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クリスマスイブには空飛ぶ橇



 沙織が帰宅した夕刻、彩桜はキツネの社を訪れた。

【お稲荷様ぁ~】


【如何した?】現れた。


【ちょっと教えてください】


【ふむ。座れ】


【は~い。

 あのね、珊瑚ちゃん、昨日ガネーシャ様から預かってたの。

 山の社の騒ぎトキ俺と一緒だったの。

 どぉして命 危なくなったの?】


【双子の弟、紫苑が瀕死となった為だ。

 神の双子は連動する故な】


【青生兄と俺、神様の素材な双子だから連動する?】


オフォクスは驚き見開いた目で彩桜をジッと見詰めた後、瞼を閉じた。

青生を探っているらしい。


【ふむ。確かにな。

 其れ故であったか……】


【ほえ?】


【先日、彩桜がキャンプー様の器に蹴られて危うくなったであろう。その時だ】


【何かあったの?

 青生兄、ちゃんと治癒してくれたよ?

 治癒してくれてた時にお話しもしたし~】


【彩桜が治癒の途中で意識を戻す前、青生も危うくなっておったのだ。

 儂が行って二人を治癒をすると、青生が先に回復して彩桜への治癒を継いだのだ。

 然うしたいからと。

 然うすれば青生自身も回復するからと】


【青生兄、連動するの知ってたんだ……】


【彩桜が幼い頃に気付いたそうだ。

 幼子はよく熱を出す。

 彩桜が発熱すれば青生も発熱する。

 他にも彩桜が体調を崩せば、青生も崩していたそうだ。

 故に経験則として、それが必然らしいと認識していたそうだ】


【ソレも、その治癒トキにお話ししたの?】


【然うだ。

 まさか人神魂でドラグーナを包んでおるなんぞと思いも依らなかったのでな。

 気付かず、すまなかったな】


【お稲荷様でもビックリなコトされてるんなら仕方ないと思うの。

 でも……そっか。気をつけなきゃ。

 お稲荷様ありがと。

 青生兄にも話していいよね?】


【伝えておいてくれ】【は~い♪】瞬移♪



―◦―



「瑠璃姉~♪」「どうした彩桜?」

入院動物を診ていた瑠璃が振り返った。


「青生兄 診察中だから~」


「替われと?」


「じゃなくてぇ。

 青生兄と俺、ホントに双子なんだって。

 神様の双子♪」


「は?」


「えっとね、ドラグーナ様 包んでる魂が神様のなんだって」


「まさか!」慌てて確かめる。「……確かにな」


「でしょ。でね、青生兄のと同じのを分けてるんだって~。

 だから連動するから、これから大怪我とか気をつけるからね。

 ソレ伝えといて~」


「直接 話さぬのか?」


「ランちゃんと約束してるんだも~ん♪

 サンタさんするんだも~ん♪」


「そうか。イブだったな」


「うん♪

 お稲荷様でも気づかなかったっての、俺ビックリ~。

 ラピスラズリ様も気づかなかった?」


「そう仰っている。

 人魂と人神魂は似ている。

 そうと思って見なければ判別は出来ぬそうだ」


「そっか~♪」


「やけに嬉しそうだな」


「だって青生兄と双子なんだも~ん♪

 それじゃ行ってきま~す♪」



―◦―



 彩桜が紗と飛鳥を連れて帰宅すると――


「あれれ? みんな居る?」


――何やら楽し気に騒がしかった。


 急いで大部屋に行くと、数人ずつで座卓を囲んでクリスマスパーティーをしていた。

「あ♪」「彩桜だ♪」「部屋じゃなかったの?」


「どしたのコレ?」


「料理教室の成果でクリパ♪」

「場所を貸してもらったんだ」


「そっか~♪ じゃあ楽しんでてね♪

 サーロン、此処でいいの?

