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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第33章 離れたくない春でも騒がしい
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お誕生日会



 翌日、終業式が終わって彩桜とサーロンが帰宅すると、玄関に祐斗と堅太が居た。

「あれれ? お家の用事は?」

そう理由をつけて祐斗は先に帰ったのだった。


「いいから着替えて♪」「早くしろよな♪」


「うん……?」


「「サーロンも♪」」


「はいです♪」一緒に部屋へ。


「居間で待ってるからな♪」「来てね♪」



 そして居間へ。

「わあっ♪」「あ! サーロンの誕生日♪」


中学生と卒業生だけでなく、小学生も高校生も笑顔で待っていた。


「だよ♪ 料理、頼んどいたんだ♪」

「彩桜は明日だけど、明日は みんなでアウトレットパークだから。いい?」


「サーロンと一緒がいい~♪」


「だったら2人は、ここね♪」

まるで高砂席だ。


「食べる間だけだから座ってくれ♪」

「冷めるから早くして」凌央は相変わらずだ。


「うん♪」「はい♪」


「じゃあ始めるよ♪」「おう♪」

祐斗と堅太も席へ。


 台所側のドアが開いた。

「「ケーキ入場だ♪」」

黒瑯とリーロンが広いケーキを運んで来た。

「カットは任せた♪」「2人でなっ♪」

『高砂席』前のテーブルに置いて出て行った。


テーブルにはケーキだけ。

「ナイフは?」「ないですね……」


「ナイフ出せるよな♪」

『刀でスパッと♪』コールになった。


「やる?」【みんななら大丈夫だよね♪】

「はい♪」【知ってるから大丈夫だね♪】


「それでは「2人の共同作業です♪」」

笑いが湧く。


「結婚式じゃにゃいからぁ」

「でも楽しいです♪」

言いつつ彩桜はテーブルの横に立つ。

サーロンは正面のままだ。

「「せ~のっ♪」」

動かしている筈の腕すらも ほぼ見えないが、素早く動く刃物の煌めきだけは見えた。

どうやら縦横分担してカットしているらしい。

ぶつからないのは流石だ。


見ている皆は自然と嬉しさが声になる。


 動きを止めた2人は透けて見える剣を掲げるとケーキナイフに変えて

「お皿、持って並んで~♪」「ください♪」

テーブルの両側に立ってニコニコ♪

「サーロンの方 半分、チョコケーキだから両方 貰ってね~♪」



 配り終えて、皆が席に戻る。

「サーロン♪」「彩桜♪」

「お誕生日おめでと~♪」一斉♪ 拍手も♪


「「ありがと~♪」です♪」


「あ!」「どしたの堅太?」

「これも切ってくれ♪」丸焼きチキン。


「そうだね♪」


 ケーキカットをしたテーブルにチキンが並んだ。

「カットするる~ん♪」「はい♪」

各々が前に1皿置いて両手に剣。

間に(カラ)の大皿も置いた。

「「せ~のっ♪」」


「また手が見えないね♪」

「キラキラだけだなっ♪」


「真ん中の皿に骨?」


「骨だね♪」「どーやって抜いてるんだ?」


カットされても崩れないチキンが出来、真っ白ツヤツヤな骨の山が築かれる。

後で庭の犬達に あげるのだろうか?


「取り来て~♪」危険なので手を止めた。


 出来上がりの皿が運ばれるのを待って再開。

『なっ!?』「ほえ?」止まった。

【あらら~】【今日も来たんだね】


「漢中国5千年の歴史が生んだ秘技だ♪」

「そう驚くような事じゃないから慣れて」

「無理だよ。常識から出られてないから」

純玲(すみれ)ちゃん、夕香(ゆうか)ちゃん、こっちね♪」

「動けないんじゃない?」「だぁね~♪」


その通りで夕香が引っ張っているが動かない。


「困ったヤツだな。

 沙都莉(さとり)、頼んでいいか?

