ずっと一緒
廃教会に来た彩桜達は内部を探検し、ステンドグラスを楽しんで外に出た。
「お弁当 食べよ~♪」
陽射しぽかぽかな庭内の砂利道に膨らむスツールを並べていく。
「山で座ったヤツだな♪」「増えたね♪」
「紅火兄にいっぱい作ってもらった~♪」
まだ並べている。
「お弁当、持ってってください♪」
サーロンは配る係。
「彩桜のデッカイ荷物、やっぱ弁当か~♪」
「後ろから見て楽しみにしてたんだよね♪」
ワイワイなまま食べ始めた。
【ね、分身で俺お願い】【え? うん】
物凄い速さで食べ終えた彩桜が瞬移したと同時にサーロンが分身。
【彩桜?】
【ちょっと確かめるだけ。違和感あるの】
【みんなが入らないようにするよ】
【ありがと♪】
―◦―
彩桜は廃教会の奥に出て、小部屋のドアをそっと開けた。
【やっぱり死神師匠~♪】
【やっぱり気づくよね】苦笑。
【どしたの?】
【ちょっと忘れ物。これ】賽子を見せた。
【この気……トシ兄?】
【鋭いね】
【良かったぁ、居たんだ~♪
瑠璃姉も知ってる?】
【知ってるよ】
【そっか~♪ 瑠璃姉の小夜子さんは?】
【彼女は……無理なんだ】
【そっか……】
【でも、神世で保護してるから】
【ん♪ ありがとです♪
これからもお願いします】
【それじゃ。
これを持ち出し忘れただけだから】
【うん♪ 一周忌のも ありがとでした♪】
【あ……えっと、うん。じゃあまた】
ふいっと外方向くと、慌て気味に消えた。
「そっか。トシ兄にまた会えるんだ……♪」
呟いて小部屋を出た。
「あれれ? 光った?」
〖近くに神っ気が無いのかなっ?
お~い! だ~れか~!
リグーリぃ~、エィムぅ~、チャムぅ~!
だ~れか居ないかな~っ?〗
【ほえ?】
教会の真ん中辺りの床から聞こえるので近付いた。
〖あ♪ ドラグーナ~♪〗
【ここかにゃ?】
両手を差し出して探り、それらしい空をボールを包むように囲んで、位置が低いので座った。
【俺、彩桜♪ その声、月のイーリスタ様?】
〖あ~♪ サクラだ~♪
そ~だよ♪ イーリスタだよ~♪
サクラすっごく修行したんだ~♪〗
【修行、楽しいから~♪】
〖うんうん♪ でね、エィム達、留守?〗
【さっき出てっちゃったのぉ。
俺の友達いっぱい来てるから、夕方まで戻らないと思うの~】
〖そっかぁ。
じゃあ連絡は明日にしよ~かな~〗
【夕方、ダメ?】
〖月の角度がね~。
この糸電話、や~っと完成なんだけど~、まだまだ改良したいんだよね~〗
【糸電話だったんだ~♪】
〖サクラ……もしかして最近マディアと会った?〗
気を感じて、戦ったのかと心配している。
【うん♪ 瑠璃姉と青生兄と一緒に会った~♪
神世に行ったの~♪
瑠璃姉が今ピュアリラで~、青生兄が今ブルーで、俺が今チェリーなの♪】
〖え? チェリー?〗隣に居る。
【えっとね、異界の神様なブルー様の弟のチェリー様♪
その力を継いだ今ブルーと今チェリーってコトにしてるの~♪】
〖してる、って……まさか敵神に!?〗
【うんっ♪ 会ってお話しした~♪】
〖うわわ……マディアとは ゆっくり話せないんだよね~。
その話、ちゃんと聞きたいな~〗
【じゃあ青生兄と一緒にまた来る~♪
月が南くらいがいいの?】
〖ええっと、そ~なるかなぁ?
