表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第34章 落書き消しと月の女神探し
657/870

追加公演決定



 広い蝦夷での会場は12箇所。

トレーラーの荷台(コンテナ)ステージで1曲ずつ巡る。

各会場には巨大モニターも設置していて、上辺にズラリと12枠、トレーラーが現れる予定の場所のリアルタイム映像が流れている。

その下の広い枠にフリューゲル&マーズが現れた会場の映像が拡大されるのだろう。


今は これまでのミニライブ映像が流れている。

それが暗転し、文字が流れた。

『只今より、フリューゲル&マーズ春のイベントライブin蝦夷を始めます』

カウントが入り、フリューゲルだけの音が弾けたのと同時に1会場の画面が拡がった。


「ここ、いつだべさ?」「僻地(へきち)は後っしょ?」

「ん? 紙吹雪?」「桜の花びらの形だべ♪」


『も~ちょっと待っててね~♪』

桜吹雪を撒きながら鳥忍が通過して消えた。


「うわ~♪」「飛んだべさ~♪」


 まさに神出鬼没な桜マーズが、演奏が休符になる度に忍者移動で桜吹雪を撒きに何処かに現れるので、どの会場もトレーラーステージが来なくても楽しく待てるようになっていた。

中盤になると他の鳥忍を連れて行くようになり、終盤では龍神に乗って行くようになっていった。


 そうして無事に12曲を終えたフリューゲル&マーズはトレーラーステージと共に消えた。

巨大モニターには『ありがとうございました』と大きく出ていたが、文字が点滅して暗転。

『中蝦夷メイン会場にフリューゲル、他11会場にはマーズが1人ずつが、これより2時間滞在します。

 子供マーズ4人は一緒に10分ずつ巡ります。

 場所はサイン色紙配布所です』

という文字が、つらつらと繰り返し流れている。


配布所へと人がワッと流れた。



『慌てなくても列が終わる迄は居るからな♪

 ささやかな来場記念品を渡すだけだから落ち着いて並んでくれ。

 俺だけってのはハズレだろーが、ま、同じ装束で仮面なんだから誰でもだろ?

