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藤鱗の龍神



〈だからオレはティングレイスじゃないと思うんだよなぁ〉


〈ん? オニキス、何が違うのだ?〉


〈フェネギはティングレイスが助けたのもアイツと組んでの事で、騙されてるんだって言うけどな、ティングレイスはその後ずっとマディアに治癒してくれてたんだよ。

 皆が人神を嫌って怖がってるからずっと隠れて治癒してたんだ。

 ユーチャ姉様が動けないマディアを運んで飛んでったから、ついてって見たんだよ。

 それが毎日だったんだ。


 それに、父様が堕神にされてすぐからの獣神(ケモノ)狩りで指揮してた王は、姿は確かにティングレイスだったが、中身が違うと感じたんだ。

 どっちかっつーとアイツだったんだよ〉

上空のイカツイ死司神を睨んだ。


〈僕は記憶を抜かれているから勘で話させてもらうが、オニキスは正しいと思う。

 捕らえられる直前のものだと思うが、微かな記憶に残っている臭いと同じものを今ここで感じている。

 全ては彼奴(アヤツ)なのであろう〉

アーマルもオニキスと同じく上を睨んだ。

〈神世に残っている兄弟と話したいものだな〉


〈これまでずっと――つっても時々らしいが、マヌルヌヌ様トコから連絡が届いてたそうなんだけどな、ソレももう無理なんだと。

 オレがヤられた神力射と職域の結界が強化されちまったみたいなんだよ〉


〈連携できれば彼奴なんぞに……〉


〈だよなぁ……〉



―・―*―・―



 兄弟が天を睨んでいた頃、瑠璃は小夜子の部屋に居た。


「ねぇ、仕事に戻らなくてもいいの?」


ずっと黙り込んでいた小夜子が、やっと口を開いた。


「明日、病院に行くと約束してくれたなら仕事に戻る」


「瑠璃の病院、予約制なんでしょ?

 日曜も祝日も予約受け付けてるんでしょ?」


「小夜子の方が大事だ。

 私を避けていたのだから、病院にまでは付いて行くなんぞと言わぬ。

 ただ、早急に検査を受け、治療を始めろ」


「避けてたんじゃないわよ。

 バイトしてたの。

 小口の返済をしなきゃならなかったのよ。

 会長さんに(まと)めてもらっただけじゃなかったから……」


「私に任せるのは、そんなにも嫌か?」


「嫌よ。申し訳なさ過ぎるじゃないの。

 ……せっかく友達になれたのに……」


「治療から逃げられる方が余程 迷惑だ。

 もう金銭的な事には口を出さぬ。

 自身で完済する為にも生きろ」


「瑠璃……確かに……そうよね。

 わかったわ。明日、行くわよ」


「そうか」立ち上がり、ドアに向かう。


「ね……」


「ん?」

ドアノブに手を掛けたまま振り返ると、震えている小夜子の頬を涙が伝った。

「……怒ってなんぞおらぬが?」


「……怖いの……」


瑠璃は何も言わずに戻り、小夜子を抱き締めた。


「……明日……お願い……」


「一緒に行ってよいのか?

 澪に頼んでもよいのだぞ?」


「瑠璃がいい……お願い……私……本当は、怖くて……行けなかったの……」


「そうか……」



―・―*―・―



「お……」


煌びやかな店内をぐるぐるウロウロしていた利幸が何かを見つけたらしく、隅のイマイチ目立たない棚に向かって行った。


「お~いトシ?」

少し離れた所から同じ棚に向かう。


「おい、コレは?」上の端っこを指す。


「ナンだよソレ?

 四角いだけのデカいカバンってぇ」


「瑠璃は こーゆー実用的なモンじゃねぇと喜ばねぇんだよ。

 書類とかデカいスマホとか入らねぇとダメなんだよ」


「デカいスマホ? タブレットだろ」


「んあ? ナンでもいーだろーがよ。

 ナンかそーゆーヤツだ」


「そうかぁ? ま、瑠璃サンらしいか。

 んじゃあソレ――おいおい勝手に触るなよ。

 こーゆー店じゃあな、店員に取ってもらうんだよ」

中央の方に視線を送っただけでスッと店員が寄った。


「仕事で使えるのを贈りたいんだが、これ以上はあるか?」


「かしこまりました。

 幾つかお持ち致しますのでご覧ください」

丁寧に礼をして明るい方を手で示した後、奥に行った。



「スゲーな……勝利のクセに」「おい」ペシ。


「おい、アッチに並べ始めたぞ」「だな」

「同じにしか見えねぇぞ?」「だよなぁ」

「どーすんだよ?」「コッチ見たな……」

「目で呼んでんじゃねぇか?」「行くぞ」

「引っ張るなって!」「静かにしやがれ」

「コッチ来てるぞ?」「はぁ?」「ほら」


「棚のお品もお持ち致しますので、明るいお席でごゆっくりどうぞ」礼、棚へ。


「と、とにかく行くぞ」「お、おうよ」



―・―*―・―



 東の街上空の様子を隣街から見ている死司の獣神達は、もっとよく見ようと姿を消して街の東端に瞬移した。


【ん? 何か飛ばなかったか?】


【見ていませんが……】


【ま、飛んだとしても人神じゃあないだろうからヨシとしよう】


【それにしても動きませんね……】


【だな。何が目的なんだろーな?

 結界を調べに来たのかとも思ったが……ただ待ってるようだな】


【ディルム、ルロザムールが来てるんだから行ってみたらどうだ?】


【ヤなこった。

 リグーリこそ、近くを飛んでみたらどーだよ?】


【目立ってどうするんだっ!?】


【ディルム様もお師匠様も、本当はお若いんですね?】


【ん? リグーリ、隠してたのか?】


【エィムには話しても見せても大丈夫だが、チャムが、なぁ……】


【エィム、チャムには黙っとけよ?

