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高架下の大惨事



【黒瑯兄 リーロン、夜食お願~い。

 ソラ兄、今ダメ?】


【いいよ。響は寝たから】

彩桜へと瞬移すると部屋の共有部分だった。

【何処かに行くの?】


【夜食 持ってくの~♪】


【ん? 彩桜が食べるんじゃなくて?】


【うん♪ 年末の路地裏 鬼ごっこトキ、禍臭くなかった?】


【うん。言われてみれば、だし、今だからハッキリ分かる臭いだよね。

 あの時はゴミの臭いだと思ってたよ】


【だからオニーサン達トコ行くの~♪】


【誰か探してるの?】


【たぶん家出少年いるの。春希君の友達なの】



―◦―



「オーラマスクスの声、聞こえだしたのが5月で、6月の……日曜日だったけど……」


「ん。いいから続けろ」


「うん。6月で日曜日しか覚えてないけど、オーラマスクスが大さわぎで早く行けってウルサイから走ったんだ。でも知らないトコだった。

 早く早くってウルサくて、言うとおりに手に出た黒いのを男の人に投げたんだ。

 あとで黒いのがワザワイだって教えてくれた。

 男の人、ガスボンベのトコなおしてたのに、急に大きな道具でメチャクチャにしだして……そしたらバクハツしたんだ」


「春希は怪我しなかったのか?」


「うん。すぐ走って逃げたから。

 オーラマスクスが見せてくれたんだ」


『そん時、黒い何かが空から降ってこなかったか?』


「リーロン? どーしたぁ?」


『入るぞ』スッ。

「ホットショコラテとコーヒー持って来た」


「ありがとな♪」配るのを手伝う。

【黒いの、とは?】


【死印。敵神がバラ撒いたんだ。

 で、春菜って居酒屋が爆発したんだ。

 それが6月で日曜だった。

 瑠璃の親友と幼馴染みが……それと最近 勉強しに来てる結チャンの親父サンと、理子の元ダンナも。

 勝利サンは大怪我で済んだけどな】


【そっか……】


「飛んできた黒いの、オーラマスクスが見てたよ。

 だから見えた。

 落ちる前にワザワイ早く投げろ、ってオーラマスクス大さわぎしてた。

『これでヤツは もっとツミブカクなる』ってバクハツした後、笑ってた」


「そうか。次は?」


「力ためないとダメで、次は8月。

 シエンダンタイ? の、お姉さん。

 よく来てた、母さんと話してたお姉さん。

 それっきり来なくなった。

 でもイレイサイで見たよ」


「その人は病気になってたんだよ。

 やっと治って慰霊祭に来てたんだ。

 マーズタウンでも案内してたろ」


「よく見てなかったんだ。

 オーラマスクスがケモノクサイから燃やせってウルサくて」


「ケモノ臭い場所に放火したんだな?」


「うん。大きな家――あ……」


「どーしたぁ?」


「お兄さん見た。ここ、あの家の中?」


「だよ。あのビルにも行ったからなぁ。

 で、9月からは?」


「だんだん力ためるの早くなってったから、9月の終わりくらいから11月までに、学校でイジメるヤツ3人に。

 ビンボーとか言うから」


「その子らは?」


「知らない。学校 来なくなったから。

 あと先生も。2学期の最後に。

 イジメられてるのにムシしたから。

