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オーロザウラの真核



 オーラタムは気力を振り絞り、神力が希薄な場所を目指して瞬移を繰り返した。


「人世とは……白いのだな……」

真っ暗だが神には問題なく見える。

見渡す限り白かったので、つい呟いてしまった。


 そこは邦和の遥か北、極点に近い場所だった。

追っ手の気配は無い。

ならば回復に努めようと目を閉じた。



―・―*―・―



 休診時間に入り自由の身になった青生は瑠璃の所へ瞬移した。

くるくると踊っているガネーシャを見て笑みを浮かべて瑠璃に寄った。

【今は回復中らしいね。

 まだ待つの? 待つだけなら――】

封珠を取り出した。

【――お願いしたいんだけど?】


【眠っているのだな】


【うん。それに小さいから俺だけでも取り出せたよ】


【何を言う。

 摘出は青生の方が確実で上手い。

 頼りにしている】


【そう?】にこにこ♪


【誰から摘出した?】


【白久兄さんの知り合い。

 金錦兄さんが見ているよ。

 痕跡でも寄って来るから】


【では浄滅しに行く】〖理子、預かるねっ♪〗

【お願い致します】〖行ってらっしゃ~い♪〗



 瑠璃が術移したのを見届けた青生は瞑想しようと岩の上に座った。


〖青生~♪ 潜在神力、見つけた?〗


【違和感程度ですが、間違いないと思っています】


〖ん♪ 確かめていい?〗


【お願い致します】


〖そのまま瞑想しててね~♪〗



―・―*―・―



 中渡音市とその周辺では、大層 珍しく暴風雪警報が出た。

その為、小中学生は全て教師が引率して集団下校する事となった。

「明日も続くようでしたら市営放送を確かめてくださいね。

 自宅待機となったなら外で雪だるまを作ったり雪合戦をしないで、家の中で自習してくださいね。

 それでは花盛(はなもり)小学校区の皆さんは草谷(そうや)先生と、栂野原(つがのはら)小学校区の皆さんは古嶧(こせき)先生と、百合谷(ゆりたに)小学校区の皆さんは私と一緒に下校しましょう」

