やっと日常な休日
翌日は土曜日。
始業式と入学式をしてイキナリ休みだ。
「彩桜、今日は?」「たまには家に居ろよな」
「今日は居るよ~♪ 午後は馬牧場ねっ♪」
「あの病院、いつからなの?」
「月曜から~♪」
「先生達、医者に戻るんだな~」
「堅太どうしたの?」「だよね。急に何?」
「白衣なの見たことねぇなと思ってな。
風邪ひいたらチャリで行ってみるかな♪」
「それ、一生行けないよね」「凌央コノッ!」
「事実だと思うけど?」「あ……確かになぁ」
堅太自身、風邪を引いた記憶は無かった。
「納得しちゃってる~♪」「だよね♪」
笑いが起こる。
日常が戻ってホッとしている彩桜だった。
―・―*―・―
響が のんびり目を覚ますと、庭から話し声が聞こえた。
「ソラ? あれ?」隣に居ない。
『朝食、作ったよ♪』
「ありがと!」急いで着替えて洗面所へ!
そして食卓。
「いただきます♪ ね、外の声、誰?」
「寮を建てるんだって。
後で説明しに来てくれるよ」
「もう始まってるのに?」
「来てたけど響が寝てたから」
「あ……」
「キリュウ兄弟の音楽、どうだった?
紗ちゃんの発表会、成功間違いなしだと思わない?♪」
「うん♪ すっごく良かった♪
あの音色は確かに億だわ~♪
ダイレクトに心に感動なんだもん♪」
「紗ちゃんも輝竜さんの家族だから、ちゃんと主役にしてくれるよ」
「彩桜くんと仲良しこよしだもんね♪」
「でね、渡音フェスにも出るんだって」
「クラシックで? あ、マーズね♪」
「両方らしいよ。
だからボク達も練習しないと。
前1週間、休んで帰らない?」
「それは必要ね! そうしましょ!
リーダーに電話しないと!」
―・―*―・―
「彩桜、今日は居るって明日は?」
「駅北のスーパーでイベント~♪」
「オープン、今日じゃなかった?」
「今日は兄貴達が揃わないから~」
「そういう日もあるんだ……」
「なぁ、月曜の午前中は居ないんだろ?」
「うん。ヤマ大なの~」
まだ知らない集団が一斉に顔を上げた。
「数学、受けに行くんだよな♪」「そぉなの~」
「ハイパースーパー彩桜クンだもんね~♪」
「だぁね~♪」「ま、慣れてくれ♪」
「そっか。部活紹介の時に部長不在なんだね」
「副部長、頑張ってくれ♪」
「堅太も協力してよね。
その発表の準備もしないといけないんだよ」
「えっとね、次の月曜は大学、入学式なの。
だから俺 居るよ♪
でも心配しちゃうよねぇ。
それに決めないとねっ♪
歴史研究部アッチ集合ね♪」
―・―*―・―
金錦と白久は東京の家に居た。
トルシュとピニョンから話を聞く為の集まりなのでジョーヌも一緒に居る。
「そんじゃあ当面は兄貴の家だから必要最低限だけ運ぶからな。
んで、アレが完成したらパリから荷物を全部 運ぶからな」
「その頃には正式な出入国手続きも出来るだろう」
「研究は好きにしていてくださいね」
「僕達、今は密入国ですか?」
「い~や。アレンソワ教授と輝竜教授の招待客だ♪
急だったからな、その手続きは勝手に進めさせてもらった」
「「ありがとうございます!」」
「で、必要な機材なんかは、どっちかの教授に言ってくれ」
「予算等は気にしないでもらいたい」
「って、まさか全て輝竜家で?」
「紅火が作るから心配すんなって♪
菌庫もいい出来だろ?」
「「はい♪」」
「そんじゃあ纏まったトコで俺は元々の用の方に行くからな。
欲しい物は教授達に遠慮無く話せよ」
―・―*―・―
黒瑯は言わずもがなのレストラン。
紅火は一心不乱に何やら作っている。
久々に馬頭の青生と藤慈は、開店したばかりのスーパーいちい駅北マーズタウン店内の馬頭ショップで先着1000人に記念品を配っていた。
【黒瑯、千人どころじゃないからクッキー頼めるかな?】
【ん。ほらな、やっぱ万の桁だろ?】
【そうだね。遠方からも来ているみたいだね】
【誰かが情報を拡散してるんだろーよ。
分身して量産するからな♪】
【お願いね】放送用のマイクをオン。
「マーズよりお知らせします。
先着千人様への記念品は間もなく終了します。
以降は黒マーズと灰マーズのクッキーに変わりますので、ご了承の程、宜しくお願いします」
もう無理だろうと並ばずに店内を巡っていた人達が走って来ている。
【ほらよ。先に焼いてた分だ。
また来るからな♪】大きな箱を置いて瞬移。
馬頭でも忍者移動だと列は大喜び。
【なんだか嬉しいですね♪】
【そうだね。笑顔を見ると嬉しくなるよね♪】
―・―*―・―
きりゅう動物病院は休診時間に入った。
瑠璃が事務室に入ると――
【ほらよ、昼メシ】
――現れたリーロンがランチプレートを置いた。
【ありがとう。いつも すまないな】
【気にすんなって。
コッチはランチタイムが終わったトコだから問題ねぇよ】
「では有り難く、いただきます」
【どうかしたのか?】
いつもなら置いたら直ぐに帰るので。
【なぁ、ルビーナ姉様の修行、ナンか問題あるのか?】
【何も無いが?】
【復活、遅くねぇか?】
【その事か。姉様の優しさだ。
包んでいる魂は子犬。
しかもあまり丈夫ではない。
だから姉様は子犬達に無理をさせぬよう、少しずつ進めているのだ】
【ショウは一気にデカくなったのに?】
【ショウは頑丈だからな】ふ♪
【ふ~ん。
じゃあ姉様に任せとけばいいんだな?】
【それでよいと思う】
【オパール兄様は?】
【元気にしている。
獣神狩りが終わった今、禍の滝なんぞに逃げ込む者は居ない。案ずるな】
【そっか】【リーロンまだか?】
【あ~、呼ばれちまった。帰る】
【クッキーだろう?】
【青生から聞いたか?】
【聞いた。頑張ってくれ】ふふ♪
―・―*―・―
白久は北関東の山地に在る放置されているとしか思えない神社に来ていた。
【狐儀、此処なんだろ?
