表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
549/870

忍者屋敷には忍罠



 バレンタインデーの朝。

休みを取った白久は東合(ひがしあい)(かい)を拾って竜ヶ見台(りゅうがみだい)へと車を走らせていた。

朝明(ともあき)実弦(みつる)に助けられたのは知ってるが、そもそもナンでグレてたんだ?」


「父さんが母さんと俺を捨てたと思っていたからですよ。

 父さんは離婚して半年くらいで再婚してるって聞いて、嘘だろと思って行ってみたら、妊婦が家に入ったんだ。

 だから追い出されたのかと思って……」


「その妊婦は どんな人だった?」


「顔なんて見てませんよ。

 目が合ったら嫌だし。

 ただお腹が大きかったから……それだけ」


「そうか。で、更正したのは死にかけたからか?」


「死にかけたってより、助けてもらったから。

 それに母さんにも悪いと思って。

 母さんにも彼氏できて、優しい人だったから今度こそ幸せになってもらいたくて。


 だから大学に行こうと決めたんです。

 バイトしてお金も貯めて。

 生活、苦しいみたいだったから。

 でも その貯金、母さんが持って消えたけどね。

 母さんの通帳も現金も全部 持ってかれたよ。

 俺、邪魔しないように離れようと思って竜ヶ見大に行くつもりだったのに。


 願書出す前だったから爺様に相談して、爺様の家から渡音大に通うことにしたんです。

 それも後妻に見つかって追い出されて爺様にアパート借りてもらって卒業まで。

 バイト代で払うって言ったのに、貯めとけって。


 母さんとは それっきり。

 母さんの恋人も来なくなった。

 あ、母さんが居なくなった後の冬に母さんの友達って人から電話あって、離婚になったのは母さんの浮気が原因だったって教えてくれましたよ。

 だから母さんは俺を引き取りたくなかった。

 高校卒業までの我慢と思ってたのに大学に行くと言ったから逃げたんだろうと」


「それを信じてるのか?」


「どうだろ。でも俺の通帳まで持って消えたのは事実なんですよね」


「そうか。着いたぞ」


「え……刑務所?」


「朝明と実弦は違法薬物所持で入っている。

 4月からは殺人罪の裁判も始まる。

 けどまぁ、会って話せばいい。

 今の二人をよく見てやってくれ」


「うん……」



―・―*―・―



 輝竜家の呼び鈴を押した沙南(さな)が待っていると、横の窓が少しだけ開いた。

『玄関なら開いてるから入ってくれ。

 けど兄弟は仕事と学校に行ったぞ』


「あの、兄弟は、って? 貴方は?」


『オレはイトコのリーロンだ。

 とにかく急いで入――早く!』


「え? あっ!」

沙南が少し開けたところに誰かが突進して来、沙南にタックルしてバッと開けて入った。


【堅固】「がっ!?」

入った男は変な格好で固まった。

口も開けたままだ。

目は家の中を見せないように、紅火が閉じさせたらしい。


【お~い紅火、この男ど~すんだ?】

台所から玄関へ走った。

「怪我は?」支えて立たせ、埃を払った。


「大丈夫みたい。ありがとう」


【勝手に入った不審者だ。

 通報しても構わない】


【ま、ほっとくか♪】

「で、昨日 風呂に来てたアンタは?

 誰に用なんだ?」連れて入る。


「あ、あの、この人……」宙に浮いてフリーズ?


忍罠(シノビワナ)に掛かっただけだ♪

 気にすんな♪」


「本当に忍者なのね……」


「で、後ろの奴はコイツの仲間か?」

フリーズ男をツンツン。


「え?」「違います!」「あら?」その声――

「やっぱり高築(たかつき)先輩!」「橇待(そりまち)君!?」


「知り合いならいっか。入れよ」「はい!」

【紅火、コイツも弱禍が膨らんでやがるぞ】

フリーズ男を術破邪で包んだ。


【ふむ。浄化せねばな】【俺やる~んるん♪】

【昼休み迄このままにしておく】【うんっ♪】



 料理中なリーロンはダイニングテーブルに記者達を案内した。

「高築サンはいいとして、ソッチは?」

背中を向けて続きをし始めた。


「季刊ウィンタースポーツの橇待です」


「つまりスノボの取材かぁ?

