐儀だけじゃない。
サイオンジの弟子やら犬達やら大勢がな。
その中にモグラも彩桜も居たんだよ】
【彩桜……】
【彩桜を責めるなよ?
眠り期が終われば、眠り期の記憶は消えるモンなんだからな。
良くてもガッチリな蓋で閉ざされる。
ソラみたく思い出せるのは稀なんだぞ。
それに消えちまったからだけじゃなく、そんな過去、オトナなソラには話せないだろ】
【彩桜って……優しい……】
【だな。優しくて、イイヤツだ♪】
【それに、モグラさんも。
だからきっとユーロンを保護した筈です】
【だなっ♪】
親には心配をかけ、兄達には甘えている彩桜ですが、オトナな面もあるんです。
という話の間で、鳳子も合同研究室に運ばれました。
理子と鳳子、研究室で騒がなければいいんですけどね。