 記念品は十分あるから落ち着いてくれよな』

喋りながら掌サイズの巾着袋をどんどん手渡していく。



「なんだべさ~♪」「めんこい(かわいい)ビン♪」

「白砂と貝殻? なして(どうして)?」「手紙!」


『昼間に巡った離島で貰った海からの贈り物です。

 邦和は海に囲まれた国です。

 いつまでも美しい海であってほしいと願います。

 フリューゲル&マーズ』

と、周囲に中央向きの天馬達が飛んでいるカードに書かれていた。


「ビンにも♪」「あるべさ♪」

巾着袋の真ん中と、カードの上端で弧を描く飾り金文字の『FLÜGEL & MARS』の『&』にも小さな天馬が重なっている。

小瓶にも刻まれている その天馬を指して喜んでいるのだった。


「「なまら(とっても)こまい(こまかい)べさ~♪」」


「マーズキャンディもあるべ♪」

「ささやか、大きいべさ~♪」



―・―*―・―



 そして夜。

これまでなら落書き消しをしている時間だが、すっかり消してもらっているので、忍者装束に白衣を羽織った青と紺は離島のお年寄りが居る家を訪問した。

ライブの際に神眼で症状を調べて手紙を渡していたので『昼間の忍者さん』は追い返されずに迎え入れてもらっていた。


「腰の痛みは如何ですか?」


「よ~うなったべや~」起き上がって伸び。


「歩けると思いますよ」


それならと立ち上がった。

「お……」

驚き過ぎたらしい。


驚いたまま部屋の外へ。

廊下で家族と会ったらしく騒がしい。


〈大丈夫そうだから行こうか?〉〈ふむ〉

〈俺もなのっ!〉両手に馬ぬいな桜マーズ。

その馬ぬい達は白衣を着ている。


〈その馬ぬいは?〉〈治癒 込めたの~♪〉


 そこに慌てた様子の息子夫婦が来た。

「あ、あのっ!」「ありがとうございます!」


「延命が出来るわけではありませんし、少し痛みを遠ざけただけですよ」

「痛いトコ、馬ぬいで撫でてなの~♪

 他のヒトのケガとかでもいいの~♪ はい♪」

1コずつ手渡し♪


「撫でる?」試しに腕の擦り傷を撫でた。

「治ったべや!」


「それじゃ次行くの~♪」るんっ♪



――青の瞬移で次の家の前。

〈でも効果が薄れていくんじゃないのかな?〉


〈水鉄砲の増幅装置、馬ぬいのお腹に入れてもらった~♪〉


〈医者要らずの馬ぬい?〉


〈軽いのならね~♪〉また両手に白衣の馬ぬい。


〈病院が少ない場所には必要だね〉

青と紺も馬ぬいを撫でて治癒を込めた。


〈うんっ♪〉



―・―*―・―



「メーア、話ってぇ?」

ノックの後、襖が少し開いて白久が顔を突っ込んだ。


「今日、島巡りしてたんだってな」手招き。


「試しに10島な♪」向かいに座った。


「琉球は?」


「今回は依頼も少なかったし、日数的に入れられなかったから、後日マーズだけで行くよ」


「5日に行かないか?」


「お前ら帰る準備は?」


「忍者移動で帰してくれ♪

 出入国は秋小路とオッテンバッハ3曲ずつだ♪」


「ったく~。勝手に決めやがったな♪

 で、琉球会場は?」


朱里城(しゅりじょう)だ♪ 復元を頼む♪

 この国にとっての最後の戦争で焼けたきりなんだろ?

 世界的大損失だからな。頼む!」


「ソイツ条件で取ったんだな?

 世界のフリューゲルは何でもアリだな♪」

OKだとニヤリ。


こうして、4日が最終日だったのにドタバタイベントは延長戦が決まった。


「もう1つあるんだが、明日テレビ出演してくれだとよ。

 東京の見田井がメイン会場に来て、白儀社長と話してたぞ」


「あ~、今 兄貴と話してるな。

 調整してくれるんだろーよ」


「明日は四国だろ?」


「だよ。だから忍者移動だなっ♪」


「よーし楽しみだ♪」



―・―*―・―



 青生達が戻るとキツネの社へ。

夜中まで輝竜兄弟は奏で、メーアは歌った。


 8人が帰ると、神達は落書き消しへ。

取り零しが無いようにシッカリ調べて消したので、翌日のマーズも前日同様パフォーマンス的に修復を撮影してもらって東京での収録に向かった。

「見田井さんにも あげる~♪」はい♪

早速、挨拶代わりに医者コス馬ぬいを渡す。


「これは?」


「お医者さんなの~♪

 頭に乗せて二日酔いバイバイねっ♪」

手を振って忍者移動した。


「二日酔いまでバレるのかぁ。

 で、頭に乗せるって?」キョロキョロ。

周りはスタッフだらけ。

なので控室に走った。



―◦―



 スッキリした顔になった見田井が戻って収録が始まった。

もう お決まりになったメンバー紹介があり、本題に入った。

「今後のフリューゲル&マーズの予定を伺いたく、お集まり頂きました。

 まず、今日の四国で落書き消し行脚は終わりですよね?」


「いえ。急遽なんですが、明日4月5日に、琉球にてイベントを開催する運びとなりました。

 朱里城を完全復元するんです」

「朱里城からは依頼が届いてなかったんですよ。

 メーアからの依頼なんです。

 世界的な大損失だからと。

 それで管理をしている方々と交渉してくれていて、明日に、と決まったんです」


「マーズが落書きを消していた間に?」


「「そうです」」


「そこにも追い掛けて行きますからね♪」


「「どうぞ」」


「うわ……『受けて立つ』に聞こえましたよ。

 それで、その後は?

