スーパーセレブな輝竜家
翌早朝。
「うわわわっ! 俺 寝坊!?
サーロン!? もぉ行っちゃった!?
えええっ!? お社!?」
「落ち着け彩桜」「どして紅火兄!?」
「昨夜の記憶は?」「あ! そっかぁ」
「無事か?」「うん。大丈夫みたい~」
「十分、間に合う。
説明は青生が目覚めてからだ」
「じゃあ俺、犬のお散歩 行ってくる~」瞬移。
――〈サーロンおはよ♪〉
彩桜の部屋の共有部分にサーロンは居た。
早朝飯1も運んでくれたらしい。
〈おはよ。どこ行ってたの?〉
〈お稲荷様トコ~♪ いっただっきま~す♪
ドラグーナ様の潜在能力が俺と青生兄に分かれて入ってたの。
だから発動ムリで~、知恵の大神様達に発動できるよぉにしてもらったの。
でも俺、寝てたから何したのか知らないのぉ〉
〈昨日ガネーシャ様に連れてかれたのも?〉
〈うん。
俺の周り飛んでて見つけて~、でも鍵が見えないって青生兄の中 探したの。
そしたら鍵も見つかったの~♪〉
〈どんな力?〉
〈知らにゃいのぉ〉
〈それも寝てたから?〉
〈えっとね、見つけて自分で開かないと使えないんだって~。
見つけたら俺も使えるんだって~♪〉
〈青生先生は?〉
〈おんなじ~♪〉
〈って、写しを交換とか?〉
〈そぉかも~♪ ごちそ~さま♪
お散歩しながら話す~♪〉
〈そうだね。行こう♪〉
―・―*―・―
〈あ……紅火〉起き上がった。
〈青生、記憶は? 大事無いか?〉
〈うん。眠らされるまで途切れていないよ。
紅火は寝ずに見ていてくれたの?〉
回復治癒で包んだ。
〈彩桜の寝言で楽しんだ。
だから問題無い〉フフッ。
〈今度は、どんな?〉
〈人が全てヒトデな海底で楽しく普段通りだ〉
〈じゃあ俺達も?〉
〈そうらしい〉
〈海底ね……次は宇宙にでも行くのかな?〉
〈かもな。
兎に角、無事で何よりだ〉
〈ありがとう。病院に戻るよ〉
〈ふむ。彩桜が行ったなら説明する〉
〈うん。少しでも休んでね〉瞬移。
――〈瑠璃♪〉
〈無事らしいな。お帰り〉
瑠璃へと瞬移すると入院室だった。
〈お稲荷様と仲直りした?〉
〈納得してくれたらしい〉ふっ♪
青ドラグーナが浮かぶ。
〈ラピスリもオフォクスと一緒に中神力を集めてね〉
〈解っております〉ふふっ♪
〈笑っているからいいけど、青生もシッカリ見ていてね?
俺の子の中で一番の無謀者だから〉
〈はい♪〉〈父様! 青生!〉
ドラグーナと青生が笑う。
話し方や声が似ているのは常日頃 感じているのだが、笑い方までもが区別が難しいと気付き、瑠璃も笑ってしまった。
―・―*―・―
すっかり陽が高くなった頃――
「ん? 白久、居たのか」
金錦が居間のドアを開けると、炬燵エリアで白久が寝転がっていた。
「坊っちゃんは来週からだと。
南渡音の病院話も落ち着いたしな。
兄貴こそ居間に来るなんて珍しいじゃねぇか。
どーかしたのかぁ?」
「来客を待とうと思ってな」
「ウチに客なんて珍しいな♪」
「最近、来客は多いと思うのだが?」
「あ~、だったな♪ で、誰が?」
「紗桜家の皆様がいらっしゃる」
「紗桜部長が兄貴に!?」
「白久も居てくれるか?
昨日の事情聴取に続いて私とだが」
「兄貴と一緒ってのに問題なんかあるかよ。
兄弟の中で一番 付き合い長いんだからな♪」
「確かにな」フフッ♪
玄関チャイムが鳴り、彩桜が出迎えている声が聞こえる。
「サーロンの声がしねぇな。
そっか。ソラに戻って離れの響チャン達を迎えに行ったのか」
「神眼も不自由なく使えるようになったのだな?」
「おうよ♪ けど、まだまだ修行中だ♪」
「ど~ぞ入ってく~ださい♪」
「お姉さん、響。入って」
玄関側から紗桜部長を先頭にぞろぞろ。
北の渡り廊下側からソラと姉妹が入った。
「ご自由に座ってく~ださい♪」
見覚えのある人物とセレブ確定な居間に驚き、入口で立ち竦んでいる克典の背を彩桜が押してソファの方へ。
「すっご~い♪」「お金持ち~♪」「もうっ」
大喜びな娘達を母が隅に連れて行って窘めている。
最後に入ったメグルがピシッと礼!
「紗桜 翔です!
