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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第26章 中渡音中央交差点多重事故慰霊祭
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マフラー男の正体、ソラの正体



 馬頭プレハブ控室で大呂母子と辰矢達がモニター越しのライブを楽しんでいると、ノック音がして大きなオカモチを持った馬頭2人が入って来た。

「マーズパンケーキから出前で~す」


「「パンケーキ!?♪」」


「おう♪ 高校生男子、甘いのは苦手か?」


「「「いただきます!♪」」」


「果物全部乗せスペシャルだ♪ 配るぞ♪」

母子も椅子に座っているのでテーブルに並べてもよかったのだが、無言な方が手渡していった。

飲み物も数種類 持って来ていて、喋る方が聞きながら注いでいく。


「おいしそ~♪」「いい におい~♪」


「召し上がれ、だ♪」


「いただきま~す♪」一斉。母にこにこ。


「大呂さんも遠慮なく」


「ありがとうございます、すみません」


「ウマっ♪」「スゲー♪」「タルくねぇな♪」

「「おいし~♪」」「そうね♪」


「だろ♪

 い~い具合に卵が熟成されてたからなっ♪

 冬輝の小遣いで買った卵だぞ♪」「え!?」


慌てた冬輝が椅子に皿を置いて、馬頭リーロンを部屋の隅に引っ張る。

「だって あのタマゴ、くさって――」


「なんかねーよ。

 腐ってたら部屋なんかに居られないスゲー臭いになるんだからな。

 冬なんだから冷蔵庫の中だろーが外だろーが同じだよ。

 だから箪笥の上で絶妙に熟成だ♪」

リグーリも保っていたのだが、まずまず本当だ。


「ジュクセイ?」


「メチャウマになってたってこった♪

 パンケーキ、旨かったろ?」


「うんっ♪」


「だからメデタシ メデタシだ♪

 ほら、冷めちまうぞ」


「ボクのパンケーキ~♪」戻ってパクッ♪「おいし~♪」


「あ!」「どーした恒樹?」「ソラは!?」

「「あ……」いつの間にか消えてたな……」


背を向けている無言な馬頭が肩を震わせている。


「「「ん?」」」


クルッと向いて馬頭を取ると笑顔♪


「「「ソラ!?」」」


「休憩中のマーズパンケーキに卵を運んだのはボク♪」


「ったく~」「消えるなよなぁ」

「でも美味しかったからいい♪」


「その言い方、星琉クンそっくりだね♪」


「弟よく知ってるの?

 道で会ったんじゃなくて?」


「よく会ってるよ♪ ほぼ毎日♪

 甘いもの好きなら星琉クンと尚樹クンに場所を聞いてね」


「ソラの家?」「マーズの家か?」

「あ! 星琉が秋から毎日 通ってるトコ!」


「うん。どれも正解かな♪

 でも馬頭の正体は内緒でお願い」


「言ったら億の借金だろ? 言えるかよ」


「うん♪

 それじゃあ、また。

 大呂さん、春希クンの事は馬頭(マーズ)にお任せください。

 さっきの女医さんも馬頭スタッフですので。

 兄さん行こう」


「おいおい、今『兄さん』は――」


「歳上だから『兄さん』♪

 食器は そのままでいいですからね」

馬頭リーロンを引っ張ってニコニコ出て行った。



「ソラも馬頭の一員だったとは……なぁ?」


「「そうだね」」


「そーいや、どこで知り合ったんだ?」


「引っ越して来たばかりで迷ってたって」

「同じ高1だからって僕の部屋に」

「弟達が連れて来たんだ。「あ……」」

恒樹と星貴が顔を見合わせた。「「偵察?」」


「だろーな。

 春希を助けようと動き始めてたんだろーな。

 ま、任せておけば誤解も解けるだろ」

叔母に『大丈夫だ』と大きく頷く。



―◦―



 ステージの方ではメーアと馬頭雑技団のライブが終わり、次のバンドに移った。


「僕ら~龍~、自由な~龍~♪

 思いの~まま~に、天翔~る~~♪」

ぴょんこ ぴょんこ上機嫌な馬頭彩桜が歌いながらドアを開けると、パンケーキを食べていた者達が一斉に向いた。

「あ……失礼しま――俺達の部屋だねぇ」

弱々神眼しか向けられなかったので初対面。


【彩桜、春希クン絡みの皆さんだよ】【ん♪】


「じゃ入りま~す♪

 メーアさんも入って~♪」和語→独語。


「ナニ言った?」「英語?」「俺に聞くな!」

「ああっ!?」「本物!?」「マジかよ……」


 馬頭彩桜が せっせと訳している。

騒ぎを起こした子供の親族と友達だと付け加えて。

「投げてきた卵でパンケーキ♪

 食べ物、大事だから~♪」

これは訳している間にソラから聞いた。


「確かに大事だな。そんなら無駄にせず食った――のは いいんだが、まさかライブ中ずっと ここに居たのか?」


「そぉみたい~」


「どっちのファンでもないんならいいけどな。

 親族だからって理由で隠れるしかなかったんなら可哀想だよな」


「メーアさん、今日はホテル?

 俺ん家に泊まらない? 何日でもいいよ♪」


「キク婆様の実家に行こうかと思ってたが、泊めてくれるんなら大喜びだ♪

 2週間の休みだから10日くらい頼めるか?」


「ん♪ 来て来て~♪

 あれれ?

