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授賞式の準備中



【やっぱりナンか居るよ!!】


鋭い神眼視線が広夢の魂に集まった。

だが確かめ、捉える前に足音が近付き、ドアが解錠されて開いた。


当然、マーズは去っている。


「寝たのか」

呟くと広高はベットと並べて布団を敷き、広夢と自分の手を紐で繋いで布団に入った。



―◦―



 マーズは屋根の上。


【あれは最近 入ったとかじゃなくて生まれた時からだと思うの。

 だから帰って作戦会議しない?】


【そうだね】【なら兄貴の部屋だ】


一斉に瞬移した。



――金錦の書斎に行くと金錦と慎介だけでなく、高夢に飛び火する可能性を考えて残っていた悟と竜騎とジョーヌも集まった。


【なんかに似てるんだよね……】


【彩桜?】複数バラバラと。


【ショウ連れて来る!】瞬移!

【ボクも行くからっ!】瞬移!



 すぐに戻った。ガネーシャも一緒に。

【ショウの中、いっぱい居るでしょっ。

 似てると思うの!】


【ふむ】

そもそもショウと飛翔を重ねた張本神(ラピスリ)が手を翳して確かめる。


青生が瑠璃の肩に手を置いた。

【瑠璃、複数魂が重なっている可能性の他にも何か可能性があるの?】


【青生達兄弟のように新魂材ではなく再生魂材を使っている場合、神の欠片や想いの欠片が入っていなくとも魂材自体に意思が残っている可能性は有る。

 神力不足な人神が処理しているのだからな。

 しかし先程の少年は……】


【想いの欠片すらも入っていなかったよね。

 俺も前世的な感じは無かったと思うよ。

 だから新魂材なのかな?

 無垢な感じはあったんだよね。

 でも何か……何だとは言えないんだけど、何かが隠れたんだよね】


【彩桜も その何かを見付けたのだな】

〈アオ先生 ルリ先生。コレなぁに?

 何してるの? タカシに用?〉


〈彩桜からは何も聞いていなかったのか?〉


〈うん♪ ガネーちゃ様とお話ししてたら来て来て~って♪〉


〈ガネーシャ様と?〉


〈うん♪ トリノクス様とアーマルとタカシ起こすのに毎日来てくれてるの~♪

 だから一緒に本読んだりしてるの♪

 その本ので お話ししてたんだよ♪〉


〈何を読んでいる?〉


〈西遊記♪〉


〈そうか。カケル殿は?〉


〈寝てる~♪

 お兄は昼間オモテだから夜は寝るよ♪

 昼寝もよく寝てるけどね♪〉


〈ふむ。だから夜にガネーシャ様か〉


〈そ~だよ~♪〉


そのガネーシャは彩桜 サーロンと楽しそうだ。


〈タカシ起きるかなぁ? タ~カシ~♪

 タカシってば~♪ 起・き・て~っ♪〉


〈え? ショウ、どうかした?〉〈起きた~♪〉

〈あ、瑠璃。何かあったのかな?〉


〈ふむ。

 確かに眠っている状態と目覚めた状態の魂を比べると、彩桜が言う『似ている』が少し分かるな〉


〈タカシ起こして正解?〉


〈そうだな。正解だ〉


〈わ~い♪〉〈瑠璃? 何が正解?〉


〈今 抱えている難問を解く鍵を得た気分だ〉


〈それならいいけどね〉


〈2年生になった紗とは話したか?

