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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第33章 離れたくない春でも騒がしい
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魂材にされた大将軍



【ガネーシャ様! お助けください!】


〖はいは~い♪ ええっ!?

 青生と彩桜どーしたの!?〗


【彩桜は称号が(ざわ)つくと!

 青生は双子連動しただけです!】


〖父様父様父様っ!!〗〖どうしたのです?〗

〖彩桜が!!〗〖ビシュヌ来なさい!!〗


〖声を荒らげて何だよ?〗来た。


〖闇らしくするのに亀を込めた時!

 余計な事をしませんでしたか!?〗


〖余計なってぇ〗う~ん……。


〖このままでは彩桜様と青生様を失います!

 早くなさい!!〗


〖まさか酒!?〗


〖彩桜様は飲みません!!〗


〖しかし何かに酔ったとしか……〗探る!


ガネーシャとラピスリは必死で全力治癒中。


【瑠璃先生、彩桜が光をどんどん吸い込んでいませんか?】

ソラに戻って術治癒を唱えつつ。


ハッと顔を上げた。

【……確かに!

 もしや光を拒絶しているのですか!?

 彩桜は光と闇、両方なのです!

 青生とは魂が双子!

 このままでは青生の光が!!】


〖ビシュヌ!!〗〖一旦、亀を抜く!!〗

〖そうしましょう!〗〖ブラフマー!!〗


ビシュヌが呼んだブラフマーだけでなく集まった。


〖彩桜からビシュヌの亀を抜きます!

 手伝ってください!!〗


ケイロンとオーディン、続いて紅火も来た。

〖紅火、聞いた通りです。

 掌握での的確な摘出をお願いしますね〗


〖その手があったか!

 それは良い! 大至急 頼む!〗【はい】


 紅火が彩桜の肩に手を添えた時、輝竜兄弟が揃った。

【金錦兄、領域昇華を。

 黒瑯は、領域供与。

 白久兄、黒瑯を双璧維持。

 藤慈、此方に来てくれ】

緊急事態なのは紅火に呼ばれた時点で察していたので皆サッと気を高めて動いた。


 藤慈は紅火の肩に手を当てると頷いて瞬移し、戻ると湿布らしいシートを青生と彩桜に貼り始めた。

いつもは疑問を直ぐに口に出す黒瑯も、この時ばかりは無言で供与を維持している。

昇華と供与に後押しされた大神達は、青生と彩桜の命を保とうと神力を注ぐ。


 貼り終えた藤慈が立ち上がり、紅火の背後から両肩に手を添えて唱え始めた。

その両手が光を纏う。

白いシートは青生には胸と腹と額だけだったが、彩桜には上になっている全面を覆い尽くしていた。


 10分程、紅火は唱えるだけで微動だにしなかった。

やがて彩桜の右肋骨下辺りに黒い点が浮かび上がり、滲むように拡がると、紅火は其処に両掌を当てて唱える術を変えた。


 そこからは1分程。

紅火の右手の甲が幽体離脱したかに見えたのが掌握(神の手)で、その淡い手は小さな黒塊を掴んでいた。

【ビシュヌ様、お返し致します。

 お稲荷様、亀神様の神力片をお願い致します】


 部屋の隅で瞑想し、神力を高めていた大狐から紅火に向かって、纏う碧光の尾を引いた黒塊が飛んだ。

掌握が伸びて掴む。

【有難う御座います】

掌握は紅火の右手に重なって見えなくなった。


 そしてまた1分。

【称号核、安定しました。

 お確かめください】

詠唱を終えた紅火が彩桜から手を離した。


シヴァ、ビシュヌ、ブラフマーが寄る。

ケイロンとオーディンも確かめに来た。



 昇華と供与を受けて光を帯びた大神達が寄せていた顔を上げて微笑んだ。

〖完璧ですね、紅火様。

 ありがとうございます〗

シヴァが代表して述べた。


【兄弟を助けたかっただけです】

恥ずかし気に視線を落とすと、瞬移し(逃げ)ようと――


〖お待ちください。

 ビシュヌ、原因は?

