忍者vs悪霊
【おおっ♪ ナンか実感あったぞ♪】
【はい♪ 確かに瞬移は出来ていますよ】
夜更けのフリューゲル城。
飛行機から庭へと瞬移した兄弟と嫁半分は、気を消して潜んだ。
そこに祓い屋ユーレイ達も来た。
【なぁ青生、距離が足りないとかかぁ?】
【はい。さっきのでしたら空高くに出ていたと思います】
【ゲ……助けてくれて ありがとな。
家から会社とかだったら?】
【余裕ですよ】
【そっか♪ そんじゃあ通勤で練習すっか♪】
【そうしてくださいね。
黒瑯、どうかな? 見える?】
【ああ、見えてるよ。
北塔の最上階が親玉の拠点だな。
本館は下ほど弱いヤツらが溜まってるよ。
引き込んでは取り憑いて増やしたんだろーな。
最上階に強いのが居る。
中ボス最強ってトコかな?
真ん中の高くなってる所……違和感はあるんだけどなぁ。見えねぇなぁ】
黒瑯の神眼は、紅火と若菜と静香に引き上げてもらった。
【真ん中は鐘楼なのかな? 礼拝堂?
東西南北の塔は昔の物見櫓かな?
他の塔の最上階は?】
【よく見えねぇ……けど動けなくされてるのが居るみたいだな】
【封じられているとか?】【ソレだ!】
【そうなると封じられている方々には取り憑けなかったんだね。
寄って集って動きを封じた――って、なんだかドラグーナ様を堕神にした時を想像してしまったよ】
【【【【同感だ】】な】】【うんうん】
【では先に救出ですか?】【金錦兄?】
情報収集と分析は青生だが、指示は金錦だと思っている弟達は言葉を待った。
【黒瑯、北を除く塔の見張り達は?】
【中ボス2、3と雑魚ウジャウジャ】
【ふむ。では東西南3塔と本館を同時に進行する。
東塔、先頭は彩桜。破邪で防護して進むよう。
青生、瑠璃殿、共に頼む】
【【【はい!】】】
【西塔、先頭はサーロン。同じく破邪防護で。
祓い屋の方々、お願い致します】
【はい!】【【【ええ♪】】】【任せるだぁよ】
【南塔、先頭は藤慈。術破邪は使えるな?】
【はい♪】尾な藤慈は術の宝庫。
ウィスタリアから習っているので確かだ。
【では私と白久が続く】【おう♪】
【黒瑯、静香殿、紅火、若菜殿は本館下階より結界を押し上げつつ破邪攻撃を。
紅火は霊達が出られぬよう堅固囲を頼む。
黒瑯は全館への神眼と皆への供与も頼む】
【任せろ♪】【あいな♪】【む】【はい♪】
【お~いオレも入れてくれ】【ワラワもじゃ♪】
【リーロンと虹香殿は黒瑯と共に】
【おう♪】【あいな♪】
―・―*―・―
機内に残った嫁半分は不在者達とした具現化体を保っていた。
そこに姿を消した小狐が戻る。
【皆様は?】
リリスは起き上がって不安気な眼差しを狐儀に向けた。
他の妻達も同様に起き上がる。
【おそらく大丈夫ですが私も加わりますので】
【何者が主となっているのでしょう?】
気丈にしているが牡丹の瞳も不安そうだ。
【まだ明瞭には見えておりませんが……可能性を考えて応援を呼んだのです】
【オフォクス様ですか?】
【いえ。今は動けないと。
ですのでフィアラグーナ様にお願いしました】
【そうですか】少し安堵。
【では私も参りますので】礼をして瞬移。
機内スタッフの女性がトレーを手に近寄って来た。
「ハーブティをどうぞ。
冷えてはいませんか?」
「ありがとうございます。
暖かく過ごし易い温度ですわ」
「「いただきます♪」」
3人が眠れずに話し始めたと思われてしまったらしい。
小さな白狐が見える筈もないので。
―・―*―・―
浄破邪シールドを成し、浄破邪弾を連射しつつ進む彩桜の後ろで青生と瑠璃が霊達を眠らせては霊納袋に回収して進む。
残るは最上階な階段の踊り場に中ボスが3霊、通せんぼをした。
【これ以上って……居ないねぇ。
それじゃ遠慮しにゃいからね~♪】
跳ぶ。【破邪の剣♪】一刀両断♪
【破邪炎撃!】【夢幻爆眠!】
【おっしま~い♪】スタッ♪
回収して最上階。
【1部屋だけだねぇ】ギィィ――。
室内の気配を確かめつつ、そっと開けると、ぼんやりと光る球魂が真ん中に浮かんでいた。
【でも……このヒト……】
【そうだな。目覚めさせる訳にはゆかぬ】
【だよねぇ。このままお稲荷様トコ?】
【しか無かろうな。
おそらくは病を蔓延させた者。
この城を我が物にしようと企てたのだろう】
【そして今のボスに その座を奪われた、かな?】
【そうなのだろうな】
彩桜が神力封じの網で包んだ上に浄化を重ねて、他の霊とは別の袋に入れた。
―◦―
【あと少しで3階よ!】【【気張るのじゃ!】】
紅火が中央、黒瑯とリーロンが対角頂点を支えて押し上げる平らな結界を霊達が霊力圧で押し下げようとするので進行は難航していた。
静香と虹香が浄破邪を連射している横で若菜は何やら組み立てている。
【出来たわ!】姫達にも配る。
【【水鉄砲かの?】】
【液体じゃなくてもいいの。
込めたものを増幅して無限に放てる物よ♪
紅火が設計したの♪】
【【幸せそぅじゃの♪】】【もちろん♪】
【【いいから早く!】】【【じゃの】】【ええ】
胴筒に術浄破邪を込め――
【いくわよ!】【【いざ!】】
――激放射!!
