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マディアとイーリスタ



〈青生、ショウは どうかしたのか?〉

〈うん……何かの中毒なんだ〉

〈澪と行く〉

〈うん。お願いね〉


「瑠璃は もうすぐ来ますけど待ちますか?」


戌井家に連絡しようと処置室から事務室に行こうとしていた青生は、利幸と勝利に足止めされていたのだった。


「いやぁ……どーする?」「帰るぞ」

「会わずにか?」「預けちまおうぜ」

「旦那にか!?」「いいじゃねぇかよ」

こそこそこそ――


〈瑠璃、亥口さん達が来ているんだけど?〉

〈こんな時にか?〉無事は良かったのだが。

〈うん。何か持って来たみたいだよ〉

〈どうとでもしてくれ〉〈そう?〉


「戌井さんと一緒らしいですよ」


「ゲッ!」「誰だよ?」「澪さんだよっ」

ガサゴソ――

「とととととりあえずコレ渡してくれ!」

包みを押し付けた。


「これを瑠璃に?」鞄とキーケースだね。


「小夜子サンを説得してもらった礼だっ」

「下心とかナンにもねぇからなっ!」


「ありがとうございます」にこっ。

〈瑠璃、モテモテだね♪〉〈煩いっ!〉


「「じゃあ頼んだぞっ!」」逃げた。



―◦―



「あ♪ オニーサン♪」


「そうだな」


紗と手を繋いでいる澪と、飛鳥を抱いている瑠璃は足を止め、遠くに見える利幸と勝利を目で追った。


「もしかして、あの車でショウを運んでくれたのかしら?」


「かも知れんな」


車が走り去ったので、また歩き始めた。


「それなら逃げなくても……」


「礼を言われるのが恥ずかしいのだろう。

 それに利幸にならば、いつでも礼が言える」


「そうね。でも高級車なのに毛だらけになったんじゃないかしら……」


「なったのなら、これでチャラだな」


「え?」


「今は改心しているが、私達が中学の頃、荒巻は高校でワルだった。

 もう分かっただろう?」


「あ……」


「利幸とは大学で知り合ったそうだ」


「そうなのね……」


病院に入った。


「それにしても……新しく買ったばかりの首輪が外れるなんて……外れなかったら中毒になんてならなかったでしょうに……」


「普通に散歩していても農薬や除草剤、ネギやユリ等で中毒になる事はある。

 今回は偶然が重なっただけだ。

 だから気に病むな」



 病室に入ると、ケージ前に立っていた青生が会釈した。


「命に別状はありません。

 ですが症状が続く間は入院という事になります。

 年内の退院は無理だと思います」


「そうですか……」


紗がケージに寄った。

「ショウ、元気になってね?

 パパサンタさんは来年ね?

 スズ、ちゃんとガマンできるからね?」

隙間から手を入れてショウの足を撫でた。


【ランマーヤ……】


 ん? その話法は……そうか。

 人神には知られておらぬのだな?


【アーマル兄様、お気を確かに。

 解呪、解毒共に完璧です。

 後は時を掛けて回復するのみ】


【ラピスリが……か?】


【いえ、父様だと思います】

〖そうだ。ドラグーナだ〗


【トリノクス様も、ごゆっくりなさってください】



―・―*―・―



 人世でそんな騒ぎがあった(など)とは知る(よし)もない月の龍と兎は、まだ話していた。


〈そっか~。

 そんなんじゃあ連絡とれないと倒すの大変だよねぇ。

 うん。頑張って道作るけど~、禍多いし1年……もっとかなぁ? 2年までは掛からないようにするからね~〉


〈〈ありがとうございます!〉〉


〈それまで無理しちゃダメだよ?

 性別切り替え慣れてるんなら、術の時とか、速さが必要な時は女のコしてねっ♪

 体力、持久力勝負はダンゼン男だよ♪〉


〈〈へ?〉〉


〈マディアは小さいから、あんまり違いが出ないだろ~けどね、フツーは女のコの方が小柄でしょ?

