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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第34章 落書き消しと月の女神探し
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妖怪サクラモチ



 この日の備前でのイベント(握手会とミニライブ)は何事もなく終わった。

後片付けをスタッフに任せてマーズは落書き消しへ。


【オーロザウラは絶滅したのかぁ?】


【いいえ。潜伏しています。

 昨日時点では動ける状態でなかった魂片達が様子見していますよ】

【うんうん。視線 感じるよねぇ】【確かにな】


【白久兄様、他の地域の若者達は?

 この辺りにも不穏な集まりが居りますよ?】


【けどなぁ、満員御礼なんだよなぁ。

 ど~すっかなぁ……】


【台所も拡げてくれよな。

 分身達と神力調理対応すっから】


【そうか!♪ お~い狐儀♪ 本館も上に――】

【上に増やしましたよ。内部は4階建てです】

【――ありがとなっ♪】


【では私と白久は備前署へ。他は続行】


【はい!】一斉。


離れていようが、バリバリ浄化中だろうが、怨霊と戦っていようが、普通に話しているマーズだった。



―・―*―・―



 深夜、備前だけでなく周辺からも集めた若者達を稲荷山中腹の浄化大社(おおやしろ)に運んだマーズは、不穏を感じて来てくれた神達に浄化を頼んで帰宅した。

【まだ誰か起きてやがるな……】

白久は居間へ。



―◦―



【うわっ! 来てくれリーロン!!】

黒瑯とリーロンは食料倉庫を拡げてロフトみたいな部屋を作ってもらっていた。

其処に瞬移し、風呂に行こうと下りた黒瑯が騒ぐのでリーロンも下りた。

【食材が空っぽだと!?【彩桜!!】】


【にゃ~にい? 俺、食べてにゃいよぉ】


【【すまん!! 姫!!】】


【【ワラワも知らぬぞ】】ムッ。×2。

【【じゃか真じゃの】】うう~む×2。


【あ~、黒瑯 リーロン。居間だ】


一斉に瞬移で集まった。【ええええっ!?】


【コレ……何だ?】【妖怪か?】

【だとしたら妖怪サクラモチだな】【俺なのぉ?】


【【言ってる場合かよ!!

  大所帯なんだぞ!!】】【だよなぁ】


【核は人、餓鬼化した霊が複数。

 不穏は……禍呪だね】【俺のゴハン~~】

【彩桜も仲間入りなの?】【違うもんっ!】


赤みを帯びた半透明な霊塊(ぶよぶよ)が食材を取り込んで居間いっぱいに膨れていた。


【どうやら核になっている若者が夜中にお腹を空かせて食べられそうな物を探していたみたいだね。

 そこに餓鬼化霊達が寄って来た。

 まだまだ浄化しないといけない生魂が大勢だから来易かったんだろうね。

 その結果だね】


【青生ぉ、落ち着いて分析してねぇでナンとかしてくれぇ】


【うん。説得するよ】【【説得!?】】

【大丈夫だよ。

 怨霊じゃなくて意識があるからね。

 食材も元通りにして浄化するから、夜食を作ってもらえる?】


【【ソレなら任せろ♪】】


【藤慈、甘露聖水をお願い】【はいっ!】瞬移。

【彩桜、浄破邪を始めるよ】【うんっ!】

青生と彩桜は霊塊を挟んで立ち、輝く程に浄破邪を纏った両掌を当てて目を閉じた。


【俺も双璧だ!】白久の両手も輝く。


【え? これって……】【サーロンもお願い!】

【うん! 浄破邪だよね?】【うんっ!】

不穏を感じて現れたサーロンも白久の向かいに加わった。


【領域昇華】【【領域供与!】】【堅固】

手を当てている4人の神力を上げ、霊達が逃げないように囲った。


取り込まれている若者達が目覚めた場合を考えて、皆、マーズ装束になった。


青生が霊達に穏やかに語り掛け始めた。



―◦―



【青生兄様! 出来ました!】

大きな瓶を抱えた藤慈がマーズ装束で現れた。


兄弟皆がマーズしているのは神眼で確かめていたし、居間に接する廊下には起きてしまった若者達が大勢だし、輝竜兄弟も起きて来たとして狐儀の分身達が居た為だ。


【ありがとう藤慈】

「霊体の抜き方、食べ方、やってみて。

 美味しいから」


サクラモチから触手が瓶へと伸びる。


甘露聖水の霊体を飲んで喜んでいるらしく、ほんのり光を帯びた。


「美味しいよね?

 取り込んでいる食材よりも、ずっと」


喜んでいるらしく明滅。


「その食材も美味しくするから返してもらえるかな?」


明滅して食材をぽろぽろと出していった。

ただし割れたり潰れたりといった状態だった。


「ありがとう。少し待っていてね」

【紅火、食材を戻してもらえる?】【(了解)


サクラモチの周りに転がっている食材が網で集められて紅火の前へ。


【【彩桜、ありがとう】】【ん♪】


【逆進過時短】すっかり元通り。


彩桜が網ごと台所へ。


【【あとは任せろ♪】】



 そして温かさも味も優しい料理が並ぶ。

「そろそろ分離できるんじゃありませんか?」


もちっ、むちっ、と霊達が離れては人の形を成す。

大人も子供も居る。


【古いヒト達?】

【戦中戦後――直後くらいかな?】

「霊体をどうぞ。お話も」


『おいし……こんなの初めてだよ。

 ずっと ひもじくて……白いごはん、初めて見た……あったかくて、おいしい……』

男の子が泣きながら食べている。


『どこもかしこも焼け野原。

 誰も彼もがボロボロで、食べ物が無くて……。

 戦地からは生きて帰れたのに、家族も友人も皆 亡くなってしまったよ』


『邦和の間違った歴史だ。

 あれからずっと見てきたが……忘れられて、また過ちを繰り返しそうだと悲しくなっていた。

 若者達よ、聞こえているのだろう?

