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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第34章 落書き消しと月の女神探し
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横浜のゲンブ



「俺、桜マーズ。お話ししに来たの」


「ガキが説教か?」

真っ赤に染まった男がフンと鼻を鳴らす。


「芸術作品 消したとか言う?」


「ソレもやけどな」


「書かれたヒト、迷惑だって依頼してきたの。

 認められてないし、感動させられてないから芸術作品じゃなくて落書きなの。

 俺達も まだまだだって思ってる。

 お兄さん達には認めてもらえてないから」


「ふ~ん」『マーズのんは芸術やろ』

隣の部屋との間にある小さな窓の磨りガラスに青く染まった男が近寄った。

どうやら この2室は留置や拘置をする為の部屋ではないようだ。

『ソッチ見えへんけどな』


「でも感動してないでしょ」


「あ~、ソレな。聞いてへんのや」

『仲間が大勢(ようけ) 離れたんや。

 マーズ聴いて感動してな。

 そやから耳栓してたんや』

「サツに取られたけどな」


「そっか。じゃあ聴いてよ」

バイオリンを奏で始めた。



―・―*―・―



 桜マーズが浪花中央署に現れたのは休憩だからで、そうなると空マーズは――

「あれ? お帰り。終わったの?」


「心配だから帰ってみたんだけど?」

リーロンから貰った夕食弁当と どらモドキをテーブルに置いた。

「夕食、作ってた?」


「怨霊退治の後、警戒待機してたから、さっき帰ったとこ~。

 助かったぁ。ありがとソラ♪」


「食べたらまた行くけど大丈夫?」

お茶を淹れている。


「頑張って空マーズしてね♪

 ヨシさん来てくれるから大丈夫よ♪」


「じゃあ食べよ♪」「うん♪」



―・―*―・―



 余韻が消えて、たっぷり待っても男達は何も言わなかった。

「赤鬼さんと青鬼さんの目に涙~」


「あのなぁ」グスッ。「ダイナシやろ」

『その通りやけど、台無しやな』グスッ。


「ペンキ、だいぶ消えたよ」今度はフルート。



―・―*―・―



【白久兄、浪花(コッチ)より先に横浜で騒ぎだ。

 ヤマトの高架下】


【ったく~。彩桜とサーロンは?】


【彩桜はペンキ男達と話してる。

 ソラは響チャンと晩メシ。

 あ、ケンカじゃなさそうだ。

 集まって話してるな。仲間ばっかか?】


【そんじゃあ近くで眺めるとすっか】


【頼む。アッチもコッチも不穏だらけだからな】



―・―*―・―



 オーロザウラ回収には青生と瑠璃がメインで金錦と狐儀と理俱が同行していた。

【おや? 白久兄さん?】


【やっぱコッチにも居るのかぁ】


【はい。あの中央の少年です。

 ですが魂片は目覚めたばかりです。

 影響はあったんでしょうけど、乗っ取られてはいませんね】

【周りの不穏が膨らんでいます。

 全て眠らせましょう】

狐儀と理俱が動いた。


【兄さんは? 不良の集会だからですか?】


【黒瑯から騒ぎだと連絡を受けたんだよ。

 全員留守なヤマトのアジトだしな】


【そうですか】【青生】

【うん。先に摘出しますね。

 金錦兄さん、白久兄さんをお願いします】

青生と瑠璃も動いた。



―・―*―・―



 優しく心を包み込むようなフルートの音色が終わり、余韻も消えた。


「ホンマもんの芸術やわ。話すからな」

大きく息を吐いた。


「俺達のは芸術ってよか縄張りのシルシやな。

 そやから消されたなかったんや。

 2月の終わりに横浜と尾張からイチャモンつけに来よったからな」


「イチャモン?」


「モンク言いに わざわざ来たんや」


「どんな?」


「横浜のゲンブいうヤツが、オロチとヤマト、そんでゲンブの仲間 知らんかて」

『ちゅーか、(さろ)うたやろて。出せや言うてな』

「やな。

 尾張のシャチらは先に疑われて、違うて証明しとうて来てたんや」

『絶対オレらや言うてな』


「オロチさん、就職したよ♪ 6月に結婚♪

 ヤマトさん、高校行くって勉強中♪

 ミコトさんとコンビニでバイトしてる~♪」


『「はあ!?」』


「知り合い?」


「直接は知らんけどな。有名人や」

『けどマーズがナンで知り合い?』


「えっとねぇ、雪の日に鍋パしよって集まって、チビッ子達が楽しくなれる思ってキムチ鍋に薬物てんこ盛り入れちゃって、み~んな瀕死なってたの。

 で、兄貴達と助けたの。

 元気なって前向きに踏み出したの~♪」


「死にかけたんか。

 ほんなら足洗うても、おかしないなぁ」

『けどマズないか?

