開始早々メーア驚く
「ヨシさんはスザクインさんに会いに来たんですか?」
「違うわよ~♪ コレを渡しに来たの♪」
「「鍵?」あっ! 宿舎のですね!」
「正確には輝竜さん家よ♪
今日も泊まっていいそうよ♪
せっかく来たのだから、ゆっくりなさいな♪」
「そうね♪」
「「ソラくん?」」
「あっ、そうさせてもらいます!」
【向こうを見ていたのね?】
【はい。彩桜と話そうと思って見たら……】
【先生に任せなさいな♪】
【そうですよね……】
―・―*―・―
人が集まれば大小あれどな負の感情も集まるので怨霊化も起こり易い。
それが開演間近に起こってしまった。
【オイラ達に任せるだぁよ!】
【私も向かいますので!】八郎が走った。
【マーズとオニキスは平常を保ってください!】
西から飛んで来た狐神達に狐儀が合流しようと飛び、ルルクルとジョーヌが追った。
怨霊は今のところ2魂。
祓い屋達は怨霊が合わさって巨大化しないようにと東西に引き離し始めた。
西の空に更に加勢しようと現れた狐神達が見え、先に来ていた狐神達と話しながら迫っている。
【青生兄! 西側のに黒いのが!】
【うん。飛び込んだのは闇禍だろうね。
大陸の狐神様は闇禍を追って来たんだろうね。
サイオンジ殿と狐儀殿には伝えたよ。
瑠璃も気付いていたから、怨霊が もう少し離れたら行こう】
【うん!】
「おい忍者達!」
メーアがノックもせずに入って来た。
「何か起こったんだろ?
キク婆様が行ったからな。
俺達だけで始めて、過去曲や喋りで繋ぐから行っていいぞ」
「ありがとう。行こう彩桜」「うん!」瞬移!
「兄貴、俺達は?」
「もう1体の方に加勢しよう」
「よーし東だ!」一斉に瞬移した。
「やっぱ忍者だなっ♪」
メーアは笑顔でステージに向かった。
―◦―
【狐儀殿!】ラピスリの背に青生と彩桜。
【破邪で固めました! お願い致します!】
【瑠璃姉、回収するから通り抜けて!】
【ふむ。振り落とされるなよ?】
【【任せて!】♪】
【昇華光明煌輝――】【昇華闇障暗黒――】
怨霊の進行方向から言えば背後に現れたラピスリは破邪防盾を成して豪速で突入した。
【【――滅禍浄破邪大っ輝雷!!】】
怨霊がバリッと内から迸った青雷光に包まれ、即座にキラキラと萎み始めた。
【【封乱悪牢!!】】
キラキラの中から勢いそのままのラピスリが抜けて急上昇し、術移した。
【回収する!】
爺様してないリグーリが急降下して、まだキラキラが残っている魂を確保した。
【闇禍の影響は残ってる筈だ!
このまま浄化の門に運ぶ!
エィム! 向こうは頼んだ!】【はい!】
リグーリはエィムに笑みを向けて術移した。
―◦―
オープニング映像が流れ、緞帳が上がり、フリューゲルの3人が舞台袖から登場すると、会場は大歓声で揺れる程に満たされた。
中央に立ったメーアの向かって左側の背後にドラムセットと共にフルスが舞台下から せり上がりつつカウントし、ファンでなくても知っている世界的有名曲からライブが始まった。
―◦―
東側の怨霊には闇禍が入っていないので、これだけの祓い屋と獣神に寄って集られては抵抗らしい抵抗も出来ないままに易々と捕らえられてしまった。
【運びます!】
エィムがチャムを連れて術移した。
【そんじゃあシッカリ浄化して会場に戻るだぁよ】
【マーズは早く行ってくださいね!】
【ありがとうございます。
皆、舞台袖に】【【【はい!】】】一斉瞬移。
【白久?】
【いや、ナンでもだ。
俺達は待つっきゃねぇよな】追って瞬移した。
―◦―
『――俺達よりマーズだってのはヒシヒシ伝わってるよ。
だからこそだ。
次の曲をシッカリ聴いてくれ。
続けてマーズ入りで同じ曲をやるからな!』
メーアが話しているのを宮東が同時通訳で和語を重ねている。
なのでメーアが叫んだのとは1拍遅れて大きな歓声が上がるのは想定内だと、歓声に合わせて曲が始まった。
【この曲が終わる前に戻らなければ5人だけで先に加わろう】
舞台袖の金錦はメーアからの目配せに大きく頷き返した。
【【【【はい!】】】】
【黒瑯はドラムに】【おう♪】瞬移。
【青生と彩桜をシンセサイザーとパーカッションとする。
藤慈は青生に予定していたサキソフォンで】
【はい♪】【2人は隠れてるってか♪】【ふむ】
各々の楽器を手に身構えた。
曲の終わりに重なって黒瑯のドラムセットがメーアの右側の背後に せり上がる。
少し遅れてドラムの両側に2つの『要塞』が せり上がり、後ろが防護壁かと思える連なりになった。
本来ならシンセ要塞と一緒に藤慈が、パーカス要塞と一緒に彩桜が上がって手を振る予定だった。
フルスのカウントが再び入り、一斉音。
演奏しながらの4人が宙を舞って現れた。
歓声爆上がり!