呼び出しといて隠れんな~】
社が美しく変わった。入口に白狐。
【此方に】
スイッと入った。
白久も続く。
【うわ……ったく多いよなぁ】
【東京だけではありませんので】
中は広い。
関東中の不良達が眠らされていた。
神力で保たれている仮死状態だ。
【軽く見ても千人超えてるだろーがよ。
こんな大勢が行方不明でいいのかよ】
【可能な限り連絡しましたよ。
ですが家出をして地方からも集まるのが東京です。
更に行方不明になろうとも、誰も気付きませんよ】
【憐れなヤツらだな……。
で、他にも集めてるんだろ?】
【ええ。札幌に蝦夷と東北地方を。
吉備に中四国、関西地方を。
博多に九州地方を。
他地域を稲荷山に集めております。
ですが各々、此方の半数も居りませんよ。
落書きの単独犯は警察に任せております】
【ソッチはコイツら終わるまで仕方ねぇよなぁ。
預かるのは今が限界だからなぁ。
にしても、こんな野獣みたいなヤツらは100人でもキツいぞ。
一気に魂を浄めてくれねぇか? なぁ神様】
【手が回りませんよ。
弱禍を全て浄滅するだけでも大仕事なのですから】
【眠らせたままでも音楽は届くのか?】
【その方法がありますね♪】にっこり。
【そんじゃあ計画的に動かねぇとな】
―・―*―・―
彩桜達は若菜が運転するバスで馬牧場に向かっていた。
【若菜姉ちゃん、紅火兄にゃ~に作ってるの?】
【いろいろ並行しているわ。
祓い屋道具も、マーズの新しい衣装も、それに合わせた馬ぬいも。
でもスサノオ君の指導もしているわよ。
欠片持ちだから、とっても良い弟子ね♪】
【やっぱり欠片持ちさんなんだ~♪】
【やっぱり気づいていたのね♪】
【うんっ♪ ホントにスサノオ様かも~♪
鹿さんだから~♪】
【あら、そんなにも見えているのね】
【うんっ♪】
―・―*―・―
結局、ソラは響を連れて瞬移でライブハウス・フォレストに来ていた。
「輝竜さんが出てくれるの!?」
涼の驚きように魁が苦笑している。
「音楽科の本田原教授も、です」
「あら~、芸術祭みたいね♪
響とソラ君も出るんでしょ?」
「「え?」」顔を見合わす。
「奏先生は確定なんだから出なさいよね♪」
〈どうするの?〉〈ボクは出てもいいと思う〉
〈だったら一緒に出ましょ♪〉〈そうだね♪〉
「「出ます♪」」
「主役の紗ちゃんは何曲 吹けるの?」
「さあ……」「何曲もは無理だと思います」
「普通の発表会だと1人1曲だもんね~」
「それなら短めの3部構成にするのは?
2部は輝竜さんにお任せにして、紗ちゃんは休憩。
1部と3部は紗ちゃんが主役で」
「いいわね、それ♪」魁と涼、夫婦で完結。
「「そうですね♪」」ソラと響も乗った。
1ヶ月先に近付いたフルート発表会は、少しずつ具体的に決まりつつあった。
「ね、リーダーは?」
「響ちゃんからの電話の後、ワタル君と話すって出ちゃったわよぉ。
来るなんて言ってなかったからぁ」
「あ、そっか」「うん。そうなるよね」
始業式・入学式の翌日が休日。
そんな年もありますよね。
やっと日常な休日なので、少しずつ進捗報告的なお話でした。




