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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第37章 眩しい季節に羽ばたく手伝い
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陸上競技会



 翌日曜日も輝竜家のバス2台は前日と同じ方向に走っていた。

その中には萱末(かやまつ)バスケ部4人と真仁(まなと)湊仁(みなと)兄弟も乗っていた。


「湊仁君、去年は何組?」「部活は?」


「3組でした。美術部です」

「「同じでごじゃりましゅる~♪」」


「へぇ~♪」「歴史研究部にも入らない?」


「いいの?」「「入ってくだしゃれ~♪」」

「入りたい♪」「「これは喜び一入(ひとしお)~♪」」


「もしかして尚樹と星琉は誘ってたのか?」


「そうだけど~」「直後に、ね……」


「あ~、だな」「そっか」


「兄ちゃんがワルくなって1年くらい。

 だから牧場のイベントにも行けなくて、月曜日にって思ってたら……。

 で、どんどんワルが~だったから お母さん泣いてばかりで、早く帰りたくて美術部も休んでばかりになって……」


「そっか。解決して良かったな」

「大変なの知らなくてゴメンね」


「そんな……クラスも違ってたんだから謝らないで。でも、ありがと♪

 僕もサーロン君よく知らなかった。

 部対抗、凄い~って見てたけど♪」


「ボク、今回は1週間です♪

 両親、外国出張なったら、また来ます♪」


「おう♪ いつでも来いよ♪」

「ちゃんと席はあるからね♪」


「はい♪ ありがとです♪」『そうか!♪』


「ん?」「ナンだ?」後方に視線集中。

もちろん身を乗り出して。



金堂(こんどう)、入ってくれるのか♪」

「これでやっと5人だなっ♪」

「マジで試合に出られる~♪」


「だから俺は初心者!」「俺もだからな!」

叫び抗議だが顔は笑っている。



「湊仁、兄ちゃんも友達できて良かったな♪」

「バスケ部に入ったんだね♪」「勉強会も♪」

「金堂君も僕達の勉強会にも参加するよね?」


「それも、いいの?」


「トーゼンだ♪ それと凌央、カタイぞ。

 もう友達なんだからな♪」


「そうか。皆の友達ね」


「い……いい、の?」


「当然♪」一斉♪


「あ……ありがと!♪」


「めでたしめでたしでごじゃりましゅる~♪」

こっちも一斉♪



―◦―



 中渡音陸上競技場に到着した。

土地が余っている(つまり人が少ない)市内西部に在る この競技場は、とにかく広い。

走ればすぐな距離に渡音商業高校も見えている。


「スタジアム? が2つ?」「だよなぁ」

「どっちだろねぇ」「案内板あります♪」

確かめようと駆け足。


『お~い、あっちだぞ~』「ん?」

声の主を探すと、向かっている途中らしい渡音商バスケ部員が手招きしていた。


「行こっ♪」素直に走る。

すっかり仲良しなので笑顔で。


到着。「ありがとうございます♪」一斉。


「恥ずいからヤメてくれよなぁ」

「それよか行こーぜ」


「向こうのは?」隣のスタジアム。


「投げる競技してたぞ。

 走るのと跳ぶのはA会場だと言われたんだ」


 駐車場から来た白久と紅火も合流。

「400m走のゴール側に席を確保してるからな♪

 黒瑯からのスポドリも元気(もとき)先生に渡しといたからな♪」


「白久兄コッチて知ってたの?」


「い~や。予約は事前に運営に電話しただけ。

 今は歩いてただけだ♪」

と言ったのが入口だったので、席まで案内してもらえた。



 席に着いた時には女子の400mリレーをしていた。

男子は この後だ。


「いいタイミング~♪ 冴喜(さえき)さんだ~♪」


「この後とか?」


「リレー予選、中距離決勝戦、リレー決勝戦♪

 午後は高跳びとか幅跳びとか♪」

パンフレットを祐斗に見せた。


「彩桜、パンフなんかあったか?」


「入口♪」「言えよなぁ」「あげる~♪」


「そんなに持って来てたのか?」


「だ~れも取ってなかったから~。

 何人かで見たらいいよね?」


「それで、今日はずっと観戦?

 明日から中間テストなのに?」


「凌央は自信ねぇのか?」


「僕はある!

