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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第25章 増殖する悪神オーロザウラ
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悪神魂片の繋がり



 彩桜達が馬牧場で遊んでいた頃、ラピスリは颯人(はやと)理人(あやと)から摘出したオーロザウラの微細魂片を神火で浄滅した帰りで、結界に込められたアミュラの意思と話していた。

〖何度も何度も すまないねぇ。

 まさか魂核に逃げられちまってたとは、情けないこったねぇ〗


【やはり魂核のみなのですね?】


〖魂核ばかりが通るからねぇ。

 魂の中の極々(ごくごく)小さな部分だ。

 他が通らないんだから、核以外が逃げてるとは思えないよ。

 ま、他はキレイサッパリ浄滅したからね。

 オーロだけに出来た部分は、だけどねぇ。


 アタシは捕まえて運ぶので精一杯だったけどねぇ。

 ルサンティーナも滅せないから、全神力を怒りに変えて火山に込めて神火にしたんだ。

 それでようやくだよ。

 最強女神の怒りの極みだからねぇ。

 だから他の何ものでも滅せないんだ。

 その神火に変えていた間に逃げちまってたんだろうねぇ〗


【この結界を成したのは、その後なのですね?】


〖もしも残滓が隠れてて、集結したとしても出られないように成したんだよ〗


【オーロザウラだけに出来なかった部分は?】


〖ルサンティーナが抱えてるよ。

 離しようがなかったんだ。

 けど……アンタ達も居れば離せるかもだねぇ。

 惚れ惚れするくらい強いからねぇ〗


【それは……協力は惜しみませんが……】


〖ホ~ント可愛い嬢ちゃんだねぇ♪

 さておきだ。此処に長居は危険だからね。

 魂核は小さいが強い。増殖も可能だ。

 既に核の大きさ以上に浄滅してるよ。

 だから気を緩めちゃなんないよ。いいね?〗


【はい。ありがとうございます。

 魂核 全てが逃げたとすれば、真核が未だ何処かに潜んでいるのですね?】


〖そうなるね。

 真核は通過していないからねぇ。

 神力を蓄えようとしているんなら神世だね〗


【ザブダクルが迫り来る夢を見たようです】


〖だったら神世で間違いないね。

 ソイツを浄滅しないと終わらないよ〗


【はい。心して掛かります】


〖それじゃ、気をつけて帰りな〗穴が開いた。


【では、また】礼。通過して離れ、術移した。



――死司最高司の館。


 また寝込んでいるのだな。


好都合なのでマディアの前に瞬移した。



――既に見えていたマディアは立ち上がって嬉しそうにしていたので魂を取り込んだ。

【姉様♪】


【ザブダクルは、今度は何故?】


【夢の中でルサンティーナ様と楽しそうにしています。

 何日も、こうなんですよ】


【身体も弱っているが?】


【たぶんエーデが浄化してるんですよ♪】


【ならば良い。

 先に用件の方だ。

 見つかるオーロザウラの欠片は魂核ばかりだ。

 つまり魂核のみが逃げたと考えられる。

 その真核が人世では見つかっていない】


【もしかして神世で復活を目論んでいる?】


【可能性は大だ。

 だから現れたなら即座に吼えろ。

 一神(ひとり)で戦おうとするな】


【はい♪】



 その後、マディアの話を聞いているとザブダクルが目覚めたと感じたので、マディアは執務に戻り、ラピスリはソファで待っていたと装った。


 ドアが開き、ふらりと入ったザブダクルが急にシャンとした。

「来ておったのか」


「ご報告をと存じまして」


「オーロザウラのか?」

緊張も(あらわ)に向かいに座る。


「はい。人世で見つかりますは魂核のみ。

 その微細魂片が数多く見つかっております。

 ですので魂核のみが浄滅を逃れたものと存じます。

 ただ……人世では真核が全く現れないので御座います」


「待て。魂核は分かる。シンカクとは?」


「魂の核中の核、最強の箇所です。

 真核も逃げた筈。となれば、復活しようと神世で神力を溜めている筈です」


「なっ……」


「オーロザウラの狙いは貴方様でしょう。

 現れるのは必至です」


「神世に居てはくれまいか?」


「マディアには吼えよと伝えております。

 獣神の咆哮は人世に居ようとも聞こえます故」


「来て、くれるのだな?」


「はい、必ず。

 では、これにて」

ザブダクルには美しさの極みの如き礼をし、マディアと挨拶を交わすと、回復治癒を放って消えた。



「マディア……」「はい」


「……儂から離れないでくれ……」


