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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第37章 眩しい季節に羽ばたく手伝い
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フルート発表会の裏側で



 翌日の夜、彩桜達が甲斐アキノ牧場での馬術障害競技会を終えて帰宅すると、元・不良達が半数程 入れ換わっていた。

〈白久兄? いっぱい寮に行ったの?〉

居間で白久を見付けて背中に子泣きジジィした。


〈バイト含めて就職が決まったヤツらは引っ越したよ。

 で、お稲荷様んトコから同じだけ引き取ったんだよ〉


〈そっか~♪ でも、そんなに就職できたの?

 白久兄トコと紗桜部長さんトコ?〉


〈他にも宮東先輩トコの清掃員と、病院近くのスーパーやらコンビニ。

 それから来光寺さんトコの倉庫係な。

 それと商工会にも頼んで入れてもらったよ〉


〈白久兄て、すっごいねっ♪〉


〈そ~でもねぇよ。

 まだ、たったの200人だ。

 まだまだ居るんだからな〉


〈ふぅん。

 農業は? 北渡音開発するんだよね?〉


〈あ~、だな。ソレもだなぁ〉


〈港で働くヒト足りないて竜騎から聞いたよ。

 外国のヒト、研修だから何年かで帰らないといけないんだって〉


〈ソレだ! 馬白さんと話さないとな!

 ありがとな、彩桜♪〉〈ん♪〉



 あ~、お部屋 行っちゃったぁ。

 牧場での話せなかったけどぉ……ま、いっか♪



―・―*―・―



 ゴールデンウィーク初日はワタルが居なかったが、以降は居たので輝竜兄弟がサポートする必要がないままにSo-χ(ソーカイ)は輝竜家アトリエのスタジオでの練習を終えた。

フォレストでの他バンドのライブが終わった頃を見計らって夜遅くに戻り、清掃をして、紗のフルート発表会のセッティングをした。


「遅くまで悪かったな。送るよ」

爽が奏に寄った。


「私達のステージですから、そこまでは。

 ありがとうございました」

「お姉ちゃん帰ろ~♪

 リーダー、ソラが居るから大丈夫ですよ♪」



 3人で外に出る。

夜中なので誰も居ない。

【ボク、これからパリでライブなんだ。

 急ぐからユーレイ移動するね】

【お姉ちゃんビックリするでしょっ!】



――響が叫び終わる前に紗桜家の庭。

「それじゃ朝に。お疲れさま」瞬移!



「響……消えるのは知ってるけど……」


「ユーレイ移動で人とか物とかも運べちゃうの。

 これから祓い屋しないといけないみたいね~。

 ユーレイだから夜中に仕事なのよね~」

けっこう必死で誤魔化している。

「早く寝ないとねっ! お風呂お風呂!」

奏を引っ張って家に入った。



―・―*―・―



 ゴールデンウィーク最終日で日曜日で紗のフルート発表会の日。

響と寿と紗の希望を網羅したセットリストを組み上げた輝竜兄弟は、パリから戻ると青生 瑠璃 彩桜の回復治癒と浄化を浴びて、元気に準備を始めた。


「畳で~す♪」ドドン!

