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ベルリンの夜



 ステージ下手(しもて)に入った青生達4人は、スタッフから上手(かみて)に回るよう指示されて裏通路から上手側に行くと、金錦達はオッテンバッハ社長と御曹司に捕まっていた。


〈あらら~、俺達やり過ぎちゃった?〉


〈後ろ姿だから表情を確かめるなら神眼だけど……〉


〈なんか見たくなぁい~〉


〈うん、そうだね。

 行かないといけないんだから金錦兄さんの後ろに回り込もう〉〈ん〉

足早にだが大回り気味に金錦と白久の後ろに居る黒瑯に並ぶ。


「アルニッヒが言った通りだな。

 もっと自信を持ってくれ。

 アンコールが聞こえているだろう?

 コンサートは大成功だよ」

不安そうな同じ顔が並んだので社長に苦笑されてしまった。


白久も苦笑を返す。申し訳なさそうに。

「ありがとうございます。

 ただ……気になっているのはアニソンの最初の曲なんです。

 俺達のコーラスでの笑顔の意味が解らないんですよ。

 何か失敗したのかと……」


「やっとそこで生演奏だと気づいたからだよ」

御曹司ことファルケ=オッテンバッハが答えた。

「僕も演奏はエアーで、主題歌を流しているのかと疑って残念に思っていたんだ。

 電子楽器なら鳴らさないのは容易だからね。

 ところがコーラスがキャラ達じゃなかった。

 ちゃんと君達が演奏して歌っているんだとコーラスを聴いて確信したんだ。

 だから嬉しくて笑顔になったんだよ。

 完璧で心地よい、素晴らしいとね」


「そうですか。ホッとしました」


「客席から急かされているから早速だが、アンコールはクラシック1曲と」

「この曲をお願いしたいんだ」

差し出された紙にはクラシックとハードロックの曲名が並んでいる。


「これは、杮落(こけらお)としで演奏するバンドのですよね?」


「機材テストなら必要だと思うよ」


「確かに。ですが許可は?

 俺達は演奏する分だけは事務所を通じて得ましたけど」


「得ているよ。心配無用だ。

 年明け、もう1日分の許可もね」


「え?」兄弟揃った。


「流石のシンクロだね♪

 君達のローマでの日程と、此処でのバンドの日程は ほぼ同じなんだ。

 次の日を空けてもらっている。

 君達の事務所にも連絡してね。

 また飛行機を出すから来てよ」


「えっ!?」急展開かつ説明不足!


「ほら、拍手が大きくなり続けてるよ。

 早く行かないとね♪」



―◦―



 結局アンコールは5曲になり、それでも終われそうになかったので最後には社長が出て、彼らは12時間も飛行機に乗って開演2時間前に着いたばかりだから休ませてやってくれと頼んで終演した。


