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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第一部 第4章 四獣神と子供達2
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獣神秘話法



 東の街の結界の上では――


「ルロザムール、この害壁は何なのだ?」

イライラ爆発寸前!

穏やかで清らかな仮面は何処へやら。


「い、いや、なっ、何でっ御座いましょっ」


「日々 人世に来ておきながら知らぬとは言わせぬぞ」


言葉に詰まったルロザムールは配下を引き寄せ、少し離れた。

「何故、此処に案内したのだっ」


「ウンディの近くで動けばモグラが現れるだろうと仰ったのはルロザムール様で御座いますっ」


「それでもだっ、少しは考えよっ」


「お言葉ですがっ――」「全て聞こえておる」


「「うっ……」」


「隠していたのだな?

 やはり補佐はエーデラークだけでよいな。

 ウンディとやらが この害壁から出る迄、待つより他には無かろう」


「「はっ、はいっ!」」



―◦―



 その様子を隣の結界上空から見ている死司の中年男神と若い男神が居た。


【あれは……最高司様ですよね?】


【だな。とうとうお出座(でま)しか。

 少し遠いが、此処から様子見だな】


【はい】


【あ、向こうにリグーリも来たな。

 すぐ行けるようにだけは構えておけよ?

 ん? 若い奴がコッチ見てるな。

 害は無さそうだが……】コホン。

〈あれが君の昇格ターゲットなのですね?〉


〈はい。本人は無防備なのですが

 強い護り札を持っているのです〉


〈確かに。

 死印は付いているのに……困りましたね〉


羨望の眼差しを向けていた死司神が去った。



 ディルムとエィムは視線を下に向けたまま、神眼で隣街(ひがし)の上を見続けた。


【どうやら奴でも この結界は

 抜けられねぇらしいな。

 エーデラーク不在か? 好都合だな♪】


【そのエーデラーク様は結界を強化し続けておられますが味方なのでしょうか?】


【また強化しに来たら、この話し方で声掛けてみるかな?】


【あ、そうですね。

 獣神話法の中でも最強の秘話法でしたら人神には全く感知できませんからね】


【ああ。だからもし人神に知られたら術と同様に禁忌にされちまうだろうな。

 ま、感知すらも出来やしねぇから、禁忌もヘッタクレも無ぇがな♪】


【いろいろと禁忌が多くて、この話法も禁忌だろうと思っていました】


【だな。だから皆、軽い獣神話法しか使わねぇんだろーな。

 おーい、リグーリ!】


遠くに見える老死司神が一瞬だけ視線を向けた。


【ディルム。この話法は――】


【禁忌じゃねぇよ♪

 人神が知らねぇだけだがなっ♪

 俺もエィムが この話法の話を出すまで禁忌だと思って使わなかったんだがな。

 調べたら、知られてもなかったんだ♪】


【そうか。これなら連絡が取り合えるな】


【だろ♪ エィムは賢いよ♪】


【神世には? 届くのか?】


【いや。妙な結界に阻まれてやがる。

 神世の内でも結界だらけで死司域の外には届きやしねぇ】


【そうか。人世の内々は良いとして、神世は近くだけになるのか。

 だが前進だな。

 しかし……この事を潜入している皆に伝えるには……?

 下っ端老神(ろうじん)は滅多に上なんかに行く用なんぞ無いしな……】


【俺が浄化域には伝えに行ってやるよ♪

 たま~にお使いに行けるからな♪】


【着実に出世しているな】


【おぅよ♪

 ボロ出さねぇよう必死だがなっ♪】


【この話法だろうが気を抜くなよ?】


【分かってるよ♪】



―・―*―・―



 東の街では――


「そろそろ話せよな」利幸が勝利を睨む。


「いやぁ、店に着いたらなっ」


「ったく~。

 おい、俺達ナンか避けられてないかぁ?」


「だなぁ。カン違いされてるよなぁ。

 あ、この店だ♪」


「ここに入るってのか!?」


「ただのブランド店だろ?

