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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第33章 離れたくない春でも騒がしい
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ふと思う春



 金錦の所に集まり谷辺達を見送った輝竜兄弟は、今度はフリューゲルを送る為に帰宅した。


 フリューゲル揃って外に出て来た。

「楽器は置いといていいんだぞ?

 来月また来るんだからな」

アルバムの宣伝で音楽番組に出演予定。


「これから演奏会なの~♪」

せっせとバスに積み込んでいる。


「「「「は?」」」」フリューゲル寝耳に水。


秋小路(あきのこうじ)さんトコで演奏会して、楽器 積んだ飛行機ごとオッテンバッハ空港♪

 オッテンバッハさんのホールでも演奏会したらお城に送ってあげる~♪」


「忍者移動でか?♪」「うんっ♪」


「何曲やる気だ?」「3曲ずつ~♪」

「アンコールは?」「あるかも~♪」

「ま、いっか。

 だから航空券も任せろだったのかぁ。

 そうか! 昨日のがリハだったのか!」


「当ったり~♪」



―◦―



 秋小路家の大広間での演奏会を終えて、私設空港へ。

出国手続きも終えて財閥御三家の総帥達に挨拶しに行った。


「忍者とは考えたものだね」

「顔を隠すのにも、不思議現象の説明にも忍者で忍法だからと言えばいいのだからね」

「でも本物の忍者って居ないんですかね?」

秋小路(あきのこうじ)松風院(しょうふういん)春日梅(かすがうめ)


「もしも伊賀と甲賀から苦情が届いたなら、第三の流派、歴史には名を残さなかった某賀(ナニガシガ)流だと名乗りますよ」

白久が冗談めかして笑う。


「それはいい。

 オッテンバッハ空港の管制官にだけは、忍法で唐突に現れると伝えているからね」

「勿論、極秘だと念を押してね」

「念を押したと言うか脅してましたよね♪」

「「如月(きさらぎ)君……」」苦笑。


「ありがとうございます♪

 では、飛行機は夜中にお返ししますので」



―◦―



 オッテンバッハホールでも演奏後に挨拶しに行くと応接セットに ゆったりなオッテンバッハ社長が笑顔で招き入れてくれた。


「更に良くなりましたね!

 圧倒されましたよ♪」

部屋の奥に居たらしい息子のファルケが大喜びで走って来た。


父アードラ(オッテンバッハ社長)が笑いながら、落ち着けとファルケを座らせる。

「力強さと美しさが、あれ程にも融合するとは……感動しましたよ。

 クラシックファンも増えそうで嬉しく思いますよ」


【青生兄アレンジのかな?♪】

【どうだろうね】

【イメージ瑠璃姉だって俺も思ってたも~ん♪】

【そうなの?】バレてしまったが平然と。

【うんっ♪】

オッテンバッハ父子の対応は白久に任せて後ろで話す彩桜と青生だった。


「世界ツアーのスタートをこのホールにしてくれて ありがとう」


「俺達のスタートが此処だったんだからトーゼンだよな♪」

メーアも上機嫌だ。


「最終は? 秋に再度このホールになっているけど、その時かな?」


「いえ、未定なんですよね。

 行きたい所が多過ぎて終わりが決められないんですよ」

「世界中に生音で届けたいからな♪

 途中からアルバムが2枚、3枚と増えても続けるつもりだ♪」


「ほう。では年始は?」

「&マーズは3日でしたよね♪」


「キリュウ兄弟の邪魔は出来んからな。

 たまにはフリューゲルのみで勝負だ。

 こればっかはライバルだからな!」


「解ってるよ♪ 各々の活動も大事。

 一緒にも大事で楽しくだ♪」



 こうしてフリューゲルを送った輝竜兄弟は、この調子で世界中のライブも大丈夫だろうと掴んで、夕方のドイツから夜中の邦和へと帰った。



―・―*―・―



「彩桜、お散歩の時間だよ」ゆさゆさ。


「んにゅ? あ♪ サーロンおはよ~♪」

セルフ浄化&回復治癒で元気に起き上がった。



 外に出ると、

「今日こそは ついてくからな!」

前日は寝込んでいた心太が宣言してフライングスタートした。勿論、自転車でだ。


「「おはよ~♪」です♪」


「おはよ。いいの?」「追いつけるもんな♪」


「うん♪」「です♪」


「あ、逆に曲がった」

「サーロン、犬達お願い。

 俺、捕まえる~んるん♪」タッ!


「もう見えなくなっちまったな♪」

「もうそのまま忍者だよね♪」

「けど昨日は? また何かあったのか?」


「フリューゲルお見送りです♪」スタートです♪


「東京?」「です♪」確かに行っていた。


「ゎぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁ!!」

彩桜が自転車を押して目の前を通り過ぎた。

早朝なのに迷惑な叫び声だ。


「曲がって追え!♪」「はい♪」


この楽しい日々も あと1ヶ月かと、ふと思ってしまったソラだった。



―◦―



 いつものように悟が4丁目へと離れ、祐斗と堅太が帰宅すると、すぐに輝竜家なのだが、その手前に男の子達が見えたので彩桜だけが止まった。

「恭弥また後でね♪」「うん♪」家へ。

【サーロン、竜騎。心太さんお願い】


【【うん】】もう庭に入っている。


【心配しないで♪】

大地(だいち)くん、大洋(ひろし)くん、大空(かなた)くん。どしたの?」


 真新しい表札の前で正義(まさき)の出待ちをしていたらしい3人がビクンとして、恐る恐る振り返った。


「怒ったりしないから安心してね。

 まだ早いと思うよ? ウチ来ない?」


「でも……」「なあ……」「うん……」


「ヤマトさん達 居るから?