 フリューゲルはドイツに帰国しますよね?」


「はい。15日から世界ツアーが始まります。

 それまでは準備期間かな?

 メーア、――(ここから独語)――」


メーアが答える。


「次のアルバムを出す準備期間で、更に新曲を作るそうです。

 マーズの方は新学期が始まりますので、夏休みまでの活動は週末毎の世界ツアーと、『中渡音 音楽と食の祭典』( フェスティバル)、通称『渡音フェス』だけです」


「それだけですか!?」


「マーズとして集まれる時に、離島などのイベントに来るのさえ難しい場所には行きますよ」

「病院や老人ホームにも伺いますよ」


「あ! さっきの白衣の馬ぬい!

 二日酔いがスッキリでしたよ!」


「二日酔いしていたんですか?」

「だから俺がプレゼントしたの~♪」


「蝦夷での打ち上げで、ついつい~」あはは。


「纏めますと、休止ではなくて低空飛行で活動し続けるつもりです。

 中学生だけでなく大学生も居ますので静かに、少しずつです」


「大学生!? 博士ばかりなのでは!?」


「学生を除き博士ばかりです」


「もしよろしければ、ですが、挙手して頂けますか?」


藤マーズが おずおずと頬辺りまで挙げた。


「俺は2周目です」青マーズも軽く挙げる。


「2周目、ですか?」


「マーズは様々な分野のスペシャリストを目指しています。

 何度でも学びに行くのもアリなんです。

 ですので仕事と勉強と修行で、なかなかに忙しいんですよ」


「そうですかぁ。

 音楽番組の収録には、いらして頂けますか?」


「スケジュール次第です。

 拒絶はしませんよ」


「そうですか♪」


「フリューゲルも近くの国に居れば参加します」


「本当に!? あ……」「ほえ?」

フリューゲルの後ろで桜マーズが同時通訳していると気付いてフリーズ。


「どしたのぉ?」


「まままさか! 中学生がドイツ語!?」


「うんっ♪ フリューゲルお友達だも~ん♪」

言って即、訳す。

フリューゲルは楽し気に返したり笑ったり。


「うわ……」フリーズその2。


「何にせよ極めようと努めるのが忍者ですので」


ハッと自力フリーズ解除。この点は流石だ。

「他にも話せる言語があるんですか?」


「主だった言語でしたら日常会話程度は」


「では世界ツアーも?」


「不自由しないと思います」


「現代忍者は凄いですね!

 ではそろそろ曲の方をお願いします!」


フリューゲルも連れて、一斉に忍者移動した。



―・―*―・―



《神力すっかり抜いちゃってるから~、神力封じ無効なんだよね~。

 ソラが保たないとダメって言ってたの、よ~く分かったけど~、困ったなぁ。

 な~にか方法ないかな~》う~ん。


《何をしているのだ?》キャンプーが現れた。


《眠らせても眠らせても自力で目覚めようとするんだよね~。神力ナシで~》


《また此奴か。確かに神力は感じぬな。

 しかし入っていたのは人神なのだろう?

 獣神には見えぬ罠が残っているのでは?》


《罠ね~。可能性アリだよね~》


《半人半獣の大神様が増えたのだから、お確かめ頂かぬか?》


《そ~だね~♪ 運ぼ~♪》ぽよん♪


なんだかんだ言いつつも心配して来るし、協力もするキャンプーなのだった。


《キャンプ~♡》ぴと♡


《くっつくでない!》


《またまたぁ~♪》《ウルサイ!》


仲良くキツネの社へと理子(あやこ)を運んだ。







邦和・琉球県の朱里城は、日本・沖縄県の首里城に当たります。

琉球王国の首里の朱里城なんです。


そんな朱里城ですが、首里城とは違って第二次世界大戦で焼失した後、諸事情あって復元されることなく今に至っていました。

一部残っている箇所から歴史に想いを馳せる史跡公園として、保護・管理されていたんです。


理子の方は……シツコイです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