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顔出しマーズ



 その後、青生は休憩すらも取れずにいた。

忙しいままの夕方、

【お~い青生、今日 帰れるかぁ?】

白久から呼び掛けられた。


【結局、急患続きで行けなくて すみません】


【ンなのはいいんだよ。

 夜に上総南署と浪花中央署が来るんだと。

 二手(ふたて)に分かれて対応しなきゃなんねぇから帰ってくれ】


【何か準備が必要ですか? 馬、被ります?】


【白玉サン小倉サンが一緒らしいから顔出しでいいだろ。

 質問次第だから出たトコで心話するってので ど~だぁ?】


【それじゃあ瑠璃に引き継いだら帰ります】



―◦―



 青生が瞬移で帰宅すると、居間と台所が楽し気に賑やかだった。

【白久兄さん、何処で話すつもりですか?】


【居間のつもりだが? ど~したぁ?】


【楽しそうなので別の場所にしませんか?】


【ん~~~青生の部屋?】


【いいですよ。

 アレルギーでない事を祈りますけど】


【あ~そっか。猫やらだらけだな♪】


【書庫から応接セットを運びますね】


【一緒にな♪】【はい♪】



―◦―



 玄関チャイムが鳴る。

「はいは~い♪ ってオジサン達、記者?

 だったらオコトワリ~」


「午前中に電話した警察です」


「サツ!?」脱兎!!『ヤマト逃げよ!!』

『ナンだよミコト!?』


『ミコト! お前らの現住所は此処だ!

