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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第40章 魔女との戦い ~漢中国編~
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黒霧の悪霊



〖おや嬢ちゃん、手ブラという事はアタシなんかに相談かい?〗


 ラピスリが急いでいながらも最高司補達とも情報共有した後、アミュラの結界に行くと、そんな言葉で歓迎された。


【はい。

 青生と彩桜の拾知が急速に冴えてきているので調整をお願いしたいのです】


〖そりゃあ大変だねぇ。

 他者の考えやら雑多な感情やらが常時 流れ込んだりしたら頭が変になっちまうよ。

 けどアタシも獣神だからねぇ、人神の能力を完璧には調整できないよ。

 それでもいいなら連れて来な。

 野放しよりゃあ遥かにいいだろうからね〗


【ありがとうございます! お願い致します!】

礼をして反転。最速で人世に戻った。



―・―*―・―



 保全事務局と話した昇陽(シォンヤン)も戻って金錦と作業者達との話に加わり、彩桜が不穏を感じた場所は、龍教授に立ち会ってもらって翌日に発掘調査すると決まった。



 囲む為の物は杭とロープしか貰えなかった。

「ま、何で囲んでも同じだよね~」

杭を身体で隠して地に押し込む。

もちろん普通そんな事は出来ない。


四隅に杭を立ててロープを張り、地下3cmに不穏を吸着する闇呼膜に光で浄化も加えて蓋をした。

ロープ下にも深くまで光浄化を込めた闇呼膜を張り進めた。

【これでいいかにゃ?

 地下で地縛されてて自由に動けなさそぉだから~】


【悪神だけ? 魔女は?】


【わっかんにゃい。

 でも強浄破邪もしとこ~♪】【そうだね♪】

と言いつつ何やら地面に描いている。


【それ何?】梵字?