「琴で~す♪」せっせせっせ♪

「弦楽器 管楽器どこ置いていいですかぁ?」


「へ? ええっと、そこ!」「は~い♪」

涼は搬入の素早さに呆然としていた。


「バラバラ和ドラムス~♪」和太鼓だ。


まるで裏に止めている車から降ろしているかのように運んでいるが、家からだ。


「ピアノ、いいですかぁ?」「ピアノ!?」

「2台ありま~す♪」「入る所にお願い!」

「は~い♪」「ってドコから入れたの!?」

「ほえ?」「出入口! 全部ムリよねっ!」

グランドピアノだとは思っていなかったらしい。


「おはようございま~す♪

 彩桜クン元気ね~♪」響が様子を見に来た。


「おはよございま~す♪」「え? ピアノ!?」

「やっぱりビックリする?」「そりゃあね~♪」

「気にしにゃいでぇ~」「彩桜クンだもんね♪」

「ソレもソレでぇ~」「ま、いいじゃないの♪」

とか言っている間にも楽器ケースは増えている。


「ソラ兄は?」


「向こうで本田原教授と話してるよ。

 呼ぼうか?」

彩桜の兄達も本田原教授に挨拶したり、打ち合わせたりしていた。

紅火は音響ボードを壁に設置中で、黒瑯は厨房に入っている。


「変更ナシだけ伝えて~♪」


「ん♪」「彩桜、響。何か言った?」来た。


「あ♪ 打ち合わせ通りで変更ナシなの~♪」


「了解♪ それじゃ、ちょっと練習させてね」

バックヤードの隅っこへ。


「奏お姉さんと響お姉ちゃんの2部の衣装ね♪

 ヨシさんは真似っこできるよねぇ?」


「もっちろん♪」来ていた。

トクとスザクインも連れている。


「このピアノ……やっぱり。

 彩桜クンのよね?」

響は覗き込んでネームを確かめていた。


「うん♪ 持って来た~♪

 コッチ青生兄のなの~♪」


「ピアノって、そんな簡単に運べるの?」


「運べたの~♪」調律、最終確認中。

「ヒィちゃん、衣装合わせしておいたら?」


「あっ、そうね!」



 慌ただしく準備時間は過ぎて開演した。

ソラのアナウンスで始まった演奏会の第1部は1曲目と3曲目が紗 奏 響にとっては同じだが、輝竜兄弟の伴奏アレンジの違いで、まるで別の曲かのように楽しめるものになっていた。


唯一、ショウの魂内だけは大騒ぎで聴くどころではなかったようだが、他の全ての者にとっては素晴らしい癒しの時間だった。



 第2部の準備中、涼の配信ミスで一般客が押し寄せてしまった。

涼が本田原と金錦に謝り、戌井家の承諾が得られれば一般客も入れると決まった時、裏口から勝手知ったるな琢矢が入って来た。


「あら? 珍しい。

 タクヤ君どうしたの?」

内心『この忙しい時に!』と思っているが笑顔を保つ涼。


「通りがかったら外が大騒ぎだから手伝えないかと――常務!? ナンで!?」


「常務? さん?」キョロキョロ。

だとしたら白久だろうとは思ったが、輝竜兄弟皆、揃いの袴姿なので見分けるなんて無理だった。


「ってか! 常務がイッパイ!?」確かに。


「外で そう呼ぶなっつったろ! 兄弟だっ!

 坊っちゃんコッチ来いっ!」

白久が琢矢を引っ張ってズンズン離れた。



「タクヤ君トコの常務さんだったのね~♪」

ピースが繋がった涼。


「大企業だったよな?」「そうなのよね♪」

爽も来ていた。


「で、まだなのかよ? 限界なんだが?」


「そうだったわね!」客席へ走る!



―◦―



 輝竜兄弟が揃っているのを初めて見た琢矢を連れて離れた白久は、フォレストが入っているビルの非常階段に行った。

「ったく騒ぎやがって」睨む。


「で、でもっ!」


「響くから静かにしやがれ」更に睨む。


「ぅ……はい。でも、どうして常務がライブハウスに居るんですか?

