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立て籠り事件



【ねぇねぇ瑠璃姉~】

夜、気を掴んで瞬移すると奥ノ山の社裏だった。

【何してるのぉ?】


【此処から浄化していた】


【壁の向こうの女の人達に?

 弱禍も悪神も見えにゃいよ?】

彩桜も同じ強さの浄化を当て始めた。


【悪いモノは入っていなかったし弱禍は浄滅した。

 心が回復する事を願って浄化している。

 それで悩みか? 青生を捜しているのか?】


【青生兄、ニューヨークで浄化(そうじ)中でしょ。

 だから瑠璃姉なの。

 ザブさんとのお話しの、聞いてないから】


【ふむ。ただ音色が聴きたかったそうだ。

 だから昨日の公演について教えた。

 それだけだ】


【ふぅん。ザブさん改心したの?】


【オーロザウラに縛られているのだから油断は出来ぬが、以前に比べれば穏やかになったのは確かだな】


悪神(オーロザウラ)に音楽 聞かせてもダメ?】


【今のところ、そんな猶予は無い。

 残念ながら見付けるのも封じるのも苦労しているのだからな】


【そっか。ね……人は?】


【効果を呈していると思っているのだが?】


【弱禍に、でしょ?

 最近、弱禍じゃないヒト見るから……】


【ふむ。

 現状、人という生物の大半は人神が作ったものとなっている。

 しかし ごく僅かにだが、龍と鳳凰が作った恐竜人が居る。


 人は人神が持つ強い欲を受け継いでいる。

 故に争い事を起こす。

 対して恐竜人は穏やかで、自然を愛し敬う。

 完全な無欲ではないが他者から奪ってまでは得ようとしない。

 そんな恐竜人から、人は全てを奪い尽くそうとした。

 宝と見なせる物だけでなく、その命までもを。

 だから獣神は恐竜人を高山や極寒の地、大陸から離れた島などに移した。


 ここまでは人にとっては何等の記録も残っていない太古の話だ。

 以降の侵略行為は解明されつつあるが、恐竜人という存在が知られる事は今後も無いだろう。


 次第に人は、そのような生きるに厳しい地までもを欲し、拡がっていった。

 恐竜人の地を奪い、恐竜人を奴隷とし、戦の兵とした。

 しかし恐竜人の血は絶えなかった。

 最初は、この女性達のような状況下で副産物的に生まれたのだろうが、恐竜人の心は今も尚、人の内で生きている。

 特に太古の恐竜人の地には色濃く残っている】


【って、邦和も恐竜人、多いの?】


【琉球人とアイヌ人に多い。

 他の地域は大陸から来た人との混血が多い】


【俺……】


【多い、というだけだ。濃さも区々(まちまち)だ。

 それに彩桜は魂の素材が人神であろうが、その身が何であろうが獣神だ。

 私達の仲間だ】


【ん♪ ありがと瑠璃姉♪】


【米大統領の祖父――オーロザウラに憑かれ操られた男は、獣神を感じる琉球人を怖れて暴虐の限りを尽くしたのだろう。

 ギャングのボスも女性の分け方に同様の傾向が見られる。

 それら人神の獣神に対する感情と、人の恐竜人に対する人神由来の負の感情が、彩桜が懐いている違和感なのだろう】


【ソレには音楽は? ダメ?】


【音神の音色が魂に届かぬなんぞ有り得ぬ。

 ただ、根深さ故に時を要しているだけだ】


【そっか。

 弱禍は獣神様の欠片に反応して、人の本能が恐竜人に反応しちゃうんだ。

 解ったから俺、頑張る♪

 どっちにも音楽いっぱい届ける♪】


【そうだな。頑張ろう】


【ん♪ ……えとね。もひとつ悩んでるんだ。

 話していい?】


【何の遠慮だ?】ふ♪


【東京でクラスメイトだった木口君が、俺を桜マーズだって言いふらしてるの。

 昼は仲良し2人だったけど、その後、同じ小学校だったヒトみんなに言ってたって。

 どぉしたらいいと思う?】


【ふむ……青生には?】


【昼のは一緒に見てたけど……】


【青生と共に対処すると約束する。

 もう遅い。明日も早いのだから安心して寝ろ】


【うん。瑠璃姉ありがと♪】瞬移。



―◦―



 翌早朝。犬の散歩を終えて音鳴(おとなり)家に双子が、猫達の給餌係なメグルとサイトが輝竜家に入ると、一旦 家に入っていた恭弥が引き返し、犬達を庭に放している彩桜に近寄った。

