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幸せを掴み直した来光寺家



 今回の放送では、でっち上げ記事の真実に関してや、AB社長と鳳子が結婚した経緯等に関しては、関係者しか知らない事実なので逮捕するまでは話せないからと明かさなかった。

最後に軽く土日のチケット完売ライブの話に触れて特番は終わった。


【ねぇねぇ青生兄~】


【どうかした?】


【フリューゲル&マーズのは?

 撮ったのに放送しにゃいの?】


【あれは音楽番組で流れるらしいよ。

 顔は出していないから気にしなくていいよ】


【流れるならいい~♪】


【いいの?】


【うん♪ 兄貴達と楽しかったし~♪

 フリューゲルもお友達だし~♪】


【そう。それなら良かったよ】


【ね……(すぐる)さんの父ちゃんて……】


【また拾ってしまった?】


【うん……話さないけどね……】


【そうだね。知らない方が幸せな情報だよね】


【うん……だよねぇ。

 あ♪ そ~だ♪ 紅火兄 紅火兄~♪

 衣装なんだけどね~♪】


【む? 気持ちを上げる為か?】


【ソレもだけどぉ、違うの~♪

 あのね、和兜ってお面つけるでしょ♪】


【ふむ。面頬(めんぼう)だな。

 総面(そうめん)にすれば顔を隠すのに最適。しかも管楽器も演奏可能だな。

 和の鎧兜も衣装に加えよう】


【うんっ♪ 忍者から武者に早着替え~♪】


【ふむ。再び忍者に戻るのも良しだな】

【中間のパフォーマンス時でもいいよね。

 演奏しながらのダンス中に忍者、武者、忍者でフリューゲルが入って曲に移るとか、どうかな?】


【うんうん♪

 武者トキ管楽器ねっ♪

 明日がた~の~し~み~♪】



―◦―



 白久はユーレイを見て興奮したままの少年少女達に居間で囲まれていた。

「だ~か~らぁ、ユーレイはフツーに居るんだよ!

 条件が揃わないと見えないだけだ!」


「条件?」「誰でも見えるのか?」「なあ」

「ばーちゃんに会いたいな……」「ね……」


「おいミコト、ネコ。勝手に死人にすんな。

 生きてるよ。元気にしてる。

 会いに行きたきゃ連れてってやるから決心したら言えよな。

 ()の世に行ったら誰でもユーレイになって戻って来られるなんて思うなよ。

 そうそう戻れやしねぇんだからな」


「「ばーちゃん戻れないの!?」」

「フツーに居るんだろ?」「なあ」


「戻れるか戻れねぇかは彼の世の神様が決めるんだよ。

 だから俺達 生き人にゃあ戻れるなんて断言できねぇんだ。

 ……だから会いたいと思うなら、伝えたい言葉があるんなら、確実なのは生きてるうちだ。

 それだけは忘れるな。

 人が生きていられる時間なんて、誰しも短いモンなんだからな」


少年少女達は次第に静かになっていった。


「人生ってのは短い上に一度キリだ。

 過去に戻るなんて無理な話だし、いつ唐突に終わるかもしれねぇ儚いものだ。

 特に若い時間なんて一瞬と言っていい。

 あっという間に過去に消えていくんだ。

 だから時間を無駄にすんなよ。


 明日のライブに行きたいのに、まだチケットを貰ってないヤツだけ此処に残れ。

 他は部屋に戻れよな」



―◦―



 来光寺家と双真(そうま)(すぐる)の部屋で夢子と話していた。

『私、昴さんのこと誤解してたわ。

 ごめんなさいね』


「もういいよ。

 せっかく戻って来たのだから、お互い謝罪合戦はしないでおこう。

 双真さんもね」


『そう?

 でも なんだか不思議な感じね。

 昴さんと達空(たつく)さんが一緒に居るなんて……』


「被害者仲間と言うか、、もう友達かな?

 専務は魁にしていたのだが、親父の名を借りていた常務に就いてもら――」


「は?」「いつから!?」

双真も魁も真剣に驚いている。


「――魁は成人した時からずっと専務だよ。


 双真さん、その手腕で私を助けて頂けませんか?

 夢子が見初めた方なら確かだし、小さな工場に埋もれさせるなんて惜しいにも程がありますよ。

 どうか来光商事を助けてください」


「えっ、あっ、あのっ!」

驚き過ぎて言葉も発せずに ただただ聞いていたが、昴が頭を下げたのを見て大慌てで起こそうとした。


「ありがとうございます」


「え?」


「手を添えて頂けたのは、ご了承と受け止めます」


「えっ、い、いや、そのっ――」


「私も夢見ていたのですよ。

 お隣の会社のように東京に進出して、竜ヶ見台にも支社を置く。そんな夢をね。

 20年前に夢のまた夢だと、一度は諦めましたが、双真さんとなら掴める。

 そう確信したのです。

 どうか一緒に走ってください。


 夢子も今度は寂しくならないように出社して助けてくれるかな?

