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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第37章 眩しい季節に羽ばたく手伝い
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メジャーデビューを目指す



 涼と魁が電話で話していた相手が有名な十九(ジューク)音楽事務所のスカウトマンだと聞いた爽が急いで奏と響に電話して、今、話し終えた。


「ちょっと爽。

 ヤス君が抜けて、とか縁起でもないこと言わないでよね」

電話を掛けて奏が出る迄の間に爽が口走った言葉を涼が拾った。


「いやマジなんだよ。

 魁サンが話してた間、俺はアッチでヤスと話してたんだ。

 ヤスは博多でバンドしてる女の子と結婚するんだと。

 で、ソッチのバンドに入るんだと。

 ……たぶんメジャーデビューので考えてくれたんだと思う。

 そんな しょっちゅう博多からなんて無理だと俺でも思うからな。

 だから抜けると聞いて即サポートから正式メンバーにと考えてたんだよ。

 それも次の週末にヤスから話させる。

 彼女サンにも来てもらって、祝って、渡音フェス一緒に出てもらって卒業だ」


「そうなのね……」


「ま、これからもコッチ来てたら1曲だけでも出てもらうよ。

 そういう意味ならタクヤも呼んでもいいかもな。

 今日 来てたのも戻りたいからだと感じたんだよな♪」


「そうかもね♪」



―・―*―・―



 その琢矢は白久と話していた。

白久はまた東京の社長に聞かせている。

「んで、ギターとベースの練習は?」


「この1ヶ月は資格試験の勉強で忙しくて基礎練ちょっとしかしてませんよ。

 取らないとって必死だったんですから」


「仕事は? 邪魔だとか言われてないか?」


「そこまでは。たぶんジャマでしょうけど」


「全力で頑張ってるんだな?」


「それはもう!

 ……桐渓(きりたに)がフォローしてくれてます」


「それが分かってりゃあ上等だ♪

 そんじゃあ そろそろギターとベースを指導してやる」


「常務が!?」


「不満なのかよ」「じゃなくて!」


「今日ので察しただろうが、俺達兄弟は音楽も仕事にしている。

 両親も音楽家。俗に言う音楽一家だ。

 楽器は何でもアリ。

 資格試験も合格したから教えてやるよ」


「え? 合格!?」


「合格してるよ」「だって発表 来週末!」

「確かな筋からの情報だから信じろ。

 これから毎晩ウチに来い。

 最初はギターからな」


「うわ……はい!♪」


「桐渓も一緒にな。晩飯も食ってけ」


「はい♪♪」



―・―*―・―



 爽からの電話で奏と響は、二人のデビュー曲『Fly on the tomorrow window』のギターソロをフルートソリに変えようと決め、居間からソラが居た響の部屋に移った。

〈――だから明日もユーレイ移動お願いね♪〉

爽からの電話の内容も話しつつ五線紙に書き込んでいる。


〈いいけど、もしもメジャーデビューしたら毎回ユーレイ移動で行ったり来たり?〉


〈週末だけは車で~どう?〉「できた♪」

ソラには有無を言わさない気か。


「夜だから吹けないわね……」


「消音しますね」部屋の中に具現化ドーム。

「吸音材のドームだと思ってください♪」


「お姉ちゃん入ろ♪」

「フルート持って来ないと」

「そうだったね♪ 私も準備しないとね♪」

「ボク、アコギ持って来ます」



 改めて揃う。ショウも奏と一緒に来た。

「突き抜けて入ってください」お手本。


「ソラって面白~い♪」入る。

〈僕も~♪〉〈〈お兄は?〉〉〈寝てる~♪〉


「入れちゃった……」


「始めよ~♪」「直前を弾くね」


 ギターソロ部分の最初は奏だけが吹く。

響は直前までギターを弾いているのでフルートに持ち替えてピッチを確かめる時間分、1フレーズ後から重ねる。



 控え目に言っても見事だった。

それでも細部を姉妹で修正して、ギターでは出せないフルートだからこその音色の流れを作り上げていった。


【ソラ兄♪ フルート用マイクあげる~♪】

【ありがと!】瞬移。


貰って戻った。


「ソラ、何かあった?」


「彩桜から専用マイクを貰ったんだよ。

 他の音に負けないように着けてね」

小さなマイクを各々のフルートに着けた。


「ありがと♪」「ありがとう(そら)君♪」


〈もっと聴きた~い♪〉


「ショウって音楽大好きね♪」〈うんっ♪〉

「じゃあ完璧 目指しちゃうからね♪」


 夜中に車ごと東京に瞬移かな?