 だから同じ瞬発力ならダンゼン女のコの方が速いんだよ♪

 術は、そもそも女神向きなんだよ♪

 コレは神って生き物の特性♪

 あんま知られてないけどねっ♪


 禁忌禁忌ってウルサくなって以降、鍛えて覚えても、実戦では術が使えなくなっちゃったよね。

 そんな神世に生まれたキミ達、四獣神の子は、禍と戦う為に殆どが男を選んだよね?

 自然と、なんとな~く、そうしてきたんだろうけど理に(かな)ってたんだよ♪


 ま、ドラグーナは好きに選べばいいって考えだし、龍は基底が高いから~、自分で決めた性別で頑張ればいいんだけどね。

 でも……滝の四獣神を堕神にしてしまったヤツと戦うんだから、出来るコトは全て最善を尽くさないとね。


 細々したコトは流してあげるねっ♪〉

人差し指と中指を立ててクルクル♪

ピッとエーデリリィとマディアを指すと、2龍の額へと光が飛んだ。


〈あ……すっごく詳しい……〉

〈こんな細々(こまごま)あったなんて……〉

顔を見合わせた。

〈流石……〉〈最年長……〉


〈そんなコト言うのぉ~?

 こ~んなカワイイ兎なのにぃ~〉


〈失礼致しましたっ!!〉

〈ありがとうございます!!〉


〈ま、いっか♪

 もひとつ真面目な話ね。


 人神と獣神の違い。

 人神は禍を生み易いんだ。

 無知とか別としてね。

 コレも神の特性。

 そんな人神だから、とっても大昔、禍を自在に生み、操る悪神が居たらしい。

 書物とかには記録されてないけど、秘かに言い伝えられているんだ。


 その悪神を封じる為に初代の四獣神が選ばれたんだ。

 まだ『滝の』でも『月の』でもない討伐隊としての四獣神がね。

 だから獣神の長老様と四獣神の(おさ)にだけ伝えられているんだよ。


 ポンポン禍を放つソイツも同じかもね。

 だから弾切れなんてナイかも。

 それに獣神力泥棒だからね。

 ナンでもアリだと思うよ。

 気をつけ過ぎるなんてナイよ。

 油断、絶対ダメだからね〉


〈〈はいっ!〉〉    〈何処だ兎野郎!〉


〈あ~、来ちゃった~〉 〈出てきやがれ!〉


〈えっと〉〈何方ですか?〉 〈サボるな!〉


〈ほらアレ〉〈〈龍!?〉〉 〈居たっ!!〉


〈キミ達の伯父さんだよ〉〈〈ええっ!?〉〉


全く同じにしか見えない蒼銀の2龍が迫って来ている。


〈ドラグーナの兄達。双子なんだ。

 見つかると厄介だから逃げてね~〉


〈厄介?〉〈どうして?〉


〈手伝わされて帰れなくなっちゃうよ?

 あ、月で瞬移は危険だからね~〉


〈行こうエーデ!〉〈うんっ!〉

手に手を取って門に逃げ込んだ。

〈〈ありがとうございました!〉〉


〈うん♪ また来てね~♪〉


〈〈はいっ!♪〉〉



―◦―



 月から神世に戻ったエーデリリィとマディアはマヌルヌヌに挨拶がてら報告し、すっかり暗くなってやっと帰宅した。


〈待ってエーデ。誰か倒れてる〉

家の門を入った所でマディアが止めた。


確かに玄関先に男が倒れている。


〈誰かって……ナターダグラル!?〉


〈気絶してるみたいだね〉僕、奥さんね♪


〈そうみたいね……。

 でもどうして?〉渋々エーデラークに。


〈周りに何か落ちてる?〉〈そうね〉


〈水晶玉みたいだね。

 何か力が込められているよ。

 あれが盗んだ獣神力かな?

