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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第35章 新年度・新生活・新たな仲間
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トルシュとピニョン



「ジョーヌ=アレンソワです。

 僕を探しているのではありませんか?

 邦和でいいんですか?」


『オンブレ教授と話していた?』


「はい。お会いしました。

 オンブレ教授の研究を続けてくださるのですね?」


『教授の?

 オンブレ教授は自由に研究させてくれた。

 でも今度は……僕達の研究を捨てて手伝えと……』


「そうですか。

 続けられるようにお願いしてみます。

 お待ちくださいね」


『ありがとう……ありがとう……』

萎んでいった。

『貴方は救いの神だ……』

どんどん萎んで普通の球魂サイズになった。


「安全な袋に入ってね~♪」

彩桜が魂納袋の口を広げると、生霊は頷いたかのように揺れて、すんなり入った。

【ジョーヌ師匠、金錦兄トコ行こっ♪】



―・―*―・―



 まだ夜明け前で暗いパリ生化大学では――


【確かに生霊源は あの2人ですね。

 何をしているんでしょう?】


【隠れてコッソリ研究を続けているの。

 だからこそ夜明け前なのよ。

 正規の勤務時間は新たな研究室での助手をしなければならないから大変みたいね。

 それに場所が……】


【そうですね。物置きですか?

 (カビ)が混ざってしまいそうですよね】


【だから憂いての生霊なのよね】



―・―*―・―



 彩桜とジョーヌは蓮鶴(はすつる)生物学教授の部屋で金錦と並んで座っていた。


「今ちょうど生物学棟は2号棟が出来たところでしてね。

 この週末、明日 明後日の内に、私(の研究室)は新棟に移るのですよ。

 此処がちょうど空きますから、正式に決定するまででしたら構いませんよ」


「「「ありがとうございます」!」♪」


「いえいえ。

 アレンソワ博士と直接お話し出来て、とても嬉しく思いますのでね。

 ああそうそう。

 この際ですから客員教授として、新研究室の主になっていただけませんか?

 それでしたら私の招待として、手続きが簡単になりますのでねぇ」


「ジョーヌ師匠?」つんつん。


ハッ!「僕ですか!?」驚き過ぎていたらしい。


「ええ♪ 前期は講義も無しで。

 後期に特別講義とかで、いかがでしょう?」

と~~っても(不気味に)ニコニコ♪


「講義なんてしたことありませんのでっ!」


「それだけ和語が流暢でしたら大丈夫ですよ。

 ではアレンソワ研究室として申請しますね。

 輝竜教授もご同行、お願いしますねぇ」


「ええ。私の方こそ、友人達をどうか宜しくお願い致します」


「あの……便乗と申しますか、付け込むようで申し上げ難いのですが……」


「何でしょう? ご遠慮なさらず」


「では……新棟で演奏をしていただけませんでしょうか?」


「では喜んで。

 弟達を集めますので、手続きの後に」



―・―*―・―



 2人が新たに配属された研究室は別々で、始業前の準備やらで忙しなく働いている各々をソラとスザクインが見ていると、各々が朝食を取りに行くらしく研究室を出て同じように溜め息をつき、建物の出入口で合流して出て行った。


【ソラ兄~♪ スザクインさん、こんにちは♪

 あ、コッチは おはよだった~♪】

【彩桜君、離して!】

彩桜はジョーヌをガッチリ捕まえていた。

【ジョーヌ師匠の研究室できるの~♪

 客員教授なったの~♪

 助手2人いいの~♪】ぴょんぴょん♪


【彩桜、生霊は?】


【金錦兄と生物学の教授がお話ししてるの聞かせてたら安心して萎んで消えちゃった~♪

 本人とお話ししよ~♪】


【そうだね♪】



―◦―



 1時間程後、オンブレ教授の助手だったトルシュとピニョンを伴ったジョーヌは、各々を受け入れた教授達と対峙していた。


「突然、申し訳ありません。

 ジョーヌ=アレンソワと申します。

 オンブレ教授からのご相談が遺言となってしまった為に急いで受け入れ側を整えなければならず、また、整わなければ何の保証もなくお話なんて出来ませんでしたので、遅くなりました事、お詫び申し上げます。


