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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第33章 離れたくない春でも騒がしい
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メーアと金銀青マーズの生放送



 キリュウ兄弟の上3人がバイオリンを奏でて2曲目に入った。

【ん? オッサンが泣いてる?】

【癒しと浄化を強めに込めていますから♪】

【青生の方が上手(うわて)だったな】フ♪


 更に続けていると、クライマックスで増馬(ふえるま)は号泣し始めた。

【もう聴いてねぇだろ……】


【白久兄さん、最後まで演奏しますよ。

 金錦兄さん、彩桜の件が落ち着いたらマーズスタッフに誘ってあげてくださいね】


【は?】【あんなオッサン要らねぇぞ】


【ちょっとしたお手伝い程度なら問題ありませんよ。

 人脈なら大いに持っていそうですからね。

 それに仲間入り出来たと感動して、もうマウント取ろうなんてしないと思いますよ】くすくす♪


 余韻が天に吸い込まれるように消える。

揃って礼。

「では、次がありますので」

「失礼しますね」

持っていたバイオリンは何処へやら。

颯爽と出て行った。



―・―*―・―



 彩桜達は、アウトレットパークが避難所として使われた場合の説明を聞いた後、遠足らしく歩いて山南牧場に向かった。

「あ!」「橋だ!」「近くなってる!」

くねくねと谷に向かって下り、牧場の方へと上っている旧道を横に見つつ橋を渡る。


「山南牧場で昼食です。

 その後は自由行動ですが、動物を驚かせたり乱暴などは決してしないでくださいね。

 馬に乗るのも許可を得ています。

 私か輝竜君に声を掛けてくださいね」


「狐松先生も乗馬するの?」


「はい♪」


「見た~い♪」「先生、乗って~♪」


「そうですね。輝竜君、走らせましょうか」


「うんっ♪」


緩やかなカーブを進んで旧道と合流すると牧場の門が見えた。



―・―*―・―



 金錦達は車で待たせていたメーアと一緒に東邦テレビのビルに入った。

もちろん車内では濃色サングラスと黒マスク、ハットを深く被って顔を隠していた(のでパッと見ギャングにしか思えない)。

守衛にも許可証は見せたのだが、メーアの顔パスで通してもらえたようなものだった。


 地下駐車場で車から降りた瞬間に黒服から忍者装束に。

駆けて来ていた見田井(みたい)が跳び跳ねて喜んでいる。

「どうぞ こちらに!

 いやぁ、いい瞬間が見られました!♪」


面の内で苦笑しつつ向かった。



―・―*―・―



 二中の1年生達は昼食の時間が終わり、自由行動になった。

狐松が黒菱(こくりょう)に乗り、彩桜は白桜(はくおう)に乗って外周を走らせている。


きゃあきゃあ大騒ぎ。

狐松先生、人気爆上がり間違いなしだ。


「竜騎も! 竜牙(りゅうが)も来てるから~♪」

駆け抜けた。


「行こう白竜」「うん!」


 彩桜が指した方に走ると、巧馬(たくま)歌音(かのん)が竜牙と灰桜(かいおう)に馬具を着けていた。

「竜騎様、此方に」


到着。

「牧丘さん、もう『様』なんて……」

「照れてないで乗れよ白竜♪」


「悟君も♪」歌音が手招き。


悟も竜騎と一緒に南渡音に通っては乗っていたので上達していた。

「はい♪」灰桜に乗った。「行こう」


「うん♪」

楽しそうに彩桜へと駆けさせた。



 悟と竜騎が到着すると、狐松はパカポコ散歩のアシストに回った。


「外周 走って~、障害コースねっ♪」


「おう♪」「うん♪」


 横並びになって、一斉スタート!