 それに常務って呼ぶなって言われても~。

 外で会っても呼ぶなって最初に言われたのは覚えてましたけど~」


「俺の名は桐渓から聞いたんだろ?」


「あ~、はい。キリュウ ハクですよね?」


「その どっちかで呼びゃいいだろーがよ。

 で、俺達は7人兄弟だ。今はライブ中。

 邪魔すんなよな。

 魁、コイツ頼む。夏までSo-χのギターしてた琢矢だ」


「はい。君、こっちに――」「誰っ!?」

琢矢の後ろに来ていた魁が連れて行こうとしたが、琢矢は逃げようとした。


「坊っちゃん、涼サンのダンナだから安心してスタッフしてろよな。

 いいキッカケじゃねーか♪」


「ダ……えええっ!?」


「ウッセーよ。

 ついでに言うと来光商事の次期社長だ。

 仲良くしとけよ♪

 魁はコイツ知ってるんだろ?」


「見覚えはありますよ。

 光威 琢矢君、時間は無いんだから早く」



―◦―



 そして一般客を入れての第2部 真っ最中。

フロアは隅の隅までも、キャットウォークも満員御礼なので舞台袖から魁と琢矢は見ていた。

爽と涼は反対側の ほぼ物置きな舞台袖に居る。


「ぅゎ……」

魁に肩をつつかれて首を(すく)めて黙った。

琴と龍笛にも驚いて何度か声を出していたし、今はソラの様子を見て驚いたのだろう。


和楽器の説明を終えたソラが舞台袖に引き、琢矢に微笑む。

が、すぐに舞台の方を向いた。

そして頃合いを見計らって、用意している印度楽器と漢楽器を並べ直した。


 和楽器演奏を終えた輝竜兄弟と巫女姿の龍笛娘達が舞台袖に入る。

兄弟は印度楽器を舞台後方に並べた後、漢楽器を持って出て行った。

位置に着いたところでソラが出る。


楽器の説明が終わったタイミングで本田原教授が二胡を両手に登場。

片方をソラに渡して、並んで座った。


奏達は巫女姿のまま楽しそうに見ているので、これが普通なのか、と琢矢も観る聴くに集中した。


「えっ」


奏と並んでいるのは響だと思っていたのに、サリーを漢中アレンジしたような衣装の響が舞い出たのだ。


聞きたい事だらけでパニック状態の琢矢だった。



―◦―



 第2部と第3部の間。

バックヤードでは皆が忙しなく動いている時。

「あのっ、キリュウさん!」


当然、兄弟一斉に向く。


「うわわわ」「ったくナンだよ!」来た。


「えっと、後でっ、いいですか!」


「わあったからスタッフしてやがれ!」

着替え中の控室から追い出した。



【もぉオーロいにゃいよねぇ?】


【ありゃあ元々だな。

 ま、カワイイと思ってやってくれ】


【ん♪ い~っぱい入っちゃったねぇ】

今度は客席を見ている。

人が動いてドリンクコーナーが大騒ぎだ。


その横も騒ぎ声がクレッシェンド。

【あれれ? 食べてる!?】


【ありゃあ、軽食コーナーだな。

 お~い黒瑯、何したんだぁ?】


【ん? 唐揚げ(トリカラ)とカットいろいろポテトと極薄パンで生野菜を巻いたヤツ用意しただけだ♪

 サラダ巻き(トルネード)は仕上げといたが、揚げ物は黒蛇にやってもらってる♪】

ドリンクコーナーには黒瑯特製スポドリも大タンクで置いてある。


【俺も食~べる~♪】もう厨房に居る。


【【彩桜!?】】


【ん?】モグモグもぐもぐ♪


【続きは後でね】【帰ってからだっ!】


【ん♪】ぱくっ♪ モグモグもぐもぐ♪


【また行ってたのかぁ?】瞬間的に。

【山盛り持って来んな!!】


【美味し~よ♪】【そーかよ!!】


「輝竜さん、第3部お願いしますね」


ごっくん♪「は~い♪」バクバクガガガッ♪

【兄貴達~♪ 行っくよ~♪】ごっくん♪


【ったく彩桜だよなっ】あははははっ♪


洋装に戻した輝竜兄弟は大小のマンドリンを手に舞台に向かった。







本編の裏側でのお話でした。

準備、舞台裏、控室――真剣に楽しんでいるだけなのに、どうしても騒ぎに巻き込まれてしまう輝竜兄弟です。


本編で飛翔さんが何を見たのか?――は、夏まで飛翔さんが黙って眠り修行に専念してしまいますので、まだまだ不明なままです。



シ〈タカシ~、なに見たの?〉


飛〈アーマル様がお目覚めになってからね。

  眠り修行に専念させてね?〉


シ〈は~い。おやすみなさ~い〉



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