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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第35章 新年度・新生活・新たな仲間
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アレンソワ教授は黄マーズ



 翌日のライブ後、ベルリン以外の小ギャングやら支部やらを『掃除』したマーズは清々しく週明けを迎えた。

【アレンソワ教授♪ 一緒に行こ~♪】

普段通りに動物病院に出勤していたジョーヌは彩桜に連れ去られた。


【【行ってらっしゃい♪】】

藤慈と藤理(ウィスタリア)は笑顔で見送り、清掃と事務作業を始めた。


【ですが藤慈も講義を受けるのでは?】


【私は2時限目なのです♪

 今日は1時限目が休講なので のんびりです♪】



―・―*―・―



 ジョーヌが困りつつ研究室に入ると、その何倍も困っているトルシュとピニョンが揃って向いた。

「教授……」


「どうしたんですか?」


「新しい型だとは思うのですが……」

「確かめたくても増えないのです。

 このままでは死滅してしまいます」


「少し貰っても?」


「どうぞ」


ジョーヌは培地をじっと見て

「新しい培地を貰えますか?」

微笑んだ。


「それが……フランスから持って来たのは、使いきりました」

「最初から作らないと、もう無くて……」


「では貰って来ますね」

一旦、シャーレを返して隣接する教授室へ。



 何やら厳重そうなクーラーボックス的な色違いの箱を重ねて抱えて戻った。

「毎週、僕が持って来ますね。

 使用済みシャーレも持って行きますので纏めておいてくださいね。

 使用済み用の箱は廃棄滅菌層の隣に置きますね」

箱には大きな字で表示しているが、並べて置けば事故の元だと離した。


「それは?」「教授室に置いていたのですか?」


「気にしないでください♪

 乾燥とかしなくても、すぐに使えます」

1つ取り出して上のシートを軽く引き剥がした。

「この出っ張りを摘まむと簡単に剥がれます。

 このシートも使用済みシャーレと一緒に纏めておいてください」

慣れた手つきで菌をススッと移して蓋をした。

「菌庫の1区画を貰いますね」


紅火作の菌庫は細かく区切られていて区画毎に条件設定を変えられるようになっている。

ジョーヌは培地に恵みを与えてから温度やらを微調整して入れた。


「たぶん増えますよ♪ おや?」

弱いがノック音が聞こえた。

「どうぞ」

研究室に入るには滅菌室を通らなければならないので迎えに行く。



『そうですか。今日から。

 はい。僕がジョーヌ=アレンソワです。

 光を浴びて、これを着てください。

 はい♪ 僕は和語でいいですよ♪』

ジョーヌの声だけが聞こえている。


「学生か?」「やっぱり来てしまうのか」

「そりゃあ来るだろうよ」「仕方ないか」

「問題は意思の疎通だよなぁ……」


トルシュの言葉に対してピニョンが声を発する前にドアが開いた。


「学生さんのお世話もお願いします。

 僕は週1ですから。

 翻訳アプリで話してくださいね。

 専門用語は僕の辞書をあげますから」

アプリに教え込んでくれたのはジュールだ。


あとは紅火がしてくれた通りに翻訳アプリを入れて設定するだけ。

手順は尾に入れているので正確に再現するだけだ。

助手達のスマホを操作しているうちに、学生達は残すは辞書を貰うだけ、まで進めていた。


「流石だね♪」辞書を飛ばす。

「これで話せるだろうから頑張ってね」

教授室に逃げようと――


「先生、卒論テーマください」


「え?」ください、って? 困った!


蓮鶴(はすつる)教授からは貰っていなかったのですか?

 同じ発酵学ですから、その続きで如何です?』


声に向くと、教授室側の滅菌室を通って来たらしい藤慈がにこにこしていた。


「続けていいのなら……はい」

もう1人も頷いた。


「アレンソワ教授♪ 培地の追加です♪

 学生さんの分ですね♪」【お疲れさまです♪】


「ありがとうございます♪」【助かりましたぁ】


「少し、お話しよろしいですか?」


「はい♪」【ありがとうございます!】



 教授室に入るとジョーヌは談話ソファに崩れ落ちて卓に突っ伏した。

「僕には無理ですよぉ~」


「ちゃんと先生していましたよ。

 すぐに慣れますよ♪」

「そうですよ。

 人との接し方は受付業務と同じです。

 マーズで度胸も付いたと思いますよ。

 藤慈、そろそろ行かないと2時限目に入るよ」


「はい♪ 彩桜、とても楽しそうですね♪」


「講義を聞きながらサーロンと遊んで俺にも甘えていたよ。

 全力で楽しんでいるよね。

 次はお願いね」「はい♪」瞬移。



「青生先生、助けてくださいよぉ」


「アドバイザーでしたらキツネの社に居るじゃありませんか。

 ところで心咲(みさき)さんには話したんですか?」


「いえ……まだマーズのも話せていなくて……」


「フェレットから人になった時みたいに喜んでもらえると思いますよ」


「あ……」


「心咲さんも見たい筈ですよ。

 黄マーズも、アレンソワ教授も。

 収入も増えるんですから結婚までに話してくださいね」


「でもマーズはボランティアでしょう?」


「兄弟だけでマーズをしていた間は全て寄付していました。

 俺達は もう1つの活動で十分過ぎるくらい得ていますから。

 ですが、こういう温かいご意見を多く頂いたんですよ」

沙南が書いた記事に対するコメントを見せた。

「それで、短命に終わるんじゃないかという不安を払拭する為にも、マーズも生きていく分くらいは必要だと変えたんですよ。

 他にも材料費とかは貰うようにしました。

 出張手当て程度ですが春休みイベント分を振り込みましたので確かめておいてくださいね」


「あっ!」


「何か?」


「今日、心咲さんに通帳を預けてるんです!

