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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第25章 増殖する悪神オーロザウラ
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不穏な男の子



 輝竜家の居間で結解は繋ぎだけをして、百香を連れて実家に向かったので理倶(リグーリ)が追っていた。


【何か変化は?】ラピスリの声だけ。


【今のところ何も起こっていないが?】


【彼もオーロザウラが狙う人神の欠片を持っていた。

 他のオーロザウラが現れる可能性もある。

 十分に注意していてくれ】


【ああ。気を張ってるよ】



―・―*―・―



 キツネの社ではケイロンとルロザムールが話しては試すのを繰り返していた。

眠りを維持している青生と瑠璃も真剣に探りを入れている。


 その横でソラは紅火からの話を聞いていた。

【つまり響の魂には理子さんと同じ悪神の欠片が入っていたんですね?】


【そうだ】


【奏お姉さんにも、だなんて……】


【猫の女神様の欠片は、その御力に置き換えられている。

 どちらも目覚めぬまま今に至る】


【だとしたら、お兄――えっと、ユーレイな婚約者の声も聞けますよね!】


【心話環は、その潜在力を活かすように作る。

 それならば早く作れるだろう】


【ありがとうございます!】


【ソラは……】喋るの苦手。続く言葉を探し中。


【はい?】


【この現実ですらも明るい方向に捉えられるようになったのだな】


【あ……たぶん彩桜と毎日一緒に居るからだと思います。

 彩桜って何にもメゲないから】


【そうだな。彩桜は友を得て強くなった。

 友を護る為に前を、上を向いた。

 ソラと相棒と成って更に強くなった】


【祓い屋してよくなったからですか?】


【それ以上にソラと相棒と成れた事が大きい】


【どうしてボクを?

 ずっと疑問だったんですけど?】


【いずれ分かる。

 それよりも奏殿の婚約者を連れて来てもらえるか?】


【あっ、はい!】瞬移。



 すぐにショウを抱えて戻った。


【ショウ、奏殿を支えてもらいたい】


【ん♪ お兄オモテにするからソラは消えててね~♪】添い寝♪

【あれれ? 目覚めない? オニキス~♪】

オニキスに眠らせてもらったらしい。


【私が解こう】瑠璃が触れた。


【起きた~♪ ソッコー乗っ取られた~♪】


くぅ~~ん。ぴと。


【おとなしいから大丈夫みたい~♪】


 ソラが淡く姿を成してもカケルは向きもしなかったので身体を具現化した。


【ソラも響殿に付いて支えるべきだ】


【はい。ありがとうございま――ん?

 男の子?】


【ふむ……俺が行く】【ボクも行きます!】



――稲荷堂の南、路地から様子を窺う。

小学3、4年生くらいの男の子が、向かいの啓志(ひろし)の家の門柱に隠れて輝竜家を見ていた。

 来訪者があり白久が出迎えると、男の子は頷いて家に寄り、ポケットから出した物をゴソゴソとしてから投げ入れた。


「何を投げたの?」

ソラが後ろから声を掛けた。


男の子は無言で睨むと、逃げようとしたのでソラは腕を掴んだ。

「オマエにはカンケーないだろ!」


「ボクも住んでるから関係あるよ」


「ウルサイ! エラソーしやがって!