 先生も3学期 入ってから来てない」



―・―*―・―



 カリーナ火山に静寂が戻った。


【瑠璃は……こんなのに耐えていたんだね……】


【誰かが遣らねばならぬ事だ。戻ろう】


【うん。あ……】


火口の上に揺らめく美女神が微笑んでいた。


【この神火を成したルサンティーナ様だ】


【微笑んでいるから、これでいいんだね。

 俺も背負うからね】


【ありがとう青生】

微笑み返して丁寧に礼をし、背を向けた。



 そしてアミュラの結界まで戻る。

〖いい夫を得てたんだねぇ。人神かい?〗


【いいえ、ただの人です。

 はじめましてアミュラ様。

 青生と申します】


〖そうかい。

 龍神を内に持ち、人神魂で成された人。

 なのに『ただの人』とは面白いねぇ。


 で、アンタらはオーラマスクスとオーザンクロスティを滅したと思ってるんだろうけどね。

 滅したのはオーロザウラだから安心しな〗


【それでも神殺しには違いありません】


〖オーロザウラのごく一部を滅しただけだよ。

 オーロザウラは生きてるよ。残念ながらね。

 ルサンティーナがシッカリ捕まえてるがね。


 オーラマスクスとオーザンクロスティは浄魂を繰り返されてる。

 だから とっくに浄滅されてるよ。

 アンタらが滅したのは、その記憶を重ね持ってるオーロザウラの欠片さ〗


【ああ解りました。

 つまり瑠璃は、人で言えば爪や髪の切って塵になったものを焼却処分したんですね】


〖そういうこった♪〗あっはは♪

〖青生は賢いねぇ。気に入ったよ。

 姿を見せてもらえるかい?〗


ラピスリが結界に掌を当てて流した。


〖こりゃあ……ああ、いや。ありがとよ。

 いい男じゃないか。

 持ちつ持たれつ、仲良く幸せになりな。

 それじゃあ また頼んだよ〗


【【はい。ありがとうございます】】

此処でも丁寧に礼をして通り抜けた。




〖飛ぶのも速いねぇ。

 それにしても……そっくりだったねぇ……〗


アミュラの意思にもアミュラの記憶は有る。

遥か遠い日の思い出に浸る事も有るのだった。



―・―*―・―



「ご馳走さまっ♪」ウィスパーで。

パンッとしたいが、そっと掌を合わせる。


「ね、家出少年とかタムロってるトコ教えて」


「あの街でかぁ?」


「うん。9月から3人いなくなったんだ。

 一番近い都会でしょ?」


「確かにな。

 で、知ってっけどよぉ、かなりヤバイぞ」


「オニーサン達が売ってた近くでしょ」


「だよ。もう1本裏の高架下だ。線路の方な。

 周辺から集まったヤツらはソッチだ。

 街で生まれ育ったヤツらは高速の高架下。

 主に、ってだけで混ざってっけどな。

 んで高校生くらいのがメインだが、小中も居る」


「ん。ありがと。

 知ってるヒトいる?」


「バイヤーならな」


「顔と名前、思い浮かべて」手を繋ぐ。


「あ、ああ。こうか?」


「ありがと。あと、姿 借りるね」


「お♪ ヘンゲか?♪」


「うん」【偽装環】ぽん♪


「おお~♪ マジ忍者はチゲーなっ♪」


「そんじゃ、またなっ」トレーを持って瞬移。


「声まで俺だ♪ スッゲー♪」



――ほぼ同時に部屋に戻った。


「行くか実弦(みつる)♪」彩桜が朝明(ともあき)


