情報交換
夜の帳が降りる頃――
【エーデリリィ様、よろしいですか?】
【はい。マディアも一緒です】
【ディルムは人神相手でも個神をちゃんと見ているみたいだから、僕も加わりたいんだけど、いいかな?】
【何の遠慮だよ?
同代なんだから当然だろ?
もしかしてエーデリリィ様はマディアの奥様か?】
【うん♪ 姉様なんだけど大好きになっちゃったんだ♪
でもそれは置いておいて、情報交換ね。
今、ナターダグラルは臥せっているんだ。
2ヶ月くらい前、人世で何があったの?】
【2ヶ月前? そんじゃアレだな。
何が目的で来てたのかは実のところ定かではないんだが、俺達はモグラを捕まえに来ていたと考えているんだ。
しかし、ちょうど無自覚堕神なウンディも近くに居たから、一石二鳥を企んでたのかもしれん】
【モグラって怨霊の?】
【そうだ。コッチ側になったんだよ。
その証拠に、神力射に射たれちまってモグラも臥せっているんだ】
【ソッチって、オフォクス様の?】
【そうだ。フェネギがオフォクス様の直下で頑張ってるんだが……アイツは人神が大っ嫌いで、ナターダグラルとティングレイスはグルだと思ってやがるからなぁ。
あ、話が逸れたな。
あの日はミルキィとチェリーがウンディの護衛してて、オニキスとウィスタリア様ってマディア達の兄様がヤツが現れた後で来たんだ。
オニキスは、アーマルと魂が重なっててトリノクス様の欠片持ちのショウって犬も連れてたんだ。
ヤツは何かを待っていた。
死司神してる俺とリグーリは隣街の上から ただ見ているしか出来なかったんだが、それだけは確かだと思ったんだ。
人の街には死神避けの結界が成されている。
無自覚堕神や欠片持ち達の集団『祓い屋』が成したものだ。
祓い屋達もヤツを警戒したんだろうな。
結界が強化された。
それに驚いてヤツが少し離れたところにモグラが現れたんだ。
ヤツは直ぐ様モグラの眼前に行き、禍の縄で縛ったんだ。
引き寄せようとした時、オニキスが間に現れてモグラを掴もうとしたから、ヤツはオニキスの背に向かって禍を投げたんだ。
それをショウが網で捕らえたんだが、禍が蛇みたくシュルっと出てショウの腹に噛みついたんだ。
そこに兄様の破邪が達して禍は消え、オニキス達は逃げきれた。
兄様はヤツにも破邪を放ったんだが、ヤツは獣神の力で身を護って逃げやがったんだよ】
【それで臥せったんだね。
今も僕が破邪をじわじわ込めてるよ♪】
【滅する好機じゃないのか?】
【好機だけどね。
僕は反省させたいんだ。
みんなに本当の事を話して、謝って、償ってもらいたいんだよ。
そうでないと許せないから】
【ま、解るが……無茶はするなよ?】
【ありがと♪
当面は大丈夫だよ。
アイツ、『エーデラーク』を妻にしたいくらい大好きだから♪
僕にも迫って来るくらいにね♪】
【『エーデラーク様』はエーデリリィ様じゃないのか?】
【どっちもだよ♪
前はエーデだけだったんだけど、今は僕もなんだ♪
臥せってるアイツの代わりもね♪】
【楽しそうだが、気をつけろよ?】
【うん♪ 他には誰が居るの?】
【職域には龍でない同代が潜入していて、龍の末代達の指導神してるよ。
死司域は俺とリグーリだ。
リグーリがエィムってマディアの弟を指導してるよ。
人世は――】指折り数える。
【あとはバステート様と、ドラグーナ様の奥様と使徒神様達とラピスリだな】
【ラピスリ姉様も無事なんだね♪】
【おいおい同代に『姉様』って~】
【アーマル兄様とラピスリ姉様だけは僕を理解してくれて、護ってくれたからね】
【ま、殆どが知らなかった――いや、知ろうともしなかったんだがな】
【うん。だから恨んでなんかいないよ。
でもグレイさんが潔白だって証明できるまでは会いたくないんだ】
【オニキスも俺と同じ考えだよ。
リグーリは兄を立てて中立だが、たぶん同じだ】
【ん♪】
【そーいやフェネギも『ラピスリ様』と呼んでるぞ♪】
【ソレ、僕がエーデ大好きって言ってるのと同じでしょ?】
【気づいてたか♪】
【うん。だから護って皮剥がれそうになったんだもん】
【だったよなぁ。
フェネギは、一度こうと決めたらホント考えを変えねぇからなぁ。
ラピスリの方は気づいてないのか無視してるのか、ドラグーナ様の1/7と幸せに暮らしてるんだよなぁ】
【父様は……?】
【まだ無自覚と言っていい状態だが……時折 目覚めて現れては眠る、ってのを繰り返してるらしいな】
『エーデ、来てくれぬか? エーデ……』
【あ~、呼ばれちゃった~】【私が行くわ】
【ありがと♪ エーデ♪】
【悪い、コッチもルロザムールが呼んでる】
【あ~、じゃあまた声かけてね。
何してても、どっちかが返事するから】
【ん。じゃあまたなっ♪】
ちょっとしか話せなかったな~。
でもディルムと話せて良かった♪
アイツ……あ、またエーデラークの顔が
見たかっただけなんだね。
なんか……ちょっと穏やかになった?