 ご兄弟には知る権利があります〗


〖そうだな。探っていて気付いた事、全てを話す。

 亀が悪いのではない。

 不適合の原因は、魂材と成った人神への私の怨みなのだろう。

 既に素材と成っているのだが……其奴は私と戦い、私を呪った兵長だ。

 名は知らぬ。ただ強かった。

 魂材とされた経緯も何も知らぬ。

 それでも反発してしまったのだな。

 負の感情が故に光を拒んで闇を生み、不必要に強めてしまったのだろう。

 闇は引き寄せる力だ。

 強まった闇は光をも喰らう程に成ったのだと思う〗


〖まさか酒の?〗


〖その通りだ。

 奴の呪は、神の活力である酒を、私の大好物を、私にとってのみ毒としおったのだ〗


〖で、あったな。

 解呪術は全て試したが全く効かず。

 ならば覆そうと解呪神力を集め込めた称号を成したが、呪は変貌するのみで消えず、何度 繰り返そうとも滅せぬだけでなく、繰り返せば繰り返す程に酷くなる。

 ビシュヌにとって今や酒は毒として魂を蝕むだけでなく、先日の通り、世を滅ぼし兼ねぬ暴走を引き起こすものと成りおったのだ〗


〖もう数十億年も過去の、私が再誕する以前の話だ。

 しかし騒ぎを起こしてしまった事で怨みが再燃していたのは確かだ。

 まさか、このような形で再会するとは夢にも思わなかったが……〗


〖素材に戻されておりますからね、誰なのかを特定するのは、まず無理なのです。

 ですから、これまではビシュヌでも気付けなかったのです。

 ですが、その素材は兵長の拾知を持っております。

 神力が消されきれずに残ったのは兵長が、処した浄化神達を上回る大神であった証拠。

 本当に強かったのです。

 それに拾知は常時待機状態で発動しております。

 ですので探って初めてではありますが、ビシュヌだからこそ気づけたのでしょう〗


静かに聞いている兄弟に目を向けたブラフマーがフンと鼻を鳴らした。

〖そんな顔をするな。

 この2人を可哀想だと見るな。

 ドラグーナの魂塊は全て人神魂で包まれておる。

 つまり罪神の魂を素材としておるのは、この2人だけではない。

 兄弟皆、同じという事だ。

 だが お前等が罪を犯した訳ではない。

 それに罪神と成ったとは言え、その罪が神として真の罪であったかは不明だ。

 人の世の歴史でも同じであろう?

 時の権力者が、己の主義や都合で罪を決めるものなのだからな〗


【確かに、その通りです。

 見えもせぬ過去をいくら憂いても、未来に光は見えない。

 それよりも考え、動くべき事は大いにありますね。

 お話しくださり、ありがとうございます。

 弟達をお助けくださり、ありがとうございました】


 礼をした金錦が立ち上がり、彩桜を連れて帰ろうと踏み出したが、ガネーシャが首を横に振った。

〖今夜は此処で。ボクが保つから〗


【では、お願い致します】

弟達に視線で戻ろうと促して瞬移した。

弟達とソラも大神達に礼をして次々と瞬移した。



【瑠璃……もう俺は大丈夫だよ】


【青生……】


【俺は彩桜に引っ張られただけだからね。

 ほんの少しだけ見えたのを話してもいいかな?】


【無理はするな】


【うん。本当に少しだけだから。

 素材に戻されても残っていたくらい強い記憶。


 目の前に黒い人神が現れて『大将軍よ』と呼び掛けられたんだ。

 それだけで動けなくなった。

 迫って来た黒い人神が入ろうとしたけど出来なくて、腹を立てて目を赤くギラつかせて何かを唱えたら真っ暗に。

 見えたのはそれだけ。


 たぶん黒い人神はオーロザウラ。

 動けなくされても大将軍は乗っ取られないように防護できたんだ。

 でも禍に包まれて……。

 唱えていたから呪われたんだと思う。

 あの赤目は支配だと思うよ】


【つまりホムダマールト様とマホガニック様の他にも、同様に罪神にされた人神が居るのだな……】


【だと思うよ。

 もしかしたら兄弟皆そういう人神様の魂が素材なのかもね】

青生は辛そうに揺れる瞳を伏せた。

【とても強い大神様だからこそオーロザウラは器にしたかった。

 でも失敗し続けて路線を変えた。

 オーラタム様で、やっと乗っ取れたんじゃないかな?


