神王子パトラマイト
受賞記念祝賀会を終え、フリューゲルを送った輝竜兄弟は、夜になってからマーズとして広夢が留置されている部屋に行った。
【お稲荷様ぁ、力丸とショウに似てるヒトと赤ちゃん見つかった?
他にも居る?】
早速、彩桜が稲荷に くっつく。
【赤子か? 其れは知らぬが、此の魂は力丸とショウの兄パトラマイトだ。
融合を進め完全に重なり、乗っ取ったか、侵食し尽くしたかという状態だ】
【そんな……ホントの広夢君は?】
【生まれた時点、若しくは直後にパトラマイトは入り込んでおる。
赤子の魂が乗っ取られたのだから、彩桜が知る広夢はパトラマイトだ】
【そっか……俺、もっかい見る!
隠れた赤ちゃんがホントの広夢君なのかも!】
今度は広夢に くっついた。
青生も同じく細部まで拾知しようとしていて、黒瑯は神眼を、紅火は掌握を最大発動して調べていた。
金錦は領域昇華で、白久は黒瑯の領域供与を引き継ぐ形で双璧して弟達を支えており、藤慈は聖水を使った術浄化で、探られる魂を支えていた。
そこに瑠璃がロークス ラナクス チャリル タオファ ハーリィを連れて来た。
【魂の素材、状態、生前浄魂具合を見てもらいたい】
【【【ふむ】】】【【わかったわ】】
ベッドの上に浮かんで調べ始めた。
―・―*―・―
狐儀と理俱は奥ノ山の社で力丸と話していた。
「パトラマイト兄様は第2881王子で、俺達2991~3000番、通称『末班』の班長で指導もしてたんです。
確かに13年か14年前に班長が変わりました。
副長してた第2882王子のピリコミトン兄様が班長になって、交代なんて よくあることだから気にするなって。
でも……狩りは最低でもペアでするからパトラマイト兄様とピリコミトン兄様は一緒にいたハズなんです。
人世に落とされたって知ってたハズなのに何も言ってくれなかった……」
「班長には何か特権とかオイシイ事があったりするのか?」
「シフトは班長に一任されてるんです。
だから班長だけは休みたいだけ休めます。
パトラマイト兄様はよく休んでました。
あとオヤツの分配も。
手柄次第でご褒美くれるんです。
副長は班長が休みの時の指揮官ってだけで、シフトもオヤツも班員と同じです」
「お前ら兄弟、仲いいのか?」
「う~ん……あんまり。
俺とショウみたいなのは珍しいです。たぶん。
上の方なんて話したことありませんから」
「そんじゃあ弟にハメられたんだな。
で、休みとオヤツ自由なオイシイ班長を盗られたんだよ」
「ナンかぁ、納得しちゃいました。
パトラマイト兄様、機嫌いい時は明るくて憎めないヤツって感じなんですけど、けっこうワガママだったから、いつもピリコミトン兄様はプリプリピリピリしてたんです。
班長になって優しくなりましたけど。
班員もホッとしてました。
パトラマイト兄様、口が軽いし作戦は雑だし、手柄は班長のもので、失敗は副長と班員のものってトコありましたから。
ピリコミトン兄様が班長になって、ホントはオヤツこんなにあったの!? って、みんなビックリしてました」
「口が軽いって、王に告げ口とか?」
「告げ口ですけど大臣に、です。
父様に会うのって、集められて叱られる時だけです。
大広間にギュウギュウだから見えないし、話なんて聞いてませんけど」
「何 告げ口されてたんだよ?」
「ショウは書庫でしたけど、他にも鍛練場が好きだったり医務室が好きだったり、巡回や狩りに行かずに見に行ってたんです。
で、サボってるって。
確かにサボってましたけどね。
パトラマイト兄様は休んで部屋でゴロゴロしてたのに、それは話さずに俺達のだけ大臣に言うんですよ。
で、何でも知りたいって。
ショウみたく勉強したいんじゃなくて、ただのネホリハホリなだけなんですよ」
「で、知られたら喋られる、と」
「はい。
だから彩桜が危ないから、俺、修行したいんです。
早く兄貴と彩桜の家に帰らないとなんです!