今、南に月が見えてる?〗
【見えてる~♪】神眼で三日月♪
〖じゃあソレで♪
今みたく話しかけてもらえるかなっ♪〗
【うんっ♪ 明日はエィム様ねっ♪】
〖うんっ♪ 伝えといて~♪〗
【は~い♪】
―◦―
分身を消さなければならないサーロンとタイミングを合わせて彩桜が戻ると、皆は教会の敷地内を散策していた。
空になった弁当箱を片付けていたサーロンが心配そうに顔を覗き込む。
【えっとね、月の神様が糸電話 作ってたの。
その試運転が違和感だったの♪】
椅子を片付ける。
【月にも神様?】
【兎の神様なの~♪】
【玉兎って神様だったんだ……】
【死神師匠に掛かった電話、俺が取っちゃった~♪】
【じゃあ後で呼んで伝えないとね。
今日のお礼も言わないとね】
【うんうん♪】
スツールの数が1つ足りないのでキョロキョロ。
【徹君、なんか書いてる?】
【写生かな? 行ってみない?】【行く♪】
「徹君♪」「お邪魔します♪」
「あ……下手だから見ないでっ」
「下手じゃないと思う~♪」
「ありがと。
廃墟に来たら描くようにしてるんだ。
もう帰りたくなってる?」
「み~んな楽しんでる~♪
ね、合格発表って、いつ?」
「(3月)1日だけど、もう合格確定だからホッとしてるよ♪」
「どして?」
「不合格だと『3択電話』が掛かるんだ。
浪人か就職の、今年は行かないを選ぶか、定時制に行くか、定員割れの高校に行くか、の3択。
それが昨日だったから、もう大丈夫だと思う」
「「おめでと~♪」ございます♪」
「まだ早いよ。もしも、が残ってるから。
でも……今日ここに来れたのは合格祝いみたいで……すごく嬉しい。
歴史研究部を選んで良かった。
彩桜に会えて……みんなに会えて、本当に良かったよ」
「俺も~♪」「ボクもです♪」
今はサーロンではあるが、9月に3人でスタートして本当に良かったと、強く思うソラだった。
―◦―
帰り道――
【彩桜、月に行ったの!?】
【連れてってもらったの~♪
月の偉い神様達にドラグーナ様の封印、隙間 拡げてもらったの~♪】
【そっか。そうやってドラグーナ様は目覚められたんだね?】
【うん♪】
【偉い神様達って?】
【玄武様と朱雀様と青龍様と白虎様が居た~♪
あとね、お稲荷様の弟様達とかドラグーナ様のお子様達も~♪
俺、ハムちゃんなってた龍神様 連れてったの~♪】
【大勢なんだ……ボクも行きたいな……】
【敵神が道 壊しちゃったの。
だから行き来ムリなって糸電話なの】
【そっか。まずは平和にしないとなんだ】
【うん。ソラ兄、これからも時々サーロンで俺の相棒してくれる?
メインは響お姉ちゃんだって分かってる。
けど……】
【うん。常に響と一緒とは限らないし、響は補助系だから、ボクも考えてたよ。
お兄やショウが加われるのは、まだ先だと思うし。
ボクも……サーロンしてたいんだ。
高校生で戻るとしても寂しくて……】
【俺も寂しかったのぉ】
【ボク、これからも週末はバイトするよ。
分身の修行も頑張る。
これから彩桜の相棒はメグルくんだと自分に言い聞かせてたけど、やっぱりボクは彩桜と一緒がいいんだ】
【良かったぁ~。
寂しいの俺だけだったら どぉしよって思ってたのぉ~】
【ボクも同じ。
ボクだけだったらって不安だったよ。
彩桜には友達が沢山だから】
【サーロン特別なのぉ。従兄なんだもん。
心友なんだもん!】
【ありがと彩桜――今、泣いたらダメだよ】
【だってぇ、嬉しいんだもん】
「目にゴミ入ったぁ~」
「ペットボトルの水、まだあったよね?」
「すぐ追いつけるんだから止まって洗えよな」
「そのまま走るのは危ないよ」
「サーロン、世話係ヨロシクなっ♪」
凌央、悟、竜騎、堅太と、止まった彩桜とサーロンを追い越して後ろへ後ろへと続いた。
「うん! みんな ありがと!」
脇に避けた。
少し心配を漂わせている笑顔達が二人に声を掛けながら通り過ぎる。
最後の祐斗が
「ゆっくりしてて」
短く言うと二人に微笑んで通り過ぎた。
【バレバレだねぇ】
【当然だと思うよ。みんな親友なんだから】
【そっか~♪】
【これからの生活も、あの輪の中に居たいけど……踏み出さないとね。
次に合流する時にはシッカリ二足の草鞋するつもりだから。
その修行期間なんだから】
【俺も修行する~♪
スーパー忍者なる~♪】
【ソッチ?】あははっ♪
【全部~♪
時々サーロンと一緒して~、ソラ兄とも一緒して~、兄貴達モチロンで~、友達とも、一緒にいろいろ修行する~♪】
【じゃあボクは、響と東京の祓い屋さん達と修行するよ。
金錦お兄さんにも教えてもらうつもり♪】
【ん♪ じゃあサーロンも忍者修行ねっ♪】
【え? ソッチ!?】
【リーロンにも忍者修行させる~♪
マーズ、9人にするの~♪】
【そっか……キリュウ兄弟とは人数を違えた方がいいよね。
ボクも頑張るよ♪
マーズの音楽はバンドにも繋がるからね♪】
【うんっ♪ ずっと一緒~♪】
【だからもう泣かないでね?】
【うんっ♪ 行こっ♪】
【そうだね♪】
彩桜もサーロンも寂しいのは自分だけじゃなく互いに思っていたと知りました。
でも、時の流れは止められません。
子供にとっては遥か彼方な漢中国です。
いくら親戚でも、世界のキリュウ兄弟でも、この双子みたいな仲良しイトコ達が易々とは会えなくなると祐斗達も少しシンミリです。
利幸が成仏していなくて、イーリスタと糸電話で話せると知ったのは嬉しかったんですけどね。
なので彩桜は考え始めました。
まずはリーロン・サーロンも忍者にしてしまおう、です。