 アイツもオマエも不幸になればいいんだ!」

ソラの腕に思いきり噛みついた。


痛覚をオフにしていたので痛かった訳ではないが、何かが流れ込んで来そうな感じに驚いて手を離すと、男の子は走って逃げた。


「とんでもなく速いし……この不穏……」


「追わなくていい。火に油を注ぐ。

 確実にまた来る」

【神眼視線を通じて内の者から反撃される恐れがある】


「はい。彼が投げた物は?」


「庭の犬達に預けた。戻るぞ」「はい!」



――キツネの社では疲労困憊としか見えない状態で、神も人も座り込んでいた。

「青生先生、ショウは?」奏お姉さんは無事。


「この封珠だ」瑠璃が見せた。


「何があったんですか?」響も無事だね。


〖カナデの欠片が攻撃してきたの~。

 反撃して網で捕まえよ~としたらコッチ来て、お兄が食べちゃって凶暴化して、大騒ぎ~〗

封珠の中のショウも疲れきっている。


「目覚めてしまったんですね?」


「半覚醒だったから、どうにか封じられたけど……強かったよ」

「青生、神の湯に行こう」「そうだね」瞬移。



「キツネ様、もう奏お姉さんには入っていないんですか?」


「分からぬ」


「そうですか。

 もしかして、さっきのもボクに入ろうとしていたのかな?」


「「む?」」紅火も反応した。


「男の子が噛みついてきた時、何かが流れ込んできそうな感じがして手を離したんです」


「より良い器へと動くのでしょうか?」


「可能性は否定 出来ぬな」



―・―*―・―



 彩桜は神眼は向けずに、神力も身体の外に漏れないように気をつけて、逃げている男の子を尾行していた。

男の子は北へ北へと走り、駅を越えて支援団体事務所が入っているビルの周りを歩き、ビル間のゴミ箱の前で止まった。

 彩桜はビル間なので男の子の真上に瞬移して、手足を突っ張って様子を窺った。


 男の子は またポケットから何かを出してゴソゴソ。

彩桜からは頭に隠れて見えなかったが安物ライターの着火音が聞こえたので近くまで下りた。

「ソレなぁに?」


 ビクンと肩を弾ませた男の子はキョロキョロした後、壁に背を着けて横這いにビル間から出ようと動いた。

 出口に達した時、手に持っていた物を投げて走り去った。

それは長くはないが棒状に捻った新聞紙で、炎が中程に達すると火柱が上がった。

火花も派手にバチバチしている。


「うわわわわっ水龍! ――じゃダメ!?」

瞬移して廊下の消火器を手に戻って消したところに足音やらが聞こえたので彩桜も逃げた。



――紅火の気に瞬移したのでキツネの社。

「紅火兄、消火器 元通りお願い」


「ふむ。あの子を追ったのか?」


「うん。

 神眼ダメは聞こえてたから向けてないよ。

 だから見失っちゃった。

 支援団体事務所に放火して逃げちゃった」

投げた時に撮ったスマホ写真を見せた。


「ならば次は住宅か?」「俺 行く!」


瞬移した彩桜をソラが追っていた。



―・―*―・―



【此処は?】瑠璃と一緒に野天風呂は嬉しい。

が、喜んでいる場合ではない。


【場所としては狐魔ヶ岳(こまがたけ)の中腹。

 神が成した浄化と回復の温泉だ。

 オフォクス父様は人世に降りた時に大怪我をした。

 サイオンジ殿が効くだろうと父を連れて来た場所だ。

 ……ショウも眠ったようだな】


【カケル君に定着してしまう前に取り出さないといけないね】


【そうだな】

【トリノクスなら眠ったままでも追い出せるかもしれないよ】

青生の頭上に青ドラグーナが浮いていた。

【危機だと伝えてみるよ】


【【お願いします!】】



―・―*―・―



【やっぱり来たね】


 駅北の、周りは休耕地しかない一本道を男の子が物凄い勢いで走って来ている。


【うん。

 でもソラ兄、サーロンしてていいの?

 響お姉ちゃんトコ居なくていいの?】


【今は待ってるだけだから。

 コッチを解決しないと響に集中できないよ】


【そっか。ゴメンね、逃げられちゃって】


【ボクも逃げられたから同じだよ】


 住宅地に入った男の子は素早く辺りを確かめ、仕上げ作業中の社宅側からは見えないようにルートを選んで真ん中辺りへと走った。

 彩桜とサーロンは耳を澄まして足音を辿り、止まった所へと瞬移した。

サーロンはユーレイとして中空に。

彩桜は屋根の上に。


 男の子は またゴソゴソしている。


「またなの?」


男の子が顔を上げると目の前にユーレイ。

「わああっ!?」


「3回目だよね? 消すからね」【【水龍!】】

2方向からの水の龍が炎を飲み込んだ。


「なにすんだよ!」


「それはコッチのセリフだよ」

【【浄破邪の極み、人用の!】】

浄化光で包むと神耳に絶叫が轟いたが、核は男の子の魂の奥に隠れたのが伝わった。


「なにしたんだよ! けど負けないからな!」

また走って逃げた。


【待って彩桜!

 掴んだらコッチに来るから!】【ほえ?】

捕まえようと跳ぼうとした彩桜が踏み止まる。


サーロンは身体を具現化して、残された新聞紙を拾った。

「真ん中、何か入ってるよ」カサカサ。


「火薬? あ! バチバチしてたから花火から取ったのかも~」


「それとカプセル? 中は液体だね」


「紅火兄に調べてもらお~」


「そうだね。行こう」瞬移。


【オニキス師匠~、見張り犬お願~い】


【支援団体事務所には行かせたよ。

 その住宅地もか……ん。伝えたからな】


【あっりがと~】

「ね、紅火兄コレ何?」


彩桜の掌のカプセルに紅火が手を翳した。

「ガソリンだ」


「コレと火薬、新聞紙に包んでたの~。

 浄破邪したけど核って神火じゃないとダメでしょ?

 だから魂の奥に逃げたの~」


「ふむ」「修行中の者を街に放つ」


「お稲荷様ありがと♪」


「浄破邪で神力は失ったであろうが、核が復活させるであろうな。

 他にも寄って来るやも知れぬ。

 気を抜くな」


「はい」「うん!」「はいっ!」







またオーロザウラ持ちの男の子です。

この住宅地に見学招待した時に、太木と結解が強い不穏を感じていた男の子です。


神眼視線や神力を伝って攻撃するとか、厄介極まりありません。



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