ショウも見つかったらヤバいし!」
「いい狐になったな♪」ぽふ。
「理俱、揶揄ってはなりませんよ。
力丸、少し加速しますね。
厳しくはなりますが耐えられますね?」
「はい! ヨロシクお願いします!」
―・―*―・―
オニキスはレストランで仕込みをしていて、ソラは響と、ジョーヌは心咲との日常に戻っているが、金錦の家に帰った悟と竜騎は不安そうな高夢と話していた。
「バカ兄ちゃん、どうなるんですか?」
「たぶん暫くは警察かなぁ。
俺の父さん、白玉さんとも小倉さんとも仲いいから最悪にはしないでくれって、さっき電話したんだ。
それにマーズは訴えたりしないから反省さえすれば家に帰れるよ」
「反省が大問題だと思います」溜め息。
「魂を浄化してくれてるから大丈夫。
僕も前は酷かったから」
「だな。取り憑かれて大変だったよな。
白竜も ちっこい頃に取り憑かれて、ずっと悪者だったんだ。
けど祓ってもらって今はマーズだ♪
だから広夢も大丈夫だよ」
「そうですか。
悪者だったなんて信じられないけど、兄ちゃんがマトモになるのは信じます」
「高夢の気持ち、俺は解るよ。
俺も白竜と親友に戻れるのか不安だったし、馬にされた時には人に戻れるのかって不安で押し潰されそうだったからな」
「ごめんね悟空」
「ちゃんと解ってるから謝らないでくれ」
「……うん」
「兄ちゃんとも、そんな感じの仲直りしたいです。
できると信じます」
「根気強くな。一緒に頑張るからな」
「うん。頑張ろうね」
「はい」
―・―*―・―
【ねぇラピスリ。本当に王子なのよね?】
多くのユーレイを見てきたタオファが首を傾げた。
【弟である力丸が確かに兄だと言ったそうだ】
【そう……】
【魂材が人用の新材なの。
それを使っているのは、その時に不足したからでしょうけど、この場合は最悪としか言いようがないわ】
チャリルが ふるふると首を横に振った。
【新材だから無垢材。
故に前世の記憶も、混ざりものも無い】
【人魂に人魂材の人神が入れば融合は早い。
分離なんぞ不可能だ】
ロークスとラナクスはラピスリに諦めろと目で訴えた。
【込め方は再生神をしていたとしか思えぬ正確さだ。
それもあって元々の人魂は、残っていたとしても微細で、意識は無いだろう。
幼い頃から この王子だったのだから、このまま人として生涯を終えた後に神に――戻せるものだろうか……?】
ハーリィは最後にはロークスに問う形になった。
【とんでもなく困難だな】
【父様、広夢は このままパトラマイトで居させるとして、これから如何に?
今は どちらの弟にも近寄らせたくありません。
家に帰すのも問題です】
瑠璃廊下に居る木口夫妻に神眼視線を向けた。
【ふむ……】【取れた~♪】【【ん?】】
兄弟から喜びが溢れ出た。
【ちっちゃ広夢君♪】保護水晶を見せた。
【理人君に預けるねっ♪】瞬移♪
【如何にするつもりだ?】兄達に。
【ドラグーナ様に神力を分けて頂きました】
【だから理人みたくユーレイできるだろ♪】
【人としては乗っ取られてしまいましたが】
【ユーレイも楽しく生きられるからなっ♪】
【具現化……】【はい♪ 大丈夫ですよ♪】
【ふむ。然うか。
よくぞ分離したな】成長にウルウル。
【父様。大問題が そのままです】
【ううむ……ドラグーナ、笑っておらず助けよ】
兄弟の頭上に集結して浮かぶ。
【とりあえず、人のままだと災厄の元になってしまうから獣か何かにしておく?】
【何処に居させる気だ?】
【神眼すら遥か彼方な神力だから、動き回れなければ問題無いよね。
心話も初級といったところだし、魚なんてどうかな?