3頭とも全力で、凄い迫力だ。


4組と栂野原(つがのはら)小卒と陸上部の生徒達が唖然として見ている。


「すっかり別人。

 そう思っていいから、これから仲良くしてあげて」

そう言って、凌央はパカポコ待ちの列に並びに行った。



―・―*―・―



(おさ)、つまりリーダーが金マーズです。

 俺は銀マーズ。副長(ふくおさ)、サブリーダーです。

 青マーズはチームの頭脳。参謀ですね』

マーズへのインタビューが始まり、最初に自己紹介をと言われて白久(銀マーズ)が そう言った。


 それまではフリューゲルについてのインタビューで、生放送なので青生(青マーズ)が見田井の言葉を同時通訳し、銀マーズがメーアの言葉を同時通訳していた。


『サブリーダーが喋り担当ですか?』

司会者初挑戦なのに見田井はアシスタントを断ったらしい。

マーズ担当だとの主張なのだろう。


『そうなりますね。

 忍者は基本、寡黙ですから。

 それに(おきて)もありますし、話せる内容を考えて答えなければなりませんから。

 考えるのが得意な青マーズも喋り担当ですけどね』


『金マーズさんは?』


『長は黙って全体を見るのが役目。

 静かに睨みを利かせているんですよ。

 あと、忍者話法で指示を飛ばしています』


『銅マーズさんは?

 いらっしゃらないのですか?』


『ウチの流派も そこそこ居ますから、任命すれば銅マーズも生まれますけどね。

 階級的には居たとしてもマーズの三番手は冷静沈着カラーの青ですし、メダルじゃありませんし、今のところは任命してもステージに立てる者は居ませんから考えてないんですよ』


『流派って伊賀とか甲賀とか?』


『そんなメジャーな流派じゃありませんよ。

 歴史には全く残っていない流派です。

 俺達が初めて世に出てしまったんですよ』


『出て良かったんですか?