 しかも兄弟が居ない時に?」


「もちろん帰宅待ちしてましたよ。

 あの男が高築先輩に突進したから慌てて追ったんです」


「そっか。そんなら昼メシは作ってやる。

 けど取材はお断りだ。悪いけどな」


「そんなぁ」

「理由は後で私から説明するわ。

 私は知らないからこその誤解とかをこれからは生まないように活動について書かせていただきたくて。

 事務所の社長様とお話しさせていただきたいんです」


「そっか」【お~い狐儀。聞いてたんだろ?】


【聞いておりましたよ。

 授業中なのですが……ま、よいでしょう。

 彩桜様は昼休みですよ?】【はぁい】



 白儀が来て二人の前に名刺を置いた。

「お話を伺いましょう」


「「フリューゲル!?」」


「ええ。最初の活動(コラボ)はベルリンでのニューイヤーライブでした。

 次は今朝 発表しました今週末のライブです。

 来月にはフリューゲル&マーズとしての初CDをリリースします。

 その後、世界ツアーも企画しておりますよ。

 これらの発表は馬頭(マーズ)雑技団の公式ページにて行いますが、同じ内容を他のメディアでも、という事でしょうか?」


「それも、なんですが私は寄付とかの慈善活動について、マーズにインタビューではなくて、寄付を受けた方々からの声を届けたいんです。

 マーズは本当に人々を笑顔にしようと活動していると伝えたいんです」


「そうですか。

 内容としては、私は良いと思います。

 謎が多過ぎる今の状態では、確かに賑やかですのでね。

 さて、あとは主役達の許しを得なければなりません。

 その為にも、どのようなメディアに発表するおつもりなのかを伺ってもよろしいでしょうか?」


「私は、今は女性誌の記者ですがフリーになろうと決意しました。

 新聞や広報誌、音楽系の雑誌、スポーツも注目されていますので、その方面も。

 とにかく多方面に持ち込んで、マーズの活動に合わせた不定期連載を許していただけたメディア全てに発表したいと思っています」


「マーズが渋い顔をしそうなお話ですね。

 ですが話してみましょう。


 ひとつだけ。

 マーズとキリュウ兄弟は別です。

 キリュウ兄弟はキリュウ夫妻と同じキリュウ事務所に所属しておりますのでね。

 完全に切り離してくださいね」


「はい♪」


「橇待さんも、マーズと輝竜兄弟は別。

 それだけはお願いしますね」


「あのっ、やはり あのご兄弟がマーズなんですよね!

 閉会式に同時に存在したのは!?

 インタビューは無理だろうとは思っていたんです。

 でも、これだけは知りたくて。

 記事にはしませんので!」


「では、口外しないとお約束頂けますか?」


「はい! 口外しないと誓います!」


「先程、玄関で固まった男性を見ましたよね?

 彼は家人の許しを得ずに強引に押し入った為に忍罠(しのびわな)に掛かってしまったのです。

 マーズの裏稼業の1つが忍者なのですよ。

 ですので閉会式では分身しておりました」


「1つ? 他にもあるんですか?」


「世を護る様々な仕事をしておりますよ。

 知れば貴方も危険と隣り合わせとなります。

 ですからマーズは秘密だらけなのです。

 口外しないでくださいね」


「はい。幅広い慈善活動なんですね。

 だから超人なんですね……」


「そうですね。特殊なスーツ等がなくても彼等はスーパーマーズマンなのです」


【狐儀師匠、遊んでるのぉ?】【いいえ】ふ♪

【笑ってるぅ!】【真面目に話しておりますよ】


【兄貴達ーーっ!!

 狐儀師匠が俺達で遊んでるのぉ!!】


【今夜、きちんとお話し致しますので】ふふ♪



―・―*―・―



 朝明・実弦と面会した白久と魁は、呼び止められたかのように振り返って、出て来たばかりの高い塀を見上げた。


「会えて、話せて良かったです。

 ありがとうございます」


「アイツらも喜んでたな。

 俺はアイツらが出て来たら雇うつもりだ。

 すっかり改心してるからな」


「俺にとっては昔のままですが……荒れてたんですね」


「道を歪まされて、流されて……けど、もう過去の話だ。

 アイツらにも未来はある。

 夢を追ってもらいたいんだ。


 俺は午後、実弦の兄達を迎えに行くんだ。

 兄達も道を踏み外したが軽傷だったからな。

 で、新たな道を用意した。

 それを踏み台にしてもらいたい。

 兄弟仲良く生きてもらいたいんだ」

話しながら車に向かい、乗り込んだ。


「兄弟仲良くって、それ、俺にも言ってます?」


「そうなるかな?

 俺達兄弟は仲良しこよしだからなっ♪」


「父親が同じでも秀は……」


「父親すら同じじゃねぇよ」


「へ?」


「さて、まだ昼には早い。

 もう1ヶ所 行くぞ。近くだからな」


「その前に さっきの!」


「移動しながら話す」車を出した。



―・―*―・―



 1年2組は4時間目の数学に入ったところだった。


バン! ガシッ! 「きゃあっ!」「わあっ!」


廊下側の窓に何かが ぶつかったような大きな音がして、近くの生徒達が驚いて飛び退()いた。

磨りガラスに黒い塊が くっついていて、掌と足の裏らしいものが見える。


〈サクラ♪〉バンバン!


「ボンボ!?」窓に走る。

〈割れちゃうから叩いちゃダメだよ~〉

古いスクリュー錠に苦戦中。


〈ミソ、オハヨした♪ サクラ、あいたい♪〉

〈サクラ、いっしょ、おねがい〉ユキは廊下。


〈ちょっと待っててね~〉窓を開けた。


〈サクラ♪ オイシイ♪〉抱っこ♪


算木(さんぎ)先生、ウチの猿なの~。

 連れて帰っていいですか?」

窓枠に乗ったユキも抱き上げる。


「そりゃあ待てとは言えないよなぁ。

 皆は自習しててくれるかな~?

 (シィァン)も一緒に行くかぁ?」


「先生ありがと♪

 サーロン、ユキお願~い」「はい♪」


「外出許可、貰いに行こうな~」「「はい♪」」



〈彩桜、背中の紙!〉

〈忘れてた~。サーロンありがと♪〉

剥がして、椅子の背凭れに貼った。

サーロンは既に貼っていた。


「彩桜、気づいてたの?」祐斗が紙を指した。


「説明しなくていいから♪ ありがと~♪」

ボンボの手を持って振って出て行った。


「ありがとです♪」

サーロンもユキの手を振らせて行った。



『彼女います。

 チョコは貰えません』


堅太が『おはよ!』バシッ! と貼ったまま過ごしていた彩桜とサーロンだった。







バレンタインデーです。

ソワソワピークの日ですね。

彩桜とサーロンにチョコを渡したかった女の子達は貼り紙を見て諦められたのでしょうか?


白久は魁とデート中です。

確か約束したのは馬頭(マーズ)だったような……。

すんなり顔を見せて良かったのでしょうか?


で、忍罠に掛かったのは誰?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