「彩桜、広夢には気をつけて。

 昨日 電話あって、彩桜が桜マーズだろって。

 毎週 行くんだから本当に気をつけてね」


「ありがと♪ でも昨日のは見学でしょ?

 学校ある時間だから大丈夫だよ♪」

嫌な予感は押し込めて頑張って明るく言った。


「だと思うけど……広夢のお父さん、ヤマ大で事務してるんだ。

 何か理由つけて近づくかもだから……」


「そぉなんだぁ」あぁあぁあぁあぁ~。


「うん。

 広夢って悪いヤツじゃないけど、考えと口が軽いし、思い込みで動くから……」


「親友でしょ。悪く言っちゃダ~メ。

 恭弥、ありがとね♪ 気をつけるねっ♪」


それでも心配そうな恭弥と、ムリヤリ笑顔な彩桜は『また学校で』と手を振って家へ。



「あぁあぁあぁあぁあぁあぁどぉしよ~」

玄関から部屋へ瞬移した彩桜は頭を抱えた。



―・―*―・―



 気配を感じて薄目を開けた広夢は飛び起きた。

「(マ)――」

叫ぼうとしたが光に包まれ、口を大きく開けたまま動けなくなった。


「うん。見ての通り、マーズだよ」

「忠告だ。マーズの正体に関して探るな。

 輝竜 彩桜は桜マーズではない。桜マーズの友だ。

 故に嗅ぎ回れば桜マーズに行き着く可能性が有る」

「だからもう調べたり言い触らしたりしないでね」


2人のマーズは青と紺の腰帯の尾をふわりと揺らして、上に飛びつつ消えた。


と同時に広夢を包んだ光が消え、デコピンされたかのような軽い衝撃を額に受けて倒れ、再び夢の中へと意識は落ちていった。



―・―*―・―



 その日、宵闇に包まれたばかりの18時55分。

【彩桜、急患なんだ。

 白玉さんの家庭教師、お願いできるかな?】


【ん♪ 桜マーズで?】


【うん。マーズでお願い。

 学生証を見せるなら気をつけてね】


【ん♪ 行ってきま~す♪】瞬移♪



――白玉家、希菜子(きなこ)の部屋前。

「マーズです」『『来た~♪ ど~ぞ♪』』


ドアを開け――

「「「「桜マーズ!?♪」」」」

――かけた部屋には白玉(父)(アズキ)小倉(アンコ)も居た。


「そんな驚く?」青生兄の声真似~♪

目と口元が見えるように馬メンなので苦笑しているのが よく分かる。


「中学生だったよな?」「なぁ」

「「大丈夫だってば~♪」」凄いの知ってるもん♪


「中学生ですが大学にも行ってますよ」

偽装を掛けて黒塗りだらけの学生証を見せた。

顔の上半分、氏名、生年月日の日部分、増馬教授の氏名も隠している。


「ヤマ大!?」「理学部数学科!?」


「数学以外も大丈夫です♪」

声は青生だが話し方は青生と彩桜の中間だ。

「始めませんか?」


「じゃあ数学♪」「後で英語♪」


「はい。では教科書でも問題集でも」

問題集は既に青マーズが渡している。


「先に教科書で!」「イキナリ難しくて!」


「教科書の問題を解きながら解説しますね」



 そうして2問 終えたところで白玉(父)と小倉のスマホが同時に震えたので、2人はペコリとして部屋から出た。



―◦―



 小倉は階段を半ば下りてスマホを取り出した。

「東京?」

驚いたが全国区のマーズ担当になったので、その方面だろうと通話を開始する。

「竜ヶ見台署、マーズ担当の小倉です。

 マーズにご依頼ですか? 事件ですか?」


港戸(みなと)署の大場(だいば)と言います。

 事件の方です。

 東邦テレビ本社に少年が人質を取って立て籠っているのです。


 最初はマーズの正体を知っているとの持ち込みだったようです。