 ナンで驚いてるんだよ?」


「お前だけで入れよなっ!」


「入りにくいから連れて来たんだろーがよ」


「うわっ! ヤメッ! 引っ張るなっ!」


「騒ぐなよなぁ、目立つだろーがよ」

ガッチリ腕を掴んで突入した。



―◦―



〈ここって?〉〈女性用?〉

ロゴ看板上の子猫達は顔を見合せた。

〈〈場違~い♪♪♪〉〉あははははっ♪×2。


そして上を見る。


〈アイツも誰か女神にプレゼント?〉


〈まさか~、それはナイでしょ?♪〉


〈でも……恋してるっぽい?〉


〈ん~~、してるっぽいね♪〉


〈お腹と頭、黒々してるのに~〉


〈ほっぺと胸に花咲いてる~♪〉


顔を見合せ、ぷっ♪ あははははっ♪


〈〈似合わな~い♪♪♪〉〉やだぁ~♪×2。



―◦―



「んで、小夜子にかぁ?」


「ちげーよ。声でけーよ」


「女物だろ?」「だよ」ヒソコソ。


「まさか瑠璃にかっ?」


「だよ。っせーな。

 小夜子サンと話してくれた礼だよ。

 おかげでホステス辞める、面接受けるって言ってくれたんだからな」


「礼かぁ。

 そんならまぁ、ちゃんと選ばねぇとな。

 だがなぁ、瑠璃が宝石とか着けてんのなんか見たコトねぇぞ」


「そーなのかぁ?」


「ああ。化粧もしやしねぇよ」


「素顔でスッゲー美人なんだよなぁ」


「だよ。

 だから宝石なんか見てもダメだって」


「んじゃあ服かぁ?」


「あんなヒラヒラしたの着るかよ」


「なら何がいいんだよ?」


「ここにあるヤツなぁ……」う~ん……。


「瑠璃サンの好みは?」


「旦那」


「いや、そーじゃなくて」


「ま、あの旦那のフインキまんまだよ。

 それに実は金持ちらしいぞ?」


「実は、って?」それとフンイキだ。


「輝竜家が、かもしれねぇがな、彩桜がそんなふうなコト言ってたんだよ。

 俺が転職しまくらなくても戌井家には瑠璃ならイクラでも援助できる、だとよ」


「マジかよ……」まさかコイツ鮭の卵と勘違いかぁ?


「旦那の兄弟は、ヤマ大の教授と、大企業の常務と、セレブホテルのシェフと、薬の博士だからな。あと不思議道具屋だ♪」


「獣医が霞むラインナップだな。

 あ、不思議道具屋ってナンだぁ?」


「空飛ぶソリとか作るんだ♪」


「はぁあ???」


「もうすぐクリスマスだからな♪

 勝利にも見せてやるよ♪」


「マジかよ……」「マジだ♪」



「で……」「何を選ぶか、だよなぁ……」



―・―*―・―



 街近くの国道脇では――


《ショウ、見えたか?》


〈トシ兄だ~♪ お買い物?〉


――暇をもて余したトリノクスがショウの神眼を鍛えていた。


《そのまま保っておけ》〈うんっ♪〉


《アーマル、上の奴だが……》


〈はい。偽りの姿の内に彼奴が見えます。

 記憶を抜かれようが覚えている姿が〉


《私も同じだ。

 しかし憎悪を膨らませてはならぬ》


〈はい〉〈なぁ兄様〉〈どうしたオニキス〉


〈あのイカツイ死神だがな、兄様の記憶は?〉


〈真の姿と憎しみしか残っていないが……〉


〈やっぱ そっか。

 アイツはマディアの鱗を剥いだヤツだ〉


〈鱗を!?〉《マディア……》


〈ん? トリノクス様もご記憶が?〉


《堕神とされ、浄化までされてしまったのでな。

 兄や息子達と話し、情報は得たが……マディアという名に引っ掛かりを覚えた。

 話したいものだな》


〈マディアは行方不明なんです。

 生きてるってだけはオフォクス様に見て頂いたんですけど。

 アイツ、オレ達と一緒に再生域には行けなくて、滝に残されて次代を指導してたハズなんですけど……その後はサッパリ……〉


《何故、滝に残されたのだ?》


〈末っ子だから元々小さかったんですけど、鱗剥がされてから大きくなれなくて、オレ達を連れに来た兵士にも次代だと思われて残されたんです〉


《そうか……》

〈それで、彼奴の話を詳しく頼む〉


〈ああ。

 まだオレ達が小っこくて滝近くで基礎修行してた頃だ。

 王命とやらでアイツが来たんだよ。

 無知で無謀で分からず屋でプライドだけはメチャクチャ高くて、どーしよーもないバカ神だった。

 何度も何度も滝に行こうとして、オレ達が止めても聞きやしねぇ。


 父様達に空間ごと飛ばされて命拾いしたってのに解ってなくて、腹癒せにオレ達を地面に叩きつけやがったんだ。

 で、父様達に都に返されてクビになったらしいが、ソレ根に持って また来やがったんだ。

 で、今度は鱗や毛を(むし)りやがったんだ。


 ソレ止めてくれたのがティングレイスなんだよなぁ。

 だからオレはティングレイスじゃないと思うんだよなぁ〉







月ではマディアとエーデリリィがイーリスタに神世の状況を話しています。


内容は、これまでに出てきましたので割愛します。

ですので、その間は全て人世のお話になります。



トリノクスはマディア、ティングレイスと滝で禍と戦っていたんですからマディアの名前に引っ掛かって当然で、今回ラストのオニキスの言葉にも引っ掛かっているのではないかと思います。



【】の話法は、獣神秘話法という獣神にしか使えない話し方です。


獣神の場合、他にも鳴き声という人神には言葉として聞き取れない獣語もあります。

龍の場合は咆哮です。



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