 堅太みたいに自信()()じゃなくね!」


「今回の俺はバッチリだぞ♪」


「もういいよ堅太は。彩桜?」


「後で苦手トコお復習(さらい)して、今日は ゆっくり寝るの~♪」


「そう。それならいいよ」「ん♪」



 喋っている間に競技は男子に移っており、ふた組目が位置に着いた。

中渡音第二中学校は第1コース。

スタートは最も後方からになる。


パン。と乾いた音で蹴り出した竜騎は、瞬く間に外側の走者達を追い抜いて先頭になったところでバトンを渡した。


「やっぱ速いな♪」「スゲー……」


次の瑠惟は他を置き去りにして駆け抜け、怜王も差を拡げ続けて、他が第3走者にバトンを渡す前にアンカーの悟に繋いだ。


もう余裕あり過ぎだが、悟も楽しんでいた。

早朝の爆走散歩と比べれば加減はしているが、それでも新記録な速さでゴールした。


あまりの速さに客席中が沸きに沸いていた。


「あの4人、とんでもなくねぇか?」

「彩桜みたいなヤツ、まだ居たんだな」

萱末と渡音商の高校生達がザワザワだ。


「おい彩桜、あの4人が知り合いなんだろ?」

「どんな鍛え方してるんだ?」「教えてくれ」


「勉強会仲間なお友達♪

 朝の犬のお散歩、一緒に走ってる~♪」


「ソレか!」一斉。


「何時に?」「5時半♪」「うわ……」


「けど確かめないとな」「遠いけどな」

「俺達は早朝平気だ♪」←牧場バイト慣れ。

「明日も走るのか?」


「走る~♪」


高校生達はグッと気合いを入れていた。



―◦―



 この後の800m走では冴喜が優勝し、リレー決勝戦も悟達がブッチギった。

昼食はバスに取りに来いと言われていた4人が駐車場に向かっていると、1年4組だった集団が前を塞いだ。

3学期初日の件で配慮されたのか、今年度は皆、違うクラスだ。


悟が竜騎達を背に庇って身構え睨む。


「悟、違うんだ」「謝りに来たんだ」

「馬白ゴメンな。走り、凄かったよ」

「見直した」「前のは忘れるからな」

「秋の全国大会も優勝してくれよな」

「応援しに行くから」「頑張ってね」


「うん……うん。ありがと。

 僕こそ、ごめんね。頑張るからね」


「1年2人は気にせず頑張ってくれ」

「4人とも凄いよ♪」「じゃあな♪」


「帰るのか?」


「コンビニで昼買うだけだよ」


〈彩桜、弁当――〉〈呼んであげて~♪〉

〈ありがとなっ♪〉〈ん♪〉

「弁当あるから来いよ。

 彩桜ん家、キャパでかいから」


「いいのか?」


「いいって」「大歓迎~♪」走って来た。



―◦―



 走り高跳びのツバサは準優勝し、走り幅跳びの深長(ふかなが)は優勝した。

陸上部は学校が借りたバスで帰るので駐車場で見送り、渡音商バスケ部は練習すると学校に向かった。


自転車で来ていた元1年4組は、自転車ごとバスに乗せられて輝竜家へ。

そのまま勉強会に連れ込まれた。


もうお決まりのビックリ連発を経て、落ち着いた頃にオヤツで大騒ぎ。

凌央と純玲に何度も注意され、睨まれて夕方になった。


「今日はここまでねっ♪

 た~っぷり寝て、元気い~っぱいでテスト受けよ~ねっ♪」


――と解散した後、マーズはパイプオルガンのホールに集まってのダンス練習。

レオ ルイ メグル サイトも動きの基礎から練習中だ。


兄達が揃うのは束の間だが、子供マーズ達にとっては、それだけで気合いを入れるのに十分な刺激になっていた。


黄緑(ワカバ)マーズ集合!