 テレビ局側が正体なんて知らなくていい。取材をするつもりはないと追い返そうとした時に友人らしき別の少年が駆け込み、連れ帰ろうとしたそうです。

 問題の少年は暴れた後、友人らしき少年を連れて手近なトイレに入ったとの事です。

 ですので突発的な行動である可能性は高いのですが、身元や凶器の有無等、全く不明ですので連絡しました次第なのです』


「そうですか。

 今、桜マーズ君と一緒ですので、そちらに忍者移動してもらいますね」


『そうですか! ではお願いします!

 東邦テレビ本社、玄関でお待ちします』


「では一旦 失礼します」


オフって上を見ると白玉が待っていた。

「コッチは東邦テレビの見田井サンだったよ。

 同じ件だ」


「行くっきゃないよな」上がる。


「ったく。正体云々は終わったと思ってたのになぁ」

2人揃って希菜子の部屋へ。



「勉強中に悪いな。

 桜マーズ君、事件だから頼むよ」


「はい。(リーダー)とも話しました。

 向こうでフルマーズ揃いますので。


 希菜子さん、有望(うみ)さん。

 必ず戻りますので問題集の方を進めていてください」


「「は~い♪」」



―・―*―・―



「広夢、どうする気だよ?

 大騒ぎになったじゃないか」


「マーズ、来るかなぁ」


「来るだろうよ。マーズを怒らせるなよ?」


「彩桜君は怒るなんてないよ。

 一緒に住んでたお兄さんも優しかったし」


「別人だったら? 一生借金か逮捕かだぞ」


「間違いないから怒ったりしないって」


「どうしたら そんなに甘く考えられるんだよ」


「普通に考えてるだけだよ」


「どうしたら普通に考えた結果が警察沙汰になるんだよ」


入夏(いるか)が来たから?」


「おい。いいかげんにしろよな。

 そんなこと言うなら帰るからな」

ムッとして出ようとした。


「ゴメン!

 でも僕を引っ張って帰ろうとしたよね?

 僕は取材してもらいたかったんだよ。

 帰りたくなかったんだ」


「だから、そこが間違いだと言ったろ。

 俺はもう無関係だからな。絶交だ」


「どうしてそうなるの!?」


「俺は一生かかっても億なんて無理だからだ。

 しかも一生で億じゃない。

 年に億でも考えたくもないよ。

 けどマーズは1回の活動で億いけるらしい。

 だから危険な広夢とは離れるしかない。

 じゃあな」


「出たら捕まるって!」


「捕まるのは広夢だけ。

 俺は引っ張り込まれたんだから人質だ。

 保護してもらえるだけだよ。

 いいかげん離してくれ」


「ヤダ!」



―◦―



「白玉さん 小倉さん。

 聞いた通りです。

 凶器などは持ってません。

 後、お願いしていいですか?」


広夢と入夏の会話は、ソラが仕掛けた盗聴機で丸聞こえだった。


【青生兄 瑠璃姉。弱禍浄滅、完璧だよね?

 闇禍もオーロ憑きカーリも居ないよね?

 どぉしてなの?】


【もっと深層を調べるからね】

【彩桜は家庭教師の方を頼む】


【青生兄、急患さんは?】


【もう落ち着いて眠っているよ。

 梅華様にお願いしているから心配しないでね】


【ん。じゃあ行くね】瞬移。







前話では名前が出なかった堅太タイプの広夢の友達、入夏(いるか)君が巻き込まれてしまいました。


彩桜は離れておけと家庭教師に戻されました。

ま、他は揃っていますから大丈夫ですよね。



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