 フルートの練習を頑張っているぞ〉


〈そうか。もう2年生なんだ。

 次の練習の時にはショウに起こしてもらうよ〉


〈それがいい〉〈一緒に聴こうねっ♪〉


〈うん、お願いね。

 それじゃあ、また眠り修行に入るね。

 おやすみ〉


〈おやすみね~♪

 ね、また違いある? 鍵になる?〉


〈ああ。確かな鍵になった。

 ありがとう、ショウ〉


〈うん♪ サクラ♪ サクラ~♪

 僕も入れて~♪ あ、ソラだった~♪〉


〈うん。ショウはまた重くなったね〉

のしかかられて下敷きなサーロン。


〈じゃあサクラ~♪ あれれ? 乗られた~♪〉


〈俺もショウの魂の中、見たいんだ~♪〉

サッと避けてヒラリと背に跨がった彩桜。


〈ガネーちゃ様とナ~ニ話してたの?〉


〈西遊記とクーゴソン様とカイハック様とサジョール様の比較♪

 陽の気に戻してもらえた~♪〉


〈こっちも正解だねっ♪〉


〈うんうん正解~♪〉


そう言いつつも彩桜の探りの掌握()が真剣なのはショウも感じていた。

だからこそ その点には触れずに遊ぼうと決めて、悟と竜騎も巻き込んで西遊記の話で盛り上がるのだった。



―・―*―・―



 そして翌早朝。

ショウを帰すついでに犬の散歩のずっと後ろをショウと一緒に走った彩桜は、また金錦の家に戻った。


【彩桜、外を走るぞ】【ん♪】

今度は子供マーズ揃って走りに行った。



―◦―



 そうして元気に授賞式。

主催しているのは世界文化芸術機構なので、会場は世界中を巡っている。

つまり今回は邦和だったというだけだ。

国際的で大きな授賞式なので、前日の受勲式とは違って受賞者も報道陣も多国籍で、様々な言語が飛び交っていた。


受賞候補者はホールの客席、1階中央部の指定された席に着くようになっていて、呼ばれたらステージへという形だ。

報道陣は客席後方と2階席で、各国代表となる1社だけがステージ近くに陣取っている。


輝竜兄弟はマーズを分身にして、キリュウ兄弟として着席した。


【青生兄、コッチのは芸術だけ?】

まだ会場入りしたばかりで周囲も騒然としているので雑談タイム。

受勲式では様々な分野の者に対して授与されたので彩桜は聞いてみた。


【そうだよ。功績を讃えて表彰するんだけど、実質、国際文化芸術保護の対象者になるという証明書を貰うようなものだからね】


【せっかく顔隠してるのにマーズも高額なっちゃう?】


【そこは社長と金錦兄さんが受ける条件にしたらしいよ。

 顔も素性も隠している集団だから、それらを明かす迄は国際芸術保護法の対象外にしてもらえるらしいね。

 だから何度も疑われているけど、たとえ中身がキリュウ兄弟であっても隠している間は別人扱いで、チケットは高額にはならないよ。

 フリューゲルと組んでいてもマーズ価格でチケット販売できるらしいしね】


【そっか。

 だから別人主張が強くなったんだ~】


【うん、どちらも受賞者になってしまったから仕方なく そうなってしまったね。

 多くの人に音楽を届けたいからね。

 その為には保護対象外で居続けなければならないからね】


【うんうん。配信もテレビ撮影も喜んで~♪

 い~っぱい流してもらお~ねっ♪】

【そうだね♪】

今日も来ている見田井に小さく手を振った。


見田井は驚いて眼を見張った後、嬉しそうに振り返してくれた。


【でも受けない選択もあったんじゃない?】


【毎年ノミネートされて騒がれるのもね。

 勲章にしろ、この受賞にしろ生涯一度きりだから、もうこの際 済ませておこうと考えたんだよ】


【一度きり? 金錦兄と紅火兄のは?】


【各部門で一度きりね】

そもそも複数部門でノミネートされる事が稀も稀なので、その点は深く考えられておらず、今回 正式に決定したのだった。


【そっか~♪】


【それにフリューゲルも一緒だからね。

 音楽部門はクラシックとか民俗音楽とかの伝統的なジャンルがノミネートされ易いんだ。

 ロックなフリューゲルは どれだけ感動を呼んでもノミネートされるのが難しいんだよ】


【ふぅん。

 新しいと文化的じゃにゃいのかにゃん】


【長い歴史を重んじる傾向は確かにあるね。

 それに人気があるんだから保護しなくても稼げるよね、って感じかな?】


【そっか。保護が目的だったねぇ】


 入口付近の騒めきが大きくなった。

【フリューゲル到着~♪

 また、オッテンバッハさん秋小路さんルートで金錦兄が瞬移で運んだんだね?】


【そうだよ。

 ドイツ出国手続きは昨日の内に終わらせていて、早朝に入国、バス移動で到着したとするのに白久兄さんも行っていたみたいだね】


【だからなんだ~。

 金マーズと銀マーズ狐儀師匠だし、金錦兄と白久兄いないから打ち合わせ? て思ってたんだ~】


フリューゲルとキリュウ兄弟がマーズの前列。

金錦と白久は着席と同時に分身マーズを狐儀のものと入れ換えた。

そしてメーアと話し始めた。



【昨日みたく作品披露あるんだよね?

 またリハーサルなしで】


【うん。F&Mとキリュウ兄弟のコラボだよ。

 だからクラシック寄りになるね】


【ん♪ た~の~し~み~♪】


【金錦兄さん白久兄さんとメーアとの打ち合わせが終わったみたいだね】


【青生、2曲のみだがセットリストは決まった。

 音楽部門は全体の最後、大所帯な私達の部門が最終となるだろう。

 アレンジを頼む】


【はい♪】



―・―*―・―



 その頃、広夢の両親は警察にも協力してもらって必死に息子を捜していた。



 明け方に治癒眠が解けた広夢は、父と繋がっている紐を切り、ドアに新たに取り付けた錠を壊して家を出ていたのだった。

隠れ隠れて人に会わないようにチェイスタグの全国大会翌日に彩桜が居た家に行ってみたが、数人の庭師達が剪定などをしていたので入れずに逃げた。


他には行く宛なんて無かった。

仕方無しに自宅からは離れた住宅地に行き、民家と民家の間の狭い空間を見付けて身を(ひそ)めた。


静かな場所だった。

片方の家から老夫婦らしい話し声とテレビの音が聞こえた。


 ん? マーズって聞こえた?


外壁に耳を当てる。


暫く聞いて、広夢は その場所を離れた。







部門は兎も角、受賞は確定なキリュウ兄弟とフリューゲル&マーズは会場入りしました。

それでも、ある程度は絞れますので披露する曲を決めたようですね。


さて、広夢は何処に向かったのでしょう?



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