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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第28章 悪神起因の様々な犠牲者達
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月の女神の池の白猫達



 深夜、動物病院に戻った青生と瑠璃が話しているとエィムから呼び掛けられた。

【来ればいい】


【ありがとうございます】現れた。


忠野(ただの) 正直(まさなお)を復活させたいのだな?】


【やはりお見通しですか。

 姉様もご存知の状態でしたので記憶の欠落も激しく、意識も虚無に近い。

 神の欠片も持っていませんでしたし……】


【想いの欠片は如何程に?】


【ごく僅かです。

 普通に再生したら消滅してしまいます】


【そうなると禁忌か……】


【どうしても そうなりますよね……】


青ドラグーナが浮かんだ。

【試す事にはなるけど、術を組み合わせれば禁忌を使わなくても可能だと思うよ。

 ケイロン様とオーディン様に相談してみようよ】


【そうですね!】【行こう】纏めて瞬移。



――キツネの隠し社。

ケイロンは いつもの微笑みを湛えて、オーディンまでもが笑みを浮かべて待ってくれていた。

〖シヴァ様より間も無くと伺っていました〗


【畏れ入ります。では内容も?】


〖ええ。ドラグーナ様のお考えをお願いします〗

手を差し出した。


【この順で可能かと】握手。


〖そうですね。試してみましょう〗


【ありがとうございます。

 エィム、保護珠を中央に。

 青生、命の欠片を込めてくれるかな?】


【俺の? いいんですか?】


〖人神魂の人。最適だと思いますよ〗

【方法は導くからね】青生の内へ戻った。


〖では始めましょう〗



―・―*―・―



 青生と瑠璃がキツネの社に行ったのを感じた彩桜は、サーロンを誘ってフリューゲル城の庭に行った。

【コッチ~♪】月の女神の池へ走る♪


【また怨霊?】飛んで追う。


【違うの~♪ 白猫さんなの~♪】


【猫? もしかして神様とか?】


【ベルリンで拾った猫さんの仲間~♪

 お稲荷様の奥様の欠片が入ってるかも~♪】


【ええっ!?】  〖ゲ……〗

【ガイアルフ様?】〖何でもっ!〗


池近くで白い生き物が(よぎ)った。


【【いた!♪】】

加速し、途中でサーロンが瞬移して挟んだ。


ちょうど猫がジャンプした時だったのでポスッと受け止めた。

【捕まえたよ♪】【もっと居る~♪】

彩桜は次を追った。

【サーロン、子猫達お願い♪】


【え?】神眼走査(サーチ)!【見つけたよ♪】


どうやらサーロンが捕まえたのが母猫で、彩桜が追っているのが父猫らしい。

真っ白な子猫達は生まれて日が浅いらしく、逃げきれないままにサーロンに回収された。


【お話ししたら止まってくれた~♪】

猫を抱いた彩桜が瞬移して来た。

【グランディーヌ様♪

 オフォクス様トコ行こ~ねっ♪】


〖ええっ!? どうして知って――!?〗

もう瞬移していた。



――〖あなた!?〗目の前にオフォクス。


【お稲荷様~♪ 俺、眠いから帰る~♪

 おやすみなさ~い♪】

白猫達を置いてサーロンと手を繋いで消えた。



【桔梗、細かく分かれておるのは幸い。

 隠し社の方が終わったなら全て抜き出し、纏める故な】


〖ええ♪ ありがとうございます♪〗

〖私……そうなのね。良かった……〗



―・―*―・―



 ここ数日を考えると、やっと平穏な朝を迎えた。

【お~い紅火ぁ? 何処だぁ?】

白久が紅火の部屋の襖を開けてキョロキョロ。


【作業部屋……】神眼を使え。


【ん♪】忘れてた♪ 瞬移♪



――「頼みがあ――何やってるんだぁ?」


【見ての通りだ】


【そりゃ分かるけどな。

 ナンで増築?

