ユキボンボ
【ねぇ瑠璃、そんなに怒らないでよ】
【怒ってなんぞ……呆れ果てている】
青生を内に持っているので神力射エリアは安全策を採って飛び、抜けたので術移。
【どうして?】
【その無謀さ、少しは自覚しろ】
【ちゃんと計算の上だよ。
だから怒りで暴発じゃなく、ちゃんと発動させて消したんだ。
それで、どうしてお社に?
病院に戻らないの?】
【お確かめ頂きたくてな】隠し社へ。
〖青生自身の神力を、ですね?〗
にこにこケイロン。
【はい。お願い致します】
〖うん。私と同じ『拾知』ですね。
人神だけの能力的神力ですよ〗青生に微笑む。
【【それは、どのような?】】
〖簡単に言えば情報収集能力。
『探り』とは少し方向性が違う神力ですが、獣神には『探り』、人神には『拾知』があるのです。
青生の魂を成す人神魂が持っていたのなら、彩桜も持っているでしょう〗
【そうですか】にこにこ♪
〖少し引き上げてあげましょう〗
【【ありがとうございます!】】
―◦―
動物病院に戻り、青生は身体にも戻った。
【やけに上機嫌だな】
【瑠璃は潜入が得意。
俺は離れていても瑠璃の周囲まで拾知できる。
最高のペアだよね♪】
【確かに そうだが……】
【あ、ボノボが目覚めているよ。
でも泣いている? どうしたんだろうね】
もう瑠璃の手を引いて向かっている。
「ショウ、どうしたの?」
〈ボンボと遊んでて、楽しいからユキボンボも一緒にって探したの。
でも見つからなくて、こう〉
「ユキボンボ?」「やはり仲間が居たか」
「とにかく、この男の子はボンボなんだね?」
〈うん♪ ボンボ、僕の友達~♪〉
「ボンボ」よしよし。
〈オマエ、ナニ? ユキボンボ、どこ?〉
「俺は青生。
ユキボンボは、どんなコかな?
探すから教えてくれる?」
〈ユキボンボ、ボンボ、ナカマ。
ワシ、ヨルいろ。
ユキボンボ、ユキいろ。
オーラ、ユキボンボ、マモレいった〉
話している間、青生は撫でている手から情報を拾っていた。
「うん。白い女の子なんだね。
ボンボのお嫁さん、ユキちゃんは必ず見つけるから安心してね」
〈あいたい〉
「うん。朝には会えるよ」
〈しんじる〉
「うん。信じてね」
【リグーリ、ボノボの仲間はアルビノだ。
夜に兄弟が行く。
警戒させぬよう、広く探るだけに留めてくれ】
【了解】
―◦―
ボンボをショウに頼んで青生と瑠璃は事務室へ。
【ボンボはオーラマスクスの欠片持ちだった。
ユキは獣神様の欠片持ちだと思う。
欠片持ちじゃなかったら雪山でボノボが生きているなんて有り得ないからね。
ユキの獣神様は眠っているんじゃないかな?
だから支配が有効だった。
類人猿にも人神様や人用の支配が有効だなんて驚いたけどね】
【ん?
人用の支配を持つのはダグラナタンだが?】
【それも真核から伝わったんだよね。
獣神様に使えないと知った時の悔しさが強くね。
オーロザウラの支配は人神様用。
だからザブダクルも少しは持っていただろうし、同じ人神様用。
だからこそダグラナタンが盗んだ時も全てが無理ならと、たぶん本能的にだろうけど強化の為に そっち側を選んだと俺は考えているんだ。
オーラマスクスはユキを支配で操って、自分達を護れと結界を成させた。
でも、そんなに強くないから神力が通過し辛い程度の結界だったよね。
入ってしまえば使えるんだから】
【確かにな。
そうなると、居場所を突き止めねば、ボンボのように彩桜が吸着とはゆかぬな】
【そうだね。
闇が支配分だけじゃ広いヒマラヤで闇呼しても吸着は無理だよね。
でも、この獣神様……瑠璃はヒマラヤで感じなかった?】
【何をだ? いや、しかし……あの気は……】
【うん。
俺は猫捜しをしていたから敏感になっていたのかもだけど、グランディーヌ様もいらしているのかと探してしまったよ】
【眠っているグランディーヌ様の小片か。
ならば結界を成せるのも納得だな】
【お稲荷様を連れて行けば現れるんじゃない?】
【俺も行くのっ!】声だけ。
【うん。彩桜も一緒だよ。
祐斗君達には、いつもの週末のような泊まりは無理だから、今夜からスキー場だと話しておいてね】
【ん♪ スキー場どこ?】
【甲斐国際スキー場だよ。
競技は日曜だから、来たければ土曜の午後出発の白久兄さんのバスでと言ってね】
【うんっ♪ 青生兄ハーフパイプするの?♪】
【するよ、競技じゃないけどね。彩桜もだよ。
ボードもウェアも紅火に頼んでいるからね】
【ん♪ 俺もやる~♪ た~の~し~み~♪】
―・―*―・―
また夜中にヒマラヤ。
リグーリが絞り込んだエリアの真ん中に紅火が成した結界内を青生が治癒で温め、その中で円陣を組んで昇華した神眼を拡げていく。
生命反応がある度に紅火か瑠璃が掌握を伸ばして確かめていると、ようやく稲荷と桔梗が来た。
身体が成せた桔梗は楽し気に稲荷と腕を絡ませている。
【お稲荷様にゃ~にしてたのぉ?】
【以前より大陸にて追っておった欠片の方を捕らえたのでな。
桔梗と共に――】【あら私の所為ですの?】
【――いや、その、儂が手間取っただけだ】
【もぉいいから呼び掛けて~♪
たぶんコッチなの~♪】光を飛ばして示した。
【もう絞れておったのか?】
【理俱師匠が調べてくれてたの~♪
で、さっきコッチかな~って兄貴達と話してたの~♪
い~っぱい調べたの~♪】
【然うか】【ありがとう。では参りましょ♪】
桔梗が稲荷を引っ張って飛んで行った。
【俺達、待つだけ? 追っかけにゃい?】
【邪魔はしたくないし、ユキにも気付かれたくないけど……もう少しだけ近付こうかな?】
【支配を解かねばならぬからな】【うん】
【ならば結界ごと皆を運ぶ】
フンッと紅火が気を高めると、半球状だった結界は球体に変わって浮かんで飛び始めた。
【あれれ? 俺達、浮いてるんじゃなくて床あるよね? 透明な床♪】
【在る。皆が立てるようにしただけだ】
【ちょっと柔らかでイイ感じ~♪】ふみふみ♪
【思いきり蹴れば、かなり跳べる】
【へぇ~♪】タンッと軽く蹴って天頂近くへ。
【面白~い♪ サーロンも~♪】【わあっ】
サーロン巻き添え。
【周りは揺れたりしねぇのか】ふ~ん。
【誰が成したと思っている?】
【ハイハイ紅火は凄いですよ】
【黒瑯、近いんだから神眼偵察お願いね】
【青生も凄いですよ~だ】【黒瑯、来いって】
リーロンが引っ張った。
【また攻撃を受けたのだな】【そうみたいだね】
【この闇攻撃はユキではないな】【だと思うよ】
【青生、昼間は何処へ?
