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カウベルルの訪問



 エーデリリィはマリュースが堕神にされた経緯を聞きそびれていたと気付いたが、近くに居た筈のマディアとグレイを責める事にならないかと迷っているうちにマディアがまた眠ってしまった。


 また今度でもいいわよね?

 私が留守の間、マディアはずっと

 強い神眼を発動し続けているんだから

 疲れているわよね。


 王都に入って以来ずっとなのよね。


 禍の滝から王都に移動していた時に

 アイツに待ち伏せされて、

 私を護って禍に包まれてしまって……


 マディアは破邪の力と術で禍を滅したけど、

 アイツに対して鱗が過剰反応するように

 なってしまうなんて――え?


扉を叩く微かな音にビクッとした。



 エーデリリィが神眼を向けようとした時、背後からマディアに抱きしめられた。

〈マディア?〉


〈大丈夫だよ。味方だから〉くすっ♪

〈カウベルル様、すぐに参りますので〉


サッとベッドから抜け出たマディアは一瞬だけ浄化光を纏い、出て行った。



 少しして――


〈エーデも来て。

 あ、眠かったら寝てていいよ〉


〈もちろん行くわ!〉



―◦―



 光が漏れている居間にエーデリリィが入ると、マディアと向かい合って優しい微笑みを湛えている女神が居た。


〈マヌルヌヌ様の妹神様でカウベルル様。

 僕達の結婚の時に祝福してくださったけど覚えてる?

 あの時は急いでいたし、大勢だったから覚えてなくて当然だけどね。

 ちゃんと紹介すると、グレイさんを助けて育ててくださった『牛の女神様』だよ。

 今は孤児院の院長先生の姿なんだけどね〉


〈やっぱりどちらも――あっ!

 失礼致しました!

 エーデリリィと申します!〉


〈エーデは一番上の代で、兄弟で500年間もグレイさんと一緒に暮らしてたそうです♪〉


〈グレイを指導してくださったのね。

 ありがとう〉


〈い、いえっ、たいした事なんて何もできませんでしたのでっ〉


〈エーデ、緊張してるの?

 座って落ち着いてよ〉

ソファーの隣をポンポン。


〈あ……うん〉


〈エーデリリィさんは神王殿に入れるのでしょう?〉


〈あっ、はい!

 エーデラークとして、ですが……〉


〈どちらでも〉ふふっ♪


〈グレイさんとユーチャリス姉様に伝えてほしいことがあるんだって♪〉


〈ええ、そうなの。

 ミルキィとチェリーに――〉


〈すみません!

 私が人世に……すみません!〉


〈護ってくださったのでしょう?

 ありがとう。

 それで、代わりに伝えて頂きたいの。

 サティアタクスはグレイのお友達が護っていて無事だと〉


〈はい! 近いうちに必ず伝えます!〉


〈お友達、4神ともご無事よ〉


〈はい!〉

〈お友達って兵士さん達ですか?

 クラベルスさん、テブロークさん。

 タンブラングさん、コンシロフォさんですよね?〉

緊張しまくりのエーデリリィの背をポンポンしながらマディアが尋ねた。


〈タンブラングさんとコンシロフォさんがいらしたわ。

 それぞれ別の部屋に監禁されているけれど、ただ閉じ込められているだけで何もされていないそうよ〉


〈ソレ聞いたらグレイさんも元気になれますよねっ♪〉


〈そう願っているの。

 エーデリリィさん、お願いしますね〉


〈はい♪ グレイの人神のお友達って他に居ないでしょうから、必ず!〉


〈サティアタクスの事もね?〉


〈あ、はい。でも、どうして……?〉


〈グレイはサティアタクス王の最も近くに居たのよ。側近中の側近ね。

 二神で王をしていたようなものなのよ。

 でもそれをきちんと知っていたのは当の二神と私と姉様だけ。

 ダグラナタンは知らなかったから簒奪なんてしてしまったのよ。


 サティアは間違いなく偽者だと分かっていた筈よ。

 モグラという怨霊が近くに居たから一時的に操られてしまったけれど、それが解けて問い詰めたとか、何かあったのでしょうね。

 それで話せなくされて閉じ込められてしまったのでしょう。

 ですが無事と判りましたから、姉様は次の手を打ちました。

 サティア達は私達が必ず助け出します。


 マディア、エーデリリィさん。

 無理はなさらないでね?

 あなた方は孤独ではありません。

 マヌルの里の皆がついております〉


〈ありがとうございます、カウベルル様。

 僕達も頑張ります♪

 あ……そういえば、なんですけど。

 サティアタクス王様と兵士さん達は操られていないんですね?〉


〈ええ。ダグラナタンには操れないわ〉


〈〈どうしてですか?〉〉


〈姉様が幼いサティアを禍から助けた時、サティアは既に触れてしまっていたの。

 命を保つ為に姉様は命の欠片をサティアの魂に込めたのよ。

 ですからサティアは半獣神なの。


 グレイのお友達の魂には強い龍神が込めた命の欠片が見えたわ。

 つまり4神とも十分に半獣神だと思うの。


 ダグラナタンが持っているマリュースの力は、ごく一部なの。

 人か、未熟な人神しか操れないわ〉


〈だから操れなかったのか……でもグレイさんは?