 パリに行く前に戻らないとね。

 それにしても……音楽好きは

 ショウより響の方が上だよね♪


心底楽しそうな響に目を細めるソラだった。



―・―*―・―



 涼と魁はフォレストが地下1階から地上2階までを占めているビルの上階で暮らしている。

その部屋は、元々は涼と爽が住んでいたオフィス用に作られた広い1スペースだった。それをパーティションや家具で仕切って住んでいたのだ。

その若干不便な部屋を、涼と魁のエリアと、爽が結婚しても住めるようにしたエリアとに二分し、快適居住空間にリフォームして結婚祝いだと白久がプレゼントしたのだった。


魁としては両親も寂しがるし、生活のペースが掴めれば双真も含めた家族皆が満足できる家を建てようと考えているが、今年度中は此処で暮らすと父には伝えている。



 フォレストの片付けも、精算やらの事務処理も終えた二人が帰ると、爽は出掛けていた。

「ワタル君と飲んでるのかしらね」


「間違いなく、そうだろうね。

 お風呂、先にどうぞ」


「ありがと。ね、輝竜さんについて、もっと教えてよ。

 マーズも輝竜さんなのよね?」


「俺だって全てを知ってるわけじゃない。

 マーズなのは確定だろう、くらいだよ。

 ゴールデンウィーク前からずっとライブ続きだったからテレビとか見てないよね?」


「そうね。目が回るかと思ったわよ」


「ネットのニュースでいいかな?」

タブレット画面をテレビに映した。

検索画面のリストから1つが拡大される。

「キリュウ兄弟とマーズの受勲式後のセッション。

 同一だと思える2人は違う楽器を完璧に演奏してるんだよ」

金錦と金マーズ、白久と銀マーズ――と、順に指していく。


「じゃあ……別人なの?」


「これだけの演奏が出来る集団が2組いる、というのも信じ難いよね。

 それに銀マーズの声は白久さんと同じだとしか思えなかった。

 銀マーズと約束したのに、来たのは白久さんだったし。

 これまでのマーズとメーアの言動を合わせて考えても中身はキリュウ兄弟以外に考えられないんだ。

 でも同時に存在していて、別々に動いているんだよね。

 だから俺も自信が失くなったんだよ」


「謎のままなのね……」


「で、こっちは世界芸術賞受賞の時の。

 フリューゲル&マーズとキリュウ兄弟。

 これを貰うと世界レベルの文化芸術だと認められて国際法で保護対象になるからギャラは爆上がりする。

 キリュウ兄弟は貰う前から文化保護対象と同等だと評価されてギャラは高かったんだ。

 だから安価にしたくてマーズを作ったんだと思うんだよ。

 ボランティアとかも自由に出来るように」


「でもマーズも受賞したのよね?」


「そう。ただし条件を付けたんだ。

 マーズは顔も素性も隠している集団だから、保護されるべき受賞者が明確じゃない。だから明かすまでは保護対象外にしてくれと。

 保護対象になるとギャラだけでなく特典があるんだけど、一切合切いらないと拒絶するアーティストなんて前代未聞。

 そんなアーティストが現れるなんて機構としては思いもよらなかったんだ。

 だからこそ決めてなかった所を突いたんだよ。

 そういうところ、心意気とでも言ったらいいのかな? それが今日のアンコールでの彩桜君にも見えたんだよね。

 世界のキリュウ兄弟が涼のミスを笑顔で許してアンコールに応じた。

 俺には彩桜君の『大丈夫』が、涼に『謝らないで』と言ってると感じたんだ。


 騒ぎになっても大丈夫。

 ノーギャラでも大丈夫。

 体力的にも全然大丈夫。だから謝らないで。


 それに、予定外の料理も追加してくれてフォレストの売上に繋げてくれた。

 キリュウ兄弟には何も入らないどころか材料費が掛かるのにね。

 その共通する温かい優しさが……でも、謎のままがいいよね。

 前の俺だったら何が何でも知ろうと躍起になってただろうね。

 でも今は……同じでも、違っていても、そういう心意気を持ったアーティストが存在する。その事実だけで世界は幸せだと思うんだよね」


「そうね。幸せだから謎でいいわね♪

 お風呂、お先ね♪」



―・―*―・―



「ワタル、明日なんだが昼から休めないか?」

爽は今日の出来事をザックリ話した後、呼び出した本題を切り出した。


「月曜に休めだと?」


「十九音楽事務所のスカウトマンが東京から来るんだよ♪」


「おいおい休日にしてくれよな」


「けど次も、その次もライブだぞ?」


「あ~、だったな。

 そんなら仕方ないか……けど やっぱ無理だな。

 客先との約束があるんだよ」


「そんなら欠席でサポート頼まないとだな。

 その打ち合わせか? ソレいつ終わるんだ?」


「ええっと……13時から15時だな。

 フォレストに寄れるとしたら16時だ」


「そんじゃあ引っ張とくから寄ってくれよ。

 サポートドラマーにも会いたいだろ?」


「そっか。挨拶くらいしとかないとな。

 必ず行くよ」


「ん。で、もう1つだ。

 これはまだ他には言うなよ?

 特にソラには言うな」


「なんだよ。勿体ぶるな」


「ヤスが抜ける」「ああっ!?」


「博多で彼女できて、その彼女がギターしてるバンドに移るんだと。

 メジャーデビューので悩んで決めたんだから笑って送り出すつもりだ」


「そうか。博多は遠いよな……」


「来週と再来週のリハで渡音フェスのも練習して、渡音フェスでヤスは卒業だ。

 彼女サンにも来てもらって一緒に出てもらう」


「ん。それでいいと思う」


「だから、これからは正式にソラがベースだ。

 ソラにはヤスから話させる」


「だから話すな、か?」


「そうだ。けど、これっキリにはしたくない。

 俺達のライブにヤスが来たらステージに上げるつもりだ♪」


「賛成だ♪」


「同じようにタクヤもな♪」


「アイツ、どうしてるんだ?」


「今日、来てたんだよ♪

 で、裏方してくれたよ。

 元気だし、頑張って働いてるらしい。

 前よかイイ感じのヤツになってるぞ♪」


「会うの楽しみにしとくよ♪」







So-χ(ソーカイ)はヤス抜け確定でメジャーデビューに向かって進むと決めました。


白久は琢矢をバンドに戻そうと考えています。

ベースも適していると感じたからこそプレゼントしたんですから。



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