 私達を。そして息子達を」


『あら。私、成仏しなくてもよいのかしら?』


「まだいいらしいよ。

 この部屋に戻る時に私だけ輝竜さんに呼び止められたろう?

 あの時に、夢子の未練は成仏を阻むタイプだから満足するまで居させてあげてくださいと耳打ちされてね。

 だから居たいだけ居てもらえるかな?」


『そうなのね。未練ねぇ……あ♪

 私も先輩ユーレイさん達から教えていただいたの♪

 ユーレイは生き人の決まり事なんかに縛られないって♪

 ですから昴さんと達空さん、二人の妻にしてくださいな♪』


「私は構わないが……双真さん?」

「あ~、完全フリーズだよ」

「達空父さん」ゆさゆさ。「父さんてば」


「えっ、ええっ!?」


「俺は、あの頃から心の中では双真さんを父さんと呼んでました。

 母さんと結婚したら、絶対その日から呼ぶぞって練習してました。

 だから母さんが両方の妻になると言った今からは、どっちも父さんです。

 元祖父さん、いいよね?」


「そこは名前にしてくれないか?」


「昴父さん♪」


「それならいいよ。

 いろいろあったが……今やっと幸せになれたようだな」

『そうね♪ 私も幸せよ♪』


息子達が双真と水晶玉を運んで、夢子を真ん中に並ばせた。


「それじゃあ改めて。

 父さん、母さん「結婚おめでとう♪」」


『ありがとう。もう最高ねっ♪』

まだ身体が成せない夢子の手は夫達の腕を通り抜けてしまうのだが、それでも腕を絡ませているようにすると満足気に笑った。



―・―*―・―



【ねぇエィムぅ】腕をゆさゆさ。


【今は弟。引っ張らないでよね】


【あの女の人に欠片あげたの?】


【欠片持ちじゃなかったからね】


【エィムの子供になっちゃった……】


【そんな言い方しないで。

 人を幸せにするのも神の大事な務めだよ。

 それを実行しただけ】


【ふ~ん。

 じゃあ、あの子達に会ってあげないのは?

 毎晩エィムに会いたいって祈ってるわよ?】


【それは……チャムが行けば?】


【いいの?♪ 私、行っていいのね♪】


【いや、やめて。行かないで】


【ど~してぇ?】


【週明けに行くから】


【週明け?】


【片方の子の父親の命日】


【それ待ちだったのね~】


【そうだよ。考えての事だから行かないでね】


【は~い♪】ついて行く気満々♪


【一緒に行くのもダメ】


【ええ~っ】バレちゃった~。



―・―*―・―



「ラストはスサノオか。

 何か悩んでるのか?」


「自分が何をしたいんだか……」


「何が好きなんだ?

 憧れてる人でも何でもだ」


「それが分かってたら……あ……」


「今 思ったのを言ってみろよ」


「風呂から見える庭がいいな~と……」


「庭師か?」


「でもナンかチョイ違うような……」


「植物じゃなく芸術か?」


「芸術?」


「ちょっと来い」



「コレって!? どこへ!?」


「ただの渡り廊下だ。目の前の建物だ」

スタスタ行って扉を開けた。

「ナンで止まってるんだよ? 早く来い」


「で、で、ああもうっ!」走って入った。


「コッチだ」スタスタ――奥の1室に入った。



「真っ暗!」声が反響する。


「あ~悪ぃ。電気な」照明オン。


「広っ!! ピアノ!?」


「ど~でもいいから来い」手だけ出して招く。



「な……」布に包まれた死体がいっぱい!?


「あのなぁ。なんつー想像してるんだよ」

1体から布を取った。


「石像?」


「石膏像だよ。石像もあるけどな。

 あと木像もな」次々と布を取る。


「スゴ……」吸い寄せられた。


「作るってのには興味ねぇかぁ?」


「……あるかも……」


「まぁ、やってみて考えるか?」


「はい!」


「そんじゃあ明日から紅火の弟子な。

 ほれ」立ち見チケット。


「はい! ありがとーございます♪」


「布取っていいから好きなだけ見てろ。

 で、満足したら布掛けとけよ」


「って! 置いてくんですか!?」


「信用してるからな♪」


「盗んでばっかで生きてきたのに?」


「信用してると言ったろ。

 ま、ウチは忍者屋敷だ。

 (よこしま)な考えを持ったら忍罠(シノビワナ)で固まるからな♪」


「こないだのオッサンみたく?」玄関の。


「だよ。敷地内は忍罠だらけだ♪

 そんじゃあな♪」

【紅火♪ 頼んだぞ♪】【む……】溜め息。







まだ謎は残っていますが、それはさておき、来光寺家が幸せを掴み直したところで、この章は終わりにします。


次はイベント章です。

フリューゲル&マーズとしての正式なデビュー。初ライブです。



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