神世で調べるしかない
【響はヨシさんに似てるよね】
【顔が似てるのは自覚してる~】
【じゃなくて性格。
内側に どんな大きな悩みを抱えてても外に向けては笑顔で強気で。
だから気づいてもらえなくて。
それでも負けないって歯を食いしばる。
そんなトコ】
【あ~、確かにね。
ヨシさん、いつも笑ってたもんね。
周りから見れば急に怨霊化したとしか思えないよね。
でもずっと思い悩んでたんだと思う。
理子叔母さん、どうして こんななんだろ……】
【簡単に纏めちゃいけないと思うけど性格なんだと思う。
自己中心的で他者を思いやれなくて、夢ばかり見て現実は見ない。
多少は誰しもあると思うけど、理子さんは それしかない。
って……似たような性格の……今日も見たような……あ!】
響を連れて瞬移。
――2年1組の水槽前。
【この金魚、鮒丸】〈なんだよ! 指差すな!〉
【あ~、確かに似てるって感じちゃった~。
喋る金魚、自己中なのね?】
【そうなんだよ。実は神様で王子様。
人をしてたんだけど、神の時も人の時も弟を従えようとイジメてたんだ。
それにマーズの正体を知ろうとして時も場所も関係なく暴こうとするから、金魚にされてしまったんだよ。
金魚ならウロチョロできないからね】
【叔母さんは玉の輿に固執してるけど、鮒丸はお山の大将になりたいのね】
【何か糸口にならないかな……】
覗き込んで考えていたが、騒がしいので社に戻った。
―・―*―・―
隠し社では、魂を浄化した寿を眠らせたところだった。
【父様、鬱陶しいからと理子を追い出さないでください】
【然うは言うが……彼奴は不穏を集める。
社には置きたくないのだ】
【集める? ただの人が?】
【然うとしか思えぬ。
神力を持たぬ人が、ああまでも不穏を纏えるものか】
【確かに。では魂材に能力が潜在しているのかを調べます】
【頼む】【瑠璃、亥口さんは落ち着いたよ】
【利幸も居たのだったな】溜め息。
【アーマルの尾に任せては?】
【そうしてください】社のオモテ側に行った。
【青生、神力を貸してくれ】
【はい】にっこり。
―・―*―・―
【あっ、瑠璃先生。ヨシさんは?】
【落ち着いて眠った。
完全には怨霊化してはいなかった。
故に目覚めたなら、いつもの寿殿だ。
よく防いだな】
【あの~、変な龍神マスクマンは?】
【確かに その通りだな】ふふ♪
【中途半端だったのは、堕神とされ目覚めきれていなかった為。
それでも親しい者の危機を察知して飛んだのだろう。
無謀極まりない奴だが無事だ】
【ヨシさんの友達?】【キャティス様だよ】
【いずれも知っているのだろう。
理子は封珠のまま神世にて調べる。
浄化をありがとう】
ソラから受け取ると、術移した。
【これからバンドの練習よね?】
【そうだね。彩桜は部屋に連れて行くよ。
後でまた来よう】
【そうね♪】
―・―*―・―
【――経緯は、こんなもんだぁよ。
でぇ、あの龍神様は何者だぁ?】
【私とヨシさんの弟子、死神様からお預かりしているトシですよ。
瞑想させていたら察知したらしくて、調べるからと待たせていたら唐突に
『こうしちゃいられねぇ!』と、あの姿に。
ホウジョウと一緒に押さえ込もうとしたら飛ばれてしまって。ねぇ?】
【はい。行き先だけは確かめようと、しがみついてしまいました】
【フィアラグーナ様よぉ、ドラグーナ様の御子なんだろ?】
〖らしいな。共鳴が孫だと言ってるが、ドラグーナの子は多い。
イチイチ覚えちゃいねぇよ。
けど……あの鱗色は、力の神ウンディかもな〗
【そのウンディ様ってのなら知ってるのかぃ?】
〖ウンディならラピスリの すぐ下。弟だ。
ラピスリを再誕させるのに使った保護魂材で生んだ子だ。
だから無条件にラピスリを護ろうとする。
で、腕っぷしが強くなったんだ〗
【キャティス様とは何が?】
〖それは知らんが、ラピスリが美神だからな。
他の美神にも弱いんだろうな。
狩られそうになっていたのを護ったとか、そんなところだろ〗
【確かに美人に弱いですね♪】【【うむ】】
―・―*―・―
オフォクスと青生の神力で無事に人姿で目覚めた利幸は上機嫌で、差し出された保護水晶をただ受け取った。
「これ何だ?」
「中を見ればよい」とだけ言って離れた。
青生もクスクス笑いながら稲荷を追った。
「ふ~ん」
掲げて下から覗き込む。
「お♪ アーマルじゃねぇか♪
ウンディも一緒だったのか♪」
『『お前がウンディだ!』』
「俺は亥口 利幸だ♪
そこにアーマルとウンディが居るだろ?