 怒ってないな~い♪

 朝ご飯ちゃんと食べた?

 そ~だ♪ 正義くんも呼んであげるね♪」


「「「おねがいします!」」」



 正義と話していた間に、先に家に入ってもらうとヤマト達に歓迎されていたので、暫く そのままに。

落ち着いたところで瞑想を中断して居間に行って声を掛けた。

「でも どぉして正義くん?

 春希くんに謝りたいんじゃないの?」


「ハルキには昨日の夕方あやまりました」

「それで先生のを知って……」

「あやまらないとって思って……」

「でも顔、知らないから」

「帰りはムリだと思って」

「朝にしてみたんです」


「そっか。もぉすぐ来るからね」

玄関に来ているのは見えている。


 若菜に案内されて、白猫を抱いた正義が入り、春希が続いた。

「「「忠野君ごめんなさい!」」」


「ボクになんて……おとうさんのタマシイ、この猫の中なんだ。

 1年しないと話せないんだって。

 ハルキ君の おとうさんは1年たったから話せるんだよ。

 だからボク、がんばれるんだ。

 だから……あやまらなくていいから、中学校では友達になってね♪」


「このネコに先生?」「ホント?」


「ホントだよ。

 おとうさんのニオイするもん♪

 あとね、ときどき目が おとうさん♪

 だからボク、だいじょうぶ♪」


「けど、ハルキもだけど百合谷小……」


「「ひっこしたから♪ それだけ♪」」


「だけ?」「ホントに?」「なあ」


「「ホント♪ 中学校は、またいっしょ♪」」

「だから前向いてね♪

 家が離れても一緒に遊んだらいいし~♪」

彩桜が真ん中に入って二人の肩を抱く。

「そうだよね♪」「うん♪」


「「「いいの?」」」


「いいんだよ~♪」「「ね~♪」」



 この5人は自分達が卒業してから入学するんだと気付いた彩桜は、少しセンチメンタルな気分になったのを風が春めいたからと こじつけて、思いを無理矢理に ごく近い未来に向けた。


 徹君と廃教会に行くでしょ♪

 パルクールでチェイスタグでしょ♪

 またメーア来るでしょ♪

 文化財巡りだし~♪

 ライブツアー始まるし~♪

 あ……サーロン、あと1ヶ月なんだ……。



―・―*―・―



 そして週末。

歴史研究部員を中心とした集団は中渡音地区の東端に自転車で向かっていた。

 朝の爆走散歩とは違って、のんびりサイクリング。

自分の前後くらいしか声は届かないが、楽しくペダルを漕いだ。


「この道の向こうだと思うんだよね」

国道から折れた徹が自転車を止めた。


 次々と空いている場所に止まる。

その向こうは雑木林で、かつては砂利道だったらしいが今は両側からの雑草で狭くなっているし、下も砂利を探すのも難しい程に雑草だらけな道の痕跡に、徹は自転車を押して入った。

彩桜とサーロンは大きな荷物を背負っているが、どうにか2人並べそうなので一緒に続き、それに倣えで2人ずつ入って行った。



「待って徹君!」「隙間あるです♪」

道なりに国道に戻りそうになっている徹を勝手知ったるな二人が引き留めた。


「え?」

振り返ると、自転車を止めた彩桜とサーロンが壁としか思えないくらい高く生い茂っている藪を掻き分けていた。


「見えた~♪」「教会あるです♪」


「そこだったのか!♪ ありがとう!♪」


皆は(響がよく車を止めている)少し広くなった砂利場に次々と自転車を止めている。


「みんな~♪」「通ってください♪」



 通り抜けると、早春らしい淡い下草に色とりどりの小花が揺れていた。

それが静かに佇む廃教会の清楚さと相まって、皆 思わず立ち止まり、息を呑む。


「どのくらい放置されてるんだろ……」

「崩れてないし、キレイだよな」

「普通の廃墟のイメージとは全く違うね」

小花を踏まないように、これまた砂利道だったらしい痕跡を慎重に進む。


「入れるの?」「どうだろうね」

すぐ後ろの夏月と祐斗の声に答えそうになりつつ彩桜とサーロンが扉の前で頷き合う。

「徹君、開けてみてみて~♪」


「いいの?」


「許可は取ってるから~♪」


「え? 市役所とか?」


「うんうん♪」適当。


「鍵は?」


「コレ~♪ 開けた~♪」古めかしい鍵~♪

【彩桜、その鍵は?】【アトリエの鍵~♪】


「ありがとう。開けてみるね」

取っ手を握って祈りを捧げるように目を閉じる。

「いくよ」


 観音開きの扉を一気に開けると、埃が舞うだろうと思っていたのに清らかな風が内から外へと吹き抜けた。

「どうして……?」


 踏み出しても埃は舞わない。

所々崩れていて廃墟感を漂わせているが、ずっと使っているかのように埃っぽくなかった。

「35年も放置されてる筈なのに……」


「もしかして市役所の人が掃除してる?」

「あ~、そうかもな♪」「それなら納得」


「徹君ガッカリ?」


「大切にしてくれているのは嬉しいよ!♪」


「うんっ♪ もっと探検しよ~♪」







フリューゲルが帰国して ちょっぴり寂しいのもありで、春の気配を感じる度に なんだかセンチメンタルな彩桜とサーロン。なんですけど――という章です。


出会いと別れの春。

彩桜にとっては中学で初めて友達になってくれた徹は卒業するし、ソラが東京に行くのでサーロンは帰国させないといけない。

分かりきっていたことですが、やっぱり寂しくて悲しくて。

ですが浸りたいのに次々と騒ぎが……ま、気が紛れて良いのかも、ですよね。



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