 お兄さん達、何してるの?」独語→和語。


背中を向けてコソコソ話していた。

「えっと、サインしてもらえるような物、持ってなくて……」

各々の荷物をゴソゴソしていたのだった。


「だったらウチ来てく~ださい♪

 メーアさん10日くらい居るから~♪」



―◦―



 兄達は彩桜とメーアを盾にする形で楽器だけを控室に置いて、各々の持ち場に戻っていた。

来場者達が馬頭を追って野外ステージから離れたのは分かっているが、だからと言って どうすれば? と悩みつつ。


「集まってしまうのは仕方ないよ。

 今ステージに居るバンドの方が魅力的なら移動して来ないと思うよ」

馬頭白久の前に来たマフラー男が紙幣を募金箱に入れた。


「また来たのかぁ?

 昨日あんだけ寄付してくれたのに?」


「名前は書きたくないんだ。

 でも寄付は したい。

 ちょっと訳あってね」また横に避けた。


「つまり、お前もか……ん。

 チョイ持ってろ」「って、ええっ!?」

募金箱を押し付けた馬頭白久はヒラリとカウンターを越えて裏口から出た。




「お~い結解、チョイ付いて来い」

と、連れて戻り、男の横顔が見える窓から覗かせた。


 男は流石に熱くなったらしく、トレードマークかと思えたマフラーも外して、コートと一緒にカウンターに置いていた。


結解が ひとつ頷いた。

「東合に居た頃の上級生だと思います。

 東合も短期間でしたので自信はありませんが、あの首の傷痕は当時 大騒ぎだった事件の際のものでしょうから」


「つーコトはアイツらのが近いのか……。

 で、事件とは?」


「……隠していてスミマセン」


「はあ? ナンか勘違いしやがったな?

 徳示サンに濡れ衣を着せた二人と結解との関係なんか どーでもなんだよ。

 どーせ半年も関わっちゃいねぇんだろ?

 お互い覚えてなくてトーゼンだ」


「あ……はい」


「で、事件ってぇ?

 喧嘩でもして大怪我かぁ?」


「サツから逃げていてバイクに跳ねられて、道路工事の穴に落ちたそうです。

 その時に土中から出ていた何かでサクッと。

 あの二人に命を助けてもらったそうです。

 助けた為に二人は捕まったそうです」


「結解は、そん時は?」


「別方向に逃げていました」


「そっか。サツが追ってた時だから騒ぎになって、事故じゃなくて事件か。

 ありがとな。

 思い出させて悪かったな。行っていいぞ」


「はい」ペコリ。




 馬頭白久は別の募金箱を持って男と並んだ。


「え? まさか俺、ずっとですか?」

傷痕を隠す角度に身体を向けた。


「お前、命の恩人に会いたくねぇか?」

馬首の傷痕に当たる位置をポン。


「どうして……それを……?」


「ま、話は後だな。

 会いたきゃ閉場まで此処に居ろ」


「えっと……会いたいけど、So-χ(ソーカイ)聴きたいんですよね」


「あ~そっか。もうすぐだな。

 そんなら戻って来いよ。

 手伝ってくれた礼はマスコットをフルコンセットでど~だ?」


「それ、忘れないでくださいね」


「俺に二言はねぇよ♪」【紅火、1セットな♪】



―◦―



 慰霊祭ラストのSo-χ(ソーカイ)がステージに立った。

野外ステージ観覧席には人が戻り、夕の寒さを感じないくらい密集していた。


【ソラ兄ガンバ♪】


【彩桜……見てるの!?】


【うんっ♪ たぶんね~、春希君もぉ今日は来ないと思うんだ~】


【来ないだろうね】


【だから聴く~♪ メーアさんも一緒~♪】


【えええっ!?】

なんて顔には全く出さずに、爽やか笑顔でキーボードを担当している。


奏の透き通った優しい歌声が、天に届けと願いや想いを連れて昇っていく。

響とのハーモニーも耳が幸せになるくらい美しい。


「いい声だな。プロなのか?」


「メジャーなってないのぉ」


「邦和人の目はフシアナか?

 耳は詰まってるのか?」


「カケルさん復活したら羽ばたくと思う~♪」


「誰だソレ?」


「奏お姉さんの婚約者さんで~、事故でユーレイなっちゃったのぉ」


「そっか……んんっ? 復活!?」ゾンビか!?


「メーアちゃんみたく復活するの~♪」


「そっか。だよな……確かに復活だな♪」


「でしょ♪」



―◦―



「アレ、ソラじゃないか?」


「「ソラだよね……」」


「高校生でもない、のか?」


「でも……騙されたとか」

「怒りとか、ないよね?」


「ナイな。マジで友達になりたい」


「「なりたいよね♪」」


「弟達に頼めるか?」


「「モチロン♪」」



―◦―



「あ~、シマッタなぁ。

 こんな大所帯バンドだったのか。

 弟と、カワイイ姉妹しか聞いてなかったのになぁ。

 これじゃ、どれが弟なんだかだなぁ。

 それ見ようと、店任せて来たのになぁ。

 昨日は適当に来たら夜ライブだったから店に戻らないといけなかったし~。

 馬頭には手伝わされるし、また行かないと貰えないし、散々だよな」

ぶつぶつ独り言。

自分から話し掛けたのは忘れたのか?


(かい)さん?」人を掻き分けて来た。


「あ~、サボってるの見つかったかぁ」


「もしかして爽を見に?」隣に到着。


「どんなバンドかな~と思ってね。

 想像以上に良いバンドだね。

 終わったらすぐに帰らないといけないけど一緒に聴こうよ」


「もちろん♪ ね、次の休みは?」


「来週の火曜。明後日じゃない方ね。

 涼ちゃんは?」


「私も休み♪」バレンタインだから♪







マフラーぐるぐる巻き男は、東合市でライブハウスの店長をしている(かい)という元・不良でした。

So-χ(ソーカイ)の拠点なライブハウスの店長・涼の恋人でもあるようです。


高校生として春希の従兄・辰矢に近付いたソラも大人でSo-χ(ソーカイ)メンバーだとバレました。

でも、いい友達になれそうです。


で、春希は?



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