 男子が触ったら怒るだろーからな」

「そうね。夏月(なつき)ちゃん行こ」「うん」

「私も行くわ」六花(りっか)も加わった。


2人が背を押し、2人が手を引いて、ようやく座らせた。


「夕香ちゃんは慣れた?」

テーブルは違うが椅子が背中合わせなので、銀河(さらら)が夕香の袖を引いた。


「うん♪ なんだかワクワク?

 楽しいから通わせてもらうね♪」


「うん♪ 来てね♪」


馬白(ましろ)君、怖がらないでね?」


「え? あ……うん……」


「純玲ちゃん、言葉がキツいだけだから」


頷いたが、純玲の視界には入らないように悟に隠れた。

【どうした白竜?】

月羽(つくば)さんの不穏に睨まれてるんだよ】

【俺も警戒しとくからな。安心しろ】

【ありがと悟空】


「でも……怖いのも解る」肩を竦めた。


純玲は聞こえてもいないらしく、口を開けたままフリーズしていた。



 話しているうちにチキンカットは終わった。

「食べる~んるん♪」「始めるです♪」

お昼少し過ぎ。

育ち盛り達は食べなければならない時間だ。


 料理の山に隠れている彩桜は、まだ動けていない純玲を観察していた。

サーロンも料理に集中しているフリをしつつ神眼を向けている。

弱禍(じゃっか)、浄滅しても出てくるね】


【うん……浄滅できてにゃい?

 それとも別のが出る?】


【隠れられる場所があるのかな……?】


【常識って盾?】【それかも!】

もっとよく見ようと神眼に神力を注ぐ。


【オトナには感じてたんだ。

 弱禍を常識の枠が護ってる感じ。

 でもコドモは ずっと柔軟で、浄滅し易いって。

 彩桜達の音楽は、そんなオトナの弱禍も弱めて消していく力を持ってる。

 だから弱禍も悪神も、全力で抵抗するんだと思う。

 月羽さんの場合、普通のオトナよりもガチガチな感じだから、弱禍が逃げ込めるんじゃないかな】


【音楽 聴かせてもダメ?】


【どうだろ……堅牢な城郭でも鼠が(かじ)って崩せるかもだから、聴かせ続けたらいいと思う】


【膨らんだら、ソラ兄 来てくれる?