気が掴めず、病院にウェアを持って行ったのだが】
【あ、試着? ごめんね。
瑠璃、話してもいいかな?】【好きに】
【じゃあ待つ間に簡単にね】【【来た!!】】
黒瑯とリーロンの声で一斉に神眼を合わせると2筋の赤光の尾を引いて白獣が迫って来ていた。
ズイッと結界も動き、白獣が跳んだ時を狙って稲荷と桔梗をも包む位置に着地した。
彩桜とサーロンが床を蹴って白獣を抱き止め、そのまま稲荷に向かって落ちようとしていた。
【全く……】溜め息と共に大狐に。
彩桜達はポスンとオフォクスの背に埋まった。
【お稲荷様ありがと~♪】【すみません!】
【彩桜……謀りおったな】神眼で睨む。
【夢幻爆眠した~♪ ぐっすり~♪】
稲荷の言葉は聞いちゃいない。
【あなた、今のうちに】
【ふむ】詠唱。
【なぁ、俺達ナニしに来たんだぁ?】
【いいじゃないですか。
戦いにはならず、ユキは無事。
それに彩桜が楽しそうなんですから】
【青生、支配を解きに行こう】【うん♪】
【青生も楽しそうだな♪】
【瑠璃と一緒に動けるのは楽しいですよ♪
昼間も一緒に動いていただけです♪
神世でね♪】
【神世で!?】一斉!
オフォクスの上に浮かんだ欠片はチラチラと瞬きながらグランディーヌへと吸い込まれた。
オフォクスの背に乗った青生と瑠璃が彩桜達を発掘し、ユキの治癒眠を解いて黒い毛玉を鼻先に押し当てると、安堵して細めたユキの瞳から支配の暗赤光が消えた。
【解けたな】【うん。仲良し夫婦だからね】
【でもまだ赤い目してるよ?】【ホントだ】
【ユキはアルビノ。色素が無いからだ】
【そっか~♪ その毛玉は?】
【ブラッシングして抜けた毛で作ったんだ】
【ボンボが待っている。帰ろう】
―◦―
「ボンボ♪」〈サクラだ~♪〉ムクッ。
「ショウも居た~♪」〈うん♪〉
「ボンボと仲良しだからお借りしたんだよ」
〈ボンボ!〉〈ユキボンボ♪〉
青生に抱かれていたユキは跳んでボンボと抱き合った。
「うんうん♪ 仲良しさ~ん♪」
「しかし回復後は、どうするのだ?」
「元の場所に戻すのが最善だろうけど、アフリカで探すって時間的に……」
「地域は限定されるが難しいだろうな。
群は諦めて――」
ボンボがピクリとしてユキを背に庇い、首を横に振った。
〈ムレ、ユキボンボ、ダメ〉
「そうか。アルビノ故に追い出されたのか」
「白いとダメなの?」
「ボノボは穏やかな生き物なんだけど、群に依るかな。
白いと目立つから群が狙われ易くなる。
他には同種と思ってもらえなかったり。
普通に受け入れる群もあるんだけどね」
「そっかぁ。
ボンボ、ここに住む?」
〈ここ?〉
「青生兄と瑠璃姉は?」
〈オイシイ♪〉
「ショウは?」
〈オイシイ♪〉
「俺もオイシイ?」なでなで♪
〈オイシイ♪〉
「青生兄 瑠璃姉、ここかウチで~。
家族ダメ?」
「いいよ」「最善だな」
「ボンボとユキ、俺の家族~♪
俺、彩桜♪ さ・く・ら♪」
〈ワシ、ボンボ。ユキボンボ、ナカマ♪
サクラ、オイシイ♪〉
「彩桜、食べられそうだよ♪」
「ボンボの『オイシイ』は『好き』って意味だと思う~♪」
〈ユキボンボ、オイシイ~♪〉ぎゅっ♡
「ね♪」
仲良し夫婦のボンボとユキも再会できました。
まだ親玉なオーラマスクスの欠片持ちも見つかっていませんし、他にも捕まって操られている可能性がありますが、ひとまず ここで章を閉めます。
青生と彩桜が甲斐国際スキー場に行かないといけませんので。