メーアが後ろを気にしつつ歌い始めた。
動ける楽器な4人は忍走りらしいステップを踏みつつ入れ替わっていく。
その途中で白久はメーアに寄り、
「2人が入るトコになったら来るよ」
囁いて離れた。
青生と彩桜が『入るトコ』が迫る。
【次の次の小節だろ!?】
黒瑯の声が兄弟にだけ響いたその時、
【俺達参上~♪】
彩桜の声が続き――
『マジかっ!?』
間奏に入ったのにメーアの声が響き、客席からは これまでの歓声とは違う声が上がった。
――ステージ後ろの壁から青龍の顔がヌッと生えるように現れたと驚いたらスルリと抜け出、客席後方に向かって飛んで対面の壁に消えた。
龍に気を取られていたので、龍の背から要塞へと飛び降りた翼のある2人は目立たずに演奏に加わり、音は一気に派手になった。
しかし見ていた者達も居る。
青龍が迫って慌てて しゃがみつつも、天使だか忍者だかな2人をよく見ようと立ち上がったのは最後列の立ち見達だった。
「鳥忍だ♪」「スゲー♪」
「龍は3D?」「だろーな♪」
「ビックリして座っちゃった~」「ね~♪」
「それにしてもスッゲーな……」
「努力のタマモノってヤツだよ♪
だからアタシも努力するんだ♪」
「ふ~ん。だったら俺もやらねぇとな。
ヨメには負けられねぇからな」
「アタシはヤマトをシリに敷く!♪」
「おいおい」「あ♪」「スゲー……」
それは一瞬だった。
要塞から高く飛んだ鳥忍達が互いにステージ中央向きに横に滑空しつつ交差して、演奏には支障なく入れ替わったのだった。
【ナニ目立ってるんだよ!♪】
【その羽、たためねぇのか?】
黒瑯も白久も声に笑いが含まれていた。
【落ち着けるの間に合わなかったのぉ】
【だから暫くは後ろで鳥忍しているよ】
誰も翼が背から生えているなんて思っていない。
常識の内で考えて衣装の一部だと思っている。
だからこそ、このままでいい。翼を活かそうと決断した青生と彩桜だった。
兄弟が話している間に曲が終わった。
『後ろ2人! 何してやがるんだよ!』
メーアの声にも笑いが含まれている。
『なんにも~♪』
客が笑う中、メーアにも訳して
『気にしないで~♪』
と付け加えた。
『気になるだろーがよ!』わはは♪
マイクから離れて彩桜の方へ。
「無事で何よりだ♪」「あっりがと~♪」
青生にも笑顔を向けてマイクに戻った。
『同じ曲をフリューゲルバージョンと『&マーズ』バージョンでやったのは、どっちが好みかと聞きたかったからだ。
なんだが、曲なんか聴いちゃいられねぇパフォーマンスなんかしてくれやがったからなぁ。
ま、喜んでくれてるのは伝わった。
だから どっちだとは聞かずに&マーズで続ける!』
歓声が爆上がる。
『よーーーく分かった!
こんなのはロックじゃないと大ブーイングが上がるんじゃないかと、正直なトコ不安だったんだよ。
そうなったらジャンルはロックじゃなく俺達オリジナルだと言おうと思ってた。
受け入れてくれて ありがとな!』
大大歓声!
『俺達フリューゲルはマーズって忍者達が大好きになっちまったんだ。
最初は不気味なヤツらだと思ってたんだがな♪
知り合ったのは今年の初め。
ベルリンでのニューイヤーライブでだ。
そのライブは1日と2日、俺達だけの予定だった。
追加公演を忍者達と、と急に言われたんだ。
そんなだから最初の印象は悪かった。
けど、やってみりゃあ最高だったんだ♪
だから組むと決めた。
来月、&マーズでCDを出す――』大大大歓声!!
かき消されたので少し待つ。
『――ありがとな!
だから新曲だ! 聴いてくれ!!』
―・―*―・―
「ここ!?」「ちゃんとした家……」
豪邸に驚き過ぎて立ち竦む……×2。
「あの白久さんが学生から新人社員の頃に住んでいた家ですもの~♪」
「今の会社の社長さんと意気投合して建てていただいたそうよ♪」
「月3千円って間違いですよね!」
「白久さんはタダでいいって言ってたのよね~♪」
「そうそう♪
でも それじゃあ新婚さんの生活練習にならないからって、家賃を決めてもらったのよね~♪」
「ん?」「ヨシさんとスザクインさん、この件に絡んでたんですか?」
「「稲荷堂の常連だから~♪」」
「だから鍵も?」
「預かってたわよ♪」
「場所も聞いて、下見して浄化もね♪
さ、「入って入って~♪」」
引っ張り込まれた。
やっぱり人世でも出てしまいました。神力翼。
でも鳥忍で納得してもらえたようです。
忍者、便利です。
ソラと響は新学期から住む家に案内してもらえました。
東京で豪邸です。
輝竜家って、どれだけ大金持ちなんでしょうね。




