表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
471/870

みんなで初詣



『ああああっ!!』「最高司様!?」


 明け方でも変わりなく執務をしていたマディアはザブダクルの叫び声に驚いて声を掛けたが返事は無かった。


〈失礼致します!!〉

瞬移で居室に入ると、半身を起こしているザブダクルは目口を大きく開け、息を乱しているかのように肩も大きく上下させて泣いていた。

〈ザブダクル様っ〉

背を抱き締めるように包んで治癒を流す。


「ありがとう……マディア……ただの、夢だ……」


呼び掛けられたが、マディアにはザブダクルが己を納得させようとしているとしか思えなかった。


 マディアにも睡夢は伝わってはいたが不鮮明で、記憶を辿っているものとは異なると判断して集中はしていなかった。

「どのような夢なのですか?

 悪夢は話すべきだと姉から何度か言われましたので」


「今ピュアリラにか?」


「いえ……今ピュアリラ様は戦うまで知らなかった姉ですので」

エーデリリィの言葉が笑顔と共に次々と浮かんだが、後でと記憶に押し戻した。


「そうか……そうであったな。

 確かに悪夢だ。

 再誕したらしいオーロザウラが……真っ黒なシルエットのみであったが、確かに奴が儂に迫って来おった。

 喉を鷲掴みにされる寸前で目が覚めた……」


「最近、欠片が見つかるからでは?」


「そうなのだろうな」


「最初の欠片からの共鳴で目覚めたのが昨日のだとしたら……他にも目覚めた可能性もあります。

 迫って来るのなら神世。

 軍から調査隊を派遣しますか?」


「いや……それは……」


「ああ、そうですよね。浅はかでした。

 申し訳ございません。

 もしも神世に居たなら逆撫でしてしまいますよね。

 今ピュアリラ様の連絡板にのみ、可能性としてお伝えしておきます。

 密やかに動いてくださいましょう」


「ふむ……頼む。速やかにな」


「はい。

 僕が ずっと起きていますので、最高司様はお休みください」礼、瞬移。


もう少し傍に居てほしかったが、速やかに連絡しているのが伝わり、仕方なく眠ろうと横になるザブダクルだった。



―・―*―・―



 新たな神力を得た3人は落ち着け馴染ませる為にキツネの社で夜通し瞑想していたが、彩桜が犬を散歩させると帰宅したので、青生と瑠璃は動物病院に瞬移した。


「ん?」瑠璃が着信を感じて宙に展開した。


「それ何?」


「死神の連絡板だ。

 どうやら敵神(ザブダクル)は悪夢に(うな)されているらしい」


「悪夢? どんな?」


「現状悪の根元オーロザウラに追われる夢らしい。

 神の睡夢は正夢である可能性が高い。

 まだ残っているという事だな」


「彩桜も神様の魂だから正夢?」


「は?」


「だとしたらヒトデだらけになるな~とね」


「緊張を(ほぐ)してくれようと?

