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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第34章 落書き消しと月の女神探し
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罪を重ね過ぎた教授



 現場作業を見学し、事務仕事も見学した後、紗桜部長の家で夕食も食べさせてもらった桐渓(きりたに)は、すっかり暗くなってから寮に戻った。

「アイツ……けど捜すと言っても……」困った。


コンコンコン。『こんばんは』


「はいっ!」

まだドア近くだったので すぐに開けた。

「青生先生?」まだ見分ける自信は半分くらい。


「うん。琢矢君を保護しているんだ。

 白久兄さんが知ったら、また叱られてしまうから、居なくなったと知らせないであげてね」


「やはり家出――ではなく寮出?

 いや、そこは問題ではないな。

 逃げたんですね?」


「逃げたのか どうなのかは話してくれないけど、落ち着かせないと何も進まないからね」


「分かりました。生きてるのならいいです」


「ありがとう。

 それじゃ、放っておけないから」


「はい! 宜しくお願いします!」礼!



―◦―



 微笑んで去った青生は音鳴(おとなり)家へ。

音鳴家では、子供達の電話で慌てて仕事を切り上げて来た親達が直接 子供達と話し合っていた。

 この日は金曜日なので、ママ友会が金錦の絵を交換しに集まっていたのを味方に付けた子供達が勝利を収めており、青生が着いた時には既に、具体的にどうすれば最速最善なのかと話し合っていた。

「それでしたら学校と教育委員会に(じか)に話してみますね」

そう言って青生は にこにこ笑顔を振り撒いて去った。



「世界のキリュウ兄弟か……」

兄弟の名刺を卓に並べて、タツの息子で杏寿(あんず)の父は溜め息を溢した。


「でも友達は? 転校していいの?」

タツの娘で双子(ルイ・レオ)の母が心配そうに息子達を見る。


「そもそも友達なんていないし」「だよね」


「「えっ?」」両親、初耳。


「走るの速くなったの、イジメられないため」

「強くなったらイジメられないと思ったんだ」

「それでもズルしてるとか言われたけど」

「なんでかヒキョウモノって言われたよ」

「でも、ここには仲間がいるんだよ」

「理解者もね。だからコッチがいい」


「それを早く言いなさいよ」


「わかってたけど、先に言ったら逃げたみたくなるからイヤだったんだ」

「だよね。だからずっと言わなかったんだ」


「そう……」

「杏寿も、なのか?」


「私は運動ダメだから、ちょっと違うけど友達いないのは同じだよ。

 同じ小学校でイトコだからボッチになっちゃっただけ。

 でも、いつもルイとレオが かばってくれたからいいの。

 なんか~、女の子の集まりって怖くて。

 でも読書好きな先輩達がいるから私もコッチがいい♪

 仲間見つけたってトコは同じかも♪」


全く知らなかった情けなさやらで、もう何も言えない親達だった。



―・―*―・―



 琢矢を眠らせてキツネの社に預けた青生が、ライブ後の落書き消しに合流して少し。マーズは揃ってパリ生化大学へと瞬移した。


 入室を許されたジョーヌがオンブレ教授の部屋に入ると、広い室内には教授だけだった。

「はじめまして、ソテール=オンブレ先生。

 ジョーヌ=アレンソワです」

から始まっての形式的な挨拶を終えて本題に入る。

「実は論文を提出する前に確認をと思って訪問の許可を得たんですけど、受付時間の都合で提出してしまいましたので、その件ではなく、先生が雪山で発見なさった原始菌の――」


