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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第37章 眩しい季節に羽ばたく手伝い
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羽ばたくSo-χ



 ゴールデンウィークが明けて月曜日。

午前中はヤマ大な彩桜は、響と一緒なのでソラのユーレイ移動で帰らせてもらって登校した。

「俺だけ(おそ)よ~♪」


「彩桜おそよ♪」2年1組 一斉♪

「そーだ! 水槽に地味~な金魚が増えてるんだよ!」


「うんうん。お休み中に増えてたの~♪」


「あれ、フナキンか?」


「フナキンだと思う~♪

 誰かがコッソリ放したのかも~♪

 増えるの嬉し~からいいの~♪」


「ま、だよな♪」「毎日エサあげに来てたの?」


「来てたよ♪ だってゴハン大事だも~ん♪

 み~んな友達なんだも~ん♪」


「彩桜なら名前付けてそうだよね」


「うんっ♪」


「やっぱり~」大勢。


「赤多い琉金がベニ、白多いのがシロ♪

 メダカがイー、アル、サン♪

 サンだけ男の子なの♪

 アカヒレがレッドとフィン♪」


「見分けてるんだよな?」


「もっちろ~ん♪

 そ~だ♪ 水槽横に描いとくねっ♪」


「フナキンは?」


「じゃあ鮒丸(ふなまる)♪」


「カワイイ~♪」大勢が笑う。


〈コノッ! フナマルってナンだよ!

 おい輝竜 彩桜! 聞こえてるんだろ!〉


鮒丸と命名された広夢(パトラマイト)は喚き続けていたが、彩桜は聞こえない振りを徹底した。


《ウルサイぞ》〈ヒイッ!〉

《やっぱりサクラの敵なんだな》


〈ちち違います! 静かにしますからっ!〉


《《フン》》


笑いを堪えるのも徹底しなければならない彩桜だった。


 恭弥が水槽に寄った。

「金魚達、集まってるね。

 仲良くなったんだね♪」


「うんうん仲良しさ~ん♪」〈助けてよ恭弥!〉


「和むよね♪」〈ぜんっぜん仲良くないから!〉


「カワイイよね~♪」全員同意♪


「あっ、次 体育だね!」「行こう!」


そして誰も居なくなった。


《今夜、水から追い出すか?》《そうしよう》


〈ごめんなさいゴメンナサイごめんなさい!〉


《《フン》》



―◦―



 1年4組の教室では、輝竜家の居候仲間でマーズ学園にも所属しているキューヤ(久矢(ひさや))が高夢と話していた。

「ふ~ん東京か。俺は尾張。

 部活は決めたのか?」


「東京では入ってなかったんだ。

 参加自由だったから。

 パルクール教室でチェイスタグしてたんだ」


「コッチは入らないといけないんだよ。

 そんなら運動部か?」


「説明は聞いたけどピンとこなくて。

 輝竜先輩か空沢先輩、馬白先輩が居るトコがいいかなぁ」


「そんなら歴史研究部か陸上部だな。

 俺も歴史研究部なんだ♪

 輝竜先輩が部長だぞ♪」


「そうなんだ。どっちにしよう……」


「両方入れるぞ。

 歴史研究部はカケモチ可だからな。

 鷹前先輩はバスケ部とカケモチ、他にも音楽部とか美術部とかカケモチしてるぞ」


「両方……見学して決めようかな……」


「陸上部なら毎日だけど歴研は月水金だからな。

 今日は歴史研究部に来ないか?」


「そうする♪」


「部活場所は輝竜さん家のアトリエだ。

 オヤツも出るぞ♪」


「そうなの!?♪」


「勉強会もしてるから落ちこぼれる心配もナシだ♪

 空沢先輩達、陸上部は部活してから勉強会に参加してるぞ♪」


「放課後、とっても楽しみ♪」


チャイムが鳴った。


「次、地理だぞ」教科書やらを出す。


「あ! 狐松先生!?」


「どうかしたのか?」


「ゴールデンウィーク中、馬術競技の先生だったから……」

キューヤは左隣なので、まだ話していたが狐松にニコニコ見られて尻すぼみ。


「はい、馬術は趣味ですからね。

 職業は社会科の教師です。

 では前回の続きで邦和の第一次産業について進めますね」


「はい!」キューヤが元気よく手を挙げた。


池倉(ちくら)君どうぞ」


「狐松先生と木口君は馬に乗れるんですか?」


「はい乗れますよ。

 もうすぐ遠足ですね。

 行き先は山南(やまなみ)牧場ですので皆さんも乗ってみてくださいね」


「でも先生は2年の担任ですよね?」


「2年生は隣接する北渡音農園ですから、自由時間には混ざってしまうでしょう」

北渡音農園は鶏をわんさか野飼(のがい)している彩桜が大好きな養鶏場メインの農園だ。


「じゃあ見せてくださいね!♪」

皆の瞳がキラキラ☆


「はい。では授業を始めますね」



―・―*―・―



 午後を休んだソラと響は彩桜を見送ってから家に帰り、奏と一緒に再確認な練習をしてからフォレストに行った。


「ナイスタイミングだ♪

 市民ホールで待ち合わせてた魁サンから合流したと電話があったトコだ」

緊張気味な爽が出迎えてくれた。


「ワタルさんは?」


「仕事だからサポートが来てくれる。

 ヤスは当然ムリだからソラはベースな」


「はい♪

 あの……紅火お兄さんがサポートですか?」

天井近くで作業中の紅火に視線を向けた。


「違うらしい。昨日ので気になったとかでタダで改良してくれてるんだよ」


「青生先生が来るのかな?」「そうかもね」


話しているとドアが少し開いた。

『入っていいかぁ?』


「はい! 白久お兄さんがサポートですか?」

ソラが開けて招き入れた。


「だよ♪ 青生と藤慈が抜けられなくてな。

 兄貴と黒瑯は そもそも無理だし、彩桜は学校だからなぁ。

 って紅火が居るじゃねーかよ」

【作業しに来ただけだ】【ったく~】



 既に出ていたドラムの位置を調整し、念の為にとシンセサイザーも用意して、各々がチューニングしていると、十九(ジューク)音楽事務所の西面(にしも)を連れた魁が戻った。