 一緒に記入してくれるって!」


「今日は早番でしたね。

 話しに行きますか?」


「行きます!」青生を連れて瞬移した。



――トリミング室裏に出たが、青生が事務室へ。

【まだ仕事中ですから落ち着いてください。

 明細を渡しますね】はい♪


【うわわわ……】


【食事代や本来なら必要であろう交通費とか、生きていく為にと考えて社長が計算してくれたようですよ。

 正当評価で平均的なギャランティなら軽く2桁は多いそうです】


【僕なんて……貰い過ぎですよぉ……】


【マーズ、楽しいですか?】


【それはもう!

 誘って頂けて本当に嬉しくて。

 毎日が楽しくて楽しくて……】


【そうですか♪

 それは人として生きていく為に必要な最低限の金額ですから。

 神様は陽の気を保たなければならないんですよね?

 楽しく、ほんの少しだけ稼いでくださいね】


【ありがとうございます】うるうるうる――


【結婚式も近いんですから♪】


【あ……はい!】



―◦―



 そしてジョーヌの休憩時間で心咲の終業時間。

トリミング室の裏口から出た心咲の肩をチョン♪

「心咲、お疲れさま♪」「ジョーヌ♪」


「ちょっと……話しておかないといけなくて……」


「ん?」


自転車置場の屋根の下に入った。

周囲に誰も居ないのは神眼で確認済みだ。


「マーズ、知ってる?」


「もちろん♪ 知らない人って居る?

 もしかしてチケット?♪」

ジョーヌが持っている封筒を見ている。


「見に、、行きたい?」


「行きたい♪」


「えっと……これはチケットじゃないんだ。

 でも、これからのは全部、、来てくれる?」


「ん? 来てって……?」行くじゃなくて?


「僕もマーズだから」

明細を少し引き出してから封筒を渡した。


「へ? 『FLÜGEL & MARS』!?

 黄マーズ……って、ええっ!?」

明細の上端で大騒ぎ。


「えっと……ダメ?」


「カッコイイ!♪ やっぱりキィちゃんね♪」


「えっと、うん」確かに(きぃ)マーズ。


やっと明細を出した。「えええっ!?」


「マーズはボランティアだからギャラじゃなくて必要経費なんだって。

 少なくてゴメン」


「じゃなくて! 凄い臨時収入!♪

 今夜はお祝いね♪」


「あ、それも貰ってて……」

待っている間に貰った紙を差し出した。


「ノワールドラコ!? お食事招待券!?

 あの予約ビッシリなノワールドラコよね!?」


「うん。黒瑯さんから貰って……。

 実は、これのお祝いだって……」

今朝、正式に決定したからと貰ったのを裏向きに差し出した。


「何のカード? 身分証? えええっ!?」


「成り行きで……週1だけ東京なんだ」


「ジョーヌぅ~」


「隠し事ゴメン!!

 なんか……恥ずかしくて話せなくて……」


「もうっ♪ カッコイイんだから♪」ぎゅ♡


「あ……えっと、いいの? 許してくれる?」


「ジョーヌ教授♡ 頑張ってね♡

 私も見に行きた~い♪」


「まだ講義とかないよ。

 でも研究室なら……」連れて瞬移。



――教授室。から研究室入口の滅菌室へ。

「光を浴びて、この服を着て――」『教授!』

「――あ。着たら来てね。

 どうかしましたか!?」

急いで着て出て行った。


 心咲も どうにか着てドアを開けると――

「ありがとうございます!♪」

「もうこんなに増えるなんて!♪

 教授、凄いです!♪」

――どう見ても外国人な2人が聞き取れない言葉で大感激の大喜びしていた。


「たまたまですよ」照れ照れ照れ~。


「フランス語?」ジョーヌの肩をチョン。


「あ、うん。フランス語。

 だから成り行きなんだよ。後で詳しく話すね」

「うん」

「じゃあ続きをお願いしますね」「「はい♪」」

シャーレを返して微笑み、心咲を連れて少し離れた。



「フランスから来た助手さん達。

 向こうの2人は学生さん。

 発酵の研究室なんだ」


その学生達が向いた。「先生」ペコリ。


「質問かな? 僕よりシャイなんだよね」

心咲に苦笑を向けて『待ってて』と口パクして行った。



「ジョーヌが指導してるぅ~♪」

学生がシャイとか、そんなのは どうでもで、嬉しくて仕方のない心咲だった。

「あ。マーズのは秘密よね?

 でも教授のは話していいわよね?」

居ても立ってもでソワソワ。ジョーヌを見ていたいのはヤマヤマだが、ぶつぶつ言いながら教授室に戻って『お食事招待券』を再確認。

「4名様だから、お父さんとお母さんもいいのよね♪

 電話しなきゃ♪」「心咲?」「あ♪」


心配して来たジョーヌに抱き着いた。

「ディナー♪ お父さんとお母さんも呼んでいいよね?」


「もちろんだよ」


「お祝いだから話していいよね?

 もちろん教授のだけよ♪」


「あ……そう、、だ、よね……」


「うんっ♪」







なんだかんだ言っても流石は龍神様です。

頑張っているジョーヌをもう少し追ってみます。



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