 電話デートしたら?」


「あ……」


「そうだよ。電話してあげなよ」

「気がつかなくて悪かったなぁ」

「「早く電話してあげて!!」」


「じゃサーロンも連れてくねっ♪」



 と、連れ出して彩桜の部屋へ。

【それじゃ響お姉ちゃんトコ行ってね♪】


【彩桜……ありがと♪】瞬移♪



―◦―



 近くの細い路地に出てから紗桜家の門扉へ駆けて行くと、神眼で見ていたのか響が出て来た。

「バイト終わったのね♪」「うん♪」



 一緒に居間へ。

「こんばんは。お呼びくださり――」ワン♪

「え? わわっ!」「「ショウ!!」」


またまたまた風呂場へ直行となった。



―・―*―・―



 黒瑯作のケーキを貰って、心咲(みさき)と手を繋いで雪がチラチラと舞う夜道を帰宅していたジョーヌは、神眼でなければ見えない橇が昇っているのを見た。

「あ……♪」


「どうしたの?」


「心咲にも見せてあげる♪」

繋いでいる手に神力を込める。


「え? サンタさん?」


「そうらしいね♪」


「本当に居たのね……♪」


「いいもの見たね♪

 追いかけられるけど、どうしたい?」


「このままがいいわ♪」


「そうだよね♪

 見上げている方が夢があるよね♪」


「ね♪」


橇が見えなくなるまで見上げて歩いた。



―・―*―・―



「飛鳥、乗らなくてよいのか?」

庭で夜空を見上げている飛鳥に紅火が微笑んだ。


「ボク飛べるも~ん♪

 あ、でもリップル ポップル一緒に乗せて♪」


「まだ兎の神様は飛べぬのか?」


「この身体じゃムリみたい~。

 アカお兄ちゃん、サンタさんは?」


「着なければならぬか?」「うんっ♪」


空飛ぶ橇2号機は紅火サンタの操縦で昇った。



―・―*―・―



 家でも用意しているからと先に帰る事にした銀河(さらら)を、黒瑯と話していた悟が慌てて追った。

「待って! 送るから!」


「ありがと♪

 でも黒瑯お兄さんとのお話は?」


「お礼言って、今夜は泊まらないけど犬の散歩には来たいって話しただけ。

 で、冬休み中、犬の散歩をさせてって頼んだだけだよ」


「犬のお散歩? あ♪」「ん?」


背の高い悟を見上げた時に見えた空飛ぶ橇。

悟も銀河の視線を追って視界に捉えた。


「サンタクロース、実在してたんだな……ん?

 俺、神眼で見てるよな? 銀河ちゃん?」


「うん。私も見えるの。……ユーレイだから」


「えっ?」思わず神眼を向けた。「ホントだ」


「ユーレイ……ダメかな?」「ダメじゃない!」


声の大きさに驚いたが、笑顔に。

「ありがと♪」


「だから逃げてたのか?

 コクろうとする度に逃げてなかったか?」


「んっと……うん」


「そっか。

 俺、嫌われてるのかと――」「違うの!」

悟も銀河の大きな声が初めてで驚いた。

「――うん、ありがとな。

 俺はユーレイだとか気にしない。

 誰も気づいてないよね?

 だったら何も問題なんかナイだろ」


「……本当に? いいの?」


「いい。俺は銀河ちゃんがいい」


「うん♪」


銀河から手を繋いだ。

「あったかいね♪」


「そう、だな、、うん。あったかいよ。

 ちゃんと生きてるじゃないか。

 これから……一緒に生きてよ。

 俺もいつかはユーレイになるから待っててよ」


「うん♪ あ♪」空を指す。


「サンタクロース、何人いるんだ?」


空飛ぶ橇の軌跡がキラキラと交差し、片方が大きく回って、もう1台と並んだ。


更に1台、昇って並走する。


「お仕事は、これからだから集合時間?」


「そうかもな♪」



―・―*―・―



「ソラ兄、乗り心地は?」「最高だよ♪」


「あのお店、空飛ぶ橇まで作ってるの?」

首を傾げつつも響は笑顔だ。


「「「うんっ♪」」」飛鳥も加わる。


「それじゃあボク達は向こうに行きますね♪」


「「行ってらっしゃ~い♪」」


ソラサンタの橇が離れた。



『やっほ~♪ 楽しんでるかなっ?♪』

そしてもう1台。


「みかん暴れるなっ! スカートがっ!」

頭の上には当然 豆チワワな白久の言葉をガン無視して、操縦席に立ち乗りなミニスカサンタギャルが跳ねている。

「落ち着け みかん!」


「大丈夫よぉ。心配症なんだからぁ~♪」

『そうですよ。白久兄さんこそお静かに』


「青生!?