だったら やっぱ俺はウンディじゃない♪
飛翔は?」
『今、此処に居る僕は尾の部分だ。
他の部分は飛翔の中に居る』
「ふ~ん。そんなら、もしもだ。
俺がウンディだとしたら、俺も半分ずつなんだな?」
『確かに、このウンディは意識の一部だ。
しかし僕の場合とは違う。
今は利幸をしているが、お前こそがウンディなのだ』
「んんんん……ムズいな。
やっぱウンディはソッチで俺は亥口 利幸だ♪
それでいい♪」
『『よくない!』
だが……先に、その歪になってしまった神力を均等にせねばな。
瞑想していてくれ』
「おう♪」
―・―*―・―
神世の職域を目指していたラピスリは、先ずは許可を得ようと死司最高司の館に行った。
〈最高司殿、唐突に申し訳ない。
確かめてもらいたいものがあるのだが〉
執務室の扉前で声を掛けると、即座に開いた。
「今ピュアリラ様、どうぞ」丁寧に礼。
入ってポンポン挨拶。要約して伝えた。
「最高司殿、この魂なのですが――」
ソファに座っていたザブダクルは居室に逃げてしまった。
〈オーロザウラで間違いない!
速やかに滅してくれ!〉
〈既にオーロザウラの魂片も闇禍も摘出して浄滅しております。
しかし、この者は不穏を集め、今尚オーロザウラの気を漂わせているのです。
調べたいので臨時の集いを――〉
〈エーデ! 速やかに集めよ!〉〈はい!〉
〈――首輪の効力を――〉
〈切る! 切るから其奴を連れ出してくれ!〉
〈――では、お願い致します〉一旦、廊下へ。
〈今ピュアリラ様、連絡しましたので参りましょう〉
〈すまぬな〉
入るとザブダクルは居なかった。
居室で震えているのを見ての込み上げる笑みはそのままに、ラピスリはマディアを連れて永遠の樹へと瞬移した。
―・―*―・―
「あら?」
「おばあちゃん、ゆっくり寝ててね」ぽんぽん。
「颯人君と理人の部屋ね?」
「うん。お母さん、神様が調べるって天に連れてかれちゃった。
だから安心してね♪」
「そう。またご迷惑を掛けてしまったのね」
「お母さんだから仕方ないよ。
もう神様が持ってったんだから考えてないで寝てよ」
心配そうに抱きついた。
「そうするわね」
―・―*―・―
「ん? あれれ? 俺の部屋?
みんなは? サーロン? 居にゃい?
みんなアトリエでオヤツだ~♪」
セルフ回復治癒&浄化しつつ走った。
階段を真ん中で蹴って2歩で上がる。
「オ~ヤツ~♪」
「彩桜お帰り♪」一斉。
「サーロンは?」「またナンか手続きか?」
「そぉなの~」
「だから狐松先生も来ないんだね?」
「あ~、また一緒かぁ」
「うんうん一緒なの~」
【狐儀師匠どこ?】
【社ですよ。調べものをしていたのです】
【理俱師匠も?】
【調べてくれておりますよ】
【えっとねぇ、永遠の樹が近道みたい~】
【はい? 調べものの、ですか?】
【そんな気がするの~♪】
【拾知ですか……理俱、聞いておりましたね?】
【ああ。行ってみるよ】術移。
【狐松先生とサーロン、手続き行ったってなってるから~】
【そうですか。
では夕刻迄、分身は不要ですね?】
【うん♪ ゆっくりしてて~♪】
【ありがとうございます】ふふ♪
―・―*―・―
爺様リグーリが永遠の樹に行くと、マディアは幹に凭れて眠っており、ラピスリが瞑想していた。
【何してるんだ?】
【マディアの魂を取り込み、話している。
リグーリは?】
【彩桜が調べものの近道だっつーから来たんだよ】
【また拾知か。何を調べていた?】
【山で修行してる皆から王と王子達について知ってる限りを話してもらってたんだ。
王子達が理子に似てると思ってな】
【ふむ。確かに近道らしいな。
此方は理子の魂を確かめてもらおうと最高司補達を待っている。
忙しいらしく遅くなるとの事なのでマディアと話していた。
リグーリも話すか?】
【話したいな♪ 久しぶりだからな♪】
理子の魂内に何が居るのか。
獣神と神力不十分な人神しか居ない人世では調べる事すら無理だと考えた瑠璃は、理子を職域に運びました。
ともあれ、ヨシさんが無事で良かったです。