天井の向こうでは霊達が浄破邪を浴びて神力圧でブッ飛び、形を成せなくなってシュルシュルと縮んでは小さな球魂になっていた。
平結界がガシッと天井に合わさる。
【天井 抜けるのはオレに任せろ♪】
1階天井から突き上げて2階床から浮かせた時と同様に、ここも神なリーロンに任せるのが最善だ。
手を離した黒瑯と紅火は、浄化された為に結界を通り抜けられるようになって落ちてきた球魂を回収し始めた。
―◦―
藤慈が先頭、金錦と白久が続く南塔も最後の踊り場で通せんぼされていた。
【藤慈、何を?】
【水薬を試してみます。殺菌剤ですけど】
小型の水鉄砲に込めた。
【いきます!】
ブシャッ!! シュルシュルシュル~。
【悪霊って菌なのかぁ?】
【何れも浄化、なのだろう】
【へぇ~♪】
最上階の扉を開ける。
こちらも真ん中に球魂が浮かんでいる。
《ありがとうございます。救世主様》
「このお城の主様ですか?」
《はい。家族が気がかりです。
どうかお救いくだ――》『助けて!!』
城中に響き渡る女性の声に続いて悲鳴が長く尾を引いた。
《妻の声です! どうか!》
「お任せください!」
「一先ず此方に待避願います」
金錦が差し出した雑多な霊達とは別の袋に入ってもらった。
―◦―
「母さん……」「お兄ちゃんダメ!」
地下室にも声と悲鳴は響き渡っていた。
「サーロンが言ってたのはコレなんだろーよ。
メーア、任せておこう。大丈夫だ」
「うん」『トーン! 助けて! お願いよ!』
「解ってる。動かないからな」
兄メーアは唇を噛んで目を閉じ、妹を抱き締めた。
―◦―
平結界は3階の中程。本館の広いフロアーとしては最上階に達していた。
その上に追い詰められた形の女性霊が悲鳴を上げ続け、喚き散らしている。
3階の霊達は2階よりも強いので水鉄砲破邪も避けられてしまっていた。
そこに藤慈達が瞬移して来た。
【他は!?】
【白久兄、落ち着けよな。
彩桜組とサーロン組は北塔だ。
ラスボスがコッチに援軍 送ろうとしてたんだよ】
【白久、向こうの角を。私は此方を支える】
【おう!】
【藤慈は加勢を】【はい!】
『トーン! どうして来てくれないの!?』
【先ずは黙らせねぇか?】
同感だと浄破邪放射は女性霊に集中した。
―◦―
彩桜とサーロンは北塔の出口を全て破邪で塞ぎ、本館中央に聳える礼拝堂も破邪で包んだ。
【本館スッポリは紅火兄の堅固だね♪
破邪 込めとく?】
【そうしよう♪】
屋上に両掌を突いて【【浄破邪の極み!!】】
美しさの極みな清らかな神力が舞い上がる。
その圧でか、礼拝堂の鐘が鳴り始めた。
【あらら~。ご近所迷惑だねぇ】
【近所って、周り畑しかないよ】しかも休耕地。
【そっか~♪】
厳かな鐘の音に混じって城内からの絶叫も聞こえる。
【破邪の鐘?】【そうかも♪】
【彩桜、サーロン。
北塔はラスボスだけだよ。来るかい?】
【【行く!】です!】
深夜のフリューゲル城は人知れず大騒ぎです。
普通の人には悪霊なんて見えませんので。
まぁそもそも周りに人は住んでいませんけどね。
祓い屋ユーレイはサイオンジ、トク、ヨシとスザクインが来ています。
精鋭中の精鋭です。




