2日目の昼ライブ
「うわあっ! 金ピカ!!」
「コッチ見て笑ってる!?」
ヤマトとミコトが同時に叫んで身を低くした。
悪戯好き全開なドラグーナが、ラピスリのように壁に消えずに客席の上をぐるぐる飛んでいる。
皆が映像だと信じているのに、黄金龍が曲に合わせて揺らす尾がカラーのサーチライトを照り返すのが あまりにもリアル過ぎて、メーアまでもが視線が上だ。
仮面の向こうのマーズは一様に苦笑していた。
【父様っ!! 戻ってください!!】
任せてクレープを焼いていたラピスリが気付いて大慌て。
【そのうち自然と消えるから大丈夫だよ♪】
【父様が力尽きたら兄弟にも影響が及びますのでっ!】
【そう? だったら戻るよ~】しゅ~ん。
【しょぼんとしないでください】苦笑。
【じゃあ、もう少しだけ楽しもうかな♪】
【父様っ!?】
黄金龍は客席の真後ろで身を捩らせてステージへと直進した。
そして真ん中に達すると、弾けて7色の光球になって同色マーズへと飛んだ。
客席から悲鳴が上がる。
『危ない!』『避けて!』等と聞こえる。
マーズがクルンと背を向けて光球を受け止めると、背の昇龍が輝きを放った。
要塞の3人も高くジャンプして光球を受ける時には背を向けていた。
次の拍に間に合うように前を向きつつ着地して演奏に戻る。
『何しやがるマーズ!!
歌詞がブッ飛んじまっただろーが!!』
叫ぶメーアに客達は大爆笑。
その後はサビまでメーアも笑っていた。
『いい加減にしろよマーズッ!
リハ無視ばっかしやがって!
もう仕掛けてないだろーな!』
曲が終わった途端、メーアが笑いを堪えながらジロリと後ろのマーズを見回した。
『わっかんにゃ~い♪』
『いくつ仕掛けたかな?』
『忘れましたね♪』
『外にも何やら仕掛けてただろ』
『馬ぬいマーズを探せ~♪』
『ライブが終わったら楽しんでくださいね』
良いタイミングで告知できた。
―◦―
順調に進んでマーズのパフォーマンスもラストの曲になった。
【楽し~い♪】【そりゃ良かったな♪】
【俺、もう一度 飛びたいんだけど――】
【【【【【【【ドラグーナ様!?】】】】】】】
【――ダメかなぁ?】
【じゃあ~、背中の刺繍から上に昇る?
ラスト、兄貴達 後ろ向き横並びで、俺 真ん中でジャンプするから一斉に♪】
【うん、そうさせてもらうね♪】〈サクラ♪〉
〈ほえ?〉「うわわっ!」〈ボンボ!?〉
〈たのし、あそぶ♪〉〈ユキも来たの!?〉
〈〈マールイ♪〉〉〈ミソとコミソも!?〉
桜マーズの上に猿猿猿猿のトーテムポール。
また客は大笑い。
【彩桜、猿達とセンターに!】
【シッカリ踊れよなっ♪】
〈ボンボ、ユキ、踊るよ♪
俺と、おんなじ、してね♪〉
〈〈おんなじ♪〉〉
桜マーズ、両手にボノボでセンターへ。
〈踊るよ~♪〉
〈ミソ、コミソおいで♪〉
桜マーズと すれ違う時に回収して肩に乗せた青マーズの楽器は猿達の居心地を考えてクラリネットに変わっていた。
〈そんなら〈俺達も参加するぞ♪〉〉
銀マーズの頭に豆チワワ達が現れた。
〈何しやがるシルコバ!!〉
〈〈盛り上げてやるぞ♪〉〉
〈ヒトノも!♪〉〈珊瑚シッポ離して!〉
ポヨンと現れた小さな狐達は赤マーズの頭上。
もう動物パラダイスだ。
収拾がつかなくなるかと不安も過ったが、ボンボとユキの覚えが早く、ステップが踏めるようになったので桜マーズが楽しさをアピールし、兄達は陽気な音色で気分を上げていった。
【1曲 即興で。曲を送るよ。
これが終わったら元の曲に戻ってエンディングね】
青生から伝わってきた曲を演奏しつつクルクルと位置を変える兄達は、さりげなく1人1匹 頭乗せを完成させた。
〈皆、尻尾を立ててリズムに合わせて揺らそうね〉
桜ドラグーナが浮かび、尾を揺らす。
兄マーズ達の頭に伏せたミソとコミソと獣神達が桜ドラグーナに合わせて左右に尾を揺らすと、客達も手を挙げて左右に振った。
〈飛ぶ準備をするから引っ込むけど続けてね♪〉
【ドラグーナ様ありがと~♪】
〖預かりに来たよ~ん♪
オフォクスが『すまぬ』だって~♪〗
下手の舞台袖でガネーシャが鼻を振っている。
兄達が踊りながら順に下手へと動き、曲に合わせて掌に相棒を乗せて掲げて揺らす。
拍手を浴びて上機嫌になった相棒を舞台袖から伸びたパステルブルーの鼻先に渡すと、身を翻して演奏に戻った。
最後に桜マーズとボノボ達がステップを続けながら下手へ。
揃って胸に手を当てて礼をして、拍手に手を振り返して退場した。
〈ボンボ♪ ユキ♪ たのし?〉
〈〈たのし♪〉〉
〈盛り上げてくれて ありがとねっ♪
ちょっと待っててね♪
ミソとコミソも、珊瑚ちゃんと紫苑くんも、シルコバ様も ありがとねっ♪
みんな待っててね~♪〉
客席からは桜マーズコールが起こっている。
曲はエンディング。
激しく踊りながら演奏している兄達が間も無く前に並ぶ。
【ドラグーナ様、行くよ!♪】【うん♪】
コールと手拍子が響く中、ステージ後方へと高く跳んだ桜マーズは中央上方の蹴り板から前へ。コールは歓声に!