 また相棒してくれる?】


【来るよ。相棒なんだから当然♪

 彩桜も東京に来てね♪】


【うんっ♪ でも響お姉ちゃんは?】


【響にもボクがサーロンだと話すつもり】


【いいの!?】


【この料理、響も一緒に作ってる。

 だからもう大丈夫だと思うんだ。

 もちろん狐儀様と理俱様に相談するけどね】


【そっか~♪】


【だから響の御札サポートでボク達が連携して戦ったらいいと思うんだ♪】


【うんうん♪ あ!】【立ち上がったね】

【コッチ来てるぅ~】【構えておこうね】

【うん!】


 皆に見詰められているのは全く眼中に無いらしく、純玲は真っ直ぐに彩桜とサーロンに向かって来ていた。


【膨らんでない……どうして?】

【小さいけど強くなってるぽい?】

【そうだね。もう弱禍とは言えないかも】


 ドアの向こうでは黒瑯とリーロンも身構えている。

渡り廊下には紅火。居間の天井には狐儀も居る。


【あと少し……】【近づいたら浄破邪ねっ】


「え? あれ? 私……」


「お祝い来てくれた~♪」「ありがとです♪」


「あ、えっと……おめでと」


「ありがと♪ コレあげる~♪」「御守りです♪」


「輝竜大明神!?」


「ジョークグッズ♪ 気にしにゃいで~♪」

浄破邪タップリな本気グッズだ。


「学力向上の御守りだよ」

「効果テキメンだよな♪」

「みんな持ってるよね♪」

「僕も持ってる。常にね」

負けず嫌いなら、これだけ言われれば捨てたりしないだろう。


「料理、冷めるですよ?」


「そ、そう、ね。うん」

キョロキョロして夕香を見付けて席に。


【弱禍に警戒されちゃったかにゃ?】

【そうかもね。気が抜けないね……】

【でも今は食べよ~♪】【そうだね♪】

食事再開♪ 皆にも笑顔が戻っている。


【後で演奏しにゃいとね~♪】

【頑張ってね♪】

【もっちろんサーロンもだよ♪】

【え?】

【空マーズも上忍だも~ん♪】

【うわ……ボクも頑張るよ】

【うんっ♪ 相棒だし~♪】

【そうだよね♪】



―◦―



 アトリエに移動してホールで音楽の夕べ。

彩桜は常にステージに居て、サーロンとは勿論の事、拓斗とバイオリン、祐斗 陽咲(ひなた) 海月(みつき)とピアノ、紗とフルート、直史 六花とサックスでと楽しく過ごした。

「サーロン 祐斗、3人でピアノねっ♪」


弾き始める。


「ここから始まりだったね。

 サーロンて上達 早いよね。

 やっぱり血筋?」

祐斗が しみじみしている。


「音楽、大好きだからです♪」「俺も~♪」


「彩桜はサラブレッドだよね」


「俺、お馬さんじゃにゃいしぃ~」


 あ……デジャブ……そっかアメリカで♪


それも始まりだったと、ついつい、しみじみしてしまうソラだった。


「サーロン、渡音フェス来るから、また一緒に馬頭(マーズ)少年団ねっ♪」


「来るの!?」


「来るの~♪」「あ……はい♪」


曲が終わる。


「次、もっかい直史と氷坂(こおさか)さんねっ♪

 サーロン、テナーサックスねっ♪」

「ちょっ、彩桜!?」

【ソラ兄に戻ってる~♪】【あっ】

「練習してたの知ってるよ~ん♪

 音楽部の楽譜からねっ♪

 俺バリサク(バリトンサックス)する~んるん♪」


 準備していると兄達も来た。

「あれれ? 黒瑯兄、晩ご飯は?」


「ウチは料理人だらけだからなっ♪」


「そっか~♪」


 話している間に要塞が引き出される。

兄達、当然だと楽器を構えている。

「俺達はバックバンドだ♪

 緊張しなくていいからな♪」

「だよ♪ 龍の背中に乗ってくれ♪」


 直史と六花の為にカウントが入る。

流れ出した音色にはジャズらしく大人な感じもあるし、楽し気な子供感も混ざっている。


「彩桜の『楽しい』が溢れてるなっ♪」

「前に出過ぎじゃない?」

「お♪ マネージャー厳しいなっ♪」

「マネージャーだとか関係ないよね」

「直史も楽しそうだよなっ♪」

「僕の言葉は無視?」

「ベース、上手くなったよなっ♪」

「聞いてないんだね。ま、いいけど」


「聞いてるぞ♪ 凌央も頑張ってるよな♪」


「……ありがと」


「けど、ナンで音楽部に入ったんだ?

 やっぱ直史を追ってか?」


「違う」


「1000点満点を目指す為か?」


「少しはあるけど、それも違う。

 彩桜を知りたかった。

 音楽を知れば、彩桜に繋がると思った。

 上手く言えないけど」


「なんとなく解ったぞ♪

 彩桜は音楽で、音楽は彩桜だよな♪」

「彩桜は音楽の神様だよ」


「祐斗も、そう思うの?」


「音楽の精かもだけど、とにかく特別な存在だよ」


「だな♪ けど普通が大好きなヤツだ♪

 世界に羽ばたいても戻ってくれる俺達の彩桜だ♪」


「「そうだよね」♪」


あとは静かに、心底 楽しそうな彩桜を見詰めた。







サーロンの誕生日なので翌日な彩桜も一緒に邦和式お誕生日会をと、祐斗と堅太が企画しました。

気になるのは純玲の不穏禍ですが……輝竜兄弟とリーロン サーロンが気づいているので大丈夫でしょう。



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