 彩桜、泣かないでね。

 俺達が生きる事で、大将軍様も生きられるんだからね。

 正しいと信じる道を一緒に進もうね】


【ん……頑張る……】


【何処から聞いていたの?】


【記憶ないトコも拾っちゃったのぉ。

 俺も黒い人神(オーロザウラ)、見ちゃったぁ。

 拾ったのじゃなく見ちゃったのぉ。

 あのね あのねっ、『大将軍』の前にオーロザウラの口、動いてたのぉ。

 大将軍様、お名前呼ばれちゃったと思うのぉ】


【ふむ。故に動きを封じられたのだな。

 それも呪だ。有名人達も気をつけろ】


【うん。ありがとう瑠璃。

 俺も彩桜も、今回ので呼び覚まされたんだろうね。

 でも……これで正真正銘、俺達が双子だって証明されたね。

 彩桜、そこは喜んでおこうよ】


【うん】もそもそぴと。【だ~い好き♪】


【うん。大好きだよ】よしよし。


〖青生、彩桜。

 私は、あの怨み辛みを消し去ると誓う。

 奴も任務を遂行しただけだろうからな。

 もう気にせず休んでくれ〗


【ありがとうございます】

【ビシュヌ様も休んでね~】


〖そうしよう〗

笑みを浮かべたビシュヌが消え、他の大神達も追って消えた。



【お稲荷様も休んでね~。

 亀さん、ありがと♪】


【ふむ。確かに定着したようだな】フ。

最後まで心配そうに見ていたオフォクスも隠し社に戻った。



【ね、ガネーちゃ師匠。

 大将軍様も堕神にされたの?】


〖大きな塊で素材になってるし、素材にされても記憶や神力がシッカリ残ってるから、たぶん還魂(カンコン)刑に処されたんだと思うよ~〗


【ソレなぁに?】


〖堕神刑は流刑、還魂刑は死刑かなぁ?

 人神が決めたんだから~、獣神には正確な説明は無理なんだけどね~。

 今の人神には還魂なんて無理。

 だから、ぜ~んぶ堕神にするんだ。


 還魂は何度も浄魂と鎮魂を繰り返して素材に戻していくらしいね。

 少しずつ存在を消されていく、と~っても厳しい刑だよ。

 それだけの大神様なら何億年も掛けて還魂したんじゃないかなぁ。

 もしかして数十億年も掛かって、初めてドラグーナに使ったのかもね~。

 へなちょこ人神達だから~〗


【そぉなんだ……】


〖40億年前、獣神の地に勢力を拡げた人神達は沢山の国を作って争ってたらしいんだ。

 30億年前には2国になって対立。

 20億年前に やっと1つになって今に至るんだ。

 だから、そ~ゆ~争ってた国軍の大将軍が敵国に捕まったのかもだし、もしかしたら戦に反対して王を諌めた大将軍かもだから、あんまり罪とか考えない方がいいよ〗


【うん。ソッチだと信じる♪】


〖うん♪ 彩桜が笑ったから~♪

 ボクもフツ~に話そ~♪

 疲れるんだよね~あの話し方♪〗


【ガネーちゃ師匠が戻った~♪

 おっ帰りなさ~い♪】


〖たっだいま~♪〗象にも戻る♪


【彩桜、笑ってないで寝ろ】ぽこっ。


【瑠璃姉が乱暴するぅ~】


五月蝿(うるさ)い寝ろ】ぴこっ。


【何処からピコハン?

 瑠璃姉がピコハン具現化した~♪】


【サッサと寝ろ!】ぴこっぴこぴこっ。







青生と彩桜の魂材にされた古の大将軍様は、きっと とんでもなく強かったんでしょうね。

そこにも絡むオーロザウラ。

ま~ったくシツコイです。

それにしてもビシュヌ様って、そんな古~い神様だったのね~。


ビ『再誕したと言ったろーが!』


凛「でも呪は消えず~だったんですね?」


ビ『より悪化した。

  私が奴に負けた。それだけだ』フン。


あ~、プイッと消えてしまいました。

やっぱり悔しいんですね。(苦笑)



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