兄達が客席に背を向けて横並びになり、向かい合うように上体を少し捻って振り返ると同時に、後方から宙返り捻りして飛んで来た桜マーズが兄列の真ん中に後ろ向きでバンザイ着地すると、マーズの背の昇龍が輝き、本当に昇った。
大歓声の拍手喝采!
客席を向いたマーズは手を繋いで深く礼。
その動作さえも揃っていて美しい。
暫く留まって頭の天辺で拍手と声援をたっぷり浴びたマーズは、もっともっとの声に何度も頭を下げながら、両手を大きく振って感謝を伝え、退場した。
〈ボンボ~♪〉〈サクラ~♪〉ハグ♪
彩桜は順に名を呼んでハグしている。
【青生、どうかしたのかぁ? 悩みか?】
シルコバ定位置な白久が寄った。
【悩みと言う程じゃありませんよ。
器にされていた人達が全て目覚めても飼い主が見つからなければ、病院で引き取ろうかと考えていたんです】
【ウチじゃなくて病院かぁ?】
【はい。賢いので俺達に助けられたと理解しています。
だから役に立ちたい。
その強い思いで来て、成功したから喜んでいるんです。
それなら仕事を与えるべきなので病院です】
【何させる気だよ?】
【患者さんの案内係とか、いいと思うんですよね】
【そりゃあいい♪
で、夜公演も出てもらうのか?】
【そうですね。
ガネーシャ様にお願いしておきますね】
―◦―
後半はハプニングなく終わった。
兄弟は楽屋から外の様子を確かめて笑みを交わした。
【馬ぬいマーズを探せ、大好評ですね♪】
【む……】【紅火兄 照れてる~♪】
【彩桜の予約看板も大好評ですよ♪】
7つ並んだマスコット達と記念撮影会になっている。
【あららら~】テレテレ。
【黒瑯 青生 藤慈! 頼む!】リーロンの叫び。
【そんじゃあ行くか♪】【そうだね】【はい♪】
3人はマーズクレープへ。
【私達はマスコットを作ろう】【だな♪】【む】
物販の後ろのレジャーシートへ。
【【【【【【彩桜?】】】】】】
【俺……ちょっと行ってくる!】瞬移。
【ど~したんだぁ?】
【昨日の夜、彩桜に折った枝を投げた記者が居たんです】
【なっ】【凝らしめてやる!】
【いえ、その場で他の記者達に責められていましたので、これ以上は。
不穏を纏っていましたので、その記者と周囲は彩桜と俺が浄化しました】
【不穏? またオーロザウラか?】
【その余波的な……たぶん、夕方頃に接触したんだと思います。
その件とは別に、昨日の夜公演の間に記者が2人、体育館の換気口から侵入しようとして捕まったんです。
その2人がオーラマスクスの微細魂片を持っていたんですよ】
【そ~いや青生と彩桜は、パフォーマンス後ちょっと間 消えてたよな?】
【はい。回収しに行っていました。
浄滅は瑠璃だけで行きましたけど。
その2人はナニワ報道と西邦新聞の記者で、逆斐 皆見そっくりだったんですよ。
たぶん親しい後輩だと思うんです。
逆斐は5年前に西邦新聞からナニワ報道に移りました。
皆見は今も西邦新聞の記者ですので】
【つまり、そのどっちかに親玉が居るんだな?】
【そう考えています。
逆斐と皆見にはオーロザウラの魂片はありませんでしたが、入っていたのを闇禍が吸収したんじゃないかと、夜中に彩桜と話していて至ったんです。
逆斐 皆見が纏っていた不穏な気は鳳子さんのオーザンクロスティではなくて、オーラマスクスでしたから】
【ふ~ん】
【青生と彩桜は微細なオーラマスクスとオーザンクロスティとが区別 出来るのだな?】
【同じオーロザウラですので、とても難しいのですが、よくよく考えると違うな、くらいには分かります】
【では今夜、浪花府に行こう】
【【【【【はい!】】】】】【俺も行くのっ!】
【勿論、彩桜もだ】【うんっ♪】
【で、彩桜は何処に居るんだぁ?】
【渡音港~】
【その記者が車で泣いているんですよ】
【ゲ。車ごと飛び込む気かぁ?】
【そうと決まってはいませんが……】
【だから見てるのぉ~】
【何かあったら呼べよ?】
【うんっ♪】
ライブが動物パラダイスになりましたが、パニックにはならずに楽しく無事に終わりました。
馬ぬいマーズを探せも大好評です。
そしてライブ間。
彩桜は前夜に枝を投げてきた栗木の所に行きました。
ずっと気になっていたんでしょうね。
夜ライブ後には浪花府に行くって……どこまでもタフな兄弟です。