【梵字風で結界魔法円風♪】


【それって、つまり落書き?】


【そぉかも~♪ でっきた~♪】

サーロンが手を当てる場所を指で示した。

彩桜も向かいに手を当てる。

【せ~のっ♪【滅禍浄破邪の極み!】♪】

ピッカ~ン☆と同時に男の叫び声。神耳にだけ。


【ピッカン☆も見せたから不気味で近寄らないよね~♪】

ぴょんぴょんと金錦の所に行った。



 昇陽から発掘調査の状況を説明してもらっていた金錦が、走って来ている彩桜とサーロンに微笑む。


【ちゃんと囲んだ~♪

 紅火兄の堅固ないから闇呼膜だけじゃスコップでも破れちゃうけどぉ、約束したから大丈夫だよね?】


【信じよう】【ティッシュ並みの弱さ?】


【広いから薄~くなっちゃったの~】


【そんな状態になるんだ……】彩桜の不思議力♪


【神力には強いけどぉ、腕力には弱いのぉ】


【へぇ~♪】到着♪


「向こうにも発掘調査場所があります。

 行きましょう」



―◦―



 金錦達が遠くに離れると、数人が囲いに近付いた。

「何だ?」「不気味だな」「呪いの印?」

「掘るなと言うんだから、ほっとこうぜ」

遠巻きに見ていたが調査に戻った。



―◦―



 次の発掘調査場所に向かいつつ、彩桜は神眼を向けて聞いていた。


 やっぱり不気味だよね~♪


【彩桜、急ぎだ。

 青生に向かって瞬移してくれ】

安心したところに瑠璃から呼び掛けられた。


【うん♪ サーロン、分身で俺お願~い♪】

言い終わる前に瞬移していた。


【えっ? あっ!】

慌ててサーロンが分身する。

昇陽は前を歩いていて金錦 慎也(リグ分身)と話しているので気付かれていない。

周りに人も居ない。

ホッと胸を撫で下ろして付いて行った。



―◦―



 最初の発掘調査場所では、皆が不気味な囲いが見えないようにと考えて、広く低くなっている場所に座り、下を向いて細かい作業に集中した。

それを確かめてから、1人の男が囲いに戻った。


余所者(よそもの)が偉そうに。

 腹立つから囲いを動かして掘ってやる。

 鎚を貸さなかったから杭は簡単に抜けるだろ。

 問題は あの不気味な文様だな。

 ま、模写は得意だからバレやしないだろ」

すぐ横に描き始めた。



―・―*―・―



 ガンガンガツンと術移してアミュラの結界前。

【アミュラ様、お願い致します!】


〖早いねぇ。

 ま、アタシなりの全神力(ぜんりょく)で調整するからね。

 二人共、嬢ちゃんの背に出な〗


【急ぎって俺達なの?】【そうらしいよ】

龍尾天使達がラピスリの背に座った。


〖翼は上手く操ってるようだね。

 それじゃあ拾知も調整するよ。

 暴走したら大変だからねぇ〗


【暴走しちゃうの!?】


〖その開き具合、可能性は高いよ。

 おとなしくしてな!〗【【はい!】】



 早口過ぎて聞き取れないが詠唱しているらしい。



 暫くすると、青生から彩桜へと光が流れ、彩桜から青生へは闇が流れ込み始めた。


〖それを利用して相殺する形で抑制するからね。

 次の術だ。まだ動いちゃならないよ!〗


再び超早口詠唱だ。



―・―*―・―



 自称・模写が得意な男は複雑怪奇な彩桜の落書きを写し終え、満足してニヤリ。

杭とロープだけの囲いを移しに掛かる。

力任せに杭を抜こうとした――


 何故!?

 どうして押し込んだだけで抜けなくなる!?

 あのガキ何者だ!?


――が微動だにしなかった。

それならと、どうせ掘るのだから杭もと、シャベルを杭に向かって斜めに突き立て、足で押し込む。

そして杭を下から押し上げようと――


 まさか杭に当たってる!?

 そんなにも深いのか!?


――強引に踏み沈めたシャベルの先は杭に刺さっているらしい。

そういえば、渡した杭は1m程だった。

出ているのは せいぜい30cm。

子供が押し込んだだけで70cm程も地中に埋まっている計算になる。


 どんな馬鹿力だよ。


仕方無しに杭抜きと新たな杭と鎚を運んだ。



―・―*―・―



 アミュラの超早口でも長かった詠唱が やっと終わった。

〖どうだい? 何か変化や違和感があるかい?〗


【なんだか~スッキリ♪

 ザワザワなくなった~♪】

【そうですね。

 ずっと聞こえていた(ざわ)めきが消えました】


〖此処でも聞こえていたのかい?〗


【なんかぁ、寝言?】【それは彩桜だろう】

【瑠璃姉てば、ひっどいにゃ~ん】


【彩桜の寝言とは違うけど、起きている時の思念とは違う騒めきが聞こえていたんですよ】


〖大勢が身を隠して冬眠状態だからねぇ。

 有り得るよ。けど凄いねぇ。

 今の状態を基底とする練習と、情報を得たい時だけ開く練習をしな。

 普通の拾知は常時発動状態で構わない程度だが、お前さんらのは強過ぎる。

 常は閉じ、必要な時だけ発動するが如くに開くようにしないと、流れ込み過ぎて心が溺れちまうよ〗


【は~い♪ 修行しま~す♪】

【修行あるのみ、なら気楽です】


〖そうかい。

 今日のところは閉じる方を頑張りな〗


【【はい! ありがとうございました!】♪】


〖気合い入り過ぎだよ。まったく〗あはは♪



―・―*―・―



 彩桜の囲いのうち杭2本を動かしてロープで模写を囲んだ男は、土中の硬い物の有無すらも調べずに乱暴に掘り始めた。

ザッザッと無造作にシャベルを突き立て、描かれている模様を消しながら土を(ほぐ)していった。

「硬い物すら無いじゃないか」

呟いて、ひと掬いには目一杯な量を持ち上げた。


「ん?」

何かがシュルンと土中に逃げた気がした。

「虫かな?」

すぐ横も掘り返す。またシュルン。

「黒い……ミミズ?」

その横でもシュルン。

「こんな所がミミズの宝庫?」

更に隣は模様の中央でもあるがザクッ。

「え? 今度は出――うわあっ!!」


 男の叫び声で調査員達が立ち上がって向くと、地面から黒い霧状とも泥状とも見えるものが真上に噴き出しており、動けずにいる男に向かって曲がって下りた先端がラッパ状に広がったところだった。

