表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団外伝  作者: みや凜
第一部 第3章 四獣神と子供達1
47/795

利幸の家での攻防②



〈ああっ! (かす)めたけど入っちゃったぁ〉

〈その前に当たった筈なのだが……〉


 アーマルの矢とショウの縄を掻い潜って降りた死司神が、とうとう家の中に入ってしまった。


《掠めたのならば弱っておろう。

 ウンディが目覚めてくれればよいが……》


〈ディルム! 結界を破壊してくれ!〉


〈んな事したらバレるだろーがよ。

 それに直に触れねぇと破壊できん。

 他を退却させるから許してくれ〉

「皆、ひとり降りれば十分だ! 退け!」


〈ならば破壊方法を教えろ。

 この首輪を滅し――〉


〈おいおい。アーマルは眠ってると やっと信じさせたんだぞ。

 宣告だけなら連れてけねぇよ。

 今まで通り護るだけだろ。

 ずっと狙われてたんだからな〉


〈そう、か……〉


〈アーマルが目覚めた今なら護れる〉


〈そうだな!

 出て来たならば捕らえてやる!〉


〈その意気だっ♪ じゃあまたなっ♪〉

死司神達は去って行った。



〈あれれ? 別のが来たよ?〉


〈ディルムと補佐の座を争っておる者達であろうよ〉


〈じゃあ落としていい?〉


〈やるか♪〉〈うんっ♪〉



―◦―



 家の中では――


「――目覚めよ。娘。戌井 紗よ――」

死司神が紗の耳元で繰り返し囁いていると――


「アンだぁ? ドロボーかっ!?」


――利幸が目を覚ましてしまった。


咄嗟に逃げようとした死司神の三日月鎌の柄を掴んで引き、利幸は死司神を組み伏せた。


「それともヘンタイかっ!?

 大事な娘に何しやがる!!」


格闘技なら何でも御座れな利幸が次々と技をキメていき、ヘロヘロになった死司神の胸ぐらを掴んで立たせると、落ちていた三日月鎌を足で器用に立たせて拾い、死司神の背後から刃を回して首に当てた。


「そうか。殺人鬼だな?

 こんなブッソーなモン、俺ン家に持ち込みやがって!」


そこでハタと気付いて紗を見た。


「……よく寝てるな」ホッ。「続きは庭だ!」


プンスカ利幸は、弱々しくジタバタしている死司神を引き摺って外に出た。



―◦―



 ――そして庭。


上に来た2神を木にブラ下げ終えたショウは寝たフリをしている。



「で? 何が目的だ? 吐けっ!」


「わ、わ、わ、私は、し、死神で――」


「あぁあ? イカレてやがるのかぁあ?」


「いっ、いえっ!

 本当に死を司る神なのです!」


「ふ~~~ん?」疑いまくりの(まなこ)


「本当なのですっ!」


「だとして、何の用だよ?」


「戌井 紗は間も無く死を(たまわ)るのです。

 それを宣告する為に――」


「言葉がムズ過ぎるんだよっ!!

 紗が何だってぇ!?」


「で、ですからっ、もうすぐ死ぬんです!」


「いーかげんにしやがれ!!

 紗はまだ小さいんだっ!!

 早過ぎるだろーがよっ!!」


「ですがっ! 決まっているのですっ!」


「変えろ」


「は???」


「テッカイしろっつってんだよ!!」


「そそそれは、、私なんぞの一存では――」


「神なんだろ? 変えろよ」


「ひぃいぃぃ――」

視線を彷徨わせていた死司神の視界に木に吊るされている上位神達が入った。


ショウに捕らえられたばかりの上位神達は、どうにかこうにか視線をショウに向け、頷いた。


恐る恐る眠っている犬に目を向けると、その内から鋭く睨む視線に射貫かれた。

「ヒィッ! で、では、か、代わりをっ!

 戌井 飛翔を引き渡してくださヒぃっ!」

声、裏返る。


「飛翔だとぉ? とっくに死んでるよ!!」


「あそこに居るのです!」犬を指した。

「あの犬の中にっ!!」


「まさか……ショウは飛翔なのか……?

 一緒に居るんじゃなく中だと……?」


「本当ですっ!

 嘘なんぞついておりません!

 私は神なのですからっ!」


「だったら尚更だ。死神なんぞに飛翔を渡せるワケねぇだろーがよ!!」


「代わりがっ!

 誰か相応の代わりが必要なのですっ!」

首に食い込む刃を光で防護しつつ、必死の形相で叫んだ。


「だったら俺が身代わりだ!」〈ええっ!?〉

「紗も飛翔も渡さねぇ!!

 すぐに変えやがれっ!!」


上司達に助けを求める視線を向けると2神は大きく頷いた――つもりらしいと、視線が少しだけ下を向いたのを逃げたい一心でそう解釈した。

「でっ、では、そのようにっ!

 離してぇ!! 死ぬぅ!!

 死告表(シコクヒョウ)を書き換えないとっ!

 変わりませんのでっ! 離してぇぇぇっ!」


「ケッ。ムカッ腹の立つ!

 紗と飛翔の安全をホショーしろよなっ!」


「ムグッ――は、はいっ!

