やっぱり来た!
馬術競技会は狐松の予想通り、中障害Aで悟が、大障害Bで竜騎が、大障害Aで彩桜が優勝して幕を閉じた。
響は中渡音には寄らずに高速国道で東京に直行した。
庭で駐車場な場所に車を入れて
「たっぷり走った~♪ んんん~♪」
降りて伸び~♪
『おっ帰りなさ~い♪』「へ!?」
「お疲れさま~♪」ぴょんぴょん来た。
「どうして彩桜クン!?」
「響、とりあえず入ろうよ。
彩桜も入って♪」
「ソラ兄ありがと♪
今日は金錦兄ん家に泊まるの~♪
月曜、午前中は大学だから~♪」入る~♪
「どうして大学!?」
振り返って言いつつ居間へ。
「んとね、学年末テストの数学で遊んだら大騒ぎなって~、こぉなったの~♪」
学生証を見せた。
「特別研究生?」
「うん♪ 1時限目、青生兄と一緒♪
2時限目、藤慈兄と一緒なの~♪
楽しく数学なの~♪」
【サーロン一緒、言っちゃダメだよね?】
【うん。ゴメンね。まだ話せてないんだ】
【ん。だ~いじょ~ぶ♪】
「でね、マーズの連絡なの。
次の木金、受勲と授賞式なの。
場所と時間ね」握手して伝えた。
「もしかして演奏するとか?」
「キリュウ兄弟&マーズなの~♪」「え?」
「忍者、分身できるから大丈夫♪」
「あれって本当に分身してるの?」
「してるよ♪ んとね、この腕輪に重ねてる補助神力で発動するの♪」
普段は神眼でも見えなくしている腕輪を出した。
「発動できる神力あったら誰でもなの~♪
だから羽も出る~♪」ふぁさっ♪
「私でも?」
「修行して発動するだけ~♪
響お姉ちゃんだったらマルチなれるよ♪
ソラ兄と一緒に修行してねっ♪」
「そっか。ソラは彩桜クンと修行してたから七変化とか いろいろできるのね?」
「うん♪ 神力十分なったら紅火兄が響お姉ちゃん専用の腕輪 作ってくれるよ♪」
「よ~し頑張るからねっ!」「うんうん♪」
【彩桜、本当に?】
【もっちろんホントだよ♪】
【だから わざわざ来てくれたんだね?】
【ほえ?】
【午前中の。響が悔しがってたから】
【間に合わなかっただけだしぃ~】
【違うんだ。ボクが言わなかったんだよ】
【どぉして?】
【響が足手纏いになると思って……】
【もぉ大丈夫だからぁ】
【うん。信じるよ。響も、彩桜も】
【俺?】
【さっきの太鼓判】
【ん♪ 信じる心と~っても大事♪】
【うん。ありがと♪】
【い~っぱい鍛えてあげてね~♪】
【もっちろん♪】
【俺の真似っこしたぁ】「あ! 彩桜クン!」
「ほえ?」
「ユーレイ探偵団の支部長お願い!」
「俺でいいの? ショウは?
それよか俺、ホントに入っていいの?」
「入ってよぉ」拝む!
「じゃあユーレイ探偵団する~んるん♪
メグルとサイトもいいよね?」
「サイト、クン? あ、メグルくんの!」
「メグルの親友なの~♪ 欠片持ち君♪」
テーブルに指で『冴翔』と書いた。
「また『翔』の字なのね♪ 入団OKよ♪
ショウはいいんだけど、お兄ヨロシクねっ」
「カケルさん忘れてた~♪」にゃはは~♪
「忘れてたいんだけどね~♪」あはっ♪
「あ、そ~だ♪
ジョーヌ教授、ぐるぐる遠い親戚なるよ♪
奥さんなるヒト、カケルさんの従姉さん♪
結婚式7月♪ 一緒に演奏しよ~♪」
「「ええっ!?」」
「どっちにビックリ?」
「「どっちも!」」
「俺達ダメ?」
「「じゃなくて!」」
「一緒で決~まり♪
じゃ俺 帰る~♪ お邪魔しました~♪」
彩桜が金錦の家に帰った後、リビングの座卓で向かい合った。
「やっぱり可愛イイコよね~♪」
「うん。彩桜だからね」
「昼間、私が悔しがってたからでしょ?