それなら学校の水槽に入れておけるよね♪】
【まさか俺のクラスの!?】
彩桜、戻ったばかりでビックリ仰天だ。
彩桜からも桜ドラグーナが抜け出て合わさる。
【うん。彩桜が飼育委員だよね♪
普通に中学生しているのも見せられるし、彼も一緒に授業が受けられるんだから世話してあげてよ】
【うわあぁあぁあぁ~】
【父様、ご両親には?】
【オフォクス、忍者村で預かって精神を鍛え直すとでも言ってくれない?】
【忍者村なんぞと……】睨む。
【そんな顔をするけど、マーズが属する忍者流派の長なんだよね?】
【オフォクス父様、そうしてください】
【已むを得ぬか】大溜め息。
【笑うな桃華。
ロークスとラナクスまで。
桔梗までもが一緒に笑うな】順に睨む。
【ですが あなた。
とても良い案だと思いますよ♪
彩桜様も♪ お友達なのでしょう?♪】
【話してくる】【友達ねぇ……】
その前に白玉と小倉だったなと稲荷は向いた。
「忍言葉は聞き取れなかっただろうが、話し合った結果、此の少年を忍ノ里で預かり、精神を鍛え直すと決めた。
ご両親とも話したい。如何か?」
「あのぉ、さっきからマーズは何を?」
「悪いものを取り去ろうとしておっただけだ。
しかし根深い。故に預かりたい」
「では、お願いします。
警察としては訴えが無い以上、帰ってもらうしかありませんので」
―・―*―・―
そして両親に涙を流して頼み込まれての、夜中の2年1組の教室。
稲荷と瑠璃が広夢を金魚に変えて水槽に放った。
〈なっ、何!? どうなってるの!?〉
ポチャンで目が覚めたらしい。
桜マーズが覗き込む。
〈此処、中渡音第二中学校。
2年1組の水槽なんだ。
飼育委員は彩桜だから安心して金魚してて〉
〈金魚!?〉
〈うん、金魚。
教室だから授業も受けられるよ。
あ、恭弥も このクラスだよ〉
〈待って! 人に戻してよ!〉
〈これは精神修行なんだよ。
神世で弟達にしたコト、東京で高夢君や友達にしたコト、シッカリ思い出して。
反省して改心しないと人には戻れないよ〉
〈なんで神世のとか東京のとか知ってるんだよ!
やっぱり輝竜 彩桜なんだろ!〉
〈違うよ。東京のは彩桜でも半分も知らないと思うよ。
友達でもなかったんだから。
神世のなんて知るワケないでしょ〉
〈ダインと高夢が喋ったんだな!〉
〈話してないよ。
俺は、どっちとも会ってないんだから。
それに口が軽いのは君だよね。
広夢君――じゃなくてパトラマイト君〉
〈お前……何を知ってる!?
ケモノなのか!?〉
〈〈そうだよ。俺は龍〉〉
桜鱗を煌めかせてドラグーナが浮かび、彩桜と声を重ねた。
〈狩ってやる!〉
〈その身体で?
それに、もう獣神狩りは終わったんだよ。
獣神は人神と同等だと王が宣言したんだ。
その後、王子達が何をしているのかは知らないけどね。
じゃあね〉瞬移。
〈待って! 戻って!〉
ツンツン。
〈え?〉
《おい新入り》
《お前、サクラの敵か?》
大きな金魚達に挟まれていた。
〈ち、違っ、違います!〉
《サクラの敵は水から出してやる》
《カクゴしろよな》フン。
赤と白の琉金達は睨んでから離れた。
パトラマイトはフナキンにされてしまいました。
でも……これで反省するとは思えません。
パトラマイトの件はまだまだ引きずりますが、この章は広夢の章。
人でなくなりましたので終わりにします。