 俺達はアーマル、ウンディと同代だ。

 ミュムを指導してるハーリィもだし、クァム達の指導してる奴らもな。


 俺達の代の龍達は運良く大勢 逃げきれたんだ。

 オニキスが逸早く異変に気づいて知らせてくれたらしいし、マヌルの里から呼んでもらえたそうだからな】


【ドラグーナ様を護る事に専念していた同代は、既に堕神にされたか、人世に降りていた。

 ドラグーナ様を護りつつ職神も続けていた同代龍は、一旦はマヌルの里に逃げ込んだが、人神として再び職域に潜入した。

 その再潜入の際に私達も潜入した。

 だからその後、エィム達 末代を指導神として受け入れたんだ】


【人姿を変えているのは、本当の姿を知られない為ですよね?

 人神に見せるのは獣姿のみと定められている理由と同じですよね?】


【そうだ。獣神には人姿もあるなんぞと人神には知られたくない、というのが根底にある。妬まれるからな。

 マヌルヌヌ様から、敵神も偽っているだろうから変えよと指示されたんだよ】


【僕達にも潜入するのなら変えよと仰いました】


【だからチャムに合わせてるんだな?】


【はい。

 マヌルの里から出る前日にマヌルヌヌ様から、この姿に近くと示されたのがチャムだったのです。

 それで同代皆、一緒に試験を受けるのだからと同じ年代に揃えてくれたのです。

 試験の場所に居たので、仲間にしろということなのか、と近づきました。

 狐でしたし。


 そのチャムなのですが、親神様は何方なのですか?

 姿も成神に固定されていますが、本当はかなり幼くはありませんか?】


【最初に見たのは……50年程前だったか?】


【そうだなぁ……『備える』とか仰ってたよなぁ?】


【『鍵の為だ』とも仰っていたよ】


 そして子守りを押し付けられたよ。

 兄に押し付けて死司域に逃げたのだがな。

 また押し付けられるとは思ってもなかったよ。


【ああ。そう仰ってたな。

 つまりエィムが これからの主役ってか?】


【えっ?】【そう思って指導してるよ】


【ま、チャムは50歳そこそこの幼児だ♪

 そう思って見りゃあカワイイだろ?♪】


【何事にもキャピキャピ煩いのは幼さよりも性格だろうがな】


【……変な格好に付き合うのは止めます】


【ソレが賢明だなっ♪】あははははっ♪



―・―*―・―



 東の街の中央公園――『トウゴウジ公園』とユーレイ達が呼んでいる公園でも、空を睨んでいる者達が居た。


〈入れないみたいで良かったけれど、とんでもなく禍々しい死神ね……。

 破邪が使えるなら誰でもいい。

 弱くても、浄化でもいいわ!

 結界に全力で注ぎなさい!〉


〈はい!〉複数。

集まっていた弟子達のうち半数以上が一斉に結界端へと移動した。


〈アナタはナンジョウに。

 アナタはホウジョウに現状を伝えて。

 来させるんじゃないわよ。

 各々の街で備えるようにね。

 今はお師匠(サイオンジ)様が遠出してるんだから〉


〈〈はい!〉〉霊道へ。


〈トウゴウジ様!〉上を指している。


トウゴウジは その方向を確かめた。

〈モグラね……こんな時に……〉


〈トウゴウジさん!〉まだ声だけ。


〈あら響チャン♪ まさか自転車で?〉


〈まだ免許の為に貯金中なんだもん。

 それより! 私トコは強化したわ。

 コッチも急いで強化するからっ!〉

自転車で走り抜けて行った。


〈元気ねぇ……でも助かったわ。

 アナタ達、モグラも来てるんだから皆を避難させて!

 それが終わったら此処で連絡係よ!

 私は上に行くから お願いね!〉



―・―*―・―



 飛んでいる『何か』は東の街に達した。


〈ん? 何か飛んだか?〉《龍だな》

〈姿消してるが淡い紫じゃねぇか?〉

〈キレイだね~♪〉《ショウ、ウンディは?》

〈見てるよ♪ まだお店~♪〉《そうか……》


〈おお~い! コッチだ!〉

オニキスが手招き。姿を消したままだが。


藤色の龍が止まった。探っているらしい。


〈降りて来いよ!〉《ウィスタリアか?》


〈あ♪ はい!〉降下。

〈やっと龍に戻れましたので参りました〉


〈そっか♪ ヨロシクなっ♪〉


《オニキス、お前の兄だ》〈あ……〉







青生が東京で拾った犬だったウィスタリアは美しい藤鱗の龍神に戻りました。



ドラグーナの子供達は『護り』(人神は『守護』と呼びます)をしていた人神が住む都や街で捕らえられると封じられ、眠らされて護りを続けさせられているんです。


ウィスタリアのように堕神にされているのは護りの場所の外で捕まった子供達なんです。



アーマルの同代(89代)はオニキスが気付いて護りをしていた再生域から逃げ、マディアに呼ばれてマヌルの里に逃げ込めたので、先に堕神にされていたアーマルとウンディの他は捕まっていません。


ミルキィ&チェリーは、つい最近猫にされてしまいましたけどね。



エィムの代(100代)は、護りをする前に獣神(ジュウシン)狩りが始まったので捕まっていません。


この2代の次に多くが護りの場所から離れられたのが、ウィスタリアを含むゴルシャインの代(77代)なんです。



ついでに、滝を纏めているカーマインは3代次子で、長子シアンスタから託された妹ふたりを連れて滝に逃げ込みました。


と、覚えなくてもいい情報でした。



あと、神にとっての50歳は人の5歳くらいです。



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