 あれが正夢ならば恐ろしい話だ」ふふっ♪


「うん。気をつけながらでも笑ってようよ。

 来たら全力。それでいいんじゃない?」


「そうだな。気をつけておく。

 いつも通りにな」


「久し振りだから早目に準備しよう」


楽し気に支度をする青生を見ていると、どうしても頬が緩む瑠璃だった。



―・―*―・―



 彩桜は祐斗 堅太 サーロンと一緒に爆走散歩中で、サーロンと情報交換中だった。


「彩桜 サーロン!」

自転車でガンガン追っている堅太から。


「ほえ?」「はい♪」振り返る。


「8時から本浄神社に初詣だからなっ!」


「うん♪ ありがと♪」「楽しみです♪」


「ったく余裕綽々だよなぁ」「ホントだね♪」


「ね、悟は?」「風邪ですか?」


「たぶんなぁ、馬白(ましろ)んトコだろ」

「3学期が近くなったからね。

 昨日もチラッとしか来なかったし」


「そっかぁ。じゃあ後で行ってみる」

「ボクも行きます」「うん♪」


「俺達は人に戻ったら会うからな」

「連絡してね。いつでもいいから」


「ん。まっかせて」「頑張るです」

頷き合ってから前を向いた。



―◦―



 そして本浄神社。

6日ともなると参拝者は減っていて、すんなりと社殿前に着いた。


「あ♪ 慎也さ~ん!♪」


ビシッと神職装束な神が振り向いた。

「とうとう来たか」呟いて苦笑。


社殿内では、お祓いか何かをするらしく準備中で、20人程が座って待っていた。


〈どっか行ってくれないか?〉


〈見たいからヤダ~♪〉


〈そう言うと思ったよ〉心で溜め息。


 諦めたらしく、祝詞(のりと)を唱え始めた。

術の詠唱とは大違いに ゆったりと歌うように張りのある声で唱えているのを楽しく聴き、続いて出て来た沙織が鈴を鳴らしながら舞うのをワクワクしながら観た。


そしてファサファサしながら

〈恥ずかしいから帰れって!〉

神職らしい微笑みを湛えた真面目顔で叫ぶあたりは流石だ。


〈理俱師匠さっすが神様~♪〉〈ウルサイ!〉


聞こえている沙織とサーロンが必死で笑いを堪えている。


〈あ♪ そ~だ♪〉


「彩桜どこ行くの?」心配そうな祐斗。

「笛 奉納する~んるん♪」駆け離れた。



 建物に隠れた彩桜は瞬移して瞬着替えし、龍笛を持って戻った。


〈そんなら裏から入れ〉〈ん♪〉

〈吹いた事あるのか?〉〈ある~♪〉

慎也が太鼓を叩いている間に社殿に入り、タイミングバッチリで吹き始めた。


〈それにしちゃあ沙織を知らなかったよな?〉


〈シャンシャンするの、お婆さんだったのぉ。

 巫女さんが御守り売ってたけど行かなかったの~〉


〈そうか。やっと舞えるようになったのか〉


〈そぉかも~♪〉

【それで、仲良しさん?】


【んんっ!? ……いや、違うらしい。

 恋愛ではないとキッパリ言われたよ】


【ふぅん】



―◦―



 三ヶ日はズラリと並んでいた露店も(まば)らになっていたが、それなりに楽しめそうなので巡ってみた。


「真ん丸お陽さま林檎飴~♪

 ツヤツヤ真っ赤な林檎飴~♪


 ピカピカ真っ赤な お陽さまに おはよ♪

 林檎~飴みた~い~♪

 真ん丸 新鮮 美味しそ~♪


 新たな1日キラキラ始まり♪

 希望も風~に~♪ 乗せて飛ぼ~よ~♪

 林檎~飴みたいな~~♪

 お陽さ~まに向か~って~~♪」


「彩桜その歌、何?」あはは♪

祐斗だけでなく笑っている。


「『お陽さま林檎飴』♪

 初陽の出、見た?」


「彩桜のカウントダウン観てたよ♪」


「そっか~♪ ありがと♪

 いつの陽の出でいいけど見てみて~♪」

手で水平線を作って林檎飴を昇らせた。


「ヤメロ彩桜! 陽の出が林檎飴にしか見えなくなるだろっ」あはははっ♪

堅太だけでなく笑っている。


「ん?」シャクシャクシャク♪


「ひと口で食ったのか!?」


「んん♪」ごっくん♪


「種とかは!?」


「お腹から生えにゃいも~ん♪」


「当たり前だよね」冷ややか凌央も笑っている。


ぴょんぴょん前に出た彩桜が振り返ると、閉じて笑っている口から串の元が何本も出ていた。


「今度は何食ってるんだよ♪」


ごっくん♪「苺飴~♪」るんるん♪

「次、どんぐり飴~♪」走る~♪


「急げ! 店ごと食う気だ!」

「彩桜なら食べそうだよね♪」

「無限倉庫……」「凌央君?」「何でも!」


以前、白久から聞いたのを思い出して本当なのかもと思う凌央だった。



―・―*―・―



 きりゅう動物病院の休憩時間。

彩桜とサーロンは竜騎の病室に行った。


聖良(せら)さんも居た~♪〉


〈うん……浄化、練習中なの〉


〈はい♪ 修行スイーツのキャンディと栗きんとん団子♪

 食べてパワーアップだよ♪

 悟も休まないと効率悪化するから俺達と交替ねっ♪〉


〈彩桜……白竜、元に戻るのか?〉


〈戻るよ。

 悟が信じなきゃダメでしょ。

 負に傾いちゃダ~メ〉


〈そうだな。彩桜 サーロン、お願い〉


〈うん!〉〈はい!〉

彩桜は竜騎の首に腕を回して抱きつき、額を当てて浄化の強さの限界を測った。


【強いと魂を壊しちゃうから、このくらい】

手を繋いで流した。


【難しいね。

 ボクは彩桜を後押しした方がいいのかも】


【ソレいいねっ♪ サーロンお願いねっ♪】


サーロンは彩桜の背に両掌を当てて神力を注いだ。


【サーロンすっごいねっ♪

 それじゃ、いっくよ~♪

 浄化の極み! 優しいヤツ!】


彩桜とサーロンが穏やかで清らかな光を纏う。


【このくらいだね。滅禍魂浄!】


桜の花弁(はなびら)のような煌めきが舞い昇り、竜騎へと流れると、花弁を吸い込む毎に馬体が(まだら)な灰から白へと変わっていく。


「「あっ!」」


すっかり純白に変わった馬体がススッと人サイズに縮んだ。


【あと少しだけど限界だから今を維持!】


花弁なしの薄紅光が流れ込み、馬体を淡く光らせてから収束した。


「彩桜? 終わりか?」


「休憩させてあげるの。

 一気にはムリなのぉ」背をなでなで。


「そっか。白竜がムリなのか」

悟も竜騎の背を撫でた。

「それにしても彩桜って凄いな」


「今までのが大きいの~♪

 み~んなの力なの~♪

 あとね~、俺よりも~、サーロンの後押しがいいの~♪」「え?」


「ウソだろ。

 サーロンがビックリしてるじゃないか」


「ホントだってば~。

 サーロンに自覚にゃいだけ~」


「そうなのか?」「わかりませ~ん」







約束していた初詣を楽しんだ彩桜とサーロンは、馬にされた竜騎を元に戻そうと動き始めました。

手強い肥大化弱禍+呪禍ですが、冬休み中ずっと受け続けていた破邪で随分と弱まっているようです。

馬体が黒ではなく灰色になっていたのが その証拠です。


それを探って得たので、高めた神力で竜騎の魂内に貯まっている破邪を後押ししようとしているんです。

ソラも自力で欧州に行けるくらいなので神力は飛躍的に高まっているんですよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