 今日は長い旗を持ってステージを駆け抜けるだけだが、忍者走法は基本中の基本だ。

 気を抜かず、シッカリ走れ」

副長(サブリーダー)も新人達にお手本とばかりに気合い十分だ。


「「「「はい!」」」」


「来週の渡音フェスでは1曲 踊ってもらう。

 けど中間テストの成績が悪かったり、今日の走りがイマイチならステージには上げないからな。

 幾つもを同時進行、全てを完璧に(こな)すのが忍者だ。

 心してかかれよなっ」


「「「「はい!」」」」


「そんじゃあメシ食って風呂入ったらソッコー仮眠だ。

 サッと眠ってスカッと起きるのも――」


「「「「忍者の基本です!」」」」


「――よーし♪ 黄緑マーズ、行けっ」


「「「「はい!♪」」」」

忍者(マーズ)に仲間入りできたのが嬉しくて、どうしても弾んでしまう4人だった。



「正規メンバー、負けるなよ♪」


「「「「はい!♪」」」」


「あ~そ~だ。新人4人、何色にするんだ?

 ステージに上げるからには決めねぇとな」


「色鉛筆~♪」消えた。「はい♪」戻った。


「ナンだよ、その分厚いケースは?」


「3段なの♪ 60色♪

 紅火兄が作ってくれたの~♪」


「んなビミョーな違いなんかステージじゃ同色だろ」


「でもヒントなるなる~♪

 今いる色、抜く~♪」


「しっかしムズいな」「黄緑まんまは?」

「ナンて呼ぶんだよ」「2音しかダメ?」

「揃えるならな――って桜は3文字だろ」


「じゃあ黄緑(ライム)マーズ♪」


「忍者なんだから和色にしてくれぇ」


黄緑(きみど)? 黄緑(もえぎ)?」


「ソイツの呼び方は後にしよう」「ん♪」


「あと3色……」「茶色?」「渋いな」

「桃色?」「赤と桜の間か。候補だな」

「薄い灰色は?」「アリだが候補だな」

「白久兄、なんかにゃいの?」「あ~」


「色見本」

現れた紅火が染めた布が並ぶ板を差し出した。


「紅火兄ありがと♪」「ありがとなっ♪」

「この渋桃いいね♪」「確かにいいな♪」

「みかん色♪」「ソレだけはダメだっ!」


「先に夕飯と風呂は?」悟も覗き込んだ。


「うんっ♪」「だよなっ♪」



「怜王は青い感じで、瑠惟は赤い感じなんだよな」

渡り廊下で悟が呟いた。


「そうだね。双子だけどカラーが違うよね」

竜騎が並んで同意する。


彩桜が振り返る。

「じゃあ青系と赤系ねっ♪

 メグルとサイトって淡色で爽やか系かにゃ?」


「はい。そう思うです♪

 でもボクが空色 貰いました。

 困ったですね……」


「青だって赤だって既に居る。

 やっぱムズ過ぎだな。

 暫くは初心者色な黄緑(ワカバ)マーズ四人衆のままでど~だぁ?」


「うんうんっ♪」「ワカバいいですよね♪」

「初舞台なら複数アリか?」「アリだよ♪」


「紅火、これから下忍で新人の最初は黄緑(ワカバ)衆な♪」


「ふむ。用意しておく」



―・―*―・―



《あら、また目覚めたのね。

 その点は流石だと褒めてあげるわ。

 流石、オーロちゃんが選んだだけはあると♪

 でも何度でも眠らせてあげる♪

 (わたくし)には浄化なんて効かないの♪

 誰も私を滅するなんてできないのよ♪

 私は(いただき)に立つべく生まれたのだから!♪》


不快に響く高笑いの中、オーラタムの意識は また暗い深淵に沈んだ。


《この器も目覚めてしまったわね。

 もう少し動かさないでいなければね♪

 神力(ちから)を蓄え、邪魔な今ピュアリラを倒さなければ私の道は開かないのだから!》


オーロザウラの母らしき者は、獣神には聞こえない高笑いを存分に響かせるのだった。







明るく楽しく陸上競技会から黄緑(わかば)マーズ正式誕生まできたと思ったら、最後の最後に不穏な誰かが高笑い。

悪神オーロザウラの母なら神なんでしょうけど、もう女神じゃなくて魔女?

神の親子はソックリなんですから、魔女で間違いありませんよね。


そんな魔女が次章から彩桜達の敵として加わります。

浄化が効かない?

だからオーロザウラも生き残る?

つまり、この魔女も?

またまた厄介です。



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