 今、兄弟は夜道を歩いている。

「その代わり3日にライブってぇ……」

最後尾で ぼやいた白久が溜め息。


「ホテルも用意して頂き、ローマへの飛行機も出して頂ける。

 ローマからベルリンへもだ。

 事務所も許可を出している。

 何か不都合があるのか?」

並んで歩いている金錦が首を傾げる。


「みかんとローマデートだったのになぁ」


「ふむ。改めて瞬移で来ればいい」


「簡単に言うよなぁ」


「修行に励み、ドラグーナ様にお目覚め頂く事だな」


「しかねぇよなぁ……」また溜め息。



「なぁ紅火、衣装は?」

金錦と白久の前を歩く黒瑯が横を向いた。


「作る」


「まさかローマで若菜さん巻き込んでか?」


「常に共にだ」満足気。


「せっかくのローマなのに?」


「金錦兄も言った通り改めて来ればよい。

 そもそも今回は仕事で来ているのだからな。

 黒瑯は食べ歩きの予定だったか?」


「まぁな。

 本場の味を知るのは本業側で重要だからな。

 けどまぁ改めて瞬移で来りゃあリーロンと虹香姫も一緒に回れるからいっか」


「双子が(ふた)組……」フ。


「ナニ笑ってんだよ?」睨む。


「楽しんでくれ」


「おうよ♪」



「青生兄ご飯は?」コソッと。


「まだ食べるの?」


「もっちろ~ん♪」


「開演前に食べたよね?」物凄く。


「お腹すいたぁ~」「黒瑯兄様、彩桜が」

彩桜と藤慈が後ろを向いた。


「ん? 作ってやるよ」「ですが食材は?」


「部屋までは歩くしかねぇけど家帰って作るよ」

すぐ近くなのでとホテルに案内してくれているファルケとアルニッヒを見た。


その二人が振り向いた。

「このホテルです」


「うわ~♪」「スゲー」「大きいですね……」


「最上階を確保していますのでお好きに割り振ってください。

 少しお待ちくださいね」

話しながら入ってフロントへ。



 チェックインを終えると、ニッコニコなファルケは金錦と白久の所へ。

「この後、少しだけ打ち合わせをお願いしてもよろしいですか?」


「ええ。では部屋の方で」


フロントから鍵を貰って来てくれたアルニッヒが微笑む。

「フロント横のエレベーターでしか行けませんのでご注意を」


「その棒が鍵?」

早速、興味津々な彩桜が寄る。


 アクリル棒がキーホルダーになっていて鍵が付いているのかと思っていたが鍵は見当たらない。ただの棒にしか見えなかった。

「先端にチップが入っているんですよ」

掌に乗せて見せた。

クリアパープルの棒は片方が濃紫でアルニッヒが握っていた方は無色透明に近く、間はグラデーションになっていた。

その濃い側をよく見ると極小サイズのICチップが埋め込まれていた。


 到着したエレベーターに乗り込むと、階を示すボタン列の下の穴に鍵を差し込んだだけで上昇を始めた。

「直通なんです。

 つまり、これが鍵穴ですね」


「へぇ~♪」わくわく♪


少し昇ると視界に夜景が広がった。


「外に面してたんだ~♪」


勢いよく昇っているのも よく分かった。


〈ソラ兄達、見~つけた♪〉〈〈え?〉〉

青生と藤慈が反応した。


〈サーロン、ドイツ滞在ってしてるから見物中なの~♪〉


〈声掛けないの?〉


〈また来てくれるからいいの~♪〉


〈それなら良かった〉〈うん♪〉

〈邦和はもうすぐ朝ですよね?〉


〈うん♪ だからまた来てくれるの~♪〉


〈彩桜はローマですよ?〉


〈休憩トキに瞬移する~♪〉


〈そうですか〉ふふっ♪

藤慈は自分と慎介に重ねて嬉しくなっていた。


「着きましたよ」


 エレベーターの扉が開くと、見えたのは広いリビングで、妻達が集まってお茶していた。

「お帰りなさ~い♪」

みかんが駆けて来て白久に抱き着いた。


「恥ずいだろっ」「白久兄 真っ赤っか~♪」

「ウッセー彩桜コノッ!」 「逃~げる~♪」

「待ちやがれ彩桜っ!」 「やっだよ~ん♪」


「白久、悪いが先に打ち合わせだ」「あ……」


「お部屋はまだ割り振っておりませんの。

 お選びくださいな」

牡丹が金錦に微笑む。


「それで此処に集まっていたのか」


「はい。両側に個室が並んでおりますわ」


「コッチにも部屋ある~♪」

エレベーターの真正面にドアを見つけた彩桜が走る。

「広~い♪ 会議室みたいなのもある~♪

 金錦兄のお部屋にピッタリぽい~♪」


「おそらくメインの寝室ですね。

 反対側の夜景も格別でしょうから」


「では、その部屋に。どうぞ」



 4人がその部屋に入ると紅火と黒瑯は家に帰り、彩桜はスイートルーム探検を始めた。

 広いリビングとメイン寝室は中央の円塔部分にあり、円塔から東西に伸びている両翼のようにも見える角ビル部分には個室や浴室、遊戯室などがあった。

下階の円塔部は共有スペース、角ビル部分は客室になっているらしい。


 個室のカーテンの色で兄弟が部屋を決め、荷物を運び込んだ頃に黒瑯が戻った。

「ほらよ。夜中だから軽いものにしたぞ。

 具沢山お粥の和定食だ」


「あっりがと~♪

 黒瑯兄のお部屋、東の真ん中ね♪」指す。


「ふぅん。そんじゃ風呂入って寝るかぁ」


「リビングにドア見えるお部屋はプールバーだから数え間違えないでね?」


「プールあるのか!?」


「ベランダお庭のプールは夏だけ~。

 じゃなくてビリヤードの~♪

 バーテンダーさん、呼んだら来てくれるんだって~♪」


「あ~、そっか。

 必要ならオレやるから呼ばなくていいよ」


「ん♪ じゃあ朝ジュースカクテルねっ♪

 お部屋にシャワーあるけど、おっきなの両端にあるから東が男湯ね♪

 いっただっきま~す♪」


「オレの部屋の近くだな。

 紅火もお帰り。その大荷物ナンだよ?」


「裁断まで終えた。ミシンも持って来た」


「ヤル気満々かよ♪

 けど家に戻るの遅くなかったか?

 どこ寄り道してたんだよ?」


「ホールの2階席の揺れが気になった。

 3階席も合わせて補強しておいた」


「んなトコ見てたのか!?

 けどま、お疲れ。

 夜なべの前に風呂行こーぜ」「ふむ」

「彩桜、紅火の部屋は?」


〈黒瑯兄とお風呂の間~♪

 若菜姉ちゃん居る~♪〉


「姫は?」


〈女湯 行った~♪

 やっぱり黒瑯兄のご飯がイッチバ~ン♪〉


「ありがとよ♪ あれ? 紅火?」


〈スタスタ行った~♪〉


「ったく~。若菜さんの名前 聞いただけで、もう まっしぐらかよ」


「黒瑯、ワラワの分は何処(いずこ)じゃ?」

ホカホカ姫 登場。


「夜中なんだからコレだけだぞ」

シッカリ持って来ている。


「うむ♪」 「あれれ?」「どーした?」

【静かにするのじゃ】【ん】【お、おう】


【彩桜! 1霊入ったよ!】ソラの声。

【外には瑠璃と俺が行く!】青生の声。


【見つけた! 連破邪の極み!

 そんでもってショウの網!】

手にしていたデザートフォークから浄破邪を連射して素早く動く怨霊に数発当て、速度が落ちたところに網を掛けた。

【捕まえた~♪ 俺も外行く!】瞬移!



――【ソラ兄!】【うん!【破邪の剣!!】】


膨らんだ怨霊の弱禍を同時に貫いた。

【次 来た!【破邪連射!!】】

二人が交差して抜けたところに飛び掛かって来た複数には、彩桜はフォークから、ソラは剣から破邪を連射した。


【もぉ居ない?】【……みたいだね】

油断大敵とばかりに神眼で探りまくり!


〈あらぁ、終わっちゃったの?〉到着。


〈〈スザクインさん♪〉〉


〈それじゃ、後始末は任せてねっ♪〉


〈お願いします!〉

〈ホテルの連れて来ま~す♪〉瞬移。







やっぱり~な、ゆっくりできない夜です。

探検できる程のスイートルームに泊まれたのに、外でイキイキとデザートフォーク片手にソラの相棒をした彩桜。

青生と瑠璃も出ています。

やっぱり魂が双子なんだな~です。



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