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理子の内の神



 晃典(あきふみ)克典(かつふみ)兄弟から欠片を回収したキャティス(当然ながら寿(よし)ごと)を連れてバステートがキツネの社に戻ると――


《ケモノなんぞに私は封じられぬ!!》


――眠らされている理子(あやこ)から低い声が轟き、オフォクスが弾き飛ばされたところだった。


【オフォクス様っ!】

バステートが保護光で包んで宙で止めた。


 そこに異変を感じたらしい隠し社の大神達も集まった。

〖この神は人神。つまり本物の堕神です〗

半人半馬神のケイロンが呟くと共に、皆に警告を伝えた。


〖シッカリ捕まえるからねっ〗

シヴァを護るように前に現れたガネーシャが理子を捕縛光で包んだ。


《ギャアアアアーーーーッ!!》


〖鳥よりもヒドイな……〗

〖ガネーシャ、声は封じられぬのか?〗


〖やってみるけど~、けっこうな大神だよ?

 破邪で大騒ぎだから、きっと操禍(そうか)の大神〗

言いながら神力封じを鎖化して放った。

〖そんでもって~、相殺(そうさい)!〗


耳障(みみざわ)りな叫び声がピタリと止んだ。


〖で、この人の中にもキャティスちゃんの欠片が入ってるんだね?〗


〖はい。ヨシちゃんの孫ですので……〗


〖じゃあ回収だね♪ 始めるよ~♪〗



―・―*―・―



「ん?」「あれ?」

眠らされていた晃典と克典が目覚めた。


「コタツで(うた)た寝?」

「いや、座って話してたよな?」

「……そうだよね」「あっ! 婆さん!」


「そっか。

 消えたね。猫と象も、金髪美女も」


「御曹司の今は教えないって事か……」


「そうかもね。

 僕、社長に本当の事を話すべきだと思う。

 アヤ連れてって謝らせるのが一番いいと思うけど出掛けたんだよね?」


「連れて行っても社長さんの顔を見たら逃げるだろうよ」


「あ~、やりそうだね。

 じゃあ僕達だけで行く?

 僕の家族、晩ご飯も外でって行ったから」


「そうだな」『ただいま戻りました』

華音(かのん)が戻ったから閉め出しにはならない。

 行こう」



―・―*―・―



〖神力封じと破邪と相殺で封印~♪〗


水晶玉が氷結したかのようにカッと包まれて固まった。


【有り難う御座います】


〖オフォクス疲れ過ぎ~。寝てて♪〗


ドサッと伏せた。


〖父様は無理しちゃダ~メ。

 ビシュヌ様、ブラフマー様、オーディン様。

 逃がさないでくださいねっ〗


〖〖何処に行く!?〗〗


〖キャンプーの所♡〗消えた。


〖ま、アッチも放ってはおけぬか……〗

〖確かにな。オーディン、すまぬな〗


〖いや。此奴が逃げ出したなら世が終わる〗


〖〖確かに〗〗



―・―*―・―



 ラピスリもまた理子の内の神が人神だと感じ取っており、浄化最高司補であるロークスに会っていた。


【人神が!?】


【欠片だとは思う。

 つまり堕神とされ、神に戻されず浄魂を繰り返されている人神を記録から見つけ出してもらいたい】


【つまり古神なのだな?】


【おそらく】


【このまま待って居てもらえるか?

 そう多くはないだろうからな】


【一緒に探そうか?】


【ならば死司最高司補として来てくれ】


【ふむ】黒衣に。



―・―*―・―



 リーロンは結解、太木と話していた。

何度も何度も大丈夫だと宥めて、ようやく太木が話を聞ける程に落ち着いたので、話し始めたところだった。


「あの女はアンタを探して来たんじゃない。

 姪ッコの結婚を邪魔しようとしてるんだ」


「今度は……どうして、そんな?」


「理由かぁ、それなんだがな――」

『それは私から話すわ』

声に続いて、ゆっくりと姿を見せた。


太木が息を飲んで離れようと()()る。


「驚かせて ごめんなさいね。

 私は紗桜 寿。理子の祖母、ユーレイなの。

 似ているから信じていただけるわよね?」


どうにかこうにか頷く。


「我が儘で、思い通りにする為なら何でもしてしまう子に育ってしまったのは、私や親である娘達のせいだと……」

ソファ下に正座して頭を下げた。

「謝って済むことではないとは解っておりますが……お詫びだけは申し上げます。

 誠に申し訳ございません」


「もう……過ぎた事です。

 それに貴女様が謝罪されるのも違っていると思います」


「ありがとうございます。

 太木さんの結婚を邪魔したのは、幸せを奪う為ではなく、相手さえ居なくなれば自分と結婚してくれるだろうと……。

 そんな浅はかで愚かな考えだったようです。


 今回は何が気に入らないのか、ずっと難癖をつけてきているのです。

 上の奏の婚約者が亡くなった直後から毎週毎週 見合い話を持って来たり、下の響の婚約者に親がないとか、学歴がどうこうとか……」


「響さん? もしかして運転してくださった?」


「だよ。一度も振り向かなかったろ?

