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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第28章 悪神起因の様々な犠牲者達
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夜中に目覚めた家出少年少女達



 白久と青生が瞼が動いた少年の枕元で自然に目覚めるのを待っていると、深夜になって やっと薄く目を開けた少年は何度か瞬きをして、

「布団? どうして?」

(かす)れた声で呟いた。


「そりゃあ助けたからだよ」


「ん? ぜんぜん動けね」

声のした方を向こうと頑張っていたが諦めた。

「誰? で、ここどこ?」


少年の視界に入った。

「俺は偶然お前らを発見した医者だ。

 此処は俺達兄弟の家だよ。

 まずは生きたいのかどうかを確かめたい。

 ほっといてもらいたかったのなら、生命維持をしているものを全て外して高架下に運ぶ」


「みんなは?」


「お前が、目覚めたの第1号だ。

 倒れてた者は全て運んで処置をした」


「サツには?」


「通報してたら今頃は警察病院だろーな」


「そっか。だよな。

 えっと……ありがと。

 俺、生きてたいし、みんな生きてるなら嬉しい。

 また あの場所に戻れるのか?」


「ヒドい状態だぞ? 掃除が大変だろーな」


「え?」


「何があって、どーなってたのか覚えてねぇのか?」


「あ~、鍋しててクラッて……覚えてない」


「誰かが鍋に薬物を混ぜこぜ大量混入したと考えている。

 致死量は体重比で決まる。

 お前らくらいでも ふた口み口でアウト。

 もっと小さな子は ひと口でアウトだ。

 筋肉弛緩が主な症状だった。

 呼吸困難で留まっている者でも起き上がれず、心肺停止な者も居た。

 汚物まみれでな」


「ゲ……」


「掃除までは無理だった。

 39人も運んだんだからな。

 39人で合ってるか?」


「たぶん……吹雪だったから近くのヤツらも集まってたんだ。

 だから人数は……」


「そっか。そんじゃあ分かるだけ名前を教えてもらえるか?」


「呼び名でいいのか?」


「判別できりゃ何でもいい。

 俺は輝竜 白久」「ええっ!?」


「ナンだよ?」「伝説の!!」


「あんな所まで知れ渡ってるかよ。ったく」

「かつては櫻咲の白久と呼ばれていた伝説のアタマだよ」

「青生~」


「ホンモノだ……」


「ま、だから通報はしていない。

 気持ちは解るからな。

 で、お前は?」


「タケル」


「そんじゃあタケル。

 運ぶから知ってるヤツを教えてくれ」

ヒョイと横抱きにした。


「うわ、恥ず……」


「動けねぇんだから文句言うな。隣は?」


「ヤマト。俺達のリーダー。

 その隣、オロチ。蛇ってグループのリーダー。

 で、ソータ。次は知らねぇ」


と聞きながら布団の間を歩いて行く。

点滴他、繋がっている物を持った青生が後ろを付いて行く。


「え? 誰? オトナ?」


「あ~ソイツはいい。俺達のダチだ。

 此処で寝ちまったんだよ」


白久が言っている間に寝返りを打った。


「メーア!?」


「んん? なんだぁ?」当然 独語。


「寝ててくれ。

 ビックリされるのは慣れてるだろ」


「そうか、目覚めたのか。良かったな」

タケルに笑顔を向けて、また布団に潜った。


「って……何語?」


「ドイツ語に決まってるだろ。

 メーアはドイツ人なんだからな。

 目覚めて良かったな、だとよ」


「メーアが?」


「だよ」


「俺に?」


「だよ――ってナンで泣くんだよ?」


「いや だってカンドーだろ?

 メーアなんだぞ?」


「ファンか?」


「ん」ぐすっ。


「起き上がれるよーになったらライブしてやる。

 だからシッカリ生きろよ」


「ん。あ、続きだよな」感動うるうる中。


「女の子の部屋に入るぞ」


「ミコト。女子リーダー。

 アイピとターコ、ネコとリュー。

 そんでカリナ。2人とばしてミモザ。

 えっとコノハは?

 見当たらないんだけど?」


「だとしたらコッチだな」

仕切りの小窓から覗かせた。


「いた! コノハ、重症なのか?

 子供は? お腹の……」


「分かってる。無事だよ。

 生きたいと言ったなら完璧に治す」


「助けてくれよ! 俺の子なんだ!」


「だったら治す。安心しろ」


「けど俺……ちゃんと育てられるのかな……」


「真っ当に生きたいのなら任せろ」


「え……?」


「仕事も家も任せろ」

「白久兄さんは、今は『伝説の救世主』と呼ばれているんだよ」

「余計なコト言うなっ」


「お願いします!」「裏切るのかタケル!!」


「ヤマト……裏切るってナンだよ」


「ソレ以外にナイだろ!

 ネガエリやがって!」


「落ち着けよ。

 何があって今こうなのか知ってから騒げよ。

 みんなを助けてくれたんだ。まずは礼だろ」


「っせーよ!