「ちょっといいかね?」


「はい?」


「君は研究を続けていたのかね?」


「はい。

 穏やかで落ち着いた場所を見つけましたので、ゆったりと続けていました」


「テーマは?」


「先生の論文の続きです。

 論文の最後の方に本論文は第一段階だと書いてありましたので。

 先生も研究なさっているかもと、提出前に確かめたかったんです」


「そ、そうか」実は細部までは読んでいない。


「先生は他に大きなテーマを見つけられて研究なさっているから、長く論文発表が無いのでしょう?」


「その通りだ。内容は話せぬがな」


「はい。それは当然だと思います」


「原始菌の方も、大切な人を失った記憶と絡んでしまうのでな……」


「そうですか。

 ジュール=アルベール博士は、どんな方だったんですか?」


「な……何故その名を?」


「先生の論文の序章に当たる論文からです。

 大切な方の遺志を継いでの第一段階論文だったんですよね?」

その研究にはソテールは関わっていない。

助手はアンリエッタだけだった。


「その通りだ。

 その論文を私は読んでいないのだが」


「先生の論文は、この続きだと書いてありましたけど?」

序章な論文のコピーをテーブルに置いた。


「その……私は途中から加わったのでな。

 発表時点では研究から退いていた妻が書いていた箇所なのだろう」


「アルベール博士は亡くなり、奥様は引退。

 それで先生だけの論文になってしまったんですね」

納得したと頷く。


「結果的に、そうなってしまった。

 それを読ませてもらえるかな?」


「どうぞ」



―◦―



 青生と彩桜はオンブレ教授(ソテール)の背後、教授室に隣接する資料室から弱く浄化を当てつつ探っていた。

【オーロザウラ寝てるねぇ】


【そうだね。今はオンブレ教授だね】


【けっこう融合してるけど後付けだよね?】


【そう思うよ。居心地が良かったんだろうね】


【悪いコトしたのオンブレ教授?】


【そうだと思うよ。

 嫉妬やらの負の感情が弱禍を目覚めさせて肥大化させたんだろうね。

 だから憑けられたんだろうね】


【類が友を呼んじゃった?】


【その元も探さないとね】【うん!】



―◦―



「そうか……アンリエッタは……」


アルベール博士(ジュール)は山から戻ったらアンリエッタさんに求婚するつもりでした」


「は?」


「続く論文を全て仕上げたら実家で静かにチーズ作りに励もうと思っていました」


「何を言っている!?」


「名声なんか欲していなかったんです。

 ただ穏やかに暮らしたかっただけなんです。

 貴方が続きをしてくれるのなら、すっかり渡して帰りたかったんです」


「何を知っている?

 金なら望む額を支払おう。

 もうその口を閉ざしてくれ」


「僕は全てを知っています。

 前世の記憶ですから」「なっ――」

「アンリエッタさんは天に召されていない。

 貴方が魂を縛っているからです。

 彼女を自由にしてあげてください。

 もう20年も経っているのだから」


「アンリエッタは私の妻だ!

 渡さぬからな!」


「もう亡くなっているのだから渡すも渡さないもないんですよ。

 穏やかに天に昇ってもらいたいだけなんです。

 このままでは怨霊になってしまう。

 そんな事させないで」


「嫌だ! 渡さぬからな!

 アンリエッタは私の妻だ!」


バンッ! とドアが開いた。

「母さんはお前なんか愛してなかった!」

「騙して結婚しといて妻だとか言うな!」

「そうよ! 私達は母さんだけの子よ!」

子供達(と言っても人としてのジョーヌと同じくらいの年齢の兄弟妹)が出入口を塞ぐように並んだ。


「生きて、いた、のか……」


「おじいと おばあが逃がしてくれたんだ。

 お前が火を着けて二人を殺したんだ!」

「僕達を起こして、飛び下りて逃げろって」

「もう年寄りの足じゃ間に合わないからって、私達だけを逃がしてくれたの!」


「以降、教会で暮らしていたそうです。

 貴方は罪を重ね過ぎた。

 もう全てを認めてください」


「警察に行けと?」


「貴方には償うべき時間が足りなさ過ぎます。

 認めて、アンリエッタさんを解放してください。

 それだけで いいですから」


「お前達は……?」


「馴れ馴れしくお前呼ばわりも気に入らないけど懺悔だけでいい」

「母さんは解放してくれよな」

「何を悔いても父親だなんて認めないけどね。

 私達を焼き殺そうとしたんだから!」


「アンリエッタから全て聞いているのだろう?」


「母さんの名を呼ばないでくれる?

 全てって何だよ?」

「アンタのことなら怖い、憎い、嫌いとしか聞いてないよ」

「母さんの背中の傷!

 全部アンタなんでしょっ!」


「僕は此処に来る前に彼らと話しました。

 何も聞いていませんよ。

 貴方は聞いていると勝手に思い込んで放火したんでしょうけど。


 アルベール博士のご両親も、研究については何も聞いていませんでした。

 ただご子息の帰りを、一緒にチーズ作りが出来る日を楽しみに待っていただけなんです。

 貴方は自分勝手な思い込みで何人もの命を奪ったんですよ」


「他にも やってたのか……」

「これ、書いてくれよ」バンッ!


「離婚届? アン――、、は死んだのに?」

子供達に睨まれて名は言いきれなかった。


「ケジメだよ。

 これで自由だって母さんに伝えたいんだ」

「お墓に持ってくから書いてくれ」

「母さんの分は私が書いたから、あとはアンタがサインするだけ。

 もう縛らないでよね」


「ふむ……」

ペンを取ったが、手が震えていた。

書こうとしては紙からペンを離す。


 何度か それを繰り返していると、ペンを持っている右手から伸びる呪念鎖が淡く見え始め、やがて重たさも感じる程になった鎖がジュールとアンリエッタが眠る山の方へと黒々と伸びていった。


「何この気持ち悪い鎖……」

「これで母さんを縛ってたのか」

「蛇みたいに動いてない?」


ソテール自身には見えていないらしく、まだ書けずにペンをうろうろさせていた。


「そんなにも束縛し続けたいのかよ」

「そういうのストーカーって言うんだよな?」

「それも犯罪?」「「犯罪だろ」」


子供達の視線が険しくなる。


「まだ……好きなんだよ。

 ……愛して――」「「言うな!!」」


「アンタのは愛じゃない! 執着!

 アンタは自分自身しか愛してないでしょっ!

 さっさと書きなさいよ!!」


蠢く呪念鎖の音が煩い程になっていた。







ジュールから全てを奪い、ジュールとその両親の命だけでなく、アンリエッタの両親の命までもを奪ったソテール=オンブレとジョーヌは対峙しています。

疑心暗鬼の塊みたいなソテールは、当時まだ幼かった子供達まで殺そうとしたんです。

オーロザウラの魂片は眠っていますので無関係な筈ですが、ザブダクルを執拗に追い回したオーロザウラに似ているような……。

込められると眠っていても何か影響があるんでしょうか?



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