 作業部屋なんか拡げて何するんだよ?】


【若菜と住む】


【お前の部屋は?】


【8分割した。居着く者を住まわせればよい】


【って家出少年達かぁ?】


【誰でもよい。黒瑯の部屋も同じく分割した。

 黒瑯の後輩達が今日、越して来る】


【黒瑯どーすんだぁ?】


【リーロンと共に和館だ】


【そっか♪ 仲良しこよしだもんな♪】


【で?】


「あ~そうだ。頼みに来たんだったな。

 けど半分は解決したな。

 大部屋も仕切ってもらいたかったんだ。

 アイツら動けるよ~になったからな。

 合格したら社宅か寮だが暫く住むからな」


【ふむ。引っ越しの後で分割する】


「ありがとなっ♪」瞬移♪



―◦―



 輝竜家に住む者達が仕事に、学校にと出掛けた後、青生と瑠璃は居間の炬燵(こたつ)(くつろ)いでいる春希 正義と その家族の所へ行った。


「え? 父さん?」「「あ♪」」


身体を得た春陽が青生と並び、家族に微笑む。

「ユーレイだけど、ただいま」


「嬉しいけど、でも……」正義を見た。


正義が泣くのを堪えて笑みを返した。


「死神様にお願いして此の世に戻れるようにして頂くには最低でも1年くらい掛かってしまうんだ」

青生は正義の頭を撫でて抱き締めた。

「春陽さんは去年の交差点の大事故で亡くなったから1年 経ったんだよ」


「うん。1年……ガンバる」


「そう。頑張ると言えた正義君には死神様から特別に、プレゼントだって」


「え?」


「春希君と春希君のお父さんがお願いしてくれたからだよ。

 でも1年経っていないからね、まだ正直(まさなお)さんとしては戻れなくて、この猫に重なって魂を保っているんだ」


瑠璃が小さな白猫を見せて、抱かせた。


「かわいい。

 けど、お父さん猫アレルギー……」


「それは前の身体だから大丈夫だよ。

 正直さんも猫好きだから居心地いいって。

 今は記憶も少ししか戻っていないし、話せないけど、春希君のお父さんと一緒に修行したら話せるようになるから、あと少しだけ待っていてね」


「うん♪ ちっちゃいお父さん♪

 ね、お母さん。お父さんの匂いするよ♪」

母に抱かせた。


「本当……そうね。確かに正直さんね……」


「ね♪」「ホントに?」

講義は午後な美那も寄って撫でる。

「あ~、笑ってるお義兄さんが見えた~」


「そうなの!?」正義も撫でる。「見えた♪」


美都も撫でて笑顔になった。



 そこに白儀と若威が入って来た。

【おや、グランディーヌ様にお支え頂いているのですね】


【結局、支えが必要でした。

 子猫もお借りしたのです】


【そうですか】にこにこ。

離れたテーブル席に着いた。

「若威君、大呂さんと忠野さんのご家族です」


息を呑んだ若威が立ち上がろうとしたのを白儀が止めた。


「彼等は若威君を知りません。

 何も語らず支えてあげてください」

春希が見たのは(かす)れ声の包帯男なので。


「そう、ですね……」座り直した。


「多重事故で亡くなった大呂 春陽さんはユーレイとして戻り、悪霊や悪魔等を祓う祓い屋になるべく修行を始めたそうです。


 忠野 正直さんの魂は消滅寸前でした。

 ですので猫の魂に重ねたようですね。

 つまり二家族とも幸せを掴み直したのです。

 元の通りとは参りませんが、前を向き、進み始めたのです。


 若威君も前を向いてください。

 過去は変えられませんが、良い先生になってくれます。

 償いは続けなければなりませんが、若威君自身の幸せも掴んでください」


「はい。ありがとうございます」感動うるうる。


スッと香る湯気の立つカップが差し出された。

「此処で打ち合わせか?

 社長は紅茶だよな」


「ありがとう。

 若威君、何でも淹れてもらえますよ」


「同じのを、お願いします」


「遠慮しなくていいんだぞ。

 普段はコーヒーなんだろ?」


「他の味も試してみたくて。

 その……道を探している最中ですから」


「そっか。チョイ待ってろ♪」

【で、本体コッチって彩桜は?】


【真面目に授業を受けておりますよ。

 何やら夜中に満足する体験をしたようですね。

 サーロンと出掛けていたようですよ】ふふっ♪


【ふ~ん】


【今日は黒瑯様は? お休みなのでしょう?】


【弟子達の引っ越しだよ。

 紅火と一緒に行ったぞ♪】


【リーロンは楽しそうですね】


【大所帯が巨大化してるからな。

 料理人が増えるのは大歓迎だ♪】


【確かに。ですが、まだ増えますよ?】


【家出少年達のダチだろ?

 けどま、ナンとかなるなる♪】

トレーを手に戻って来た。

「茶葉もイロイロある。

 けどオレよか社長に聞けよな♪

 仲良くなるのに丁度イイ話題だろ♪」


「アッサムですか。

 穏やかな朝に合いますね」


「アッサム……あ、優しい……」


「まぁ淹れ方が上手いからな♪」

笑って台所へ。



「優しい場所ですね。

 生まれて初めてですよ。

 こんな大きな優しさに触れたのは……」


「龍神様のお宅ですからね。

 若威君も大きな龍神様の背に乗ったのです」


「なんか……納得です。ストンと納得。

 前の俺だったら間違いなく馬鹿にしてたと思います。

 その思い出したくもない過去も教訓なんですよね」


「そうですね。(あやま)ちは偉大なる先生です」


「先生だらけだ。俺って……」苦笑。







やっぱりエィムは考えていました。

なんだかんだって優しいんですよねエィムって。


これまで通りにはいかなくても、これまで以上にすればいいんですよね。

忠野先生の魂を込めた子猫からはグランディーヌの欠片は抜いていません。

それを支えにして1年ゆっくり復活に向けての修行をする予定です。


これまでにも何度も登場した『命の欠片』は、神魂の微細魂片を核として術で成した神力の結晶で、次代の生命の魂核の種になるものです。

神力基底をかなり上げないと成せません。

ですから命の欠片が成せるようになれば一神前(いちにんまえ)成神(せいじん)と見なされます。


地星の神が子を成す時は、親の命の欠片を魂材に込める事から始まります。

更に神力を注ぎ、名を与え(←強化です)、と時間を掛けて育んで魂を鍛え、最後に身体を成して誕生に至ります。



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