彩桜、キャンプーと話す
理倶が沙織に説明している間、彩桜は のんびり片付けている振りをしつつキャンプーを探していた。
そしてクーゴソンはサジョールに現状を話していた。
〖――って事でな、オイラ達よりも前に人世に来てた大神様方が大勢たんまり見つかってなぁ、オフォクスは大忙しなんだよ。
サジョールもチョイと人神が入ってるだろ?
たぶん頭も見つかると思うんだ。
頭探しついでに手伝ってくれねぇか?〗
〖それはいいけどねぇ、動けないのさ。
サルは自由そうだけど、アタシは どうしたらいいんだい?〗
〖先ずは眠り修行らしいなぁ。
オイラもイノブタから聞いて頑張ってっけど、なかなかなんだよなぁ。
あとは……そうだなぁ。
器のお嬢さんとオイラ達の器達が仲良くなってくれりゃあ万々歳だろーな〗
〖そうかい。アタシも器のお嬢さんと よくよく話さないといけないんだね?
まぁ、やってみるけどねぇ〗
〖ソレとな、キャンプー様とその器が禍の呪で厄介な事になってるんだ。
ソッチも手伝ってもらいてぇんだよ。
だからカッパにゃあ頭探しが一番、大神様起こしが二番、キャンプー様の件が三番かな?〗
〖忙しいこったねぇ〗
〖ああ。大忙しだよ〗
〖それでカイハックは?
一緒じゃないのかい?〗
〖器が社会人。仕事なんだとよ。
キュージツシュッキンだとか言ってたな。
オイラの器は学生で冬休みなんだ〗
〖おやおや勉強嫌いが学校通いかい?
面白い事になってるじゃないか♪〗
〖そう言うカッパだって女学生だ。
学校通いだぞ〗
〖アタシは勉強嫌いじゃないからねぇ。
今の人世の学校を楽しむだけさね。
おや? ドラちゃんが居るじゃないか。
おやまぁ、キャンプー様も居るじゃないか〗
〖ええっ!?〗
〖見えていなかったのかい?
ドラちゃんが見つけて向かっているよ。
ガネーシャ様も近くで寝てなさるわよ〗
―◦―
キャンプーが警戒しないように最初は自分だけで行くと言って社に入った彩桜は、キャンプーを感じる部屋に入ると真っ直ぐに水晶玉に向かった。
【キャンプー様ですよねっ♪】
呪を受けていると聞いているので破邪を纏った手で保護水晶を取り、更に撫でた。
〖ドラグーナか……何をしに来た〗
【お願いがあって来ました。
馬白 竜騎君を助けてください】
〖馬から人に戻せと?〗
【そゆ今だけのコトじゃなくて、ホントの竜騎君に戻してもらいたいんです】
〖本当の、だと?
私は目覚めて此の方、居心地が良かった覚えなんぞ無い。
あの器は私が目覚めて以降、もう十年近くもの間、他者を見下し、暴言を吐き続けていた。
この私が禍を生じさせてしまう程にな。
幼子であった頃から、そのままなのだ。
生来そうなのであろう〗
【違います。
俺が最初に会った竜騎君は素直で可愛い、とってもよく笑うコでした。
たぶん俺と接触したから弱禍が発動したんです。
弱禍は神様の力を感じたら起きちゃうから。
魂の中に神様いると、神様が眠ってても弱禍を消してくれるコト多いけど、竜騎君はそぉじゃなかっただけだと思うんです。
もぉ弱禍どころじゃなくなってるけど、キャンプー様みたいな大神様だったら助けられると思って来たんです】
〖ふむ……まず、弱禍とは?〗
【悪い神様が人の魂に込めてるってラピスラズリ様とお稲荷様から聞きました】
〖ラピスラズリだと?〗
【瑠璃姉の神様で龍神様で狐の神様です。
いろいろあって、みんなの考え纏めて、ソコに行き着いたって言ってました】
〖今ピュアリラと繋がる者であったか……〗
【ん?】
〖いや、続きを〗
【はい。
悪い神様は獣神様を滅したくて、人の魂に入れてオニギリみたくして、成仏トキに一緒に滅するつもりなんだって聞きました。
だから器なヒトが早く成仏トコ行くよぉに、イジメるのに人全部に弱禍を込めてるって。
悪い神様、禍使いだからって】
〖私はその弱禍を見つけられなかったのだな〗
【キャンプー様に くっついてたのかも~】
〖何?〗
【なんとな~く。
だから偉い大神様なのに禍 生んじゃったのかなぁ、って思って~】
〖ふむ。納得してしまうな〗
【ドラグーナ様の父ちゃんなフィアラグーナ様は、悪い神様が込めた『支配』ってのの塊の下敷きになってたって聞きました。
だからキャンプー様は弱禍の下敷きだったのかな? って思っちゃったんです】
〖ふむ。さもありなん、だな。
ラピスラズリと話したい。
救うか否かは、その後でよいか?〗
【はい♪ ありがとうございます♪
瑠璃姉と話しますねっ♪】探す。
【あれれ? 瑠璃姉、力丸と遊んでたの?】
【遊んでいるのではない。
力丸が住んでいる社に彩桜が居るから引き留めているのではないか】
【そっか~♪ じゃあ俺、出てくねっ♪
キャンプー様がラピスラズリ様とお話ししたいんだって~♪】
【ふむ。彩桜、身体に異変は?】
【ぜ~んぜん♪ 元気だよ~♪
昨日は助けてくれて ありがと♪】