 俺は助けろなんて頼んでない!」


「ヤマト!」「まだ大声は良くない」

「でも――」「慣れてるから心配すんな」

「はい……」


「つまりヤマトは、あのまま放置してもらいたかったんだな?

 死を選ぶんだな? 皆を見捨てて。

 その方が裏切りじゃねぇのか?」


「っせーよ!」


「生きたいのか、死にたいのか、だ。選べ」


「殺せ!」


「そうか。

 タケル、布団に戻すからな。

 青生、全部 外してやってくれ」


 外している間にオロチも目覚めたが、オロチは静かにタケルの話を聞いて

「分かった。俺が引き受ける」

と瞼で頷いた。


「ヤマト、考え直してくれよ。

 せめてミコトが目覚めるまで待ってくれよ」


「イヤだね。オロチから聞けばいいだろ。

 頼んだぞオロチ」


「ヤマト……」

「タケル、諦めろ。ヤマトは助からん。

 愚かさで命を無駄にした者は多い。

 ヤマトも、そうなっただけだ」


オロチに言い返そうとしたヤマトは白久に抱き上げられて消えた。


「消えた……?」


「動けない俺達の視界の外に出たのでは?

 此処で死なれたら迷惑でしかない」


「そっか。

 オロチは、これからどうするんだ?」


「俺は19(歳)だ。潮時だとは考えていた。

 だが俺達を頼って来る者は後を絶たない。

 だから窓口程度に残ろうと思う」


『青生~、浄化 頼む』「はい」廊下へ。


「騒がしいな。

 まだヤマトは生きているらしい」


「食ってもねぇのに吐いてるのか?」


「鍋をしていた場所に放置してもらえそうだったのだろう」


「あの場所、近くなのか……」


「そうでなければ全員を運ぶなんて無理だ。

 これだけの事をしてもらっている。

 感謝すら出来ないヤマトは愚かだ」


「もしかして……見たのか?」


「次々と倒れていった。

 悪臭地獄になっても誰も起き上がれなかった。

 そこまでは見たが、俺も動けなかった。

 よくも あの中に踏み込んで助けてくれたものだと思う。

 洗って、治療して……そうそう出来る事ではない」


「ヤマト……それ見て、考え直したかなぁ」


「だと良いのだがな」

『ナンで連れ戻したんだよ!』


「無理だったようだな」「バカだアイツ……」



―◦―



「ナンでって、ヤマトが

『こんなトコ居られるか!』つったんだろ」


「だからって――!」


「迷惑にならねぇ場所を考えたくて戻ったんだよ。

 夜中にウッセーんだよ」

「白久サンすんません!」「黙れヤマト!」


「どーしてトモさん。ツルさんも?」


【また彩桜かぁ?】【サーロンも♪】【はい♪】

「ダチだからだよ」


「「ありがとーございます! 白久サン!」」


「静かにしろってぇ」「「はい(!)」」


「で、迷惑にならねぇ場所なぁ……」


「俺達の所は?」「預かりますよ」


「問題だらけだろーがよ」「「ですよねっ」」

『それなら人が踏み込まない雪山の奥や深海に放置しようか?』

言い終えてから黒装束の姿を見せた。


「え?」「コスプレ?」「マジじゃねーか?」


「僕は正真正銘、死神だよ。

 殺せと叫んでいたけど昇って来ないから来てみたんだ。

 雪山ならジワジワと眠るように。

 深海は苦しいけど数分で終わるよ。

 どちらがいいかな?」

三日月鎌を手に出した。


「待って!」「説得しますからっ!」

「どっちでも連れてけよ」「「ヤマト!」」


「ん? 中が騒がしい?」白久が入った。


「見捨てやがって……」


「見捨ててもらいたかったんだろ?」

「仲間 見捨てたのはヤマトじゃねぇか」

「で、どうするの?」


「雪山でも深海でもいいつってるだろ」


「そう」

転がっているヤマトを浮かせて一緒に消えた。


「ヤマト! 消えちゃった……」

女の子を横抱きにしている白久が足で襖を開けたが遅かった。

「アタシも連れてって!

 話さなきゃだからっ!」


「落ち着けミコト」「手遅れだ」


「トモさん、ツルさん……ヤマト助けて……」


「白久サン、どーすりゃいいんです?」

「さっきの死神、呼び戻せねぇんですか?」


「呼び戻すのはいいがバカ頑固ヤマトをどう説得する気だぁ?」


「「ですよねぇ」」「アタシが話すからっ!」







家出少年少女達が目覚め始めました。夜中に。

この大部屋は、廊下も含めて消音結界していますので他の部屋で寝ている者は誰も騒ぎには気づいていません。

ただし若威 猛には聞かせています。


さて、何やら勘違いして大騒ぎなヤマトですが、このまま天に召されてしまうのでしょうか?



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