「はい。ですが会議やらは?」


「儂も出る。大勢の場所の方が良かろう?」


「そうですね。一緒に参りましょう」


「……頼む」「はいっ」



―・―*―・―



 彩桜達が家の前でバスから降りると、白久と結解が角を曲がって来たのが見えた。

「たっだいま~♪ で、おっ帰り~♪」


「おう♪ で、客人は黒瑯と一緒か?」


「一緒にオヤツ作ってくれてる~♪」

〈狐儀師匠、サーロンお願い。

 ソラ兄、早く行ってあげて~〉


〈ありがと彩桜〉瞬移。



――響は和館の部屋で臥せっていた。


「響、大丈夫?」よしよし。


「うん……彩桜クンの護衛は? いいの?」


「狐儀様と交替したトコ。

 風邪ひいたとか?」


「そうじゃない……けど……あのね、私の中に何か見えない?

 神様はヨシさんの方なのよね?

 悪霊とか、何か……」


「ボクには見えないけど……」


「そっか。

 すっごい悲鳴が聞こえたの。

 でもリーロンさんとか、お姉ちゃんには聞こえてなかったの」


「だから中だと思ったんだね?」


「うん。確かに頭の中かな? とにかく身体の内側から聞こえたのよ。

 だから何かに憑かれてるのかな? って……」


「そっか」『それは何時頃だ?』廊下から。


「瑠璃先生?」


『そうだ。

 聞こえてしまったのだが、すまない』


「えっと……10時半から11時くらい?」


『ふむ。ちょうど悪霊を浄滅した頃だ。

 鋭敏な響殿だからこそ拾ってしまったのだろう』


「悪霊? どこで?」


『漢中国だ。キツネ様と行っていた。

 ソラ、悪影響は無いとは思うが、付いて居てもらいたい』


「はい!」「あっ、ありがとうございます!」


足音は階段とは逆、サイオンジとトクの部屋に向かって行った。



―◦―



 サイオンジとトクの部屋にはルロザムールが居た。


【ルロザムール様、如何ですか?】


【はい、絶叫は彼女を通じて私にも伝わっておりました。

 目覚めかけていた不穏な何かは、確かに目覚めたようです】


【と、なると……他の欠片を神火で浄滅した際に危機が伝わってしまった、か?

 青生を連れ戻し――】【俺が見ます】

現れた紅火がルロザムールに並んだ。


【お願いします】〖ラピちゃん手伝って!〗

ガネーシャに引き寄せられてしまった。



――神の湯。

〖ラピちゃんも押さえて!

 神力封じ無効みたいなのっ!〗


理子が何処かに行こうとしているらしく、大暴れしていた。


封乱悪牢(フウランアロー)!!】


放たれた光矢が理子を貫くと、ピタッと固まった。


〖ありがと~♪〗へろへろ~チャプン。

〖ちょっとだけ神力 感じるんだけどな~〗


【また封珠から出たのですね?】


〖そ~なの~〗

湯の中の保護珠(キャンプー)を引き寄せて割られていないかを確かめ、胸の谷間に。

〖3時間くらい格闘してた~〗


【やはり……】


〖ん? 何が?〗


【まだオーロザウラと繋がっていると確信したまで。

 人神様にお確かめ頂きます】

新たな封珠に理子を込めて、去り際に回復治癒を放った。



――再びサイオンジの部屋。

【瑠璃殿、その強い不穏――禍々(まがまが)しさの塊は一体?】

頼む前に紅火が封珠を睨んで言った。


【極悪神が潜んでいるらしく。

 お確かめ頂けましょうか?】

ルロザムールに渡した。


【いらした瞬間に確信しておりましたよ。

 隣室のものよりも遥かに隠れるのが得意なようです】


【欠片は複数であったのか……】


【神力は失っておりますね。

 ですが……お返し致します】


【ふむ。何事かありましたか?】


【私の神力を吸い取ろうと……(おぞ)ましい探りが入りました】


【獣神の神力は要らぬ、か。

 では社の方に――】隣室から悲鳴。【ソラ!】


【気を失いました! これは……?】


【奏殿も倒れている。

 オニキス、奏殿を社に】【おう!】

【ソラ、響殿も社に運ぶ】【はい!】


【瑠璃姉、俺も行く!】


【彩桜は友を護れ!

 何事が起こるか知れたものではない!】


【ん! 白久兄 黒瑯兄、警戒ねっ!】


【【おう!】】







オーロザウラ(オーラマスクス、オーザンクロスティを含む)の魂片達はバラバラになっても繋がっているようです。

そして魂片と器も。

その繋がりを断つ魂片摘出ですが、完全に絶つには至っていないようです。


颯人・理人父子に入っていた魂片は微細で、眠ったままだったようです。

ですが理子と奏と響の魂片は目覚めていて、浄滅された魂片からの情報を得て巧みに逃げ回っています。



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