「おうよ朝明♪」ソラが実弦。


「おいコラ待て。俺も行く」櫻咲の白久 登場。

【親父サンの水晶玉、預かってるんだよ。

 事の顛末を知るのも親の責務だろ】


【じゃあ一緒に行こ~♪】


【俺達も行くからね】【青生兄と瑠璃姉♪】

【オレを置いてくな】【黒瑯兄も来た~♪】

【早く行きましょう】【うん♪ 藤慈兄♪】

【では行こう】【む】【金錦兄と紅火兄♪】

現れる毎にハグ♪ 姿は朝明のままなのだが。


【ヨーシ! 気合い入れて行くぞ!】


口々返事、一斉瞬移。



――暗くて寒くて悪臭とか呻き声とかとか。


【すっごい……。いっぱい居る、よね?】

あまりの臭いに言葉を詰まらせたが、浄化してもよいものかと躊躇(ためら)った。


【治癒】青生が穏やかな光球を成して照らした。


「おいっ、何事だ!? シッカリしろ!!」


 パッと見でも30人程が倒れていた。

起き上がろうと頑張っている者も居るが、多くの者は動けなくなっていた。


白久が微動した少女を抱き上げた。

「話せるか? おっと、熱発か」


「運ぼ!」「家に!」「堅固」「入れて!」


 紅火が拡げた結界はお椀を伏せたような半球状だったので、離れて倒れている者を神眼で探しては運び込んだ。

囲んで両手を当てて一斉に「瞬移!」



――輝竜家で一番広い部屋。


「寒さでかぁ? いや……食中毒?

 土鍋、キムチ鍋に見えたよな。

 ナンだよコレ……けど、この数が一斉ならウイルスだよな。うん」

そう思い込もうとブツブツ。


「白久兄にも浄化ねっ。

 部屋は紅火兄がガッチリガチガチ結界してるから大丈夫だよっ。

 サーロンせーのっ!「浄化の極み!!」」


「「光明煌輝、昇華浄治癒!!」」


「とにかく悪くて臭いの纏めて闇呼吸着!!」

「残禍も!」「うん!「浄破邪の極み!!」」


大騒ぎだが綺麗サッパリ。


「白久兄てば現実逃避?」


「……だな。認めねぇとな」


「あのオニーサン達も出されたの食べてたら、こぉなったんでしょ」


「だよ。

 俺達が間に合ったから良かったものの、この子達も朝を待たずに全滅してたろうな……って連れて来てたのか!?」


「うん。具現化人形 寝かせて来た。

 オニーサン達、どんな薬なの?」


「わかんねぇよ」「なぁ……」


「あの場所にはカセットコンロと土鍋が何ヵ所かあったろ」


「成分は分析しましたのでっ」

現れた藤慈は、それだけを言って消えた。


「フツーの人には浄化とか破邪とか弱くしか当てらんないから解毒薬 作るんだと思うよ」


「そっか。

 たぶん寒いから鍋パしてたんだろーな。

 で、誰かが大量に入れたんだよ。

 たぶんゴチャ混ぜにな」


「売るのに持ってたのを?」


「だろーよ」



「白久サン……」「忍者っ子よぉ……」


「ナンだよ?」「言って言って~」


「ぜんぶ助けるつもりなんだろーけどよぉ」

「コイツら目が覚めたら覚めたで厄介だぞ」


「解ってるつもりだ。

 けど、ありがとな」


「顔見知りも居るし」

「ナンかあったら協力するからな」


「また呼ぶと思う。その時は頼む」



―◦―



 彩桜が朝明と実弦を連れて行った後――


「青生、瑠璃サン、何やってるんだぁ?」


――大部屋の灯りを落として白久が付き添っていると、現れた青生と瑠璃が数人を光で包み、その中の1人に寄って詠唱を始めた。


 区切りのよいところで白久に顔を向け、

「既に離れていた魂を戻しただけだ」

「俺は仮死状態の身体を生体にして治癒をね」

そう言うと、次の者に移った。


「そっか。一部は手遅れだったのか。

 しっかしスッゲーな」生き返らせるって……。



 光で包んだ者 全てに魂を戻し終えると、また白久の方を向いた。

「神として新たな生命を宿す仕事をしていた。

 故に得意なだけだ」

「死神様が見て見ぬ振りをしてくださったから出来たんですよ。

 それじゃあ後はお願いしますね」

夫婦で悪戯っ子のような笑みを交わして、仲良く動物病院に戻った。







慰霊祭明けの月曜日。大荒れ吹雪の1日の出来事は以上です。

なので、この章は終わりで、次章に続きます。


春希が話す前に彩桜が動いたのは、超が付く程の賢さもありますが、もう1つ強い能力的神力が開き始めたからでもあるんです。


彩桜に有るなら青生にも有る訳で……ですが、その話は またいずれ、です。

連れて来た家出少年少女達の命を救わなければなりませんので。



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