 忘れないでくれ。

 過ちを繰り返さぬ為に、過去を知ってくれ』


「もっと、お教えください。

 皆様の体験を今後に生かす為に。

 同じ(てつ)を踏まぬ為に」

「兄貴は歴史学の教授だ。

 必ず生かして活かすと約束する。

 全てお話しください!」


『ありがとう。君達に未来を託すよ』


廊下で(ひし)めき合っていた若者達にも居間に入ってもらい、歴史を知る夜食会が始まった。



―◦―



 明け方、満足した霊達はエィムに導かれて昇って行った。

庭で見送った若者達にも青マーズと桜マーズが回復治癒を当てて屋内へ。

「寝たかったから寝ていいからな」

大部屋まで先導した銀マーズ(白久)白久(狐儀分身)が去ろうと――

「待って!」


「ど~したぁ?」

白久だけが止まって振り返った。


「もっと教えてください!

 聞いてメッチャ考えたし。

 腹減ったら盗んだらええ思てました。

 けど盗むモンも無いて……餓死した家族まで食べたて……俺、甘えてた思うて……」


「いいヤツだな、お前」ポンポン。


「初めて言われた……」

恥ずかしそうに顔を歪めた。


「恥ずかしがらなくていいんだぞダンク♪

 他にも、学びたいなら大歓迎だ♪

 俺達は仕事に行くからな、今日の社会科は白儀社長だ♪

 社会科の先生で教頭してたんだからな♪

 で、この家は準中学校の認可も受けている。

 高校、大学への進学も支援してるからな。

 学びたきゃ、いくらでもだ♪」


「じゃ俺も!」「バカ卒業してやる!」

15人 寄って来た。


「寝なくていいのかぁ?」


「なんかスッキリ?」「やな♪」


「そんじゃあ案内する。来い♪」先導♪


「あのっ!」


「ん? ど~したダンク?」


「さっきから、なんで名前?」


「覚えねぇと不便だろ」


「名乗ってへんし!」


「マーズから聞いたんだ♪

 アイツら忍者だからな♪ で?」


「庭のバスケコート、使わしてください」


「いいぞ♪ 好きにしろ♪

 犬達と遊んでもいいし、話してもいいぞ♪」


「話す!?」一斉。


「「犬は話すんだよ」」定位置でフン×2。


「うわ……ホンマに話しとる……」


「だから常識外だ♪ お前らにピッタリだろ♪」


「やな……」「うん……」「ピッタシやな♪」


「今日の教室は此処だ♪

 白儀社長、若威、開けますよ~♪」『どうぞ』


 マーズ事務所だとは話していない。

フリューゲル&マーズの曲が流れる部屋での授業が始まった。



―・―*―・―



 慎也(リグーリ)はエィムを手伝った後、本浄神社の様子を近くで見ようと瞬移した。


 ん。家族揃って朝食か。

 アステローペ様もいらっしゃるし、

 アルテメィア様も笑っていらっしゃる。

 菊乃さん達も楽しそうだ。

 めでたし めでたしだな♪


無事に終えられたと喜んで、落書き消しに加わろうと――

〈慎也様?〉

――沙織に気付かれてしまった。


〈その後を確かめに。それだけです。

 では私は――〉〈お待ちください!〉


駆けて来た。

「どちらに?」


「仕事に。やっと揃ったのですから、ゆっくりなさってください」


「両親とも祖母とも十分に話しました。

 昨日も消えてしまうなんて……」


「邪魔は出来ませんので」


「ワタクシとの結婚を考えているとおっしゃいませんでしたか?」


直接 言った覚えは無い。

が、聞こえたのなら覚悟するしかないなと迷いを吹き飛ばした。

「望んでいます。ですが先の話ですよね?

 それに沙織さんは、違うのでしょう?」


「まだ……よく分からないだけです。

 その……慎也様は旅とおっしゃいましたよね?

 ワタクシは日帰りにしても列車とか船とかで旅するものと思っておりました。

 その間に考えられるかと……」


「では、他の月の女神様の所にも行ってみましょう。

 きっとアルテメィア様やアステローペ様と繋がりのある方々でしょうから。

 今度は列車やフェリーを使って」


「はい♪ すぐに支度しますので♪」


「今日ですか?」


「いけませんか?」


「いいえ、参りましょう」


「はい♪」弾むように駆けて行った。



【あ~、兄様。今日のイベント、分身を頼んでもいいですか?

 集中したいのです】


【そう改まらなくても】ふふふ♪

【死司の爺様はエィムに頼んでおきますね。

 ですがマーズ姿を見せなくてもよいのですか?

 これからも続くのですよ?】


【今日の結果次第……かなぁ】


【そうですか。頑張ってくださいね♪】


【ったく余裕綽々だよなぁ】【何か?】


【いーえ何も! お願い致します!】


【はい♪】







さて、妙な霊が現れました。

普段は紅火の結界で不穏なモノは忍罠に掛かるんですけど、不穏が消えきっていない若者だらけなので緩めていたんです。

若者達よりも不穏が弱い霊達は空腹を満たし、不満や不安も込み込みで話して満足して天に昇りました。

若者達の気持ちも良い方向に変わって、めでたし めでたしです。


慎也と沙織は次の旅に出るようですね。



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