 あ~、だから毎年サンタ服着てたのかぁ」


「はい♪ やっと瑠璃を乗せられました♪」


「他の兄弟は? 紅火、若菜さんは?」


黒瑯サンタの橇と一緒に来た黒龍が並んだ。

「紅火、一緒に乗れるだろ?」


若菜が黒龍の背から跳んで紅火サンタの橇へ。


「ボクおねむ~」


「そんじゃあ飛鳥は彩桜の部屋な?」「ん」

黒龍が連れて降りた。



「で、他は?」『他とは?』

「兄貴がサンタ!?」


藤慈サンタも笑っていた。

これでデートな兄弟の橇が揃った。


「では各々、楽しもう」「はい♪」一斉☆



―・―*―・―



「キレイね~♪」


銀河の家の前で見上げた空には、橇の軌跡が花が開いたかのように煌めき拡がっていた。


「お仕事開始ね♪」「そうだな♪」



―・―*―・―



 祐斗達が帰ろうと玄関から外に出ると、空から橇が降りて来た。

「彩桜!?」複数。


「送ってあげるから待ってて~♪」

手を振って、頭上を通過して庭へ。


「行こーぜ♪」「そうだね♪」

一斉に庭へ。


「でも……どこ?」

「アレじゃねぇか? 光ってるヤツ」

バスケコートの方へ。


 コートには大小2台の橇が並んでいた。

そこに彩桜サンタが住居から駆けて来た。

「小さい方ランちゃんと乗ってたの♪

 大きい方7人乗り♪」

最前の馭者席に乗る。

「乗って乗って~♪」


「これが前に話してた空飛ぶソリ?」

祐斗だけは以前 彩桜から聞いていた。


「うんっ♪ 紅火兄が作ったの~♪」


「スッゲー♪

 けど俺達の家、すぐそこだぞ?」

「僕なんて向かいだし」


「ちょっと飛んでから家前に降~りる~♪」


「ンなコトしていいのかよ?」


「見えなくするから大丈夫♪」

取り出した懐中電灯(にしか見えない物)の光を橇に当てると、彩桜ごと見えなくなった。


「うわ~」「マジかよ……」


何をしたのか、また見えるようになった。

「だから大丈夫♪」



 家が遠い者からと決まり、尚樹 星琉とバレー部3人が恭弥も引っ張って乗った。

「僕の家、向かいだってば」

「いいからいいから~♪」


「橇の近く、あったかいからコッチに集まって待っててね♪」

飛んで行った。


 小さい橇を囲んで、昇る橇を見上げる。

「絶対オトナが信じないヤツだぁね♪」

「だよね~。ナイショ確定だ~♪」


「キラキラ綺麗ね♪」

「いつ見えなくするんだろうね?」

「降りる時じゃねぇか♪」


「物理的にどうなの?」

「凌央、夢をブチ壊すなよなぁ」

「説明できない事象を許すの?」

「彩桜に関われば不可解だらけだろーがよ」

「確かに……そうだね」摩訶不思議茶飯事。

「受け入れて楽しめよなっ♪」バシッ♪

「いい加減その馬鹿力は認めてよ」

「ま、いいじゃねーかよ♪」パシパシ♪

「痛いんだけど?」

「睨むなって♪」


「ホワイトクリスマスイブに空飛ぶソリ。

 ステキね……」

「うん。明日、成功しますように……」

「直史君、彩桜君にお願い事?」

「叶いそうな気がするから……」

「確かに叶いそうよね♪

 治してもらえたから、もう叶ってるのかもだけど……成功しますように♪」


 空飛ぶ橇に祈りを捧げる直史と六花を見て、祐斗と夏月、堅太と沙都莉も掌を合わせた。

それは次々と伝わり、最後には凌央までもが合掌した。

彩桜に近付いて以降の奇跡としか言い様のない幸せな日々に感謝を込め、幸せが続くようにと祈りを込めて――。







輝竜家と戌井家にとっては、クリスマスと言えば空飛ぶ橇です。

この橇は神力で飛ぶので神なら誰でも飛ばせられますが、神は飛べますからねぇ。

なので修行した欠片持ち専用という事になると思います。

サンタ服の赤い布は神力補助・活性化の力を持っています。

ただのコスプレではないんですよ。


それぞれに楽しいイブになったようで、めでたしめでたしです。



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