世界芸術賞授賞式①
授賞式が始まった。
最初は建築部門で現代建築と歴史的建築物の2部の表彰がある。
現代建築は1組、歴史的建築物は研究と保全等の2組だ。
ステージ後方にスクリーンが下りて建築物が映し出され、名が呼ばれる。
この形式は、続く造形物、絵画、写真、伝統工芸などの部門も同じだ。
順調に進み、歴史的建築物の保全等までを終えたので、次の造形物部門に備えて紅火が瞑想を始めた時、
『保全等の部には急遽、もう1組が特別賞と決定されましたので発表いたします』
とアナウンスが入り、映像が流れ始めた。
【朱里城!?】【まさか俺達かぁ?】
メーアが笑っている。
【メーア、ナンかしたのか?】白久の声が低い。
【ナンもしてねぇよ♪ 愉快なだけだ♪】
スクリーンが真っ白になった後、ゆっくりと朱里城のシルエットが現れ、次第に明瞭になっていった。
拍手が沸き起こる。
『建築部門、歴史的建築物保全等の部、特別賞受賞者は邦和国、マーズです!』
スクリーンでは少し間がカットされて鳥忍と龍達が空を舞っている。
【行こう】
金錦の声で兄弟は瞬間的に分身と入れ替わってステージへ。
その間に朱里城復元の経緯などが つらつらと流れていた。
音楽部門より先に紹介されてしまった。
ステージに並ばされたマーズは一様に そう思っていた。
代表して金マーズがトロフィーの、銀マーズが記念品の前に立つ。
「忍法での復元も認められるのですか?」
金マーズが問うと、
「手法は問わずだよ」
最高責任者は笑ってトロフィーを押し付けるように渡した。
銀マーズも15人分なので大きな箱を
「重いから早く」
と持たされていた。
突然だろうがスピーチもしなければならない。
金マーズが英語で話し始めた。
【あれ? 響、来てるの?】
【3階席にね♪
本田原教授が招待されてたのよ♪】
だけではなく芸術系の教授達が揃っている。
邦和の最高峰ヤマ大なので。
【恥ずかしいから見ないでよ】
【空マーズ、彩桜クンみたいで可愛いわよ♪】
【だから見ないでよね】
【それにしてもスッゴイね♪
琉球にも行ってみたいな~♪】
【もう少し修行したら国内なら自由に行けるかもね】
【ん♪ 楽しみにしてるねっ♪】
平然を装ってステージから下りた。
もう、どちらでもだが元通りに分身と入れ替わる。
【ねぇねぇ青生兄。金錦兄と紅火兄の、国際コンクールに出してたの?】
国際コンクールに関しての説明やらが流れているので。
【一昨年前から春も秋も美術展の最優秀作品は自動的に出るように決まっていたらしくてね。
そういうのに無頓着なのは兄弟皆だから俺も言えたものじゃないけど、兄さんも紅火も気づいていなかったんだよ】
【通知とかは?】
【うん、届いたよ。
そこで やっと気づいたんだけど、この表彰のノミネート通知と一緒に11月にね。
去年の作品は次のコンクールらしいよ。
審査開始が7月だったかな?】
音楽のノミネート通知は つい最近だったようだ。
『ようだ』なのは、埋もれていた封筒を発掘したのが一昨日だった為だ。
【そっか~♪ あ♪ 紅火兄 呼ばれた~♪】
覚悟を決めたという表情で紅火がステージに向かった。
上がれば堂々としたもので、英語でのスピーチも見事にキメた。
次の絵画部門では金錦が呼ばれ、写真部門に続いての伝統工芸部門で赤虎が呼ばれた。
【若菜、二人で赤虎だ】【えっ?】
手を引いて立たせ、連れて行った。
【赤虎茶碗、どこで知られちゃったんだろねぇ】
スクリーンには茶碗が次々と映し出されている。
【外国に流出ね……もしかして、これこそメーアかな?】
青生がメーアと目を合わせると『バレたか』と表情が語っていた。
【そっか~♪
本浄神社で貰って帰ったんだね♪】
【きっと そうだね♪】くすくす♪【ん?】
『では次の受賞者になりそうだね』
『精進させます』
【ふええっ!?】
『赤虎は工房の名だ』と紅火が答えた後、
『桜猫と颯猫も所属しているのか』と最高責任者に尋ねられ、
『そうだ』と肯定した後の言葉だった。
【紅火兄てばぁ】席に戻ったので。
【彩桜は何事も全力なのだろう?】フ。
【こゆのは紅火兄だけでいいのっ】
【取ればいい。
彩桜は多くの事に秀でている。
取れるものは全て取ればいい】
【オレも料理のに出るからな♪
彩桜もヤレ♪】
【黒瑯兄までぇ~】
―◦―
昼が近付き、スタッフは交替で昼食を摂る為に裏の搬入口から隣接するレストランへと出入りしていた。
搬入口なので当然ながら物の出入りもある。
騒然とする中、今、フリューゲルの楽器が運び込まれていた。
「この箱もか?」
「そうかもな。大きいけど……楽器ならアリか」
音楽部門が近くなったので搬入する物は多い。
チェックリストを持っているチーフに確認する事なく、その箱も運び込まれた。
―◦―
美術部門が終わり、音楽部門へ。
先ずは楽曲製作部門。
【青生兄も そのうちコレだよね♪】
【そこまでは無理だよ】
【無理じゃにゃいも~ん♪】
曲が流れ始めると彩桜も静かになる。
そして独奏、独唱部門。
【父ちゃんと母ちゃんは?】
【【とっくに貰ってるよ】】白久と黒瑯。
【おじさん達は?】
【【トーゼンとっくにだ】】笑い交じり。
【そぉなんだ~♪】
伝統音楽部門。
候補者リストは空欄だったので該当者無しなのだろうと誰もが思っていた。
が――
【お正月の!】
――まだ上がっていなかったスクリーンに、ローマでのニューイヤーコンサートのアンコールで琴から始めた和楽器での『とっかえひっかえ』が映し出された。
『伝統音楽部門、受賞者はキリュウ兄弟です!』
【あらららら~。
楽器は? 袴は?】昨日の片付けたよ?