 ヨシさんソックリ。

 だからアイツにも顔が似てるからなぁ」


「では(そら)君の事を……そうですか」


「おばあちゃん。

 おじさん達、車で東に行ったよ」

男の子ユーレイが現れて祖母の袖を引く。


「あら、東って?」


「たぶん社長さんトコ。

 その話、しに来たんでしょ?


 あ、おじさん はじめまして。

 ボク、タチバナ アヤトです。

 おかあさんが迷惑かけて ごめんなさい」


「理子の子なの。あの時の。

 ですからユーレイ。

 父親は理子の夫だった颯人さん。

 それは間違いないわ」


「はい。僕は手にすら触れていませんので。

 お付き合いも……今で言うならストーカーな彼女を(なだ)めようと。

 ですから僕も悪いんです。

 嘘をついたんですから」


「そう……ホント困った子……」

「ねぇねぇ、おばあちゃん」

「あっ、そうね。

 太木社長、倒れて入院中らしいの。

 私達が本当の事を話します。謝罪します。

 ですから一緒に――」


「いえ、僕は戻りません。

 それにもう親子ではありませんので。

 後継者なら従弟の大樹(だいき)君が居ます。

 僕は……もう居ない事にしてください」



―・―*―・―



【人神に職域を奪われて暫くの記録が少な過ぎるな……】

ロークスが呟いた。


【その抜けは無視しても構わぬだろう。

 人神が人神を堕神にするのは余程の事だ。

 その記録くらいは残しているだろうからな】


【ふむ。では、この5神だな】

手から情報を流した。

【ラピスリの方は?】


【4神 見つけたが……オーザンクロスティという伯爵夫人神(ふじん)が気になる。

 ロークスが見つけたオーラマスクス男爵もな。

 オーロザウラか……その子孫か……】


【つまり敵神の親か?】


頷く。

【再誕したか、子を成したか……。

 おそらくは操禍を持ち、カイダーム様クウダーム様を追っていたのではないかと】


【それが『禍の罠を人神の地に込めた』という罪状に繋がるのか。ふむ】


【ザブダクルを(かくま)っていると思っていたのだろう】


【その欠片が浄魂でも消滅せずに散らばっているとしたなら……】


【恐ろしい話だな】



―・―*―・―



 晃典と克典は竜ヶ見台市の国立総合病院に着いた。


「すんなりとは通してもらえないだろうな」


「でも特別室だろうから乗り込もうよ。

 あっ――」素早く降りた。「太木常務!」


バス停に立っていた男が向き、近付いた。

「紗桜課長? どうして?」


「社長のお見舞い――じゃなくて!

 謝罪に参りました!」


「ええっと、何かありましたか?

 ここじゃナンですから……あの喫茶室に行きましょう。

 とにかく聞かせてもらえますか?」


「はい! 兄さんも車、早く!」駐車場を指す。


「ドア、閉めてくれないか?」


克典が助手席のドアを閉めると、車は駐車場へと走った。


「お兄さんと一緒に?」

喫茶室の方に歩き出す。


「はい。徳示(あつし)さんを不幸にしたのが妹だったと判りましたので……」

追って駆け、頭を下げた。


「えっ……」


「紗桜 理子は僕の妹なんです。

 館端(たちばな)とは名乗ってませんよね?」


「僕は音でしか知らなかったけど、確かにサクラ アヤコでしたよ」


晃典が走って来た。


「長男の晃典です」一緒に頭を下げる。

「あっ、兄さんの名刺……確か財布に……あった!」差し出した。


「太木 大樹と申します。

 徳示は従兄です」名刺を交換した。



 そして病院の喫茶室に入る。

自販機もあったので、各々がカップを手にテーブルを囲んだ。


「10年も経った今になってとお思いでしょうが、つい先程、全てが繋がったんです。

 妹が中絶した子は当時 夫だった人の子です。

 馬鹿な妹は徳示さんと結婚したいばっかりに――」


「うん。ボク、だからユーレイ。

 タチバナ アヤトです。

 おかあさん逃げちゃったから代わりに謝りに来ました。

 でもアツシさん、戻らないって言うの……」

空いていた席に現れてシュンと肩を落とした。

「アツシさん、何もしてないのに……酔って眠ちゃっただけなのに……」


「「「えっ……」」」







理子の魂内にはキャティスの小さな欠片と古い人神が入っていました。


どんどん ややこしくなっています。



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