 あ、どうして出ようと?』


『理由は1つじゃない。

 メーアと仲良くなれたのも1つ。

 増え過ぎている負の感情を減したいと思ったのも1つ。

 求められるのが嬉しかったのも1つ。

 他にもありますが、今は ここまでに。

 出て良かったのか否かは、まだ分かりませんね。

 始めたばかりですからねぇ』


『そうですか。今日は歌の方は?』


 白久がメーアに訳す。

二言三言――もう打ち合わせだ。

『喉の調子は悪くないがメンバーは来ていない。と言っています。

 俺達(マーズ)も3人。

 それでも、と仰るなら歌うそうです』


『ぜひ! 準備をお願いします!』


 メーアとマーズ3人が立つと、インタビュー用セット横の何も無い場所に案内された。


 準備の間を埋める為に見田井がボードを持ってCDのプロモーションをしてくれている。

4人が案内されて移動しているのはカメラが捉えていたが、プロモーションが始まると画面いっぱいにボードが写し出されていた。

『ジャケット写真は話題の馬ぬいマーズで――カメラさん向こう!』


 見田井が指したのだろう。

切り替わって準備中のマーズが大写しに。


 マーズ3人は何も無かった筈の場所にアンプとスピーカーの壁を作っていた。

組み上げていたのを引き出して置いたのではなく、空中からアンプやスピーカーを取り出して素早く並べているのだった。

ドラムセットの方も、空中から取り出して組んでいる。

 その前でメーアはウォーミングアップ中。

平然と身体を(ほぐ)し、発声練習をしていた。


『あっ』と見田井の声が入った後、再開したプロモーションは声だけになり、手品のようなセッティングが放送された。


 前に出て確かめ、セッティング完了とマーズが頷き合う。

銀マーズがバク宙してドラムに着き、金マーズと青マーズがクルンと背の龍を煌めかせて前向きに戻るとベースとギターを構えていた。

メーアが後ろにニッとすると曲が始まった。


『これはアルバム1曲目の、邦題では『強き絆』ですね!』


 メーアの声が乗る。

調子は悪くないどころか上々だ。


 聴き惚れて、あっという間に間奏。

ギターソロが終わろうとした時――

『俺達 参上~♪』

――宙返り途中の格好で高い位置に現れた5人が身を低くくした忍者ポーズをキメて着地。

立ちつつクルンで楽器を持っていた。

ギターとベースがダブルになり、サックスとトランペット、トロンボーンで華やかになる。

 心底嬉しそうなメーアがマイクに寄って2番に突入した。



―・―*―・―



 分身で彩桜とサーロンをしている狐儀は狐松として動きつつ、神眼で眺めていた。


「先生にこにこ?」


「皆さんが楽しいと私も楽しくなります」


「お天気もいいもんね♪」

「先生、小さい馬!?」

「彩桜君とサーロン君が囲まれてる!」


「ミニチュアホースですよ。

 友達なのです」ふふ♪



―・―*―・―



 曲が終わると、後で現れた5人は上に跳んでバク宙しつつ消えた。

『ああっ!!』見田井が騒いでいる。


 残った4人が礼。席に向かって動いた。

インタビュー用セットは すぐ横なのでサッサと座る。


『あっ、あのっ、現れて消えたマーズは!?』


『今日は平日です。

 演奏してると察知して、学校と職場から抜けて来たんですよ。

 そんな訳でソッコー戻らないとバレますから消えたんです。

 それに(おさ)に叱られる前に逃げないとね♪』


一瞬、目を点にした見田井が吹き出した。

『いや失礼。これまで冷たいイメージがありましたでしょ?

 それはそれで忍者らしいとは思っていましたけどね、いや、忍者って冗談も言うんですね♪』


『これまで報道は、この仮面を剥がそう剥がそうとしてくれましたからね。

 だから忍者の敵だったんですよ。

 それをしなくなったから忍者の友に変わった。それだけです』


『報道を変えたのはマーズとマーズファンの皆様ですよ。

 これまで報道は明らかにする事こそ正義と突き進んできました。

 邁進しているつもりでしたが、そうではなく盲進になっていたと気付かせて頂けたんです。


 『マーズの中身なんて、マーズが消える事に比べれば どうでもいい』

 『ミステリアスだからこそ良いのだから暴くな』

 『好みのイケメンを当て嵌めているのに、その自由を奪うな』

 と、多くのご意見を頂いたんですよ』


『ファンの皆様『『ありがとうございます!』』』

3人ピッタリ揃って頭を下げた。


『コイツらマジでイケメンだぞ』『メーア!』

銀マーズがメーアの口を塞ぐ。

『ファンに変な期待持たせるなっ』

〈客観的で率直な感想だぞ♪〉〈心話!?〉

〈キク婆様の実家に通って鍛えたからな♪〉

〈昼間そんな事してたのかよ〉〈そうだ♪〉

菊乃と妹達、ユーレイ3姉妹から習ったらしい。

だから和語を訳さなくても少しは伝わる。


『銀マーズさん訳してくださいよ』『無理だっ!』

『青マーズさんお願いします』『勘弁してください』


通訳が控えていたらしく紙が届いた。

『そうですか♪『マーズは本当にイケメン』だそうです♪』


『勝手に訳すな! 勝手に喋るなっ!』

『銀、想像を膨らませて頂くのは自由だ』

『ったく~』『だろ♪』『メーアこのっ!』


『と、騒がしくなったところで時間のようですよ?』

青マーズが指す。マキがブンブン入っている。


『あっ、ありがとうございます!

 フリューゲルのメーアとマーズのお三方、ご出演ありがとうございましたっ。

 エンディングはフリューゲル&マーズで、邦題『疾風』と『瞬間(とき)を抱きしめて』です! ではまたお会いしましょう!』

最後の方は とっても早口。







演奏中に現れたマーズは弟達とサーロンです。

サーロンは彩桜に引っ張られたんでしょうけど。

生真面目そうな金錦も、増馬教授を仕返し的に泣かせた青生もマーズするのを楽しんでいますので、伝わって弟達が来たんでしょうね。



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