 オンブレ教授の研究を僕が引き継がせていただきます。

 つきましては、助手の2人にはお手伝いをお願いしたいのです。

 転用できない設備も買い取らせてください」


「オンブレ教授は何と言っていたのかね?」


「年齢的に研究の結実は見られないだろうから引き継いでくれないかと。

 研究の世界から遠ざかり、邦和で のんびり過ごしていた僕をわざわざ呼んでまで……他に興味を示してくれる研究者が居ないからと……」


「それで、研究室は私設かね?」


「いいえ、邦和の大学です。

 客員としてですが雇用していただきました」


「そう言えば、あの日、キリュウ兄弟と去ったが、知り合いなのかね?」

「確か来ていたのは歴史学教授だったな?」


【彩桜君!】

【知らにゃいみたいだから初対面でいいと思う~♪

 シナリオねぇ――】

「オンブレ教授と話していて音色に気づき、窓から見ていたんです。

 そうしたら奥様が見えたと走って……。

 最初は継ぐのを渋っていた僕への演技かとも思いました。

 お子さん達も継げるような勉強はしていないと断っていましたし。

 ですが本当で……なので継がなければと、思いきって話してみたんです」

彩桜から聞こえた通りに話した。


「ほう。で、助けてもらえた、と」

「経緯は理解したよ。

 設備は処分する予定だったから事務局に連絡して、すぐに見積もってもらうよ。

 だが輸送には関与しないよ。いいね?」


「はい♪ ありがとうございます♪」


「正直なところ、オンブレ教授には良い感情は持っていなかった。

 他人には過ぎる程に厳しく、平気で(ののし)る。

 成果も出せないのに予算だけはガッポリだ。

 君達も選択は自由だが、継げば金ばかり掛かると覚悟した方がいい」


トルシュとピニョンが不安気な視線をジョーヌに向けると、ジョーヌは微笑んだ。

「やりくり次第でしょうから頑張ります♪」


「……そうかね。君達は?」


「「すぐに辞表を書きます!」」


「そうか……」「事務局に行かねばな……」


教授達、オンブレ教授に少しだけ恨み辛みがあったようだが悪い人ではなかったらしい。



―◦―



 彩桜が外で春風を楽しみつつ神眼でジョーヌ達が手続きをしているのを眺めていると、演奏をするからと金錦に呼ばれたので煌麗山大学に戻った。


兄達の他には部屋に誰も居なかったので、瞬移で直行して順にハグ♪

【この空っぽお部屋は?】


【アレンソワ研究室の事務室だ】


【新棟なったの?♪】


【トントン拍子にな】


【そっか~♪】


【パリの方は?】


【手続き中♪ 今夜みんなでお引っ越しね♪】


【そうしよう】【任せろ】

【オッテンバッハにも寄るからな♪】


【ジョーヌ師匠コッチにお引っ越しなる?】


【しませんよ♪】【週1出勤らしいぞ♪】

【彩桜と一緒に来ればいいんじゃないかな?】


【うんっ♪】るんるんるん♪


喋っている間も手は動かしていて、しっかり準備を進めていた。



―◦―



〈ヒィちゃん♪〉〈あ♪ ヨシさん♪〉


〈ついてらっしゃい♪ あなた達もよ♪

 ユーレイは特に聴くべきなんだから♪〉



 行った先は生物学第2棟。

〈こっちよ~♪〉笑顔で手招き♪


〈本田原教授?〉〈じゃなくてスザクちゃん♪〉

〈化けたの?〉〈そうね♪ 少しだけ偽装ね♪〉


 どんどん人が入っている部屋に紛れ込んだ。

〈何も入っていない実験室って広いのね♪〉

〈あれ? ソラ、生霊は?〉


〈解決して戻ったんだよ。

 響、協力ありがと♪〉


〈な~んにもしてないけどね~♪〉


〈祓い屋の皆さんは?〉


〈ヨシさんと一緒に、ほら♪〉


天井近くに居た。

ソラは笑顔にお礼を込めて軽く挨拶した。


〈ソラは知ってそうね。これって何の集まり?

 ユーレイさん達と話してたらヨシさんに連れられて来たんだけど?〉


〈もうすぐだから待ってね♪〉


〈うん……〉



「では、始めますのでご静粛に。

 輝竜教授、お願いしますね」

前に立った男性が隣室と繋がるドアを開けた。


〈金錦さん……が輝竜教授よね。うん。

 白久さん!? 青生先生も!?

 もしかしてキリュウ兄弟の演奏会!?〉


〈落成式かな? お祝いだって♪〉


〈億……?〉


〈まさか♪ 去年、物理学第2棟でも演奏したのかもね♪〉


〈そっか……わ♪〉

流れ出した音色に一気に惹き込まれた。



―・―*―・―



 邦和は夜、欧州は夕闇に暮れた頃、忍者マーズな兄弟がパリ生化大学の物置部屋からオンブレ研究室の設備全てを運び、白久がオッテンバッハから調度品を運び込んで、紅火が更に設備を加えて整え、アレンソワ研究室が完成した。


「うわ……」ドアを開けたジョーヌがフリーズ。


そこにトルシュとピニョンを連れた桜マーズが瞬移して現れた。

「忍者移動なの~♪

 出入国手続きは就労ビザ取れてからなの~♪」


聞こえているのか、いないのか。

たぶん聞こえていない。フリーズしている。


「ジョーヌ師匠?」


「どうしよう……」


「毎週月曜日♪ 俺と一緒に登校ねっ♪

 俺、サーロンと青生兄と藤慈兄と一緒に数学の講義受けるの~♪」


「中学生が?」


「特別研究生なの~♪

 他の日は青生兄の病院で今まで通り♪

 ジュール師匠とチーズも作ってねっ♪」


「何から何まで ありがとう」苦笑。


「うんっ♪」両側チラチラ確認。

「トルシュさん、ピニョンさん。大丈夫?

 菌庫、確かめなくていいの?」当然、仏語。


「あっ!」「そうだ乳酸菌!」


「あっち~♪」


駆け寄ってシャーレを出してホッ。


「菌庫も紅火兄作だから安心して研究してね♪」

【彩桜、建つまでは兄貴の家で下宿な】【ん♪】

「菌、確かめたら下宿に案内する~んるん♪」

一旦、事務室の方へ。

(マーズ)装束から着替えて戻った。

「どして泣いてるのっ!?」


「どうやら、ずっと感激していたのが やっと溢れたみたいだよ」


「そっか~♪」







彩桜の新学期初日の午後の出来事でした。


ジョーヌは教授になってしまいました。

ジュールに具現化偽装して代わってほしいと頼み込みましたが、ジュールは笑顔で断ったようです。



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