気弱になっただけかな?
このまま説得できるといいな。
―◦―
ディルムの方は――
「明日の会議には供をしてくれるか?(♪)」
――るんるんルロザムールにシッカリ捕まっていた。
「畏まりました。
では、最高司様の補佐として御出席なさるので御座いますね?」
「そうだ(♪)」
「神王殿で、なので御座いますね?」
「そうだ(♪)」
浮かれちゃってまぁ……。
「で、だ。
どちらを着て行けば良いと思う?」
後ろ手に隠していた真っ黒な死司服をバーンと突き出した。
「は?」デートかっ? しかも同じにしか見えん!
「失礼なきようにせねばならぬのだ。
どうだ?」真剣っ!
「此方がよろしいかと」どっちでも どーでもだよっ。
「そうか♪
では明日、頼んだぞ♪」
「はい」はいはい。
ルロザムールは弾むような足取りで去って行った。
あ……つまりティングレイスの近くに
行けるって事だよな?
確かめられるよな?
【マディア、いいか?】【いいよ~♪】
【明日の会議なんだが――】
【うん。ルロザムールとグレイさんの縛られ方が似てるから比較しようと思って許可したよ】
【そっか。俺も行く事になったよ】
【ん♪ グレイさんに紹介しようか?
ルロザムールも一緒になるけどグレイさんともコレで話せるから♪】
【頼む! へ? 人神だよな?】
【明日、よ~く見たら分かるよ♪】
【ふ~ん。ま、楽しみにしとくよ♪】
【うんっ♪】「ディルム、ディルム♪」
【あ~、また来やがった。
早く元に戻さねぇと俺が疲れる~】
【ん~、ソレも明日ねっ♪】「ディ~ルム♪」
【ん。じゃあな】【ん♪】
「如何なさいましたか? ルロザムール様」
「ちと此方に」るんたるんたるんたった♪
「あ、あのっ」おいおいおいっ!(汗)
そしてルロザムールの執務室へ。
「明日の靴を選んでくれ♪」「はぁあ?」
これこそどーでもいいっ!!
選べったって黒一色じゃねーかよっ!!
「頼む!」
「此方で如何でしょうか」テキトーに指す。
「そうか♪ やはり頼りになる。
明日からも ずっと頼む!
私の側に ずっと居てくれ!
もう下には行かず神世に留まってくれ!」
えええええっ!?
「頼む!! 私と共に!!」深々礼っ!
どーする俺っ!?
折角マディアと話せたのにっ
リグーリ達と会えなくなるじゃねぇか!
また俺だけボッチかよっ!
「ディルムぅぅぅ~」揉み手 擦り手で拝み倒し!
「私は死司神で御座います。
死司の本分は死魂を導く事に御座います」
「私を見捨てるのか……?」
「そうは申しておりません。
私は後継を育てる事もまた重要と考えております。
ルロザムール様が最高司様となられました時代の為に優秀な死司神を増やし、磐石にしておきたいので御座います。
その為には人世に行かぬなど有り得ないので御座います」
「ディルムは先を見、先々までも私を支えてくれると申しておるのか?」
「はい。そう申し上げております。
可能な限り神世にてお支え致しますが、未来の為、人世にも行かねばならないので御座います」
「ふむ。それは解った。
しかーし! しかしだっ!
当面は神世に留まり、私から離れず支えてくれぬか?
私の地位が定まる迄だ。頼む!」
定まる迄ってぇ……。
こーなりゃマディアに協力してもらって
3番目の席に座り続けられるように
してもらわねぇとな。
「頼むディルム! 未来の最高司補!」
「……畏まりました。
ですが留まるのは当面、で御座いますよ?
よろしいですか?」
「それでよい!
ありがとう! 我が腹心!」
いろいろ出てくるが……どれもなぁ……。
ま、先の事なんて俺なんかが考えても
ムダだよなっ。
内容的には、おさらいでした。
今回は『おさらい ~その1~』です。
やっとこさ神世のマディアと、神世と人世を繋ぐディルムが話せました。
死司最高司ナターダグラルことダグラナタンも弱っているし~。
このまま一気に――なんて、そうは問屋が卸さないんですよね~。
……たぶん。
次話は、今回と同じ頃に人世では……なお話で『おさらい ~その2~』です。