たくさん励ましてくれて……」
「でも話してた内容は本当だよ。
ボクだって狐神様が入ってるってだけじゃ発動できないんだからね。
彩桜やお兄さん達に教えてもらって修行して、たくさん練習もして、今なんだから」
「そっか。私がグズグズしてた間、ソラは頑張ってたんだよね。
私も頑張って挽回しなきゃね!♪」
「一緒にね♪」
「うん♪」
―・―*―・―
邦和の夜中から明け方まで歌って踊り、ニューヨークでも『掃除』をして、ソラは清々しく月曜日の朝を迎えた。
「ソラ兄 響お姉ちゃん、一緒に行こ~♪」
玄関を出ると彩桜が兄達と待っていた。
ジョーヌと助手達は新しく建った宿舎から出て来た。
「待っててくれてたの?」駆け寄る。
「一緒したいの~♪」歩き出す。
「お昼も一緒ねっ♪」ぴょんぴょんぴょん♪
「今日も物理学棟?」何しろ広いので。
「今日は講義を受けるんだよ。数学。
ボクは大卒資格で入学したから必要なのとか補助的にとか、興味あるのとか取ってるんだ」
「俺も数学だよ?」
「昨日も言ってたね」
「もしかして増馬教授の?」
「そうだけど……」
「おんなじ~♪
先週、気づかなかったぁ。
一緒に受~ける~♪」
「うん♪」そう持ってきたかったんだね♪
「うん♪」合わせてくれて ありがと~♪
―◦―
講義中はサーロンだが、終わるとソラに。
一緒に金錦の研究室に向かう。
【彩桜、隠れて!】【わわわわわ】
隠れたが、間に合わなかった。
兄達とソラが一緒なので嬉しくて楽しくて、すっかり気を抜いていたからだ。
少し遠くを中学生らしい団体が列を成して歩いている。
その中で木口 広夢が彩桜に笑顔を向けていた。
【見学?】【みたいだねぇ】あ~あ。
列から外れて走って来る心配は無さそうだが、小さく手も振っている。
【見つかっちゃったぁ~】
【やっぱり拾知だったんだね】
【あぁあぁあぁあぁ~】もぉヤダぁ。
【友達、なんだよね?】
【桜マーズ疑ってるからダメなのぉ】
【マーズスタッフに入れてあげたら?】
【考えとく~】口軽い有名人だったのぉ。
―◦―
見学に来ている中学生達も昼食の時間。
芝生の場所で好きに食べていいと言われて、広夢は親しい2人と弁当を広げた。
「さっき誰に手を振ってたんだ?」
「4年の途中で転校した輝竜 彩桜君。
覚えてる?」
「ん~~~全然」「ヒトデ着て踊った!」
「当たり♪
この前チェイスタグで全国優勝したんだよ」
「そんなスゴいヤツだったのか!?」
「弟 出てたから見に行ってビックリ!」
「「へぇ~」」
「恭弥も同じ中学で部活も同じだって。
恭弥の家、輝竜君ちの向かいなんだって。
さっきお兄さん達と居たの、これからマーズで動くからだよ」
「どうしてマーズ?」「唐突だよな」
「チェイスタグの次の日、会いに行ったんだ。
そしたら忍法とか聞こえたんだ。
だから僕は輝竜君こそが桜マーズだと確信してる。
動きも忍者で納得だし、音楽もしてるし。
それと、双子みたいなイトコも居るんだ。
イトコが空マーズだと思う」
「マーズって正体バレたら引退するんだろ?」
「バラした人に寄付活動が移るんだよね?」
「僕が知りたいだけだからバラすのとは違うと思う」
「けど今みたくペラペラ喋ったらバラしたになるんじゃないのか?」
「なると思うよ。億の寄付なんて大丈夫?」
「輝竜君が稼げるなら大丈夫だよ。
億なんてピンとこないけど」
「ムリだって!」「知っても秘密にしないと!」
「あの輝竜君なんだから大丈夫だよ♪」
「「ダメだって!」」
「そうかなぁ」
―◦―
【あぁあぁあぁあぁあぁあぁ~。
『あの』って何なのぉ? 俺どんななのぉ?】
【彩桜、落ち着いて。
彩桜が嫌がってる理由も分かったから。
この後はボクが見ておくからね。
そろそろ戻らないとチャイム鳴るよ?】
【ソラ兄お願いねぇ】渋々瞬移。
―・―*―・―
職域は邦和の真上と言ってよい位置なので、前夜の深夜から夜明け近く迄という体感時間の間、人世の空で力強い音色を聴いて満足したザブダクルは昼になっても心地よく眠っていた。
腹に隠し持っている封珠にも、フリューゲル&マーズの強い音色は確かに届いていた。
【一気に神力が高まりました。
この封珠に込められている術を調べ、解く為に動きます】
ダグラナタンは立ち上がった。
【父様の音色は確かに強いけれど、術は とうの昔に廃れたものよ?
それに強い禍力が込められた闇神力の筈。
大丈夫なの?】
エーデリリィが心配そうに見上げる。
【すぐに解けるとは思っておりません。
ですが動かねばならないと。
音色に背を押されたのです。
あ……今は魂だけですから背はありませんが】
【確かに そうね♪
では私達も調査に加わります。
共に参りましょう。
ユーチャ、動けるかしら?】
【はい、お姉様♪ 共に参りましょう♪】
ユーチャリスも張り切っている。
【芯か外殻の何処かか……。
まずは芯に向かいましょう】
【【はい!】♪】
動き辛さは神力が高まるに連れて軽減されたが、それでも神世の空を飛ぶのとは訳が違う。ではあるが、封じられている者にとっては とてつもなく広い封珠の世界に3神は旅立った。
東京での小学生の頃、彩桜は誰とも友達にはなれませんでした。
学校では全く喋らず、運動も勉強もそこそこに、目立たないように頑張っていました。
なので広夢の友達みたいに記憶にない方が普通な存在だったんです。
そんな彩桜にチェイスタグ全国大会で目を付けた広夢。
何でも知りたい上に、口と考えが軽い厄介な相手です。
普通に、平穏に中学生生活を楽しみたい彩桜なのに……どうなることやらです。