よろしくお願いします!」
「緊張しなくても大丈夫だ。コッチ来い♪」
「はいっ!」
挨拶やら自己紹介やらが落ち着いたところに、リーロンが茶と菓子を運んで来たのでソラと彩桜も配るのを手伝った。
その最中に北東側のドアが開いて『あっ』と小さな声が聞こえた。
「遠慮せず空いてる所で寛いでくれ♪
喫茶店と同じだと説明したろ?」
ドア近くに居た白久には誰なのかが見えたらしい。
再び遠慮がちにドアが開――「徳示さん!?」
「やはり紗桜さんでしたか。
お久しぶ――」「徳示さぁぁぁあん!!」
克典に抱き着かれて徳示は苦笑するばかり。
「ええっと、つまりタキ電機の?」
晃典から白久へ。
「はい。
暫くウチで暮らして、ミツケンで設計士として働きたいそうです」ニコニコ。
「そうですか。おい克典、今日は別件だろ」
「けど兄さん、とにかく謝らないと!」
「そんな必要は全くありませんよ。
全て白久さんから伺いました。
ご兄弟であっても彼女と紗桜さんは別です。
僕にとって紗桜さんは新人の頃お世話になった先輩です。
どうか頭を下げないでください」
「ですが――!」
「お父さん、落ち着いてよ」
「「なんだか迷惑ぽいし~」」
「克典。後で、改めて、だ」
兄、『この場で全て話す気か』と視線に込める。
「そ、そう、ですね……」
「ま、逃げやしませんから今は そっとしといてあげてください」
立ち上がった白久が間を割って、徳示には『奥へ』と手で示し、まだ廊下な麗楓にも『どうぞ』と示してニッコリ。
「あ……もしかして……」
元の席に戻った時に姿が見え、呟いた克典が視線だけで追う。
白久も席に戻る。
「ええ。引き離されていたお二人は、ようやく幸せを掴み直したところなんです。
双方、お家の方々にも認めて頂いて、巣立っていらしたんですよ。
式は先なんですけど、入籍だけは済ませたそうです」
麗楓が向いて優雅に微笑む。
「全て輝竜さんのおかげです。
私達、龍神様に救っていただきました♪」
「あっ、僕は紗桜さんにもです!」
「ま、そのお話は後程」
白久が双方に微笑む。
「それで、今日は?」
「弟一家は竜ヶ見台に住んでるんですけどね、今6年生の翔君が――」
「僕、中渡音第二中学校で勉強したいんです!
歴史研究部に入りたいです!」
立ち上がって宣言!
「彩桜~、新入部員だぞ♪」「うんっ♪」
少し離れていた彩桜が金錦と白久の間に座った。
「我が家は大歓迎ですが、お父様は?」
「見て知ってからと考えていましたが、輝竜さんの素晴らしさ、よ~く分かりました。
どうか息子を宜しくお願いします」
「「良かったね」~♪」「うん♪」
「彩桜、部屋どーする?」
「今サーロンが居るトコ♪
俺、寂しくなっちゃうもん」
【一緒に瞑想修行しよ~ねっ♪】【はい♪】
「そっか。そんじゃあ――」玄関チャイム鳴る。
すぐに玄関側のドアが開いた。
「「ただいま戻りました♪ あっ!♪」」
お嬢様達が麗楓に抱きついた。
「「麗楓お姉様!♪」」
八郎が戸口で苦笑している。
「お騒がせして すみません」
「気にしない気にしない♪」
紗桜兄弟に向き直る。
「ウチ、大所帯なんですよ。
喜んでいるのが秋小路 清楓さんと松風院 彰子さん。
と、彰子さんの婚約者の猪瀬 八郎君。
麗楓さんは清楓さんと彰子さんのご親戚で、つい先日まで春日梅さんだったんですよ」
「「まさか……財閥御三家……?」」
ひきつる紗桜兄弟。
「です♪」ニッコリ。
「確かにセレブだよな……」居間をまじまじ。
「おい、恥ずかしいからキョロキョロするな」
「それならそうと教えといてくれよなぁ」
「輝竜さんなら確かだし立派だと言ったろ」
囁き合う紗桜兄弟。
「古くて大きな家に住んでるってだけで、俺達は一般庶民ですよ」
「誰が庶民だって?」
白久は頭を後ろからツンツンされた。
「んあ? あ~、宮東先輩も家西もテキトーに寛いでくださいよ~」
「「宮東先生♪ ご遠慮なさらないで~♪」」
「家西先生も、こちらにどうぞ♪」
「「先生?」」
「学校の、ではありませんよ。
お医者様です♪」麗楓にこにこ。
「うわ……」「これはまた凄いな……」
「おや、今日は賑やかですね」
「あ♪ 狐松先生、来年度の新入部員~♪
メグル君♪ 部活顧問の先生~♪」
「あっ! 紗桜 翔です!
よろしくお願いします!」
「はい♪ 宜しくお願いしますね」
「後ろが、櫻咲の狐松教頭先生♪
で、前の顧問で教頭先生だった白儀社長♪」
「櫻咲高校!?」「社長さん!?」
「「ただの居候ですよ」」
狐儀の分身達は炬燵エリアへ。
昼が近づいたので同居人達が集まっているのだった。
そのまま昼食会になり、最終的には呼び集められた輝竜兄弟が並ぶに至った。
〈響、大丈夫?〉
〈うん……大丈夫みたい。
あったかい場所だね……〉
〈うん。居心地いい場所だよ。
ボク……明日おばあちゃん家に行くよ。
頑張ってみる〉
〈1人で行くとか言わないでね。
一緒に行きましょ〉
〈ありがと〉
清楓と彰子にとって麗楓は叔母ですが、つい最近まで未婚だったので『お姉様』なんです。
青生も彩桜も、紅火も無事で良かった~です。