【空欄だったのだから話せば時間を貰う事も出来るだろう。
行こう】
マーズの時と同様に金錦と白久が受け取り、金錦がスピーチをしている間に弟達は準備の為に走った。
『――賞を頂けた事は素直に嬉しく思っておりますが、各々の楽器を真に演奏している方々からは冒涜だと仰られても受け止めるより他にないものだと私共は思っております。
ですので、この賞を受けた者であると胸を張る事が出来るよう、学び、精進し続けます事を、ここに決意し――』
【楽器の準備できたよ~♪】【では締め括る】
『――心を込めて奏でたいと存じます』
マイクから離れて礼。
「着替えの時間を頂きます」
舞台袖に向かう金錦と すれ違った弟達は素早く和楽器を並べていった。
【出たり入ったり、素早いね♪】3階席の響。
【そうだね♪】1階マーズ席のソラが答える。
【あれ? 皆さん舞台袖に?】
【始まるんだよ♪】
琴の位置が遠い彩桜を先頭に藤慈、青生と続き、もう着替え終えている金錦。
ハの字の反対側は紅火 白久 黒瑯と続いて、全員が位置に着くと、ピタリと揃った所作でキリッと礼。
正座して構えた。
初音から、バッと複数の反物が放たれて鮮やかな錦が広がったかのような、雅な衝撃を受けた。
【わぁ……】もう言葉にならない。
【流石、音神様だぁよ♪】【そうね♪】うふ♪
【あれ? サイオンジとトクさん?
来てたの?】
【来たトコトコだぁよ♪
キツネ殿が誘ってくれたんだぁ♪】
【じゃあキツネ様も一緒なのね?】
【一緒だぁよ♪ 奥方様もなぁ♪】
【居たの!?】
【当たり前だぁよ♪】
と、話しながらサイオンジ達は不穏源を探していた。
【サイは此方側を頼む。
儂と桔梗は裏に行く】【おぅよ】
―◦―
その不穏はマーズ席に居る者達も感じていた。
「高夢、何があっても動くなよ」
橙マーズが前を向いたまま言った。
マーズスタッフとして来ている狐面で子供忍者装束な高夢が頷いた。
「バカ兄ちゃん来たんだ……」
「心配すんな」「僕達が護るからね」
反対側の白マーズも前を向いたままだ。
「入れちゃうんだね」
「チャンス窺って楽器とかに紛れて入ったんじゃないかなぁ」
「大きい物も多いからね」
「そうですか……」
―◦―
演奏を終えた輝竜兄弟は和楽器を片付けて着替え、席に戻った。
表彰は団体部門に入っていて、ピカーラ管弦楽団が演奏していた。
年末年始に仲良くなっていたので、兄弟皆にこにこ笑顔で聴いた。
【ね……木口君の何かって、ショウに似てない? 力丸の方が近い気するけど】
【やっぱりね。
瑠璃もショウを探った後、同じように言っていたし、俺も そう思うんだよ】
【でも飛翔さんが寝てるか起きてるかの違いが鍵とか言ってなかった?】
【眠っていればショウの魂が見易いからだよ。
だから飛翔さんが起きて、ショウが少し隠れたくらいが木口君の魂の状態に似ていると感じたんだ。
それと同時にショウに似ている。力丸にも似ている、とね】
【力丸とショウって兄弟なんでしょ?
もっと上の兄貴とかって居るのかにゃ?】
【居そうだよね】
【うんうん!】
【兄が大勢居る。ショウは末っ子だ】
ショウを封じた時に得た情報+月で知った事だった。
【やっぱり~♪
ショウと俺、末っ子~♪】
楽しそうなので良しとしよう。
そう思い、微笑み合う青生と瑠璃の神眼は広夢を追っていた。
【ん? もしかしたら……】
【どうしたの?】
【隠れた方、赤ちゃんな気がしたの。
普通霊みたく成長しない感じなの。
力丸とショウの兄貴だったら違うよねぇ】
【ふむ】【次は もっとよく見ようね】
【ん。俺、頑張る。
ショウみたく いっぱい居るのかもだから】
さて、金錦と紅火は全部で幾つ受賞するんでしょう?
そんなことより広夢ですよね。
大きな箱に入って搬入してもらって、こんな大舞台で何をしようと?