 アイツらメッチャ探しとったやろ?』


「兄貴達、行ってるから大丈夫~♪

 俺もオロチさんとヤマトさん連れて行く~♪」


「そやな。『頼む!』」


「ん♪」るんるん瞬移♪



――中渡音経由で高架下。

【兄貴達~♪】【おう♪】


「ったくアイツらは!」「話しますので」走る。



「起きろゲンブ!!」ボコッ。


「った……ヤマト!? オロチも!?」


「おう。誰だよ、俺トコにマーキングしやがって!!」

派手な落書きをビシッと指した。


集まっていた少年達が首を(すく)めた。


「やっぱカメの仲間はカメだよな!!」

「ところでゲンブ、この集まりは?」


「ずっと お前ら探してたんだよ。

 ウチの仲間も何人かいねぇし」


「探してくれたのは嬉しいけどな。

 変な心配すんなよな。

 で、鍋パに来てたのは知ってるのか?」


「いや……」「あっ!」「お前、知ってたのか?」

サブリーダーらしい少年を小突いた。


「ソータが来てて……はい」「言えよなぁ」

「すっかり忘れてて……はい」「ったく~」


「俺達は死にかけた」「ヤマトは死んだだろ」

「今はいいだろーがよ!」「よくあるものか」

オロチが集まっている者達に向き直る。

「鍋パで事故があり、皆、瀕死になった。

 バカヤマトは一度 死んでいた。

 だが全て白久サンに助けてもらった」

「だよ。俺達は伝説の白久サンの家で復活したんだ。

 で、死にかけたからこそ考えた。

 まだ誰も親とは話せてない。

 けど手紙は書いた。

 そんくらいカイシンしたんだ」

「就職先も住む場所も、努力すれば得られるようにしてくださった。

 皆も来ないか? 考えないか?」


「……マジメになりやがって」


「トモさんもツルさんもマジメになってるよ。

 だから来いよ。

 ホントは俺達が も少しヒトリダチできたら迎えに来ようって考えてたんだ」

「だから俺は就職を選んだ。

 回り道をしたからこその『普通』を掴んでやろうと思っている」


「そんな すぐに決められっかよ」「俺 行くよ」

「おいっ!?」「なんか……涙が止まんねぇよ」

ゲンブが見回すと殆どが泣いていた。

「え……?」


「なんかぁ、心臓ワシヅカミ? ギュッて」

「脳みそワシヅカミじゃね?」

「ナンか聞こえてないですかぁ?」

「聞こえてる。心が あったかくなるヤツ」

他も泣きながら頷いている。


「あ……」言われて耳を澄ませると、確かに。


「あれが伝説の白久サンだ」

「それと一番上と一番下な」


 宵闇にギリギリ見える離れた場所に立ち、マーズ装束ではない金錦 白久 彩桜がバイオリンを奏でていた。

こうして輝竜家の大部屋は、再び賑やかになるのだった。



―・―*―・―



「解決したよ~♪」桜マーズ再び参上♪


「そーか!♪」『サスガやな』


「ゲンブさん達、み~んなウチ来たの~♪

 今お風呂入ってる~♪」


「へ?」『ホンマか?』


「お兄さん達も来る? お仲間さんも一緒に♪」


「ええっ?」『ってドコに?』


「中渡音♪ ゴハン美味し~よ♪」


「そやけど……」『なあ……』


「中渡音ダメ?」「その前に試食だな♪」

弁当箱を渡して(カイ)が消えた。


『え!?』『許可は取ってる。食えよ♪』

隣で弁当箱を渡しているらしい。


灰が戻った。

「離れた仲間も生きてくのに困ってるかもな。

 声かけて集まったら連絡してくれ」

名刺を渡した。

リーロンが持っている筈がない。白儀社長のだ。


「フリューゲル&マーズ事務所?

 ナンでフリューゲル!?」


「お前、誰のライブに来てたんだよ?」


「マーズ……」


「何見てたんだよ?

 スクリーンにメーアが映ってたろ?

 メンバーも何度もアップになってたし」


「見てへんかって……」


「何しに来てたんだよ? あ、そっか。

 ペンキ浴びに来たんだったな♪」

「反省して消えたからぁ」

「確かにな♪ だからウチ来いよ♪

 待ってるからな♪」消えた。


「マジ忍者や……」


「ウチ来たらメーアにも会えるよ♪

 邦和 大好きだから~♪

 で、食べにゃいの?」


「食べる食べる」パカッ。「うわ……」


「黒と灰、忍者飯シェフだから~♪

 じゃ、まったね~♪」


「え?」


『お風呂上がりな緑お姉さん、泣いてるからぁ』


「そっか。アイツ消えてへんのやな。

 そりゃあ泣くよなぁ。

 緑鬼とか、まだしもええように言うてくれたけど、ワカメ被ったカッパみたいやったもんなぁ」


すっかり元通りな赤鬼お兄さんは心の中で『いただきまっ!』と言ってパクリ。

「うわ。ホンマにシェフなんや……」


途端にお腹が鳴り、空腹を自覚した。

あとは勢いよく食べ進めた。

「ウマッ♪」



―◦―



【浪花の不穏は女の子の集まりだ!

 ナンかヤラカシそーだから来てくれ!!】


「ね、お姉さん。

 いっぱい集まってるみたいなんだけど、なんか知ってる?」

黒瑯の声は聞こえたが、バイオリンを奏でるのは続行。


「ウチは行かれへんからな」チラッと睨む。


「うんうん。あのお姉さん達、だぁれ?」


「……ルカや思う。多いんやったらな」


「ありがと♪

 だ~いぶ消えたよ♪ あとちょっと♪」


急いで行きたいのはヤマヤマだが、もう少し聞き出そうと奏で続ける桜マーズだった。







ヤマト達が暮らしていた街は横浜でした。

捜していたゲンブはヤマト達のアジトを占領していたみたいですね。


次の相手は浪花のルカです。



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