 西面にメンバーを軽く紹介し、音を出していく。

「あれ? 白久さん仕事は?」

ドラマーを紹介しようとして やっと気付いた魁。


「俺は そこそこ自由人だ♪

 魁だって午前中しか仕事してねぇだろ?」


西面にも ようやく顔が見えたらしい。

「キリュウ兄弟!?」


「So-χサポートメンバーズの輝竜です♪」


「わ……あっ、キーボード?

 シンセサイザーかな? は、誰が?」


ソラが手を挙げる。

「今日はベースのヤスさんも居ませんのでボクが代わりにベースを弾きます。

 揃っていればシンセサイザーなんです」


「じゃあ揃った音じゃないんだね?」


「あ……」「お~い紅火、シンセやれよな」

【作業――】「っせーよ。サッサと下りろ」


スタッ。ちょうどシンセサイザーの位置。


「またキリュウ兄弟……」


「兄弟揃ってSo-χサポートメンバーズで~す。

 では始めますね。

 曲はオリジナルで『Fly on the tomorrow window』です」

サポメン、完全に仕切っている。

サッと見回してカウントを入れた。


 ベースが確かな地となり、ギターが風になって舞い昇る。

シンセサイザーが陽の煌めき(キラキラ)を纏わせる。

加わったドラムが力強く天へと押し上げ、奏の歌声は澄んだ天の気そのものに感じた。


圧倒された西面は、よろけたように数歩 後退(あとずさ)った。

「思っていた以上だ……」

つい溢した呟きを魁は聞き逃さなかった。



 間奏。ギターソロをフルートソリに変更した部分だ。

あくまでロックだと刻むドラムとベースに負けない音色が透明感を増幅させたところに重なったセカンドフルートが和音を成したり、掛け合ったりで羽ばたいて上昇を続けた。

本来は美しく優しい音色。

しかし芯の強さを秘めた、確かなロックサウンドだった。


 そして再びボーカルが乗る。

私は負けない。未来へと向かうと決意を歌う。

此処には居ない『あなた』に、この声よ届けと明日に向かう風に乗せて――。



 余韻が残る中、大きく頷いた西面は心からの拍手を贈った。

拍手が重なる。魁と涼は勿論だが、暗がりから大柄な男が姿を見せた。

「ほらな♪ 磨けば光ると言ったろ♪」独語。


「「「メーア=ドンナー!?」」」西面 魁 涼。


「お~いメーア、いい加減ちったぁ和語を覚えやがれ」

言いつつ笑って訳した。

〈で、誰に連れて来てもらったんだよ?〉


〈彩桜だ♪

 呼び掛けたら返事してくれたのが彩桜だけだったからな♪〉


〈ったく、またサボりやがったな〉

〈違うもん! ちゃんと分身 残したもん!〉

〈ま、時差無視なメーアだから仕方ねぇよな♪〉

〈うんっ♪〉

「で、メーアは何しに来たんだぁ?」


「お嬢さんとデュエットしたくてな♪

 イメージにピッタリだから俺と声が合うなら次のアルバム曲で入ってもらいたくてな♪」


「ったく~。和語じゃねぇんだろ?」


「なんとかなるさ♪

 今 合わせるのは、さっきの英語部分で頼む♪」


「そんじゃあサビで好きに重ねやがれ」


「おうよ♪」


「あ、訳さねぇとな」

と、決定事項のみを話した。



 もう一度 最初(あたま)からだが、オリジナルも聴きたいというメーアの要望でギターソロに戻しての演奏となった。

メーアが声を重ねると力強さとロック感が増強されて、羽ばたく鳥は昇龍に化けた。

こうなるとギターソロがピッタリだった。



 歌い終わると西面は大喜びだった。

それを見てニッとしつつ奏と握手したメーアが、今度は響に寄る。

「コーラスも入ってくれ♪」


「はい♪」


「ドイツ語、解るのか?」


「話せます♪」


「そんなら間奏なんだが、フルートにギターで掛け合えるか?」


「やってみます♪」「なら、チョイ前からな」

「お姉ちゃんは練習のままねっ♪」


 1つ前のフィルインから白久が叩き始め、皆の音が入る。

奏はフルートを持って待ち、伸びやかに入った。

響はオリジナルソロを生かして掛け合う。


 2番の1フレーズでストップ。

真正面で聴いていたメーアは満面笑顔だ。

「どれもいいから、その時その時で決めたらど~だ?

 客も楽しめるだろーからな♪」

「お楽しみってヤツだな♪」

訳してから白久が付け加えた。


「レコーディングは1つだけを選ばないといけないんだよな……」

西面がぶつぶつ。白久がメーアに訳す。


「そんなら俺が謎の助っ人ボーカルとして もう1パターン録ってボーナストラックってのはどーだ?」

また白久が訳す。


皆、驚いてフリーズした。







これからの為に曲を作っている最中のメーアが来て爆弾発言を連発してしまいました。

良い内容ですから許せますけどね。


まだ飛び立ってもいないSo-χ(ソーカイ)をフリューゲル&マーズに加えるってだけでも、メーアは軽く言っていますが大事件です。

その上、謎のボーカルって……第一声でバレバレ間違いなしですよ。



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