それは男を喰らおうとしているとしか見えない光景だった。


「あの場所……」「石油でも掘り当てたか?」

「うわ、気持ち悪っ」「パクッと飲まれたぞ」

「暢気なこと言ってる場合かよ。助けるぞ!」

数人が走った。


「どろどろべちゃべちゃになりそうだよなぁ」

「ったく馬鹿だ。近寄らなきゃいいのになぁ」

あとはぞろぞろ歩く。


すっかり黒霧に飲み込まれた男に先頭集団が達した。

『儂は大国カリューの王、オーロザウラだ。

 この身体を得て復活し、世の全てを手中に収める!』


低く轟く声に怯えて、先頭集団は逃げようと後退(あとずさ)る。いや、後退ろうとした。が、思うように身体が動かない。


恐る恐る下を見れば、地から生え伸びた黒い蔓が足に巻き付き、上へ上へと巻き付きながら這い伝って伸びてきていた。

触れられている感覚は無い。どころか、もう自分の足だとは思えないくらいに全ての感覚を失っていた。

「たっ、助け、て――」


黒霧は包んだ男に入り込んでいるらしく蠢きながら薄くなっていった。

『お前達は儂の糧とする。

 微々たるものだが、その生命力を儂の神力の足しとしてやろう』

黒霧を吸い込んで黒く染まった男が踏み出した。

顔を上げると、目は赤い光を帯びていた。


一歩、また一歩と踏み出す毎に、黒蔓が胸まで絡まっている者達が倒れる。


少し離れて見ていた者達も逃げようとしたが、足首には黒蔓が絡まっていた。

「見ていないで逃げろ!!」

もっと離れている者達に向かって叫ぶ。

それが精一杯だった。


『世の全てを儂のものとすれば、ルサンティーナも儂のものだ!』


黒く染まった男自身の声と低い轟き声が重なり、二重唱が笑っている間にも次々と調査員達が倒れていく。


その(おぞ)ましい光景を泣きながら見ていた者達の目に、煌めき舞う光の軌跡が二筋、いくつもの弧を描きながら通り過ぎるのが見え、途端に身体が自由になった。


「空マーズ参上! 忍法、滅禍浄破邪!!」

「金マーズ参上! 昇華、浄破邪雷撃!!」


黒く染まった男が光に包まれ、続く稲妻に脳天から貫かれた。


轟く絶叫。


最中(さなか)に男は、天から降った強い三筋の光に包まれた。


「青マーズ!」「(るり)マーズ!」

「桜マーズ「「参上!!」」」

【昇華闇障暗黒、激天大闇呼吸着!!】

「忍法、悪いの全部、封印なのっ!!」

掲げた闇呼玉に黒霧と黒蔓の断片が吸い込まれた。



 稲妻に貫かれている男に色が戻ると、金マーズが男を支えて稲妻を消した。

「悪霊に対してのみ効果のある雷槍です。

 この方には傷や衝撃は全くありません」


他のマーズは倒れている人々を光で包んで回っている。


「皆様ご無事ですが、体力を激しく消耗している状態です。

 移築した城壁で陽を遮り救護所とします」

説明した金マーズは男を抱えて消え、城壁前に現れた。

ほぼ同時に現れた赤マーズがタープテントを設置して消えた。


輝竜教授一行と昇陽も走って来て、マーズ達と一緒に倒れている人々を運んだ。

よく見ればタープテントの下のマーズは増えている。



 子供らしい2マーズと双子にしか見えない少年2人が穴を調べているので、調査員達が恐る恐る寄ってみると、彩桜が顔を上げた。

「掘っちゃダメって言ったのにぃ」


「ですが囲いはありますよ」指す。


「杭の頭、よ~く見て。

 コッチ側2本は俺が押し込んだから潰れてないでしょ。

 向こう2本は鎚で叩いてるから潰れてるでしょ。

 絵も違うの。アレ真似っこなの。

 ほら、コッチちょっと残ってるでしょ。

 杭の穴も残ってるでしょ。

 そゆコトなの」


「ったくアイツは……」

「それで、さっきの黒いのは?」


「悪霊。ここ掘ったら人骨いっぱい出るよ。

 城壁と一緒にバラバラなってるけど。

 建造と処刑、一石二鳥してたの。

 だから怨みイッパイなの」


「アイツが出してしまったのか……」







万里の長城に現れた『悪霊』はオーロザウラでした。

魔女は? な状態ですが、悪神を封印したのでアミュラ様の所に戻らないといけません。



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