【彩桜様も帰宅してくださいね】


【狐儀師匠は?】


【私は引率しなければなりません】


【分身にさせないの?】


【分身も忙しいのですよ】


【高校?】


【お社も、です】


エィムとチャムが運んで来た死司神達の封じ直し真っ最中なキツネの社だった。



―・―*―・―



〖うんうん♪ 確かに見つけてるよ~♪

 あとは開くだけだねっ♪

 彩桜の方は?〗


【こういう事まで連動するのかと驚きましたよ。

 ほぼ同時に声を上げてしまいました】


〖ん♪ そ~ゆ~トコも神の双子だね♪

 安心して修行を続けてねっ♪〗


【はい。ありがとうございます】



―・―*―・―



 この日、本浄神社に行っていたメーアを慎也が輝竜家に送り届けると、玄関前に黒い高級車が停まり、清楓と彰子が降りた。

「お帰りなさい」


「「ただいま戻りました」」『慎也さん!?』

車内から驚き声が聞こえた。


「おや沙織さん?」


「ご一緒にと、お誘いしたのです♪」

「沙織様、今日はお泊まりになりませんか?」


『ええっ!?』


「この雪ですもの、お許しいただけますわ♪」

「連絡いたしますね~♪」

彰子はサッサと入って行った。


「荒巻さんも、今日はもう危ないわ。

 お泊まりになるべきよ。ねぇ慎也様?」


「え、ええ。そうですね。

 車を駐車場に入れてください」

これは本当に心配しての言葉。


「だなぁ。雪に慣れてないからな。

 お言葉に甘えさせてもらうよ」

彼女いない歴=年齢な荒巻でも察した。


彰子が顔を出す。

「お許しいただけましたよ~♪」


「沙織お嬢様、ご遠慮なさらず。どうぞ」

荒巻が一度は閉めていたドアを開けた。

「雪が入りますから、お早く」


もう降りるしかないと覚悟を決めたものの、

「では、失礼いたしますっ」

沙織は慎也を見ないように彰子へと突進して玄関に入った。


「はは~ん。頑張れよ、慎也♪」

ニヤニヤしながら肩をポン♪

荒巻は車を止めに行った。


「そうですよ♪ 頑張ってくださいね♪」

清楓もニヤニヤで玄関に入った。



「とか言われてもなぁ……」

雪舞う空に白い溜め息を溢す慎也だった。



「おい、まだ居たのかよ」

荒巻が戻っていた。


その向こう、遠くに彩桜達も見える。

「待っていたんですよ。入りましょう」

この雪の中では神眼でなければ見えない距離なので、兄と彩桜に見つかる前にと、急いで玄関に入った。



―◦―



【理俱師匠、恋の悩み?】


【そうですよ】ふふっ♪


とっくに見つかっていた。



―・―*―・―



 オーロザウラの微小魂片を浄滅し終えたラピスリは、アミュラの意思に引き留められていた。

〖とうとう真核が人世に行っちまったんだね?〗


【やはり真核なのですね】


〖今アンタが(まと)ってる気で確信したんだよ。

 オーロは幾重にも呪われてるからねぇ。

 それだけの事をした結果だから仕方ないし、解きようもないんだよ。

 (もろ)い人世をあまりウロウロさせない方がいい。

 災厄をいくらでも引き寄せちまうから、長居させたら人世が崩壊しちまうよ〗


【では、温暖な地が此処のような天候になっているのも奴の所為(せい)なのですか?】


〖序の口だろうねぇ。

 早く捕まえなよ〗


【はい。捕らえる為に若干の魂片を餌にしようと考えておりますが、間違いでしょうか?】


〖いいんじゃないかねぇ。

 真核なんだから、ちぃとばかし魂片が足されたくらいじゃあ何にもなりゃしないよ。

 火口に油を1滴 落とすようなものさね〗


【ありがとうございます。

 では人世に向かいます】



―・―*―・―



 青生の所に藤慈とジョーヌが来た。


【あ、そろそろ夕の診察時間かな?】


【吹雪ですので予約の方々には休診と連絡しました。

 予約の取り直しは明日も天候が危ぶまれておりますので明後日以降にしておきましたよ】


【ありがとう藤慈、ジョーヌ様】


【では私達はこれで――】【待ってもらえるか】


声に続いて瑠璃が戻った。

【雪予報は出ていたが吹雪にまでしたのは悪神だ。

 居るだけで災厄を(もたら)すそうだ。

 それを皆に伝えてもらいたい。

 これ以上の災害が起こる前に捕らえねばならぬからな】

そう言って両者と手を繋ぎ、計画を流した。

【頼む】


【【はい!】】



―・―*―・―



 回復に努めようとしていたオーラタムだが、落ち着けないので(はかど)らないまま再び動き始めた。

また神力は温存しようと、飛んで人世を巡る。


 ふむ。我が欠片は、この地に

 集まっておるのだな。


 真上は神世と人世を繋ぐ門か。

 真下に集まるのも不思議ではないな。


降下した。


 この結界は何だ? 其処此処(そこここ)に在るが……。


 獣神(ケモノ)の考えなんぞを

 理解しようというのが間違いか。

 考えておろう筈もないのでな。


死神封じなので難無く通り抜ける。


 あれは痕跡であったな。あれもか。

 向こう――痕跡だな。

 何故こうも痕跡ばかりなのだ?

 ん? 入っておる! 見つけたぞ!


標的の背後に降下し――【堅固、浄破邪炎擊!】

「ヒッ」

――上空に逃げ、指先の破邪炎を禍で消す!


 早く強化せねば! 何も果たせぬ!


素早く次を探す!

降下して忍び寄り――【滅禍大っ輝雷!】

「ヴッ」

――また逃げて禍で身を包み、次を探す!


今度は瞬移で背後に――【神聖水です!】

「!?」

――気温が気温だけに氷結したが瞬移!

神の身にも浸透しようとする氷に苦戦したがリトライ!


 シマッタ! 痕跡であったか!


逃げようと――【竜巻でアッチ行けだ♪】

「ダーーーーッ!?」

――暴風に絡め取られるようにブッ飛ばされた。



「え?」キョロキョロッ!「常務!?」


「チゲーよ。一緒にすんな」


「喋り方も全部 常務じゃないですかぁ」


「言ってねぇで早く帰れよ」走り去った。


「泊めてくれてもいいじゃないですかぁ。

 うわっ、寒っ」

追い掛けたいが家とは逆方向。

諦めて家に向かう琢矢だった。



―◦―



 その後もオーラタムは魂片を取り込もうと頑張っていたが、(ことごと)く阻止されてしまった。


 こうなれば小娘が持つ欠片を

 奪うより他に無しか……。


 如何にすれば勝てる?

 何か良い策を考えねば――。



―◦―



【ねぇねぇ紅火兄、欠片 入ってるヒト達は?

 出さなくていいの?】


【欠片は全て眠っている。

 マーカーは付けている。

 悪神を捕らえた後だ】瞑想して追尾中。


【ん♪】


【気を引き締める事が出来ぬのならば帰れ】


【んもぉ~、紅火兄てばソレばっかり~】


【む……】

【彩桜、紅火兄様も嫌われたくはないのですよ。

 誰かが引き締め役を担わなければならないと頑張っているのです。

 本当は彩桜と一緒に居られるのが嬉しいのですよ】

藤慈は彩桜にだけ伝えた。


【ん♪】【帰れ】【またぁ~♪】【帰れ】

【紅火兄だ~い好き♪】ぴと♪【む……】


紅火の負け。







真核は最強らしいのですが……なんだか、そうは思えません。

本当に強いのか? は、これからでしょうか。


彩桜が家で おとなしくしているなんて有り得ませんよね。

兄達と楽しそうなのは狐儀も想定内です。



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