 僕が近くに行って確かめるからね〉



 マディアは屋根に隠れるようにナターダグラルの上に浮いて術を唱え、暫く探って頷くと、落ちている水晶玉を浮かせて全て集め、隠し持っているものも全て回収した。


〈どうやら強い浄化か破邪を受けて気絶したみたいだね。

 暫く目覚めないようにしたから、もう一度マヌルの里に行こう〉


〈彼奴を滅する好機なのに?〉


〈僕は易々と滅さないよ。

 アイツにはキチンと反省させなきゃ。

 人神みんなの前で、獣神みんなとグレイさんに謝らせなきゃ気が済まないんだ。

 神として相応の償いをさせなきゃ許せない。

 楽に消えさせるなんて出来ないよ。

 だから生かせるよ〉

振り返って視線で突き刺すように睨んだ。



―◦―



 そうして回収した水晶をマヌルヌヌに預け、マディアとエーデリリィは再び帰宅した。


〈まだ寝てるわね〉

〈薄く起こしてから近寄ろう〉



 少し離れた場所から神眼で確かめその場でマディアが唱えると、ナターダグラルがモソッと動き身体を起こそうとした。


〈行こうエーデ〉また奥さん♪

〈仕方ないわね〉嫌々エーデラークに。



「私は……此処は……?」


「ナターダグラル様!?」飛んで寄る!

「如何なさいましたか!?」


「エーデ……」「お気を確かにっ!!」


「あなた、運びましょう?」「そうですね」

夫婦で抱えて運び込んだ。




 客間の寝台に横たえ、地べたに倒れていたので表面だけを軽く浄化し、妻と共に部屋を出ようとした。


「エーデ……」


「温かいものをお持ち致しますね」にこっ。



―◦―



 台所で何やら作り始めたマディアにエーデリリィが並んだ。


〈マディアが伝えてきた通りに『温かいものを』って言ったけど、何をしているの?〉


〈スープって食べ物を作ってるんだよ♪〉


〈人神って『食べる』って好きよね。

 無意味なのに〉


〈でも味を楽しむっての、ちょっと解るよ♪

 作るのも楽しいし♪〉


〈味ねぇ……〉


〈どの家にも台所が在るし、せっかく作り方 覚えたんだから味見してみない?

 はい♪〉小皿に掬って渡した。


〈あら……これが『美味しい』なのね♪

 私も少し解ったわ♪〉


〈昼にクッキーも焼いたんだ♪

 お茶 淹れるから食べよ♪〉


〈マディア?

 料理を覚えて何をしようとしているの?〉


〈何か役に立つかな~? って♪

 人神の中で暮らしてるんだし~、人神が好む事、知っておいた方がいいと思うんだよね~♪〉


〈そう……〉


〈お茶したらエーデも考え変わると思うよ♪〉


〈なんだか今日は とっても楽しそうね?

 料理って そんなに楽しいの?〉


〈ん~~、料理が、って言うより~、な~んか~、あ♪ そうだ♪ イーリスタ様と会ったからかな?♪

 もっと遊び――じゃなくて、いっぱいお話ししたかったな~♪〉


〈気が合いそうよね~〉〈うんっ♪〉


〈なんだか まるで親子みたい♪〉ふふっ♪


〈エーデ、共鳴した?〉


〈していないわよ。だから『みたい』よ♪〉


〈そっか♪

 また月に行こうねっ♪〉


〈ええ♪〉







ウィスタリアの破邪を受けたナターダグラルはエーデラークの家の前で力尽きていました。


助けてもらいたかったんでしょうかね。


そして持っていた水晶玉は、マディアにすっかり回収されてしまいました。


人世ではウィスタリアとオニキスがどうやって奪おうかと悩んでいますけど。



初対面だからと遠慮していたマディアでしたが、その実は、一緒に遊びたくて仕方なかったようです。


イーリスタの方も、そうなのかもしれません。


マディアの祖父フィラグーナより少し歳下なイーリスタですが、良い友達になれそうです。



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