 未熟とは思えないのですが?〉


〈封じて眠らせ、神力を抜き取ってから操ったのではないかしら?〉


〈どうやって封じ――あ、縄か網か……。

 うん。やっぱり そうやって操ってたんだ〉


〈そうでしょうね〉

〈ナントカのひとつ覚えね〉


〈でもエーデは気をつけてね。

 掛けられてしまったら解きようなんて無いんだからね〉


〈そうね。気をつけるわ〉


〈僕に見える場所なら知らせられるけど、神王殿とか浄化域とかは どうにもならないんだからね?〉


〈ええ〉


〈仲が良さそうで安心したわ〉


〈え?〉

〈すみません。挨拶もそこそこにバタバタ出て行ってしまって。

 でも本当に何かを企んでではなくて好きだから結婚したんです〉


〈そのようね。

 そちらは安心したのだけれど……まだ同代とは会えないのかしら?〉


〈全て終わったら会いますよ。

 嫌って会わないのではありませんので〉


〈今は人世には行けないけれど、道が拓けたなら、またお話ししに参りますね。

 きっとラピスリやオニキスならグレイのことも解ってくれるわ〉


〈あ、やっぱりオニキスも人世に?

 滝に居ないから心配していたんです〉


〈ええ。命懸けで降りたそうよ。

 その連絡もやっと届いたところなの〉


〈命懸け?

 やっぱり門の辺りに罠があるんですね?〉


〈大型の神力射が並んでいるそうよ。

 職神は通れるのだけれど……〉


〈近づく獣神が見えたら知らせます〉


〈お願いね。あれこれと申し訳ないけれど〉


〈できることはしたいんです♪

 僕にできることって少ないから。

 エーデに頼ってばかりだから……〉


〈ちゃんとマディアが見ていてくれるから出来ているだけ。

 少ないなんていわないで!

 私こそマディアに頼ってばかりよ!〉


〈本当に仲が良いわね♪

 それではお暇するわね。

 こんな時間にしか動けなくて、ごめんなさいね〉


〈人神は夜に眠りますから、夜明け前なら監視の薄い好機です。

 仕方ありませんよ。

 これもあと少しの我慢です♪〉



―◦―



 カウベルルが帰った後――


〈本当に凄い力をお持ちの神様ね……〉


〈それで緊張してたんだね?

 疲れたでしょ。ゆっくり寝てね〉


〈え? マディアは?〉


〈確めたいことがあるんだ。

 夜には戻りたいから、すぐに行くよ〉


〈私も連れてってよ!〉


〈とっても寒いよ?〉


〈そんなのどーでもよ!

 置いてかないでよぉ〉


〈エーデはどんどん可愛い話し方になってくね♪〉


〈もうっ! はぐらかさないでっ!〉


〈エーデラークの時に出ないように気をつけてね。

 僕はエーデを失ったら生きてられないってこと、忘れないでね?

 それじゃあ一緒に行こう♪〉

手を取って大瞬移した。



〈え? ……滝?〉


〈この向こうに行くんだけど、その前にカーマイン兄様にオニキスのこと話さないと心配してるだろうからね〉

龍に戻り、手を繋いだまま森へ。


〈この向こうって……?

 最果ての向こうなの!?〉


〈うん。回り回ればマヌルの里に出るよ〉


〈反対側の最果てじゃないの!?〉


〈うん。人世と同じだよ。

 繋がっているんだ。

 でも、とてもじゃないけど長居なんて無理。

 火山だらけだし、物凄い吹雪なんだ。

 とにかく過酷だから気合い入れてね〉


〈最果ての壁に向こうなんて在ったのね……〉


〈うん。

 壁は分厚くて、とてもその向こうが開けてるなんて思えないんだけどね〉


〈どうして向こうに行こうなんて考えたの?〉


〈隠れて修行したかったんだ。

 先にカーマイン兄様に会っていい?〉


森を抜け出ていた。


〈あ……そうだったわね。あっ!〉


〈ん?〉


〈私……本当に緊張し過ぎていたのね……〉


〈カウベルル様とお話しした時?〉


〈貴神殿でサティアタクス様にお会いした時、気づいていたのよ。

 グレイとの関係〉


〈そっか~。

 アイツのお供で行ったんだったね〉


〈ええ。だから お話しは出来なかったの〉


〈ま、カウベルル様にソレ伝えてなくても問題ないでしょ。行こっ♪〉


〈そうね♪〉







再び登場のカウベルルです。


タンブラングとコンシロフォがマヌルの里に行ってカウベルルと話したのは第一部 第2章の終わり頃でしたが、覚えていらっしゃいますか?


オニキスが人世に降りたのは第3章の初め頃。


神世と人世では情報のやり取りもとても困難ですので、このタイムラグは仕方の無い事とお考えください。



この世界の神には寿命はありません。

禍や術(禁忌)等で滅されない限り生きています。


ただし、劣化した人神は千年程で人のように老いた後、動けなくなってしまいます。


修行して神力を高めていれば数万~数十万年もの間、青年~壮年として生き、再誕して、また元気に生き続けます。


ですので命の欠片として神力を分けてまで子を生む必要なんて、本来はまずありません。



ドラグーナの子が千。

ティングレイス王の子が三千。


これは神としても相当に異常なんです。



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