【私ではなく青生だ】
【瑠璃姉も感じたも~ん♪
我王と義王のも ありがと♪
それじゃ下りる~♪】
【キャンプー様、瑠璃姉 来るから待っててください♪
また来ますねっ♪】瞬移♪
―◦―
〖ドラちゃんの器は良い子だねぇ。
それによく鍛えてるねぇ〗
〖オイラの器も鍛えてくれてるよ♪
そんじゃあ一緒に下山しようや〗
〖ちょうど話も終わりそうさね。
うん。出て行くみたいだ〗
―◦―
彩桜が待っていてくれた皆にキャンプーとの話を伝えていると、社から慎也と沙織が出て来た。
「片付け方、コレでいいですか?」
大きくて長いケースを開けて見せた。
「完璧ですね。ありがとうございます」
「慎也さん、イタズラ子狐ちゃんは?」
「此処の神様に渡したよ」
慎也が社の方を向いたので、皆もその視線を追った。
「ボロくない……」「大きな神社だね」「あっ!」
雪に負けない白さの煌めく大きな社に白装束の男女が佇んでいた。
軽く頭を下げると、純白と白銀の狐に変わり、白狐が後ろを向いて、再び向き直るとジタバタしている子狐を咥えていた。
「イタズラ子狐ちゃんだ~」
狐達は深々と頭を下げて消えた。
白くて大きな社も狐達を追うようにスゥ~ッと消えてしまった。
「本物のお稲荷様か?」「たぶんね」
「ナンか凄いの見たな」「そうだね」
「慣れたと思ったのに」「驚いたね」「なぁ」
堅太と祐斗は動こうとしない。
「下りよ~♪」「そうですね♪」
まだ二人は社の方を見ている。
「堅太、祐斗。頭に雪積もっちゃうよ?」
「冷えますから下りるですよ」
二人が笑顔で振り返る。
「そうだね。夕方までに下りないとね」
「よ~し! また鍛えるぞ!♪」
彩桜とサーロンが長い荷物の前後を持って走り出した。
「それはワタクシの――」
「「鍛えさせてください♪」」
「ワタクシも負けません!」走る。
「行くぞ!」「待って悟!」「負けねぇぞ!」
「おいおい、元気過ぎだろ」やれやれ。
【リグーリ、彩桜達を頼む】【仕方ないなぁ】
慎也は苦笑して後を追った。
―◦―
【キャンプー様、お話とは?】
現れた瑠璃は保護水晶を手に取り、目の高さに。
〖ドラグーナの器の話、真か?〗
【弱禍の話も、キャンプー様の器の話も真実です。
彩桜にとってキャンプー様の器は初めての友。
楽しかった思い出しか御座いません。
昨日、死に直面する程の怪我を負わされても、彩桜は彼の為に山を登って参りました。
彩桜にとっては、それ程までに大切な友なのです】
〖そうか。では協力は約束する。
しかし現状の私では力不足だ。
如何にすればよい?〗
【神力増強の為に成せる事、全てを成すべきでは御座いますが、何よりも解呪を急ぐべきと存じます。
ですが、結婚をお断りした不届き者の顔なんぞを頻繁に見たくも御座いませんでしょう。
他の者に依頼しますので、どうか解呪をお受けください】
〖い、いや、その、他の者なんぞ、あっ! 今ピュアリラ程に強い神は居らぬのであろう?〗
【術に長けた兄が居りますので。
では私は、これにて】
〖せ、せめて虹紲(の絆)を――行ってしまった……〗
《キャンプ~♪》《うわあっ!!》
象の目が綺麗な弧を描く。
《な、何を企んで――》
《ボクが結婚してあげる~♪》シュポッ♪
《要らぬ!! 私を持つな!!》
《強化でしょ~♪ 父様にお願いするねっ♪》
《嫌だあぁぁぁ――》連れ去られた。
《――ぁぁああっ!? お師匠様っ!?》
瞑想していたビシュヌ、シヴァ、ブラフマーは目を開けた途端、噴き出した。
《ぎゃあああっ!!》
女化したガネーシャが鼻で掴んでいる水晶玉にブチュッとキスしたからだ。
《父様♪ お師匠様♪
キャンプ~の強化、お願いしま~す♪
ボク、キャンプ~大好きなの~♪》
《キャンプーの方は?》
《おい、返事をせぬか》
《気絶しておりますよ》
《だってキャンプ~、器を救う為に強くなりたいって~。
ボク、キャンプ~より強いでしょ?
結婚したらキャンプ~強くなれるでしょ?》
《確かにな。十分な強化と成るな》
《象は全方向にパワフルだからな》
《ですが、キャンプーの同意は?》
《キャンプ~てば、結婚は強化としか考えてないから~♪》
《《そうであったな》》
《ですが――》
《混ざり合えばガネーシャも落ち着くのでは?》
《キャンプーは負に傾き易い。
禍を生んでしまった程にな。
それも改善されるのでは?》
《――確かに》
山に登った目的を果たした彩桜は、嬉しさで弾みながら駆け下りています。
通常、身体を成せていない神は結婚の絆なんて強いものは魂の方が負けて、弾けてしまいますので結べません。
ですが大神様は別です。結べるんです。
小さな魂片であろうが結べてしまうんです。
そのくらい強いからこそ大神様なんです。
最後の砦となっていたシヴァも納得してしまいました。
さてどうなるキャンプー。(笑)