 誰も連れてきゃしねーから座ってろ!』


「……何の騒ぎだ?」


 男が走って来た。

近くの戸口からも同じ顔が覗く。

「騒がしくてスミマセン。

 電話受けたのオレです。

 どーぞ上がってください」

「リーロン、居間じゃなくて青生の部屋だってよ」

「ん。黒瑯も行くんだろ?」

「飯運びがてらな」


――と話している間に もうひと組。

「あの~、駐車場――」「案内する~んるん♪」

彩桜が駆け出ていた。


【彩桜は部屋で大人しくしてろ!】

【ええ~っ! 俺ダメなのぉ?】

【警察対応は大人だけだ。

 けど部屋で聞くのは勝手にしろ】

【うん♪】



 そして紅火の防音壁で人エリアが2分割な青生の部屋へ。

「兄貴と藤慈はコッチな」

白久は浪花側へ。


「黒瑯、紅火お願いね」

青生は上総側へ。

まずは夕食会が始まった。



【ねぇねぇ白久兄、青生兄。

 まだ車にヒト居るよ?】


【誰がだよ?】【どっちも後部座席に2人~】

【刑事さんと犯人だね】【うんっ♪】

【ナンで来てるんだよ? ったく~】


【リーロンにも言った~♪

 俺 食べ終わるまでメーアと遊ぶ~♪】


【好きにしてろ】【うんっ♪】



―◦―



「メーア、お話しいい?」


「いいぞ♪」


「作曲してたの? ホントいいの?」


「すぐに2枚目を出したくて考えてただけだから気にすんな♪

 明日 発つから彩桜の方が急ぎだ♪」


「ん、ありがと♪

 あのね、俺 行きたいトコあるんだ」


「世界ツアーでか?」


「うん。ホールとかスタジアムとかないと思うし、たぶん何か飛んでくると思うけど、音楽 届けたいんだ」


「つまり……」

奥の棚のレトロな地星儀を持って来てクルンと回すと、1点を指した。

「此処か?」

其処は地星で唯一、紛争が絶えない場所で、国とは認められていない地域だった。


「うん。

 ちゃんと透明な防壁して護るからお願い」


「やってやろーぜ。これぞロックだ♪」


「うん♪」


「上6人には話したのか?」


「まだ。先にメーアに聞きたかったから。

 昨日ね、大きな事故の慰霊塔が立ったの。

 平日なのに人いっぱい来てたんだって。

 大切なヒト失うの、とっても大きいの。

 だから俺達、音楽届けに行かなきゃなの」


「だな。

 マーズの音楽は心に響く。

 行くべきだと俺も思う。

 場所とか許可とかは俺達の事務所に任せろ。

 曲も新たに作るからな。

 たかが音楽とは誰にも言わせねぇライブをやってやろーぜ!」


「うん! ありがとメーア♪」ハグ♪



―◦―



 青生の部屋では夕食会が終わった。


 浪花中央署と白久達側。


「車の2人もダイニングで食べてますからご心配なく。

 あ~、刑事さんは同じのですけど出水(いずみ)は病人メニューですよ」


「そこまで……いや申し訳ないですなぁ」


「それでご用件は?」


「出水が死ぬ前に会って謝りたい、全て話すんは それからや言い張るから、黙秘のまま死なれたら思うて来たんですけどな。

 その前に、浪花までいらした経緯をですなぁ、距離を実感しましたんで聞かせてもらえたらと思いましてな。

 無理にとは言えませんけどな」


「フリューゲル&マーズのライブに関しては、どの程度ご存知ですか?」


「ネットニュースと尾張、東邦の2新聞を読んだ程度ですわ」


「そうですか。

 そのライブ前後に周辺で騒ぎを起こしたり、ライブ中に会場の換気口を壊して入ろうとしたのが西邦新聞とナニワ報道の記者だったんです。

 忍者の嗅覚にとっては、とんでもなく臭かったので追ってみたんですよ。

 で、臭いの元が出水だった。という訳です」


「忍者、ねぇ……」3人を見比べる。


「普段から忍者装束で暮らしてなんかいませんので。

 今の世に? とお思いでしょうが、密かに生きるのが忍者ですので絶えてなんかいなかったんですよ」


「そうですかぁ……」



―◦―



 上総南署と青生達側。


「これをお返しに参りました。

 谷辺(やべ)が罪を認めて話しましたから、一先(ひとま)ず終わりという事で。

 こんな塊にしてしまいましたが……」


「そうですか。ええ、そのままで。

 わざわざ ありがとうございます」


話しているのは千葉だが、大きな塊は白玉と小倉が運んで青生の足元に置いた。


「昨日、空を飛んだ馬ぬい達は?」


「全て直りましたよ。

 今は末弟の部屋です」


「見せて頂いても?」


「いいですよ。どうぞ」

【彩桜、聞いているだろうけど行くよ?】

【来て来て~♪】



「開けるよ?」『うんっ♪』


 共有スペース一面に馬ぬいが座っていた。

その真ん中に彩桜とサーロン。

【こんなに並べて何していたの?】

【お手伝い馬ぬい達の神力強化♪】


「新たに作っているのかな?」


「違うよ~。直したの~♪

 ひとりずつあげる~♪」

飛んで行って渡した。


「直した痕跡が……」無い?


「布の織り糸から直すから~♪」


「凄……これなら……うん」

「「流石マーズですね♪」」うんうん♪

白玉 小倉コンビは大喜び。


「それほどでも~」テレテレ。「あれれ?」


「また電話だね」「リーロン出たねぇ」

「金錦兄さんに、だね」「うんうん♪」

「文化庁?」「言ったねぇ。何だろ?」


「心配そうな顔をしなくてもいい」フ。

通り抜けた。



 千葉が思い当たったらしく小さく頷いた。

「たぶん、ですけどね。

 修復依頼だと思いますよ。


 谷辺は嘘投稿の前に落書きも投稿して、炎上したから削除してたんです。

 ですが残ってしまうのが今のネット社会です。

 巡り巡って神社の管理者も知るところとなりましてね、今では すっかり綺麗だと写真を投稿したんですよ。

 それで落書きで困っている寺社や観光地が騒いでたらしくて、ウチにも問い合わせがワンサカですよ。

 そのお願いもあって伺った次第なんです」


【彩桜の春休みに全国行脚となりそうだ。

 行けるか?】


【俺、行きた~い♪】【行きますよ】【ふむ】

【【モチロン行くぞ♪】】【行きましょう♪】


【では、そう返事をしよう】


「春休みに全国行脚が決まりました」

「うん♪ 彫ってるのも直すの~♪」



―◦―



 居間では、元・家出少年少女達にリーロンが説明していた。

「小中学校の卒業を調べる時に個別面談して本名と住所を聞いたろ?

 で、ご家族には無事だと知らせて捜索願を取り下げてもらってる。

 心配だろーけど本人が連絡したくなるまでは、そっとしといてくれと頼んでな。

 だから現住所も此処に移してるんだよ」


「みんなトコ全部 行ったの?」


「オレは留守番だけどな。

 兄弟がグルグルしてたよ」


「知らなかったぁ」

「だが、感謝すべきだ」


「ま、だから誰も追っかけて来やしない。

 安心しろ」


「けど、イロイロやってきたし~」


「証拠も何も無い。

 自首して自白したら別だけどな。

 それに今ウチ来てるのは管轄外だ。

 馬ぬいバラバラ呪いの儀式事件のだからな」


『そんな名前になってるのか!?』


「ん?」一斉に戸口を見た。


「うわわわ」谷辺が口を塞いだ。


「あ~、犯人なんだ~♪」

「マーズの顔見に来たんでしょ♪」

「カッコイイんだから~♪」


「ううっ――」「逃げるな。座れ」「――はい」


「馬ぬいに呪われたんでしょ~♪」

「じゃあオハライに来たんだ~♪」


「やっぱ呪われるのかぁ。

 声が聞こえたんだよ。唸ってたんだよ……」


「悪いコトしちゃダメだよね~♪」

「アタシ達も天罰あったよね~♪」


「何かしたのか?」


「家出した~」「けど今は親も知ってるって」

「ここの子にしてもらったんだ♪」「ね~♪」


「そういう笑顔の増やし方もやってるのか……」

「満足したなら車に戻るぞ」

「マーズの顔見ないと満足じゃないです!」


「ん? オレと同じ顔だ♪」「だよね~♪」


「7人全部とか有り得ないでしょ」


「同じだぞ」「ホントだよ~♪」「ね~♪」


「俺達 参上~♪」「彩桜ってば!」

またサーロンの手を引いて来た。


「うわ、双子だ」『オレ』と見比べる。


「同じだろ♪

 けど双子じゃなくてコッチはオレの弟だ♪」


「んでコッチはオレ達の弟だ♪」「兄貴達~♪」


「うわあっ!!」


同じ顔ズラリ。

「演奏会するからついて来い♪」


大騒ぎが出て行った。


「谷辺は顔を見たから車な」「ナンでっ!?」

「聴きたいのか?」「トーゼンでしょっ!!」







こんな簡単に顔を見せていいんでしょうか?

警察はいいとしても谷辺は……もう仲間扱いなんでしょうかね。



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