 そそそれだけは確かにっ!」


「約束だぞ?

 神が守らねぇなんぞ有り得ねぇよな?」


「はいぃいっ!!」


「行け」手を離した。「サッサと変えろ!」


「用ができたならっ、こっこっこのっ鈴で私を呼んでくださいっ!

 神呼びの鈴ですのでっ! ではっ――」

死司神は悲鳴を残して一目散に飛んで逃げた。

決まり通り、身代わりを宣言した利幸に鈴までは渡したのだが、死印を付けるのをすっかり忘れて――と言うか、それどころではなく。


縄と矢が追ったが、どちらも滅多矢鱈と振り回す三日月鎌に弾き落とされた。


利幸はそれを見る事なく、大あくびしながら家に戻った。



〈ど~して巻きつかないんだろ?

 アーマルの矢もダメだったよね?〉


《あの者は操られておらぬ。

 指示に従っていただけなのであろう。

 故に浄化が効かなかった。

 神力も弱い。弱過ぎる。

 目覚めておらぬ利幸に捕まった程度なのだからな。

 故にショウの縄も、只の縄となったのであろうよ》


〈そっか~。うん♪ クサくなかった♪

 だからお家に入れたんだね?

 降りてる時も、矢も縄も効いてなかったってコトだよね?〉


《その通りであろうよ》


〈取り逃がしてしまいましたが……〉


《小者1匹だ。構わぬよ。

 ディルムも手柄を立てねば疑われよう》


〈確かに……〉〈うんうん♪〉

〈ま、そーゆーこったな♪

 お誉め頂いたよ♪〉あははははっ♪


〈ディルム……それで、今度はウンディが狙われるのか?〉


〈そりゃあ前からずっとだからな。

 少しシツコクなるくらいだよ。

 アーマルが目覚めてるんだから護れるさ。

 それに、罷り間違って利幸がユーレイになっても飛翔と同じだ。

 浄化されなきゃいいんだよ。


 それよか捕まえたヤツら、リグーリからフェネギに連絡してもらったからな。

 オフォクス様に預けてくれ。

 俺としては鬱陶しいライバルが消えてくれて万々歳だ♪

 そんじゃ、コッチはコッチで頑張るからソッチも頑張ってくれよな♪〉


〈それは勿論だ〉


〈あ、その結界は折を見て破壊しとくよ。

 直ぐにでもってんなら、リグーリに聞いてくれ〉


〈ディルムが来るのは危険だろう?

 リグーリに聞くさ〉


〈ん♪ じゃあなっ♪〉



 ディルムの声が去って直ぐに、慌てた様子のフェネギ達が現れた。


〈〈アーマル!〉〉〈〈兄様!〉〉


〈オニキスか!?♪ 何故、人世に?〉


〈オフォクス様に用があってな♪

 で、集まって その話してたんだ♪

 アーマル兄様には後でゆっくりな♪〉


〈此方での事、感知出来ず申し訳ない〉

〈強い結界が在ったのです〉

〈人神が成せるなんて思えない結界が、な〉

〈寄って(たか)ってやっと壊せたんだよなぁ〉

龍と狐達、頷き合う。


《潜入しておる誰かであろうよ。

 指示され、疑われぬ為に成したか……最悪の事態が生じたならば、我等を護る為、敵神に感知されぬよう成したのであろうよ。

 おそらく……アーマル達の兄姉であろうな》


〈父様の堅固を継ぎ、極めた者だろうか……〉


〈それなら有り得るよなっ♪〉

〈敵でなくて良かったです〉

〈そうだよなぁ〉


〈結界と言えばだ。リグーリ、その結界を破壊してくれないか?〉


〈ああ。またルロザムールが来ていたのか〉

瞬移して外壁に手を突いた。


〈どんな奴だ?〉


〈ディルムを気に入っている愚神だが、修行はそれなりにしているらしい。

 死司の最高司ナターダグラルの腰巾着だよ〉

光が亀裂の如く走り、結界が弾け飛んだ。


〈操られててクッサイよぉ~〉


〈やっぱ操られてたのか……納得だ〉


〈で、今日は爺様していないのか?〉


〈この集まりで何で爺様してなきゃいけないんだよぉ〉


〈……確かにな〉


〈〈羨ましいのですね?〉〉


〈ラピスリ! フェネギ! 違うからなっ!〉


〈図星~♪〉〈ショウ!!〉


〈アーマル、犬から抜け出て山に来ないか?〉


〈リグーリ! そう言うのなら出せっ!〉


〈それよかアイツら運ばねぇか?〉


〈無視かオニキス!〉


〈では兄様、明日にでも〉ふふっ♪


〈約束だぞっ!〉〈〈〈〈はいはい〉〉〉〉







本編でユーレイ利幸が響に

『飛翔か紗ちゃん、どっちかを渡せって言われてなぁ、俺が身代わりだ! って言っちまったからよぉ』

と語った内容の裏ではショウ達が頑張っていたんです。



一緒に育った同代達は、とっても仲良しです。

集まって話していたと知ったアーマルは加わりたくて仕方ないんです。


ディルムだって加わりたいんですけどね。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